鬼滅の流儀   作:柴猫侍

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玖.紫電一閃

 赦せない―――赦してなるものか。

 腸が煮えくり返る程の怒りを覚える凛は、目の前の鬼・黒縄に肉迫する。紅蓮が宵闇の空を赫々と照らし上げる中、刻一刻と炎が燃え移る家屋の中で紫電が奔った。

 

 氷の呼吸 肆ノ型 搗ち割り

 

 敵の肌が頑強であるのは一合でわかった。

 ならば、頚を囲う守りを崩した後に本命の一撃を叩き込むのが合理的だ。

 守りを崩すために打ち込む場所に狙いを定まっている。後は刃が届くのを見届けるのみ。

 

 しかし、

 

「クヒッ」

「!!」

 

 斬り飛ばされた方とは逆の手で刃を受け止める黒縄。

 凄まじい反応速度だ。今まで相手取ってきたどの鬼よりも速い。

 だが、受け止められたからといって終わりではないと、刃を引かせて次なる一太刀のために身構える凛―――であったが、刃を受け止めていた黒縄の掌が罅割れ、そこから青い炎が迸った。

 

 咄嗟に飛び退きはしたものの、不規則に揺らめく炎を完璧に回避するのは不可能であり、一部の炎が凛の体を掠めた。

 

「ぐっ!」

「あんちゃん!」

「構うな!! 早くお姉さんを連れて逃げろ!」

「ッ……」

「早く!!」

「うっ……わ、わかった!」

 

 凛の身を案じるように声を上げる良樹であったが、構うなと一喝され、苦虫を嚙み潰したような面持ちで姉を引き摺るように逃げていく。

 

「逃がすかよ」

 

 すかさず黒縄が炎を繰り出そうとするが、それを察していたかのように再度肉迫した凛が斬り上げを繰り出し、黒縄の腕を上へとずらす。そのお陰もあり、繰り出された炎は天井を焦がすだけで済んだ。が、一方でとうとう家の中にも火が灯ってしまった。

 鬼を倒すのに長居する訳にもいかなくなった。状況はますます悪化している。

 

(この鬼……強い! それに隊服が……!)

 

 牽制に体から炎を噴出させる黒縄から距離をとる凛は、先ほど炎を喰らった左腕に目を遣る。

 下級の鬼の爪程度ならば防げ、濡れにくく燃えにくい特殊な繊維で作られたはずの隊服が焼け焦げてしまっているではないか。それだけの火力があれば、当然凛の体にも影響が出る訳であり、焦げた隊服の隙間から覗く皮膚は火傷したかのように赤く染まっていた。

 しかし、これだけで済んだのも隊服のお陰であろう。普通の服で喰らえば、火傷どころでは済まなかったはず。隊服様様だ。

 

(でも、これ以上は喰らえない……ただの一撃も!)

 

 想像以上に厳しい戦いを強いられることを悟り、頬に一筋の汗が伝う。

 だが、それがなんだ? この鬼を斬ると誓ったのだ。例え地を這い蹲ってでも頚を斬り落とすことは諦めない。

 

(集中しろ! 神経を最大限に研ぎ澄ませるんだ! 小さな“熱”の動きも見逃すな!)

 

 本来、こうした燃え盛るような暑さ―――否、熱さを凛は苦手とする。彼の突出した温度感覚も正常に機能しないからだ。

 それでも、まったく役立たないという訳でもない。

 限界以上に神経を研ぎ澄ませたのであれば、ほんの僅かな炎の揺らめきをも把握できるはずだ。

 例え敵の得意な戦場で戦うとしても、活路はある。いいや、無ければ作るだけだ。

 

「来ねえのかぁ~~~? なら、こっちから行くぜぇ~……!」

 

 痺れを切らした黒縄が動き出す。

 すでに再生した腕を動かし、体から迸る炎を火の玉へと変化させる。

 

「喰らいなぁぁあああ!!」

 

 血鬼術によって操られる炎。真面に相手取るのは余りにも無謀だ。物理的な攻撃とは違い、炎は斬撃でどうなる攻撃ではない。

 だからこそ、凛は戦場となっている台所でとある食器に目を付けた。

 

「すみません、借ります!!」

 

 氷の呼吸 玖ノ型 銀花繚乱

 

 操られる火の玉を機敏な動きで回避し、大勢の人数分の料理を作る用途の巨大な鍋に手を掛けた凛。

 刀では炎を受け止められるだけの面積が少なすぎるが、この鍋ならば目くらましにはなる。

 

 謝りながら手にとった鍋を、そのまま全力で黒縄目掛けて投擲する。

 目論見通り、放り投げられた鍋は黒縄の炎を浴びても尚原型を留めながら、彼の眼前へと迫った。

 

「こんなもんでよぉ~~……!!」

 

