香風に部屋まで案内してもらった。
部屋を見渡すと、当たり前だが物は自分のしかなく、殺風景だった。
まぁ、これから荷物は届くから関係ないが。
それよりも、さっき香風に、物を置いたら来いと言われたから、さっさといくか。
~
「父が帰ってくるまで、時間があるので、バイトのことについて説明します」
説明が一通り終わり、早速働くことになった。
「香風さん。俺の制服って」
「ちゃんとありますよ。あと、別に歳下ですし敬語はいいです。」
「ん、そうか。わかった」
敬語なしと言われたから、素で話すことにした。
だがなぁ、一応、歳下でも先輩だしなぁ。
そう悩んだが、別にいっか、という俺特有の解決の仕方で、悩みは終わりを告げた。
「良いと思いますよ」
制服を着たらそう言われた。
お世辞だと思ったが、ありがたく聞いておいた。
「俺的には、そんな似合ってないと思うがな」
だけども残念ながら口に出てしまった。
まぁ別にどうでもいいけど。
…
しばらく喋らない時間が続いた。
そこで、扉があいて人が入ってきた。
「いらっしゃいませ」
俺が接客することになった。
「君は新しいバイトの人かな」
「はい。今日からここで働かせて貰うことになりました、平毅です」
「そう、これから頑張って。それじゃあキリマンジャロをください」
「了解しました」
随分と優しく接してくれたな。
「香風、キリマンジャロを頼む」
「分かりました。あの…」
「なんだね」
「名字で言われるのは慣れて無いので、名前で呼んでくれませんか」
仕事の途中で言われたため、反応が遅れてしまった。
だが、特になにも思わず、名前で呼ぶことにした。チノって、二文字だけだから呼びやすいしな。
「わかった」
そんなこんなで夕方になり、店の看板をひっくり返し、中に戻ると、智乃の父親、タカヒロさんがいた。驚いたが、挨拶をしないといけないため、近づいて話しかけた。
「はじめまして、今日からお世話になる、平毅翔岩です。よろしくお願いします、タカヒロさん」
「はじめまして、君のことはお父さんから聞いているよ。今日からよろしく」
タカヒロさんは随分と優しかった。
それはもう、俺が驚くほどに。
飯の時間。ご飯を食べ終わると、タカヒロさんはティッピーを連れて、店まで行ってしまった。
ちなみに、ティッピーとは、このラビットハウスの看板兎らしい。今まで触れて来なかったのだが、特に理由はない。
「なんでタカヒロさんは、店の方に行ったんだ」
「ラビットハウスは夜になるとバーに変わるんです。父はそこのオーナーをやっているんです」
「へぇ」
そうなんだー、と思いながら飯を食べ終わった。
いやぁ、実に美味しい。
「ごちそうさま。飯、美味かった」
「ありがとうございます」
「片付けは俺がやるわ」
「いえ、大丈夫ですよ」
「いや、やらせてくれ、流石になんにもしないだと、申し訳ないから」
「…分かりました」
やっぱり、なにもしないは駄目だからな。うん。