「一応、落下防止のための措置はされていたのか・・・」
「ん・・・、そうみたいだね」
先程の女性から半強制的に地下に降ろされたリィンと銀髪の少女フィーは床の感触が堅い地面と違い柔らかく例えるならクッションのようだった
おそらく先程の仕掛けのことを考えて加工でもされていたのだろう
士官学校にしては甘いなとリィンは内心思う
そもそも育った環境が特殊すぎるリィンが甘いと感じるのは仕方のないことであろう
そしてあんな目にあったにも限らずマキアスはユーシスに絡んでいた
「アホらし・・・」
リィンはそんな二人には興味を示すこともせず見おぼえのある刀袋のある台座まで歩き
刀袋の中から己の武器である太刀と刀を取り出し腰に差した。
フィーもリィンに続き自身の荷物を回収する
自信の荷物の中に綺麗な球のようなものが入っていた。リィンはそれを入学案内の時に一緒に送られてきた戦術オーブメントを開きその中央にセットする
リィンもフィーもあらかた準備を終えるとそのまんままっすぐ地下を進もうとする
「待て、そなたたち何処へ行くのだ?」
そんな二人をとめたのは青髪の少女ラウラ・S・アルゼイドだ
「なにって進むんだよ
このままここにいても仕方ないだろ」
「だが、それにしても協力して・・・」
「あー、必要ない
この程度なら俺一人で充分だしな・・・」
リィンはラウラに見向きせず腕をあげ手をひらひらと振りながら先へ進んでいった
「ま、私もそゆことだから」
あのクラスの中で最も年下と思われていたフィーも単独で進んでいった
そのあとエリオットの戦術オーブメント<アークス>に先程の女性教官から通信がかかってきてあらかたの説明を受けた
当初はリィンにかけようとしたのだが単独で行動を開始したためエリオットに変えたのだそうだ
そしてリィンとフィーを抜いた残りの人数でチーム分けをしこの地下を攻略することになった
チーム分けは単純に男子と女子チームで別れた
男子チームに関してはユーシスとマキアスを一緒にするのが本人たち以外から心配の声があがったが本人たちが大丈夫と言い張るので当の本人たちを信じることにした
「「なっ・・・」」
先に男子チームが先に進むとそこには血の海が広がっていた
「これは・・・」
「うっ・・・」
「ひっ・・・」
それは簡単にあらわすなら地獄絵図だった
おそらく先行したあの二人がやったのだがそれは酷い光景だった
おそらく戦闘慣れしてない女子の二人もその残虐さに吐き気を抑えるのが精一杯だ
一体は一刀のもとに一刀両断されておりそこから血があふれ出し内臓やらなにやらが飛び出ている
違う一体的確に急所を撃ち抜かれている
比較的撃ち抜かれた魔獣のほうはマシな方だが魔獣によっては頭を撃ち抜かれなんかぐろいなにかが飛び出たりしている
なにも戦闘慣れしていないのは女子チームだけではない
男子チームの二名マキアスとエリオットもその光景に口元を抑えた
マキアスたちが落ちいたことで先に進むことになった当初は男子と女子チームで別々に動こうとなっていたが両チームの半分がこれでは別行動になれば逆に危険だと判断し一緒に行動をすることになった
道中の戦闘もうまく連携し倒していく
「へぇ、あの光景をみて持ち直したか・・・・
思ったよりはできるのかな・・・」
リィンは物陰に身を隠し彼らがゆっくりだが確実に先に進んでる様子を楽しそうにみていた。
リィンもわざとあんなことをしたわけではなかった。いつもの癖というか
“敵を確実に殺す”それがリィンの根底にあったそれが今回やりすぎてしまった理由だ
だがあの光景を見てよく持ち直したなぁと感心する自分で言うのもあれだが結構ショッキングな殺し方をしたとリィンは思っている
いくら戦場にもでたことがない未熟者とは言え流石は士官候補生といったところか・・・とリィンは内心思いながら気配を消してその場から立ち去った