 だが、その鍋も振り下ろされた爪撃により、見るも無残な姿にバラされてしまう。鉄製の鍋をああも容易く引き裂くとは恐ろしい。

 が、その隙に凛は黒縄の懐へと潜り込んでいた。

 肺が焼け付きそうな熱風の中、繰り出す一撃に全てを賭ける意気で刃を振る。

 

「はああああああっ!!!」

 

 氷の呼吸 拾ノ型 紅蓮華

 

「んなぁ……!?」

 

 目にも止まらぬ疾さで繰り出される無数の斬撃が、寸前で盾代わりに突き出された腕を細切れにする。

 これで片腕を不能にした。今が攻め時だ。

 

「おおおおおっ!!!」

「チィ……!!」

 

 機を逃さないと言わんばかりに、気炎が上がらん勢いで吼えながら次々に型を繰り出される。

 垂氷、霰斬り、氷瀑、白魔の吐息―――その怒涛の斬撃には、戦闘開始直後は優勢であったと思われていた黒縄も、炎を出す間もなく守勢に回らざるを得ないほどであった。

 

 もうすぐ、もうすぐだ。

 もう少しで刃が首に届く。

 絶対零度の殺気を込めた視線が見据えるのは鬼の頚。振り抜かれる刃もまた、そこに狙いを澄ましていた。

 

 これには黒縄も焦燥を面に浮かべる。

 

「やられるッ……俺がぁ……!?」

「でやぁぁぁあ!!!」

「―――なぁ~んてなぁ」

「ッ!!?」

 

 振り抜かれた刃が頚を捕える―――が、一向に刃は鬼の頚を斬り飛ばすに至らない。

 白銀の刀身は、黒縄の冷えて一層黒みを増した肌に少しばかり食い込むだけだった。

 

(さっきより、硬く……!!?)

 

 明らかに初撃と感触が違う。

 不味い。そう直感した瞬間に身を引いた凛と時を同じくし、黒縄の体から蒼炎が爆ぜた。

 

「づッ、ぐぁああ!!」

 

 今度は右脚に直撃した。

 着地した瞬間、鋭い痛みに遅れてジクジクと鈍い痛みが襲い掛り、凛の額からは脂汗が滲む。

 そんな彼の様子を大層ご満悦に見つめる黒縄は、嘲るように口を開いた。

 

「クヒヒッ!! まさかよぉ~~~、俺のこと殺れると思ったかぁ? ほんのちょっとでもよぉ~~~。めでてぇ頭してやがるなぁ~~~。そりゃあ今まで順風満帆な人生送って来たんだろうなぁ~、自分に思い通りに事が運んでたんだろうなぁ~~~……!」

「ッ……!」

「幸せだったろうになぁ~~~……妬ましい、妬ましいなぁ。そんでもって嗤えるなぁ。俺ぁ他人の絶望した顔見てると胸がすくんだよぉ~~~! もっと見せろよなぁ、お前の顔をよぉ~~~……!!」

 

―――ケタケタ、ケタケタ。

 

 脚に一撃を加え、より鬼狩りを仕留めやすくなったと断じた黒縄は、慢心上等と言わんばかりに凛に見下すような視線を送る。

 

「さぁ、どうするよぉ? まぁ~だ続けるかぁ?」

「当たり……前だ!!」

「……ケッ。まぁだ俺に勝てると思った目ぇしてやがる。今まで失敗したことなんかねえんだろうなぁ~。だぁから意地張ろうとしやがる……教えてやろうかぁ~~~? そういう奴は―――馬鹿だって言うんだぜぇええぇぇええぇ!!!」

 

 吼える黒縄が繰り出す炎は、獣のような形となった後、今度はそれが円の形に丸まってから凛へと襲い掛かった。

 

 血鬼術・狐炎火車(こえんかしゃ)

 

 火の粉をまき散らしながら突進する火炎に、凛は脚の痛みを我慢して踏み込む。

 

 氷の呼吸 玖ノ型 銀花繚乱

 

 直線的な動きであっても緩急をつければ攪乱することはできる。

 脚を庇いつつも最小限の動きで乱舞する火炎の車を捌く凛は、肌が焼け焦げそうな熱を浴びつつも、必死に攻撃を躱し続けた。

 しかし、燃え盛る家屋の中では刻一刻と全集中の呼吸のために必要な空気が足りなくなってくる。脚の痛みも相まってか、次第に凛の動きは遅くなっていた。このままでは黒縄の血鬼術を喰らうのも時間の問題だ。

 

(くっ……どうして斬れなかったんだ!? 何が違った!? 何が……!)

