FiveSevenは暇を持て余していた。後方支援も探索も、あまつさえ出撃すらなく暇なのである。自主的な訓練も最低限こなしており、かといって趣味があるかと聞かれればNO。結局部屋でごろんごろんとしているだけである。
もしかしなくても暇なのである。
「うー…。」
FiveSevenに与えられた部屋は一人部屋である。そのため、ベットの他に服を入れるためのクローゼットや、いろんなものを入れるための棚などがお設置されている。
その棚には、あちこちに後方支援などに出たときにそこの住民から貰ったぬいぐるみや工芸品がいっぱいに仕舞われている。
その中に、この前探索に行った際にもらったぬいぐるみが数体置かれた列。茶色、黒、水色、白の4本脚の可愛らしいぬいぐるみが目に入る。くれた人曰く「茶色いのが幼体で、黒、水色、白はその上位種。このほかにも何体かある」らしい。
このぬいぐるみはFiveSevenから見てもかなりかわいい部類に入る。いつだれが入ってくるか分からないからこそやっていないが、正直寝るときに抱いて寝たいくらいには可愛い。おまけに材料にかなりこだわっているのか、その触り心地もすごくいいのだ。
そしてFiveSevenは思いついた。どうせこんなに暇なら指揮官も暇なのだろう。ならばちょっとおちょくって遊んでみよう、と。
思い立ったが吉日。FiveSevenは
▽▽▽▽
執務室。指揮官のオダスは机に突っ伏していた。そしてその目の前で、呆れた顔のDSRが手元のタブレットを見ながら報告をしていた。
「…保有上限を超えた資材については他の基地に割安で回すか、基地に新たな人形を配備するかのどちらかで対応をしておきましょう。後方幕僚の方にも意見を聞いてみますが、恐らくは基地に配備する人形を増やす方向になるかと。」
「あー…了解。すまんな…出撃しようにも簡単なパトロール案件しかないから暇だろう?」
「何もないというのは良いことですけどね。ただ…。」
「ただ?」
「……他基地とメンタルが違うために、物珍しさにやってくる人物が些か増えすぎているような気がします。」
「早急に基地に配備する人形を増やしておこう。」
「お願いします…。」
少し苦い顔をするDSR。物腰や態度がお淑やかである為にその制服とのギャップが素晴らしい、と見に来る輩が増えたのは事実であった。その中には他基地の指揮官も若干含まれている。
オダスも手元にタブレットを置いていろいろとやり繰りをしようとした時、執務室の扉がノックされた。
「入っていいぞー。」
「───しっきかーん!」
「「!?」」
入ってきたのはFiveSeven…なのだが、明らかにいつもと違う身丈であった。いつもの身長よりだいぶ小さく…衣装もそれに合わせて小さく、尚且つ可愛らしいものに変わっている。そしてその手に抱きかかえられているのは、茶色い犬のようなデフォルメされた
いわゆる
「…ッッ、ッっ!」
「指揮官、心中察しますが落ち着いてください。」
指揮官オダスには子供スキンのFiveSevenと同じような年ごろの娘がいる。しかし、グリフィンの指揮官という立場上、年に数回会えるだけなのでものすごく寂しい思いをしているのだ。そのタイミングでFiveSevenがかわいいぬいぐるみと共に執務室にエントリー。オダスは親ばかを発揮して叫びそうになっていたのだが、僅かに残っていた理性で抑え込んでいた。
その様子を見たFiveSevenは「してやったり」と思う。しかしこのスキンの影響か、ちょっと子供っぽい発想に流れやすくなっている。そのため、悪戯心がいつになく指揮官をおちょくろうともう一つアイデアを提案してきたのだった。FiveSevenは入り口からもう少し前に出て指揮官の目の前、DSRの真横に立つ。そしてそのまま…。
「────パパ?」
「
「指揮官!?」
「わぁー…。」
耐え切れなかった。指揮官はそのまま机に突っ伏し…動かなくなった。
FiveSevenは「パパ」発言をすると同時に首をちょこんと傾げ、抱きかかえていたぬいぐるみを口元に寄せるという仕草もやってのけたのだ。子煩悩全開の親には大変効果があったようである。
しかし、流石にここまでになるとは思いつかなかったのか、FiveSevenも若干の反省の色を見せていた。
「ちょっと、こうかありすぎた…。」
「子煩悩の指揮官のはダメージが大きすぎたのでしょう…。ここ1年は会えていないとのことでしたし…。」
「ひまつぶしのつもりが、たいへんなことしちゃったな…。」
ノックダウンした指揮官を傍目に、このまま副官として業務をするつもりだったDSRとやりすぎた自覚のあるFiveSevenは今後のやるべきことをリストアップしていくのだった。
誕生日プレゼントでガチの猿轡がきて大爆笑してました。