リィンが立ち去ったあと彼らは互いに協力し合い連携し徐々に仲を深めていった
「あれが終点か・・・」
リィンは一足先にゴールの手前まで来ていた
そしてリィンは終点に向けて進みだした
終点につくとそこには石造と上へ上るための階段があり、そのすぐそばに光がさしている入り口がある恐らく地上への道だろう
「へぇ、面白いな・・・」
リィンは石造に目を向ける
石造はまるで命を与えられたかのように獰猛な咆哮をし、リィンに目を向ける
どうやらリィンを標的に決めたらしい
「なるほど、石造の守護者・・・
ガーゴイルか・・・」
リィンは石造の魔獣の正体にあたりをつける
ガーゴイルはその鋭い爪でリィンを切り裂こうとその腕を振るうがリィンはそのガーゴイルの腕をつかみそのまま蹴り飛ばす
「その程度か・・・?」
リィンはガーゴイルをあしらいながら挑発する
言わせてもらうならリィンはこんなガーゴイルすぐに倒すことなど可能だ
リィンからしたらこのガーゴイルは雑魚だ
だが、これがオリエンテーリングの最終試験だとすればリィンが単騎で撃破してしまってはVII組のオリエンテーリングにはならないだろうとリィンは面倒だが時間稼ぎに徹底していた
時間稼ぎと言ってもそれは酷い光景だった向かってくるガーゴイルをリィンはタイミングを合わせて殴り飛ばしたり、さらには蹴り飛ばし、投げたりと時間稼ぎというより蹂躙してるとか遊んでるという表現のほうが正しいのかもしれない
これには見守りに来た学院長は他の教官陣も苦笑いしかでてこない
「これは、育った環境が特殊とは聞いていたが・・・」
「まるで相手になりませんね」
教官陣は未だにガーゴイルで遊び続けているリィンをみながらそれぞれ感想をもらした
あのガーゴイルも決して弱いわけではない。
もちろん武の最奥にたどり着いたものやそれなりの実力を持つものならリィンのように単騎撃破が可能だ
だがそれはあくまで教官陣のようにかなりの練度を持つものならの話だ
一学生が蹂躙できるような相手ではない
学生レベルなら協力しないと倒せないほどには強いはずなのだ
だが今ガーゴイルと戦っている少年は自身の武器である太刀もぬかずガーゴイルを圧倒している
差異はあれ教官陣はこの少年に興味を抱いたのだった
リィンがガーゴイル相手に時間稼ぎという名の蹂躙をして数分後皆がやってくる気配を感じたリィンは太刀を抜きガーゴイルと互角に戦っているふりを始める
「はっ、結構やるな・・・!」
そう言ってリィンはガーゴイルに切りかかった
「ふむ、あれと対等とはなかなかの実力のようだ・・・」
「あぁ・・・」
「だが、攻めあぐねているようだ」
「私たちも加勢しましょう!!」
「・・・・・・・・・・」
などとリィンの互角に戦っている振りに見事にだまされる士官候補生
フィーはそんなリィンをみて白い目を向けていた
リィンの戦闘時の姿に感化された皆はリィンに協力しガーゴイルに攻撃を放つがどれも決め手にならず攻め切れてなかった
「・・・・・・・」
リィンはここまでかと腰の太刀を抜き腰を落とし一気に始末しようとした時
皆が繋がった・・・そんな感覚が彼らの中で共有された
互いに次どう動くかが見えた
これならいける皆がそう感じた
「今だ!!」
リィンがガーゴイルの攻撃を太刀で弾き皆にむけてそう叫んだ
『「「「あぁ!!」」」』
そこからはさらに深くつながった感じがした
リィンが作った隙を無駄にしないため皆が攻撃を加える
そしてラウラの大剣がガーゴイルの首に肉薄しそのまんま斬り飛ばした
「うわぁ・・・」
リィンはその光景をみてグロ・・・と見ていたが
そんなリィンをⅦ組は白い目で見ていた
”おまえがいうな”ということであろう