 

 凛は攻撃を掻い潜る合間にも、黒縄の体から放たれる“熱”を感じ取り、活路を見出そうとする。斬れた時と斬れなかった時―――それらの違いこそが、黒縄を倒すための唯一の突破口だ。

 

(見つけろ! 諦めるな! 今が正念場なんだ! 奴が油断している間に……)

 

「クヒヒッ! 足が遅くなってるなぁ~……!」

「くっ!?」

 

 必死に思考を巡らせていた時、不意にとびかかって来た黒縄が腕を振り下す。

 その爪撃を寸でのところで受け止めた凛であったが、その際に日輪刀を盾代わりにするべく、弾かれぬよう刀身に添えた左手に灼熱が奔った。

 

「熱ッ!? ―――!」

 

 刹那、何かを閃いたかのように凛が目を見開いた。

 そしてねめつけるような視線を黒縄に向け、確信する。

 

 赤熱に染まる上半身。反面、僅かに覗く下半身の肌は暫く放置してひび割れた墨のようだ。

 

(なるほど! そういう訳か……!)

 

 合点がいった。そして突破口を垣間見た。

 しかし、見つけた突破口は余りにも厳しい道である。

 

(相打ち覚悟で攻め込むか? いいや、それじゃあ仕留められなかった時はどうするんだ!? 無謀に突っ込むのは悪手だ……)

 

 自分が行おうとしている案を再考する合間、自分の掌に目を落とす。

 

(血を……鬼を凍らせる血を使おうか? いや、ダメだ! 僕は鬼じゃない……血にも限りがある。そう易々と流していたらあっという間に戦えなくなるぞ!)

 

 人間である以上、体に必要不可欠な血液。凛の特異な体質により、鬼に触れれば瞬く間に触れた部分を凍らせる強力な血液となっているが、無尽蔵に再生できる鬼とは違い、不用心に流せば失血死してしまうのは目に見えている。

 

(―――()()()を使おうか? でも、水の呼吸を使えない僕じゃあ……!)

 

 可能性の一つが脳裏を過る。

 しかし、その可能性は命を賭けるには余りにも博打染みたものだった。

 

(やるしか……ないのか!?)

 

 燃える家屋がパチパチと音を立てている。空気が失われていく他にも、そろそろ倒壊する可能性も視野に入れなければならない。

 残酷にも時間は止まってはくれず、平等に流れるだけ。

 凛にできることと言えば、その激流の中で最大限抗うことのみ。

 

(好機は一瞬……決めるしかない。氷の呼吸、()()()を―――!!)

 

 育手の下では会得できなかった、氷の呼吸にとって黎明の型とも言える御業。

 それしか、黒縄が露わにする一瞬の隙を突くことができない。

 

(炎が灯って体表が柔らかくなった瞬間を―――絶つ!!)

 

 冷えて頑強になる肌。しかし、攻撃時にだけその肌は凛が絶ち斬れる程度に柔らかくなる。その一瞬しか、鬼の頚を斬ることはできない。

 

 いざ、勝負を仕掛けよう―――とした瞬間、突風が吹き抜ける音が奏でられた。

 

 

 

 風の呼吸 壱ノ型 塵旋風(じんせんぷう)()

 

 

 

 黒縄の背後から繰り出される形で吶喊する人影。

 それに気が付いた黒縄が咄嗟に振り向き反撃しようとしたが、

 

 

 

 炎の呼吸 壱ノ型 不知火

 

 

 

 また別方向から現れた人影が、先の人影と黒縄を挟み撃ちにする形で斬撃を繰り出さんとしているではないか。

 

「チィ……!!」

「!」

「む!? 不味い!」

 

 多方向からの襲撃に分が悪いと考えた黒縄が、全身から炎を噴出させる。

 さながら荼毘の如く黒縄の体を覆った蒼炎。それらに近づけば身を焼かれると察した二人は、攻撃を中断して飛びのいたが、

 

「そこ」

 

 天井へ飛び退いたつむじが、屋根裏に刀を突きさしぶら下がるという猿の如き芸当で機を見計らい、炎が止んだ瞬間を狙って飛び降りた。

 

 風の呼吸 伍ノ型 木枯らし颪

 

 屋根裏を足蹴にしたにも拘わらず、地上同然の踏み込みで上段からの斬り下ろしが黒縄へと襲い掛かる。

 だが、黒縄は不敵な笑みを浮かべていた。

 

「飛んで火にいるなんとやら……!!」

「!」

 

 つむじの振り下ろす刃がまだ黒縄に届く直前、彼の体は赤く明滅していた。炎の噴出の予備動作だ。このままいけば確かに彼女の刃は届くかもしれない。しかし、それ以上に手痛い反撃を喰らうことになろう。

 瞬く間に黒縄の周囲が熱くなるのを感じ取ったつむじは目を見開く。彼女が居るのは宙。そこから大きく移動するのは不可能な話だ。

 

「こんがり焼いてやるよ……女ぁぁぁああぁぁああ!!」

「―――仕方ない」

「訳、あるかあああああ!!!」

「う゛っ!?」

 

