思春期ぐだ男は愛せない   作:ヒイラギP

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種火周回と後遺症のお話です。

間違えて11話に投稿してしまいました。申し訳ありません


導入編(0.15話)/お仕事の時間

熱い、寒い、熱い、寒い。無限にも思われる程繰り返される苦しみが二度と癒えないのだろうかと思う程に激しく俺を痛めつけている。熱くなれば熱い、冷たくなれば寒いと感じた事を垂れ流す事しか出来ずに悶える。

ああ、馬鹿な事をしたなぁ。少し前の愚行を思い返す。痛みに少し慣れて出来た余裕で周りを見渡すとメディアさんが呆れた様子でこっちを見ていた。

 

「変な術がかかっていると思ったらまさか痛覚を魔術で鈍くしていたなんて思わなかったわ」

 

へ、変な術って……あれでも結構長いこと考えたんだけどなぁ。

メディアさんがスッと手をかざすだけで痛みが和らいだ。俺が自分だけで何かしようとすると何故かいつもメディアさんに迷惑をかけてしまう。今回は史上最悪だ。

 

「ごめんなさい」

 

そう言う事しか出来なかった。練習の時は詠唱を半分で区切ったのでこれまでの被害ではなかったのだが両腕は結構長い間痛みが残る結果になった。ここから結果を予想しなかった事が間違いだったのだろう。

 

「はぁ……両腕はボロボロ、心臓は止まりかけで、精神汚染の影響か衰弱も激しいわ。魔術の規模を考えれば生きてるだけでも儲け物だけれども、もっとよく考えて欲しいわね」

 

魔術は便利な道具にも自分の首を絞める縄にも成る。最初に教えられた言葉が脳裏によぎった。同時に心配をかけてしまったこと、教えを破る様な危険な事をしてしまった事で胸が締め付けられる様に痛くなった。

 

「ごめんなさい」

 

また、そう呟いた。それ以外の言葉を見つけられなかったからだ。ただただ叱られた子供の様に自分の中で反省を繰り返しながら謝罪をする他に無い。罪悪感で俺はもう動けなくなっていた。

 

「そんな状態でうわ言みたいに謝罪を繰り返されるとわたしが痛めつけたみたいじゃない。もういいわ。あなたも反省してるみたいだし、私も大人気ない事をしてしまったしね」

 

「……ありがとうございます。最後に、本当にすいませんでした」

 

「次は3日後にしましょう……今日できなかった授業分もみっちりやってあげるわ」

 

少し魔術が上達したからって調子に乗った罰だろうか。罰だったとしても周りに迷惑がかかる罰は辛い。そういった事を決める神様がいたら今度罰を与える時はひっそりとやる様にお願いしたい。

 

通路を歩く。マイルームでシャワーでも浴びようか、それとも最近ご無沙汰ですだったアレでもしようかなんてあれこれ考えていると、何故か慌てた様子の清姫がいた。

 

「悲鳴を聞いて飛んで参りましたわ。お怪我はございませんか?ってその腕……あぁ、おいたわしや。どうしてその様な事になってしまわれたのですか。少しの間は安静にしましょう。ゆっくりでよろしいのでマイルームへ……」

 

なされるがままにマイルームに連行される。なんだか今日は清姫と一緒にいる時間が多い。パーソナルスペースに入ってこられるのはあんまり好きじゃないが、清姫は妹みたいな存在なので全然嫌じゃない。ーーこれを言うといつも不機嫌になるがそこがまた可愛いのだーー

 

「ありがとう清姫。でも大丈夫。もうそろそろリソース回収の時間だろうから行かないと」

 

「そんな怪我で何ができると言うのですか。無理をしても他の皆さんの迷惑になるだけですから安静にしてくださいまし」

 

「そこをなんとか頼むよ。最近カルデアに来た謎のヒロインXさんにお祝いで少し多く種火をあげようと思っているからさ、出来れば休みたくはないんだ」

 

「確かに新しいサーヴァントの方が来た時はいつもそうしていらっしゃいましたが……仕方ないですね、ですが私も同行します」

 

「わかった。心配かけてごめんね」

 

カルデアでは一日に数時間、種火を回収する時間がある。そうして得たリソースを均等に分配して全体の底上げを図るのだ。

 

今日のメンバーは孔明とバニヤン、フレンドのランスロット。そして約束通り、清姫が選ばれた。射程の長い宝具を持つサーヴァントを多く編成して孔明が補助をする。誰がどう見ても典型的な周回編成だった。