斬り飛ばされたガーゴイルはそのまんま石に戻った
そして斬り飛ばしたガーゴイルの生首も・・・・
「ふぅ、なんとかなったか・・・」
「なんで、わざと互角のふりをしたの?」
銀髪の少女フィーはリィンにしか聞こえない声でそんなことを聞いてくる
とぼけるのは簡単だがフィーにはリィン自身の実力もあらかたばれているため隠すことなく答える
「確かにあの程度なら一撃で倒せる
だけどそんな無意味に実力を見せる必要もないだろ
君の場合はオレと似たような匂いがしたから・・・それだけだ」
「やっぱり、あなたは・・・」
「それはご想像に任せるよ」
リィンは適当にフィーをあしらった
「それにしても先程の感覚は・・・」
「それこそがアークスの真価ってわけね・・・」
タイミングを見計らっていたかのように先程の女性教官が現れる口ぶりからして当然先程の戦闘をみていたのだろう
「まぁ若干アークスなしでも倒せた子はいるみたいだけど」
女性教官は目線だけリィンに向ける
「さて誰のことやら・・・」
当の本人は肩をすくめてとぼけてみせる
「まぁそれはおいとくとしてさっきの感覚がアークスの真価よ
君たちがⅦ組に選ばれた理由でもあるわ」
「へぇ・・・」
リィンはとくにどうでもよさそうに答える
「まぁリィンのそのどうでもいいみたいな返事は置いといて
エプスタイン財団とラインフォルト社が共同開発した最新鋭の戦術オーブメント
様々な魔法が使えたり通信機能が使えたりと多彩な機能が備えられているけど
その真価は戦術リンク
先程君たちが体験した現象にある」
「戦術リンク・・・」
「さっきみんなが繋がっていたような感覚・・・」
「えぇ、例えば戦場に置いてそれがもたらす恩恵は絶大よ
どんな状況下でもお互いの行動を把握できて最大限に連携できる精鋭部隊
仮にそんな部隊が存在すればあらゆる作戦行動が可能になる
まさに戦場における革命と言っていいわね
「ふむ・・
確かに・・・」
「理想的かも・・・」
女性教官の説明にⅤII組の面々が納得する
あのフィーでさえだ
「そんなにうまくいかないのが戦場だけどな
しかも機械に頼った偽りの連携・・・」
「うるさいわね
水を差すんじゃないの」
女性教官はリィンの茶々入れに注意し続ける
「でも現時点でアークスには個人的な適性があってね
新入生の中で君たちは特に高い適性をしめした
そこの不良生徒も含めてね」
女性教官はさっきの仕返しとばかりにリィンのことを話題に出しながら言う
「それが身分や出身に関係なく選ばれた理由でもある」
「なるほど・・・」
「なんて偶然だ・・・」
「驚いてるけどそこの貴族嫌い
これから大嫌いな貴族様と一緒に勉強するんだからな」
「ええい、うるさいわよ
リィン!!」
「はは、そんなに怒るなよ
血圧あがるぜ?」
「あんたのせいでね!!」
またしても茶々をいれてくるリィンに怒鳴るがリィンに効果はなく軽く流す
「さて大方の説明もしたし
決めてもらいましょうかⅦ組に参加するかどうかをね
・・・・このトールズ士官学院はこのアークスの適性をもって君たち9名を見出した
でも、やる気のないものや気の進まない者に参加させるほど予算の余裕があるわけじゃない
それと本来の所属クラスよりハードになるわ
それを覚悟したうえで参加か否か聞かせてもらいましょうか?」
「ふむ、では私は参加させてもらおう」
最初に名乗りをあげたのはラウラだった
「新入生最強の使い手は参加っと」
「オレも参加させてもらおう
なにより異郷の地まできているのだ
やりがいがある方を選びたい」
「ノッポの留学生君も参加・・・と」
「私も参加します
奨学金をいただいてる身ですし
少しでもお役に立てたら・・・」
「僕も参加します
これも何かの縁だと思うし」
「魔導杖のテスト要員も参加・・・と