 半ば諦めて渾身の力を刀身に込めたつむじであったが、炎が爆ぜる直前、彼女目掛けて飛び込んだ人物が、黒縄の解き放つ業火から救ってみせた。

 結果的に両者の攻撃は不発。

 間一髪で炎から逃れられたつむじはと言えば、自分を窮地から救った人間に対し不満げな視線を投げかける。

 

「……重い。退いて」

「な、な、な!? 助けたのになんたる口の利き方……!」

 

 つむじを救ったのは、誰よりも彼女のことを嫌う燎太郎であった。

 しかし、その甲斐なく不満を口にされ、燎太郎の怒りは頂点に達そうとしている。

 

「クソッ! つい体が勝手に動いてしまったのが悔やまれる……!!」

「……ねえ」

「なんだ!? 手短に済ませろ!」

「頼まれてもないのになんで助けたの?」

 

 立ち上がり日輪刀を構えるつむじは、葛藤に苛まれる燎太郎へ問う。

 その内容に一瞬呆気にとられたものの、燎太郎はすぐさま神妙な面持ちを浮かべて応えた。

 

「……例えどのような悪人だとしても、人間ならば鬼の手から俺は助ける!! 鬼は滅する!! 人は救う!! それが……俺の流儀だ!!」

 

 燃え盛る炎にも負けぬ紅蓮に染まる刀身を掲げる燎太郎。

 眼前の鬼やつむじの気に入らない態度に対する憤りの他にも、何かに苦悩しているかのように眉間に皺を刻んでいる彼であったが、その苦悩を振り払わんために声を張り上げた。

 

 そんな彼に「……そう」と一拍置いたつむじは、思い出したかのように燎太郎へと振り向いた。

 今まで視線も合わそうとしなかった女が一体何事か? そう考えた燎太郎に、つむじは告げる。

 

「……助けてくれてありがとう……?」

「!!」

 

 刹那、雷に打たれたかのような衝撃が燎太郎に襲い掛かった。そして、

 

「―――済まなかった!! 俺が言い過ぎた!! 悔い改める!!」

「???」

「俺が間違っていたな、つむじ!! お前が許してくれるならば同じ鬼狩りとして手を取り合おう!!」

「……変なの」

 

 一度も感謝を伝える姿を見せなかった少女が、この場に来て初めて感謝を告げた。

 その衝撃と感動を前に、燎太郎はすぐさま自分が彼女に覚えていた嫌悪感を一切合切捨て去り、反省し、謝罪した。この間僅か数秒。余りにも速い態度の変化に、つむじも変なものを見る目で彼をねめつける。

 

 が、忘れてはいないだろうか? ここが猛火迸る戦場だということを。

 漫才のようなやり取りを見せていた二人に向け、凄まじい火勢の炎が襲い掛かる。これには二人も即座に対応し、回避してみせた。

 

「おのれ、悪鬼め!! 俺達の和解を邪魔して!!」

「なんでもいい。邪魔でもなんでも鬼は斬るから」

 

 任務から帰って来た二人も合流し、これで三対一。数では凛達が優勢だが、

 

「かぁ~~~……虫けらが何匹増えてもなぁ~あ~~~……!!?」

 

 不快を露わにする黒縄が焦った様子を見せる気配はない。

 

「―――焦げた死体が増えるだけだよなぁあぁぁああああぁぁああ!!!」

「つむじ! 燎太郎! 避けるんだ!!」

「ん!」

「言われなくとも!」

 

 今日一番の苛烈な勢いで、黒縄が全身から炎を解き放つ。

 数が増え、いちいち相手どるのが面倒になったためか、炎は家屋を一気に燃やし尽くさんとする勢いでのたうち回る。

 

「不味いぞ! このままじゃあっという間に家が焼けてなくなる!!」

「なら、いっそのこと壊す」

「つむじ!?」

 

 反撃さえままならない猛攻を掻い潜り―――否、喰らっても尚突き進むつむじは、天井目掛けて跳躍したではないか。

 すでに表面が焼けて炭化し始めている柱や梁。

 間もなく支える役目を失うそれらに対し、つむじはなんとトドメを刺さんばかりに斬撃を繰り出した。

 

 軸材は呆気なく斬り落とされ、続けざまに炎とは違う轟音が室内に響きわたり始めた。

 すると、つむじはあろうことか自分が斬り落とした軸材を足場に跳梁し始めたではないか。

 足蹴にした軸材は黒縄目掛けて吹き飛ぶ。加えて、つむじ自身は彼を攪乱するために屋内の天井や壁への着地、そして跳躍を繰り返す。

 重力がないのか、はたまた天地がひっくり返ったかと錯覚するような動き。並み大抵の平衡感覚がなければ、この動きを再現することは不可能だ。

 

(この女……早ぇなぁ~~~……!!)

