マキアスとユーシスの班編成をかけた戦いは、圧倒的な実力の差を見せ
リィンの勝利となった
そして、時の流れというのは早いもので、特別実習の日すぐに訪れた
特別実習・当日
「おーっす」
「おはよ」
リィンとフィーが顔を出すと、すでにほかのⅦ組のメンツが揃っていた
この前の班編成をかけた戦いが尾を引いてるのか、それともマキアスとユーシス両者が一緒の班なのが気に入らないのか、互いに背を向けている
まぁ、どちらもなんだろうなぁとリィンは内心思う
口に出せば、マキアスもユーシスも突っかかってくるのがわかりきっているからだ
余計なことを言わないのが吉だ
そんな、二人の態度が災いしてか空気はかなり険悪なものとなっていた
「おいおい、大丈夫なのかあれ」
リィンは、今回一緒の班となるエマに互いに背を向けている
マキアスとユーシスを横目でみながら問う
「アハハ・・・
私が着いたころにはもうあんなでして・・・」
「というか、リィンがわざと負ければこんなことにならなかった」
「おいおい、無茶言うなよ
わざと負けたら今度はサラさんに小言、言われんだろ
オレが
というか、負けるのは性に合わん」
「ん
言うと思った
まぁ、負けるのが性に合わないのはわかるけど・・・」
「わかってるなら、言うなよ・・・」
リィンは、あきれたように言う
リィンもフィーも所属は違えど、戦場で生きてきた人種だ
負ける=死を意味する。
その意味でも、リィンも訓練であっても、わざと負けてやるようなことはしないだろう
それは、フィーもわかってはいるが、ここまで空気が悪いのとその空気の悪さが、実習の最終日まで続くとなると言いたくもなるというものだ
「君たち、いつまでそこで油をうっているんだ」
「さっさと、行くぞ」
「やれやれ、仕方ない
行くか」
「ハァ、めんどくさいな」
「フィーちゃん・・・」
フィーのストレートな言葉にエマは表面上では咎めるが、内心はフィーと同じ気持ちだった
リィンもリィンで、傍観を決め込んでいるため、実習最終日までその調子でいくつもりであろう
マキアスとユーシスによる険悪な空気の形成は実習地だけに留まらないようで、移動手段である電車の中でも険悪な空気は続いていた
「さて・・・と、オレちょっと車内見てくるわ」
「それじゃ、私も」
「ちょっ、リィンさん、フィーちゃん!!」
リィンとフィーがあまりの空気の悪さにいい加減鬱陶しく感じ始めたのかエマに押し付けて逃げる気であろう
エマもそれを察し、止めるが
返ってきたのが、リィンの無表情からのウィンクだ
そして、声に出さず口を動かし、エマに告げる
“任せた”と・・・
そして、リィンとフィーは席を外してしまう
「はぁ~」
置いてかれたエマは、深いため息を吐くのだった・・・
ユーシスとマキアスは互いに喧嘩には発展しなかったものの互いに一言も喋らず、そっぽを向いてる状態だ。
なんとか対話をエマが試みるが、一言、二言で終わってしまい、長く続かない
そんな状態のため、エマもあきらめ、傍観の立場をとった
そして、電車に揺られて数時間、電車は実習地である
公都バリアハートの到着のアナウンスを告げるのだった・・・
「よっ、エマ、お疲れさん」
「ん、お疲れ」
先に降りていた、リィンとフィーが疲れ切った表情をしているエマに労いの言葉をかけた
「リィンさん、フィーちゃんもそう言うくらいなら、逃げないでください・・・」
エマは恨めしい表情を浮かべ、リィンとフィーをジト目で見る
「それは・・・・
無理だな・・・」
「てか、ぶっちゃけほかのところでやってほしい」
「まぁ、それは同感だな・・・」
「リィンさん、フィーちゃんも本人がいるのに・・・」
リィンとフィーは当の本人である二人の前でこんなことを言っているのだ
「「・・・・・・」」
当の本人たちはバツが悪いのか顔をそらすのだった
「まぁ、けどいかにも貴族って感じの街だよな
豪勢っていうか・・・
まぁ、貴族はこの帝国の象徴みたいなものだし、仕方ないかもしれないな・・・」
「フンッ」
リィンの説明にマキアスは面白くなさそうにそっぽを向く
「あぁ、それとマキアス
一つ言っておかないとな」
「な、なんだ」
「おまえの貴族嫌いは否定はしねぇ
人間、好き嫌いはあるものだからな・・・
だが、ここは腐っても貴族の街・・・
そんなところで、普段ユーシスに突っかかってるような真似してみろ
一瞬で独房か下手すれば処刑になる
そうなっちまえば、いくらアルバレアのユーシスがいてもかばいきれない可能性がある
精々、言動は気をつけろよ?」
リィンは、諭すようにマキアスに言う
「グっ、わかっている!!」
「そうだといいけどな」
リィンは、普段のマキアスのユーシスに対する態度や言動をみてもなにかの拍子にやらかすんではないかと内心思う