魔導杖のレポートたのしみにしてるわよ?」
「あはは・・・」
「うぅぅぅ
早まったかなぁ・・・」
女性教官の発言にエマは苦笑いを浮かべエリオットはみるからにうなだれていた
「私も参加します」
「あら、意外ね
アンタは反発して辞退するものかと思っていたんだけど
「確かに試験段階のアークスが使われていることに思わないところがないわけではありませんがこんなことで腹を立てていたらきりがありませんから」
「まっ、それもそっか」
「これで参加者は5人他はどうするのかしら?」
「・・・・ユーシス・アルバレアⅦ組への参加を宣言する」
ユーシスの宣言に他のメンバーは意外そうな顔をした特に興味のなさそうなリィンやフィーでさえユーシスに顔を向けた
「な、なぜだ君みたいな大貴族が平民と同じクラスなどさぞ居心地が悪いはずだろう!?」
「勝手に決めつけるな、アルバレア家からしてみれば他の貴族も平民と大して変わらん
勘違いした取り巻きにまとわりつかれる心配もないしむしろ好都合というものだ
・・・・まぁかと言って無用に吼える犬を置いておく趣味もない
ならばここで袂を分かつのが互いのためだと思うが・・・どうだ?」
ユーシスはマキアスに提案する
簡単にいえば自分はⅦ組に行くからおまえは辞退して平民クラスに行けと・・・
「だ、誰が君のような傲慢不遜な輩の指図を受ける者か!?
マキアス・レーグニッツⅦ組に参加する!!」
だがそんな指図を簡単にうけるほどマキアスも単純ではない
半ば意地のようにマキアスはⅦ組の参加を宣言する
「なんか先が思いやられるわね・・・」
「うん・・・」
「ははは・・・
まぁ時間が解決することを祈るしか。。。」
参加を宣言したほかのⅦ組らは彼らの参加に先が思いやられる感覚に陥り
軽く頭を悩ませた
「それであんたらはどうするのかしら?
リィン、フィー?」
女性教官は未だ参加か否か決めていない二人に問いかける
「ん・・・?
サラが決めていいよ」
「ダーメ
言ったでしょうが自分のことは自分で決める
そういう約束だったでしょ?」
「めんどくさいな
じゃ、参加で」
フィーは女性教官――――サラに言われ溜息を吐きながらも参加の意思を示す
まぁどっちでもいいや感はあったのだが・・・
「あとはリィン
君だけよ」
「サラさん、オレも別にどっちでもいい
あんたが参加すれといえばするし辞退しろといえばするただそれだけですよ」
「リィン――――
フィーもとりあえずは自分の意志で参加を示した
あんたも自分の意志で決めなさい」
サラは諭すようにいう
リィンの事情をある程度知ってるサラからすれば“自分で決める”たったこれだけだが難しいのはわかるでもだからこそサラはリィンに選んでほしかった
ただ言われたからではなく自分で考えてたどり着いた答えなら少なくとも後悔はしないはずだから・・・
「まぁそれじゃ・・・参加で
対等に戦えるライバルとかそういうのは期待できなさそうだが退屈はしなさそうだ」
「まぁそれは置いといて
今ここにてⅦ組の発足を宣言する
ビシバシ鍛えてあげるから覚悟しなさい
あとタイミングがなくて名乗るのが忘れたわね・・・
Ⅶ組の担任教官となる。サラ・バレスタインよ」
「やれやれまさかここまで異色の顔触れがそろうとはのう・・・
これは少々大変かもしれんのう」
高台の上から様子を見ていた学院長は言う
先程までは他の教官陣もいたのだが、授業の準備とやらで各々解散していった
残ったのは学院長と金髪の青年だ
「フフ、確かにですがこれも女神のめぐりあわせでしょう
ですが、彼らこそ光となるかもしれません
動乱の足音が聞こえるこの帝国において
対立を乗り越えられる唯一の光に・・・・」
なんとか1週間以内にできたぞ・・・
うちのリィン君拾われた人違うだけでこうも違うのか・・・