 

 今のままでは炎の壁も強引に破られかねない。先のつむじの行動を見る限り、自分の身を省みず吶喊してくることも視野に入れた黒縄は、さらに火勢を強めようと踏ん張ったが、

 

(刀!?)

 

 たった今形勢した炎の壁を貫くように日輪刀が飛来し、黒縄の右目に突き刺さった。

 

「チッ……でも刀手放しゃあよぉ~~~―――ぎぃっ!?」

 

 女に武器はない―――そう言おうとした黒縄であったが、今度はつむじが飛び蹴りの姿勢で炎の壁を突き破り、そのまま黒縄に突き立てられた日輪刀の柄を蹴って見せたではないか。

 眼孔を貫く鮮烈な痛みに、堪らず悲鳴が漏れる。

 一方つむじはと言えば、自ら炎に吶喊に身を焼かれる痛みに襲われながらも涼しい顔で「あ……狙い間違えた」と口走る。

 彼女としては日輪刀を貫かせることが目的ではなかったようだが、結果的に大きな隙は生まれた。

 そこへ跳びかかるのは燎太郎と凛の二人だ。

 特に燎太郎は、火勢を少しでも衰えさせようと畳を返し、盾代わりにするようにそのまま黒縄に投げつけた。視界を遮りつつ、火勢も衰えさせる。場にある物を最大限に生かした案であった。

 

(つむじが身を挺して生み出した隙……必ずや仕留める!!!)

 

 仲間が傷つきながら作った好機とだけあって、燎太郎の意気はこれ以上なく高まっている。

 最大の好機には最大の技を―――。

 

 炎の呼吸 玖ノ型 煉獄

 

 畳ごと黒縄を両断せんとする燎太郎。

 しかし、凛の視点からは彼が仕留めようとする黒縄に異変が起こっているのが目に映っていた。

 

(なんだ、あれは……!? 奴の肘辺りの火勢が強まって……!!)

 

 直後、爆音が轟いた。

 

 

 

 血鬼術・岸火(がんか)(かいな)

 

 

 

 肘で爆ぜた炎の勢いで繰り出された拳が、畳ごとその後ろで構えていた燎太郎を吹き飛ばす。

 

「が、はぁっ!!?」

「燎太郎ぉ!! くっ……!!」

「次はぁ~……お前だぁああぁあああ!!!」

 

 今度は逆の腕の肘に火が灯る。

 来る。あの超速の拳撃が。

 燎太郎は畳を挟んだからまだ無事で済むかもしれないが、阻むものがない凛が喰らえば、頭部など肉片と化すだろう。

 避けるしか―――否、迎え撃つより生き残る道はない。

 

(集中だ。集中しろ。一瞬を……最後の好機を見逃すな!!)

 

 迎え撃たんと日輪刀を構え、全神経を研ぎ澄ませる。

 それでいて不必要な情報は全て捨てた。痛みや周囲の景色―――敵の攻撃を避けるに当たって必要でない情報だ。

 

 凛は深く息を吸い込み、微動だにしなくなった。

 不動の構えに黒縄は怪訝そうに眉を顰めたものの、動かないならば仕留めやすい―――たとえ動くのだとしても問題なく殺せると踏み、一直線に駆け寄って来る。

 

限限(ぎりぎり)まで……限限まで引きつけろ。不動こそが“氷”の教え……)

 

 その間、凛は育手に教えられた氷の呼吸の極意を思い出していた。

 流動する水に対し、不動である氷。“動”と“静”の関係にある派生前の呼吸と派生後の呼吸であるが、なにも突然氷の呼吸へと変化した訳ではない。

 水が氷へと凝固する間にも、水と氷―――“動”と“静”が双方存在する瞬間がある。

 

 氷の呼吸・零ノ型は、まさしくその刹那を反映したような型だ。

 氷の頑強な不動と水の変幻自在な流動を表した零ノ型は、氷の呼吸と銘打っているものの、水の呼吸をも扱えなければ扱うのは難しい。

 はじめは凛も使うことができなかった型であるが、常中を会得し、なおかつ水柱たる流に僅かながら指南を受けたことにより、以前よりも「できる」という自信が彼の中に湧き上がっていた。

 

 彼との約束も思い出しつつ、最後の仕上げに刀身に己の血で血化粧を施す。

 これで最悪仕留められなくとも、二人に繋げられるはずだろう―――そう考える一方で、やられる気は皆無であった。

 

(―――決める!!!)

 

 世界が―――止まったように見えた。

 黒縄が何か吼えているようにも見えたが、聞くに値しない言葉であるため、頭が言葉を理解する前に不必要と処理をした。

 一方で、唯一動いている拳が顔面目掛けて迫ってきているのを前にし、明鏡止水が如く不動であった凛が、波打つ波紋のように動きだす。

 

 神速の一閃が、今、

 

 

 

 

 

 全集中・氷の呼吸 零ノ型

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――零閃(ゼロせん)

 

 

 

 

 

 振り抜かれた。

 

「っ……()ぇなぁ……!?」

 

 瞠目する黒縄。

 

(斬られただと!? 斬られたのか、俺ぁ……!?)

