ついでにピックアップでも大爆死しました。人力84の悲劇
健康診断。人形はメンテナンスがあるため不要だが、指揮官や基地で働く人間には必要な事である。
軍人という役職である以上、一定のストレスと緊張によって体調を知らず知らずのうちに崩す職員も多い。それ故に、3か月に一回の健康診断がグリフィンの職員には義務付けられている。
「なんだって…このクッソ忙しい月末に診断が入ってるんだよ…畜生…。」
「基地を回る医師の関係、らしいですね。…あ、指揮官、此方の書類をお願いします。」
「あいよ。それにしても、大分副官としての業務も慣れてきたじゃないか、DSR。」
「ええ、コンテンダーとナガンから教わりましたので。」
「あぁ、あの2人なら納得だわ。」
執務室、オダスとDSRは月末という事で山のように積まれた決算用の書類と各種備品を記した書類をひたすら捌いていた。現在時刻は午後2時、健康診断は3時からである。
「あー、そろそろ切り上げるか。DSR、次の書類でいったんストップにしてくれ。」
「了解しました。」
「…。」
「…?えっと、何か気になる事でも?」
「あー、いや。その、うーん…。」
急にDSRの方を見て言葉を濁すオダス。その様子を不審に思ったDSRは何が気になるかを聞いてみる。
「私のことについて何か気になる点があるのですか?」
「…おう。一応本部から通達はあったんだが…他のDSRとえらくメンタルの方向性というか、立ち振る舞いが違うなぁと思ってな。」
「ああ、なるほど。それは私が民間出身であることが大きいと思いますわ。」
「うん?メモリデータを消さないで戦術人形になったのか。」
「ええ。ただ、民間時代の影響が大きすぎた結果…他の同モデルと大きく性格が違ったらしく…。」
DSRは思うところがあったのか、少し苦い顔で答える。
DSR-50という戦術人形は総じて「エロい」と言われることが多い。何がどうなってそういったメンタルになったのかは分からないが、結果として口調や動きが「それっぽく」なっている。
しかし、このDSRは一切そのようなことがなく、どちらかというと「しっかり者のお姉さん」という感じが全面的に出ているのだ。
「他の同個体ならば、きっとこの制服に対して思うところは無いのでしょうが…『私』からすれば非常に恥ずかしいと思うのです…。できるなら、その、下の方の布がもう少し欲しいというか…。」
「それは俺も思う。流石にそれは目を引くというか誘ってるようにしか思えないデザインだから。男は目のやりどころに困る。」
うぅ…、と下を向いてキュッと裾を掴む仕草は如何なものか。本来のDSRも知っているオダスからすればそれはそれで困る動作だとおもったが。
そうしていると、廊下から誰かが走ってくる音が聞こえてくる。ドタドタと騒がしい足音はすぐにドアの近くまでやってきて…
「しっきかーーん!医務班から時間はまだだけどもう来てもいいよって連絡アガァ!?」
「廊下は走るんじゃねえ。走るにしてももっと静かに走れスコーピオン。」
「いった…入ってきた瞬間に合わせて物投げないでよぉ…。」
執務室に入ってきた瞬間、オダスによる迎撃を受けたスコーピオンは入り口で頭を押さえてうずくまる。といっても、損傷ができるほど強くもないので一時的な痛みだろうが。
「さて、このお馬鹿が呼びに来たから俺は行ってくる。片付けられる書類は任せた。」
「はい、お任せください。」
そのままスコーピオンを引きずってオダスは執務室を出ていった。
一人残ったDSRは机の上にある、大分厚めの書類の束をみて少しだけため息をついた。
「…ダミーも使って対処しても、問題ないでしょうかね…。」
副官の仕事というのは、思いの外に書類仕事が厄介なのである。
スコーピオンはお馬鹿担当。