おいおいおい。メインタイトルどこいった!
ですがご安心を、何とかします(吐血)
…………
………
……俺は何をしていたんだ!?
体は筋肉痛で痛みを訴え、心も黒歴史の再誕で痛みを訴えている。壁に立て掛けてある木刀が夢なんかじゃ無いと語りかけてくる様で、我慢ならなずに二重底の箱の底に叩き込んだ。
俺がまたあの状態になっていた事が誰にも知られないように、脳筋じみた思考回路はクールでインテリジェンスなモテオーラで封印しなければならない。特に今日は駄目だ。
誰かにバレた訳ではないのに止まらない冷や汗、早いうちに平常心にならなくては酷い目に合うだろう。今日は
気を取り直して(死地へ向かう覚悟とも言う)いつもの制服に着替え、そして朝食を食べよう。……筋肉痛が邪魔してハンガーまで腕が上がらない。ジャンプしてなんとか取ったが、着地と共にまた痛みに呻く事になってしまった。
着替えも済ませて後は部屋を出るだけなのだが、なんとなーく嫌な予感がしてドアに近寄るのを躊躇ってしまう。だが、ここで何もせずにいても腹が減るだけなので、ここは一思いに開けてしまおう。
—おはようございます。ますたぁ—
「き、清、姫……?」
清姫だった。ドアの真裏に直立不動で、一体いつからそこに居たのだろうか。いつも通り、マイルームに入ろうとするだろう清姫がもし……
「清姫、いつからそこにいたんだ?こんなに冷え切って……」
ありえない話だが……
「もしかして」
—はい。その通りでございます。ますたぁ—
清姫がにこりと微笑む。いつも通りの笑顔なのに、俺は蛇に睨まれた蛙のように、痺れるように、動けなくなってしまう。
—私、ずっと待っていました。扉が開かなかったので、いつ開けてくださるのかと、一刻、一刻、数えながら—
よく考えても考えなくても部屋に入って良いとは言ってないが、確かに予測出来た事だった。女の子を部屋の外で待ちぼうけさせるなど鬼畜の所業で間違い無い。
「ごめん、清姫。昨日は……何してたかは言えないんだけど、とにかくマイルームには誰も入れたく無かったから電子ロックをいつもより硬くしたんだ。それで、やる事が終わった後は力尽きてすぐ眠ってしまったから、気付けなかった」
「あと、その喋り方怖いから元に戻してくれない?」
「はい、わかりました」
「結構あっさり戻すんだね……」
—こちらが、お望みですか?—
「いいえ!いつもの清姫が一番です!」
不機嫌と上機嫌が混在したような混沌としたテンションの清姫と共に食堂へ向かう。今日の当番は……そういえば知らないなぁ。
清姫に「今日の朝食当番って誰だっけ」と聞いてもはぐらかされてしまうので、結局食堂に着くまで誰が朝食当番なのかはわからなかった。
清姫だった。なんかもうここ最近清姫尽くしだ。俺がメディアさんに魔術を教わりに行ってる間にエミヤに教えてもらったそうだ。健気な清姫……妹ポイント爆上げである。妹であるところがポイントだ。家族愛ならば、異性の愛でなければその愛こそ永遠になり得るのだから。
朝食そのものはめちゃくちゃ美味しかった。高いクオリティもそうだが、何より殆どの料理が俺好みの味付けで、何というか愛を感じた。そう、味噌汁はこのくらいの濃さでちょうど良いんだ。……愛。
お爺さんの仕事について行って山村に1ヶ月程泊まった時にお寺で食べた朝食のことを思い出した。お寺での生活も楽しかったななんて思い返しながら、ふと、あの子の横顔……違う関係ない。嫌だ思い出したくない。やめろ、やだやだやだやだ!ああ!—静かな境内に響く淫猥な声— 嫌だ。もう俺には関係ない事だ。関係ない。—眼前で抱かれる初恋のあの子—あの子はここには居ない。—愛なんて性欲に過ぎない— 異性間の愛なんて信じない信じられない—欲は人を変えてしまう—もしや清姫も?マシュも?裏では何をしているかわからない。あいつらのようにきっかけさえあれば俺を、俺を、—殴られた、罵倒された— 俺を痛めつけるに違いない。
わかっている。これは唯の被害妄想で、フラッシュバックで、俺の問題だ。だからこの胸を焼くような焦りや怒りや不信感が混ざり合っている炎は、俺だけを焼けばいい。