 

 頚の後ろ側に凍てつくような痛みが奔る。

 

(み、見えなかった……! いや、それよりもだぁ! あいつはどうやって俺を斬ったんだぁ~!?)

 

 初めに、拳が刃に触れあうような感触があった。が、手応えは一瞬だけ。あとは暖簾を押したかのように拳は虚空を貫いた。

 それで体勢を崩したからか、やや前のめりにはなったが―――その次の瞬間だった。頚に痛みが奔った。

 

(受け流されて後ろから斬られた……だとぉ!?)

 

 それ以外考えられない。

 当人の目からすれば頚を一閃されたのはほんの刹那に等しかったのだから。

 

 だが、焦燥に目を見開いていた黒縄の前に、血塗れの折れた刀身が甲高い音を立てて落ちて来たではないか。

 咄嗟に頚に手を当てる。

 が、どうやら半分ほど斬られただけ。頚は繋がっていたようだ。

 

―――こいつ……しくじりやがったな……!

 

 堪えられぬ下卑た笑みを湛える黒縄は振り返る。

 そこには、刀を振り抜いた姿勢のまま固まる凛が立っていた。やはり、彼の持っている日輪刀は刀身が折れてなくなっている。先ほど落ちて来た刀身が折れたものであるのは間違いない。

 恐らく、頚の半分ほどに斬ったところで、斬撃に刀身が耐えられなくなって折れたのだろう。

 

「クヒッ、ヒヒヒィ!! やぁ~~~っぱり全部……てめぇの思い通りになんかならねえんだよなぁああぁぁああぁ!!!」

 

 刀折れ矢尽きた人間を殺すなど造作もない。

 最大火力で眼前の人間を焼き殺そうと、全身から炎を迸らせた―――その瞬間だった。

 

―――ビキッ。

 

「……はっ?」

 

 頚に違和感が奔る。

 思わず動きが止まった黒縄であったが、彼が止まっても尚、刃に付着していた凛の血液により凍結していた刀傷が、みるみる内に罅を蜘蛛の巣のように広げていく。

 このままでは―――頚が砕け落ちる。

 

「な……なんでだぁああぁぁあああ!!? こ、こいつはぁ~~~……っ!?」

 

 必死に凍結した部位を解凍しようと火勢を強める黒縄であったが、状況は好転するどころか、寧ろ悪化していくように頚の罅が広がる。

 物体にもよるが、低温の物体を急激に熱した場合、冷えて収縮している部分と熱されて膨張した部分のつり合いがとれず、破損する場合がある。此度、黒縄の頚に生じていた異変は、まさしくその現象であった。

 

 そして、もう一つ黒縄にとって―――凛自身にも言えるが―――誤算だったのが、凛の血によって生じた凍結が熱によって溶かされるものではないということだ。

 つまり、黒縄は自分で自分の身を追い詰めるような行為に出ていた。

 己を地獄へと叩き落す行為。自業自得とは言え、血相を変えて慌てふためく姿は、惨めであり滑稽でもあった。

 

 そして、それを鬼狩りが見逃すはずがない。

 

「おおおおお!!」

 

 雄叫びを上げて突進する凛。刀身の折れた日輪刀で何をするかと思えば、彼は腰に差していた鞘を手に取って、黒縄の眼孔を貫いているつむじの日輪刀を正確に突いた。

 注意が逸れていた黒縄はまんまと鞘による刺突を喰らい、とうとう眼孔に留まらず頭蓋骨をも貫かれ、さらには貫いた日輪刀が彼の頭部を背後に佇んでいた壁に張り付けた。

 

 その間も炎が凛の身を焦がすが、この程度の熱さや痛み―――黒縄に覚えた憤怒に比べれば温いものだ。

 証拠に、折れた日輪刀を掲げたかと思えば、炎の壁に腕を突っ込み、もう片方の黒縄の眼孔に無理やり刃を突き立てたではないか。

 

 垂氷と同じ要領で手首を捩っての一撃。眼球をかき混ぜられるような痛みと共に、まだ刀身に残っていた凛の血液が、黒縄の眼球の再生を阻害する。

 ここまで捨て身の攻撃に打って出たのは、やっとの思いで作った隙を逃さないのもあるが、それ以上に()()()()であった。

 

(零閃は未完成でトドメはさせなかった!! それはそれで仕舞いだ!! 繋ぐんだ!! 千載一遇の好機を……諦めるな!! 繋ぐんだ!! だってここには―――)

 

「グ、ゾがぁ」

「がはっ!」

 

 業を煮やした黒縄に腹部を蹴られて吹き飛ばされる凛は、血反吐を吐いて床に転がる。

 だが、倒れる凛の瞳には絶望など欠片も映っていない。

 移るのはただ一つ。希望の光芒だった。

 

(仲間が……居る!!!)