 

エネルギーを使えば必ずそれは減衰する。そうして散った魔力リソースが魔獣の死骸に根を張り、マナを吸収しながら巨大化した物が種火だ。彼らは成長の度で色を変える。銅、銀、金の順で強い個体になる種火の中で、カルデアがターゲットにするのは金だけだ。

 

バニヤンのチェーンソーが猛烈な音と共に種火達を伐採し、ランスロットがどこから取り出したかわからない機関銃で蜂の巣にする。孔明の的確な戦力の運用によってバーサーカーの弱点である耐久面と理性の欠如を完全にカバーできていた。

 

俺が受け持っていた筈の魔術支援は無い。それでも安定した成果を上げ続けるサーヴァント達を見ていると喜ぶべき事なのだろうがどうしようも無い暗黒色のもやが胸にかかるのを抑えられない。やはり罪悪感、だろうか。足に、腕に、絡みつくそれは何も出来ない現状に呼応する様に濃い黒を強めている。

 

「危ない」と清姫に引っ張られると顔のすぐ横を火の玉が通り抜ける。一瞬でも気を抜いてはならない戦いの場で一体俺は何をしていたんだろうか、傷が痛むのかと心配する清姫から堪らずに目を逸らした。

 

その他には特に何事もなく種火回収のノルマは達成された。謎のヒロインXさんの歓迎会の分もしっかりと確保できている筈だ。いつまでも落ち込んでる訳にもいかない、アレをする為にもカルデアに帰還してすぐにマイルームに戻った。

 

1人きりのマイルームにはカルデアの誰にも知られていない俺だけの秘密がある。こっそりこしらえた二重底の箱から赤いラインの走る木刀を取り出して軽く一振りしてみる。そう、これが俺の秘密だ。

 

始まりはカルデアに来るよりももっと前、俺が中学生だった頃。俺は、……俺は例に漏れず厨二病を患っていた……

何と戦うわけでもなく、剣道をしているわけでもなく、何故か素振りを欠かさなかったり、筋トレをしまくって運動部でもないのに腹筋が割れていたり、前髪がやけに長かったりした中学時代。

今でも、重量を上げる魔術をかけた木刀を一人で振り回すほどの後遺症に悩まされている。というか、カルデアに来てから再発の兆候が見られるのだ。それは何故か……もちろんサーヴァントのおかげ(せい)である。

 

魔術に武術に超常的パワーのオンパレードなサーヴァントの存在は俺の内に封印されていた病を強化復活させていたのだ。

自衛がなんだとほざいていたが魔術を学ぶきっかけはかっこよかったからである。まぁ、学ぶ途中でふざけた気持ちは捨てたが、それでも攻撃魔術を使う時はいつもかっこいい詠唱を心がけている。そんな俺が木刀を振り回すことに何の疑問があると言うのか。

 

一振り毎に刻印された魔術によって重量が大きくなる。腕にかかる負荷が少しずつ増えて、しっかり止めるのが難しくなっていく。だが、それが良い。思考を漂白し、純化した意識の中で肉体の限界まで上り詰めていく感覚が心地良い。目指す場所は昔アニメで見た剣士達の様な一撃を習得する事だが、たった24倍の重量でヒィヒィ行っている様では話にならない。今日は更に増やして28倍にしようか。

 

突如、身体中を刺す様な痛みが襲う。そうだった。俺は今怪我人、無理な運動は避けるべきだったのに……ノリノリで素振りをする姿など偶然でも見られたくなかったからマイルームの電子ロックをガチガチにかけていた筈、醜態を晒す可能性はない。もう疲れとか痛みとかで満身創痍だったが、このまま寝るわけにもいかないのでシャワーを浴びて汗を落とす。体を拭いて、コップ一杯の水を飲み干したところで耐えきれなくなってベッドに倒れ込む様にして眠ってしまった。

 

翌朝、肌寒さに起きた俺は自分が全裸だった事に驚き、そして寝ぼけが収まってきた頃になって昨日を思い出し赤面する事になるがそんな事、知る余地もないこの時の俺は沈む様に眠ってしまった。

 

 




リアルの事情で投稿頻度が落ちます。申し訳ありません。
忙しくなってどうしようも無く辛くなってしまうヒイラギに感想でエールを送ろう!
せーのっ!「「「「「「「「「【ここに感想】」」」」」」」」」
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