炎だけでなく迫り上がってくるものもあるが、清姫が作ってくれた料理を吐き出すわけにもいかない—粗相をすれば何をされるかわからないから—違う、俺のために作ってくれた美味しい料理だからだ。
「ハァッ……ハァッ……」
目尻に涙が溜まり、呼吸が荒くなる。
『心的外傷によるフラッシュバック』最近になってこうなる事が増えてきた。それどころか段々ハードルが下がってきている。惨めに震える足を清姫にバレないように必死で押さえつける。荒い呼吸は食事を頬張って誤魔化し……涙までは誤魔化しきれなかった……
「ますたぁ?え、ま、ままままさか料理がお口に合わなかったのですか!?」
「違うよ、これは……違うんだ……昔を思い出しただけで…………」
俺はあの日からずっと本質的に変わらないでいた。臆病で、惨めで、触れれば漏れ出した炎が大切な誰かを焼く。そんな最悪の男に成り果ててしまった。
いつか振り切れれば良いな……そう言えるようになるには一体どれだけかかるのだろうか、下手をすれば一生?
心の悲鳴をいつも通りねじ伏せようとしたけれど、今回は上手く誤魔化せなかったようで清姫はまだ慌てふためいている。心の底から申し訳ないと言う気持ちが沸々と湧き上がってきて涙の粒が一つ落ちた。
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食事を終えてふらつきながらもなんとかマイルームに帰ってきた。歩く中で乱れも何とか収まってくれたようなので、食堂でできなかった清姫へのフォローをする。
「何でもないわけ無いんだけど、もう大丈夫だから心配しないで!ご飯美味しかったよ。味付け、俺の好みに合わせてくれて嬉しかったなぁ、特に味噌汁!エミヤの味噌汁に匹敵、いや、上回ってもおかしくないね!えーっと、とにかく!すっごい美味しかった!ありがとう清姫!」
「嘘、では無いようですね。……ますたぁ?」
「これからもたまに作って欲しくなっ……え?」
「私は嘘が嫌いです。嘘をつかれるのも、嘘をつくのも……だから」
清姫と目が合う。心の奥の底に居る俺の目だ。今、色々なものにやり込められて自分でも助けられない哀れな俺と目が合っている。
「きよ……ひめ……」
「泣きたい時は泣いてもいいんです。挫けそうな時は立ち直れる日まで挫けていいのです。……自分に嘘はつかないで」
「あ、ち、違……」
人類を救うマスターとして有用であると示さなくてはいけない。過去が俺を押しつぶしてどこにもいけないようにしている。なにをするにも恐怖が伴って、その内恐怖を押さえつける事になにも感じなくなった。周りの誰も信じられなくなって、本当に辛い時に1人でいないと壊れてしまいそうな時もあった。あの出来事が愛によって引き起こされた事で、よすがであるはずの愛すら獣の牙にしか見えなくなってしまった。隠さなくてはいけない。強くならなくてはいけない。それでも……もう、限界だった。
「怖いんだ」
ぽつり、ぽつりと一度吐き出して仕舞えばポロポロと、土の壁が綻ぶように涙と言葉になって止めどなく溢れ出てきた。
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「ん…………………」
「…………」
「ま、ますたぁ?」
「み、見ないでくれ………」
「っっっっ!!!」
「………………?」
推定14・5歳の女の子に縋って泣き喚いた後なのだ。まともに顔を見ることすら恥ずかしいようで気まずい雰囲気が流れる。
(やってしまった!これは、完全に嫌われた!)
(……あ、これはいけないです。ますたぁが弱っているのにかわいいだなんてはしたないです!)
恋愛研究会の時間ギリギリまで2人してこんな調子だった。
どこかで過去の出来事は描写しますね。
あっ流れ星!感想ください感想ください感想ください……よし!
清姫にバブみを感じたかった。正直反省している。だが、元々あった鬱設定を消化できて少し達成感も感じている。この複雑な思いこそ興奮ですね(殴)