 

「つむじッ……受け取れぇ!!!」

 

 畳の下から這い出て来る血と煤で汚れた燎太郎が、自身の命とも言える日輪刀を、手持ち無沙汰になっているつむじに放り投げた。

 その日輪刀を難なく受け取ったつむじは、全身から業火を放っている黒縄に肉迫する。

 炎などお構いなしだ。自身の身を焼かれようとも突き進んでいた彼女は、とうとう刃が届く距離まで詰め寄った。

 

 そこまで迫られようやくつむじに意識が向いた黒縄は、頚の異変を後にして、つむじを仕留めんと腕を振るった。肘からはまたもや爆炎が爆ぜようとする。一撃で首を取ろうとしているらしい。

 

「死゛にッ、晒せぇえぇぇえぇぇえええ!!!」

 

 気道からあふれ出る血を吐き出しながら咆哮する黒縄が、満を持して拳を振るった。

 すると、つむじは天井から崩れ落ちてきた軸材を足場に宙返りし、あろうことか岸火の腕を避けてみせたではないか。

 

「それは……」

 

 その芸当に目が点になる黒縄。

 

「こっちの台詞」

 

 刹那、紅蓮の視界の中に紫電が駆け抜ける。

 

 

 

 風の呼吸 漆ノ型 勁風・天狗風

 

 

 

 業火を旋風が絶ち斬った。

 

「は、あ゛ッ……!?」

 

 グラリと天地がひっくり返る。否、黒縄の頚が斬り落とされ、床に転がり落ちたのだ。

 

「あ゛……あぁぁああぁぁあぁぁああ~~~!!? 巫山戯るなぁあああぁああ!!! お、俺がぁあ~~~!! 俺がこんな虫けらなんかにぃぃいいぃいいぃい~~~……!!」

 

 断末魔を上げる黒縄であるが、彼を斬った当人であるつむじはその声に耳を貸さず、その場から立ち去ろうとする。

 その無関心な姿が癇に障ったのか、黒縄は額に青筋を浮かべて騒ぎ立てる。

 

「待てぇ~~~!! 待てぇ、鬼狩り共ぉ……!! 待ちやがれぇええぇぇええ~~~……!!」

「待たない。帰る。だって……」

 

 振り向かず、天井を指さすつむじ。

 

「もう、崩れてきてるから」

「は―――?」

 

 突如、轟音と共に瓦解する天井の瓦礫が黒縄の体ごと、彼を生き埋めにしたではないか。

 程なくして死ぬとは言え、燃え盛る瓦礫に埋もれるというのはどのような気分なのであろうか?

 立ち上がった凛は、眩暈のせいでふらつきながらもその瓦礫に目を遣った。

 

(あそこまで他人の幸福に嫉妬して……鬼になる前は―――)

 

 それとなく黒縄の過去を想像する。

 今となっては正解も分からないが、怒りも冷めた心の内にほんの少し哀れみが浮かび上がって来た。

 

(せめて来世は幸せになれるように……)

 

「ねえ」

「ん?」

「逃げなきゃ焼け死ぬ」

「あっ……!」

 

 少しばかり心ここに在らずといった様子だった凛であったが、つむじの一声で我に返る。

 最早一刻の猶予もないほど炎は広がっている。早々に立ち去らなければ、自分達も鬼の二の舞になってしまうだろう。

 

「そうだね。早く逃げなきゃ……!」

「おぉ~い!! 俺を見捨てないでくれ!!」

「あ……燎太郎!?」

「骨が折れたようでな……手を貸してくれッ……!」

「待ってて! つむじも手を貸して!」

「美味しいもの奢ってくれる?」

「こんな時まで!? あとで考えるから、ほら早く!」

「ん」

 

 最後の最後まで忙しい三人組は、なんとか焼け落ちる家からの脱出に成功した。

 浅くない傷を負い、守るべき家も焼かれてはしたものの―――そこに住まう人々は誰一人として犠牲にはならなかった。

 

 やがて、藤の家紋の家を襲撃する鬼の討伐報告は、鎹鴉伝手に鬼殺隊に伝えられるのであった……。

 

 

 

 ***

 

 

 

 後日、蝶屋敷にて。

 

「はい、氷室くん。消毒しますからね~」

「お、お手柔らかに……ひぎッ!?」

「男の子なんですから我慢してください」

「そうは言っても……あぎゃあ!?」

 

 病室でしのぶに火傷の手当てを受ける凛は、柄にもなく情けない悲鳴を上げつつ身悶えていた。鬼との戦闘で負った火傷は軽いものではない。しっかりと消毒し、感染症を防がなければならないのだが、

 