そうなってしまえば、なにもかもがおしまいだろう
マキアスには注意しとかないとな・・・とリィンは静かに溜息を吐いた
別にマキアスが捕まり、処刑されようがリィンにとってはどうでもいいことだった
それはマキアスの注意不足でなることだし。マキアスであれ他のメンバーであれ死ぬときは死ぬ
それが早まるだけ、リィンはそう解釈している
だが、死人が出たとあってはサラになにを言われるかわかったもんではないし
何より“あのオヤジ”が好意にしている奴の息子だ
あとあと、どんなことになるか分かったものではない
リィンは二度目になる溜息を吐いた
「まぁ、気をつけてんならいいさ
じゃあ、早速行こうぜ
実習の開始だ」
とリィンたちが行動を開始しようとしたタイミングでリィンたちの前に黒い高級車・・・
リムジンが目の前で止まる
リムジンの運転席から妙齢の男性が下りてきて、その男性は後部座席のドアを開ける
そこから降りてきたのは、ユーシスと同じ髪色の青年だ
どことなく、紳士のような雰囲気を出している金髪の青年は、リィンたちの目の前まで来ると
「フフ、トールズ士官学院Ⅶ組の諸君だね
話は聞いてるよ
乗りたまえ、君たちを宿泊先まで案内しよう」
「なるほど、あんたがそうか・・・」
リィンは目の前の青年が誰なのか合点がいったらしく納得したように呟く
「ん・・?」
「えっと・・・?」
「貴方は・・・?」
フィー、エマ、マキアスは青年のこともそうだが色々混乱したように、困った表情を浮かべる
「兄上・・・」
「え・・・?」
「兄・・・」
「ってことはまさか!?」
ユーシスのつぶやきに三人は目の前の青年が誰なのか合点がいったらしく
驚愕の表情を浮かべた
「紹介しよう
オレ・・・我が兄
アルバレア家が長子
ルーファス・アルバレアだ」
「フフ、もう少し黙って君たちの反応を楽しみたかったのだが・・・
紹介されては仕方ない
そこの不肖の弟、ユーシスの兄
ルーファスだ
よろしく頼むよ、Ⅶ組の諸君
弟のことも含めてね」
「フフ、リィン君だったか、君の噂はかねがね」
「恐縮です
ですが、いくら車の中とは言え、そういった話題は別の機会に・・・
お互いのためにも・・・ね」
「フフ、それは失礼」
リィンもルーファスも笑みを浮かべる
笑みは笑みでも、不敵な笑みをだが・・・
「兄上・・・?」
「な、なんだ・・・」
「リィンさんもルーファスさんのことご存じみたいですけど・・・」
「・・・・・・」
リィンとルーファスの間に流れる異様な威圧感にも似た空気に三人は不思議に思いながらも空気のせいか息苦しさを感じていた
「フフ、忘れるといけないのでこれを渡しておこう」
ルーファスは一通の封筒を取り出し、それをリィンに渡す
「確かに、受け取りました」
「確かに、渡したよ
それと、マキアス君だったかな
カール氏の息子の・・・」
「父をご存じなのですか?」
「あぁ、貴族と平民といってもそんな四六時中牽制しあってるわけではない
彼とはとあるパーティーで会ってね
色々、勉強させてもらっているよ」
「は、はぁ・・・」
「フフ、二人も可憐なお嬢さんだ」
「ども」
「アハハ・・・
いえ、そんな」
ルーファスのナンパともとれる言葉にフィーは無表情で、エマは若干照れながら対応する
「フフ、話しているうちに着いたようだ
君たちの宿泊先に・・・」
リィンたちが車から降りると、目の前にいかにも高級な感じのホテルだった
外観からなにやら豪勢な雰囲気を感じ、内装もそうなんだろうことは容易に想像できた
「では、私はこれで失礼するよ」
リィンたちを送り届けたルーファスは再び車の後部座席乗り込もうとする
「ルーファスさん」
そんなルーファスをリィンは呼び止める
「なにかな、リィン君」
「いえ、先程の件ではありませんが・・・
“彼”にお伝えください
精々、今この平和な瞬間を楽しめ・・・
そして、精々足元を掬われてその首食いちぎられぬよう気を付けるように・・・・とね」
「フフフフ・・・・
ハハハハハハハハ
君は、面白いな・・・
わかった、確かにその言葉、伝えよう“彼”にね
君も、君の仲間たちに伝えると言い
刻限は刻一刻と迫っていると」
「あぁ、確かに承りました・・・」
「君と再び相まみえる時を楽しみしていよう
“剣神”よ・・・」
「兄上・・・?」
「なんだ・・?」
「えっと・・・」
「ん・・・?」
ルーファスとリィンの意味深なやり取りを四人は訳が分からず、首を傾げるのだった
そして、このやりとりの意味をそう遠くない未来に彼らは嫌でも実感することになる
だが、それはまだ先の話だ
二人の意味深なやり取りを疑問に思いながらもホテルに荷物を預け、バリアハート組は実習を開始するのだった・・・