「くひぃ~~~……!!」

「氷室くん、消毒液はまだまだいっぱいありますからね。頑張ってください」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

 まるで地獄だ。

 治療を後に控えている他の面々も、彼がもだえ苦しむさまを見て、若干顔が青ざめている。

 

 時間的にはものの数分であったが、当人にしてみれば悠久の時かと錯覚するほどの消毒を終え、新しい包帯も巻かれた凛は、息も絶え絶えとなって布団の上でぐったりと横になっている。

 

「ひ、ひぃ……ひぃ……!」

「はぁ……久しぶりに帰って来たと思ったら、随分とこっぴどくやられてしまったようですね」

「め、面目ないです……」

「……まあ、カナエ姉さんも生きて帰ってくれるだけで十分と言ってましたから、このくらいで許してあげますよ」

「はい……って、え? ゆ、許し? え? しのぶさん、もしかして何か……」

「は~い、消毒の痛みもあっという間に引いちゃうおまじないの言葉をかけてあげますね~! 痛いの痛いの飛んでけ~」

「は、はは、は……」

 

 最早笑う気力さえ残っていない凛は横になる。

 そんな凛に聞こえない声量で「人の気も知らないで……まったく」と鼻を鳴らしたしのぶは、同じく火傷を負った他二名へと目を向けたが、

 

「東雲さん? そのお饅頭はどこから持ってきたんです?」

「部屋」

「へぇ~、部屋。どこの部屋ですか?」

「厠の帰りに見つけた部屋」

「ふ~ん……勝手に他人の部屋からお茶請けを盗んでこないでくれませんか? し の の め、さん?」

「ん」

 

 余りの威圧感に怯え竦むつむじは、素直に盗って来た茶請けの饅頭をしのぶに返す。

 しかし、八割がた食い尽くされた茶請けに饅頭はほとんど残っていなかった。

 

「まったく……誰が買って来ると思って……!」

「しのぶ」

「ん?」

「お腹空いた」

「東雲さん。さっきお昼食べたばかりでしょう?」

「ん」

 

 まだ食おうとするつむじをねめつけるしのぶ。彼女の大食ぶりにはほとほと呆れてしまう。

 と、不意に隣のベッドが軋む音が聞こえて来たので視線を向ければ、

 

「何しているんですか、明松くん」

「なに! とは! 見ての! 通り! 腕立て伏せ! だ!」

「腕立て伏せ」

「鬼に! 遅れを! とり! 負傷! とは! 俺の! 未熟め! 未熟め!」

「なるほど……鬼に手痛い目に遭わされた自分の未熟さを戒めているんですか。感心感心。ところで、ベッドが腕立て伏せする場所じゃないことは知っていますか? ねぇ?」

「す、済まない! 今すぐやめるからその手で掲げる茶請けの器を下ろしてくれ!!」

 

 場違いな熱血を発揮する燎太郎を餡子塗れにせずに済んだようだ。

 そんな個性豊かな面々を相手にし、しのぶはお疲れの様子。

 

「ほんと、貴方達と居ると退屈しませんね……」

「ありがとう?」

「……まあ、それはさておき」

 

 つむじのちぐはぐな感謝の言葉を受け流し、しのぶは胸のポケットから一枚の紙きれを取り出した。

 

「貴方達に先日の家の方々から手紙が届いていましたよ」

「え?」

「ええ。はい、氷室くん」

「わっとっと!」

 

 しのぶから手紙を受け取り、手紙を広げる凛。

 家が全焼し、家財の大部分を失ってしまった良樹の家であるが、新たな住居については鬼殺隊当主・産屋敷の便宜により、工面されたようだ。

 彼等もまた、思い出深い場所を焼き尽くされて少なくない傷を負っているはずだが―――恨み節でも書かれていたらどうしようかと、半分冗談気味に手紙を開く。

 

 そこには決して美麗ではないにしても、精一杯丁寧に書かれたと思しき文字が連なっていた。書き綴ったのは、恐らく良樹だろう。

 

 綴られていた内容は―――。

 

「……」

「おい、凛。何が書かれているんだ?」

「ふふっ。さて、何が書いてあると思う?」

「何をもったいぶった言い方を! ええい、まどろっこしい! その手紙をよこせ!」

「ダメだよ、まだ途中なんだから!」

 

「二人とも。病室では、し ず か に、してくださいね」

 

「「はい」」

 

「……すぴー……すかー……」

 

 しのぶに窘められる二人の一方で、腹が満たされて沸き上がる眠気のままに昼寝に入るつむじ。

 

 凸凹な三人組により果たされた鬼退治。

 彼等によって鬼から救われた人々もまた、前を向いて歩き始めていることを示唆するように、藤の花は穏やかに風に揺れていた。

 




*参章 完*

*オマケ*
凛・燎太郎・つむじのデフォルメ立ち絵

【挿絵表示】

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