ONE PIECE-彼を王に-   作:完全怠惰宣言

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STAMPEDEをやっと見れた勢いと、エースを王にしたいという欲望をエネルギーに描いた作品です。
こちらでは他作品のキャラクターは出さずに、なおかつ時系列的に仲間にできそうな奴らを引っ張り込んでいく所存です。
よろしくお願いします。


Rを継ぐ者/その男、風使い

オレの名はフェンシルバード・レイズ。

ある日気が付くとオレはキャンピングカーのような船の上にいた。

そして、激しい頭痛に襲われ”この世界”と自分という存在を正確に認識することになった。

オレの素性は「海賊王の右腕」と呼ばれた「”冥王”シルバーズ・レイリー」を叔父に持つ賞金稼ぎだ。

そして、俗にいう”転生”し”渡界”した存在でもある。

転生したからと言ってルフィの仲間になろうとは思わなかった。

絶対に苦労するから。

じゃあ、ナミたちを助けようとしたのか。

気が付いたら既に18歳だったから無理だ。

かといって海軍に入ろうとは思わなかった。

上下関係と世界貴族(バカ)の相手が嫌だった。

そうして、この世界に来て5年。気が付いたら異名持ちの賞金稼ぎとなっていた。

 

風迅(ふうじん)のレイズ”

 

東の海(イーストブルー)において、この名を知らぬ者はいないとされるほどに有名になったオレを倒して名を上げようとする小物海賊を捕縛しては海軍に引き渡し、中級海賊団を潰しては海軍に引き渡し、そんな生活を繰り返していたある日だった。

 

時は昼時。

 

前世今世において一人暮らしが長かったせいか料理は得意な料理男子なオレはつい先日、顔馴染みとなった“煙中佐”から懸賞金をもらい、その足で買った「霜降りマグロ」で優雅に昼飯をしようと刺身にして飯の準備をしていた。

前世が日本人なためか、米が好きなオレは味噌汁も作り、冷蔵庫に作り置きしていた沢庵を切り出し、朝に釣った白身の魚も添えて豪勢な昼飯を始めようとしたその時だった。

ふと目線を上にあげると口から唾液を滝のように流した青年がこちらを見ていたのであった。

ずぶ濡れな上に腹から獣の唸り声のような音を響かせる青年を見て思わず聞いてしまった。

 

「一緒に食べます?」

 

 

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「ふぃ~、食った食った」

 

刺身定食もどきだけでなく冷蔵庫の中身も粗方食い漁った青年は笑顔を浮かべて船内に置いてあるソファーに寝そべっていた。

 

「そりゃ、人様の1週間分の食料食い漁れば満足するだろうよ」

 

そう、食後のお茶を飲みながら目の前の馬鹿に視線を送る。

 

「いや、すまない。乗ってた船が転覆しちまってよ。なんとか泳いでこの島まで来たのはいいが財布まで流されちまったようで」

 

“オレンジのテンガロンハット”を被りなおした青年は身なりを整えると改めてオレに向かい合った。

 

「いやいや、食後のお茶まで申し訳ない。それにしてもいい船だな、あんたどこかの金持ちか」

「だぁほ、賞金稼ぎだよ。そろそろ、身の振り方を考えようとしてる最中のな」

「“賞金稼ぎ”か」

「あぁ、父親は元々知らねえし、母親はオレを生んで病死した。つい最近まで婆ちゃんが育ててくれたけど婆ちゃんもこの間旅立っちまった。

 この船は、婆ちゃんの遺産だ」

 

そう言って、本を取り出し茶をすするオレをどこか同類を見るような目で見てくる青年。

 

「悪かったな、言いたくないこと言わせて」

 

そう言ってテンガロンハットを顔を隠すように傾ける青年。

先ほどから目の前の青年をどこかで見たことがあるようなそんな気がしてならないのだが。

そこからしばらく互いにお茶を啜る音と波の音以外は消えていた。

 

 

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目の前の男を注意深く観察する。

出生が出生なだけに”他人”を観察する”癖”が出来ちまったオレは飯を“奢ってくれた”目の前の男を注意深く観察している。

白銀を思わせる肩まで伸ばした髪。

猛禽類を連想させる青い瞳。

獰猛に思われる外見とは裏腹に、会って間もない自分に飯を“奢ってくれる”人情味を持っている。

そんな男の家族関係を図らずも知ってしまい、気まずい空気の中茶を啜っている。

すると、外から怒鳴り声が聞こえてきた。

 

『おい、“風迅”出てきやがれ』

 

海に出たばかりのオレに異名があるわけがなく、おそらく目の前で本を読みながら茶を啜っている男性のことだろうと辺りを付けた。

 

「おい、呼ばれてるぜ」

 

一応声をかけてみたが、目の前の男は読んでいた本からオレに目線をずらした後、また本に視線を戻してしまった。

 

「あと2ページ読んだらキリが良いとこまで行くから、そしたら相手してやるよ」

 

そう言ってまた本を読み始める男。

興味本位で窓から外をのぞくと、船の周りをぐるりと“いかにも”な男共が取り囲んでいた。

よく見ると誰しもが傷の手当てがなされており、明らかに手負いの様相だった。

 

「なぁ、もし良かったらオレが相手してこようか?」

 

そう、提案すると男は今度は視線を動かさずに答えてきた。

 

「ま、そうだな。食い荒らした食料分は働いてもらうか」

 

おいおい、奢りじゃなかったのかよ。

 

「それじゃ小僧。できる範囲でいいからな。ま、せめて“2分”は持たせてくれよ」

 

そう言うと今度こそ読書に意識を戻した目の前の男。

今のオレの“実力”がどの程度通じるのか。

オレがこの先の海で成り上がれるのか。

 

「その喧嘩、オレが買った」

 

こいつらには悪いがオレのちきん(・・・)石になってもらおうじゃないか。

 

 

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扉を勢いよく出ていく青年を見送りながら、実のところオレは顔がにやけそうになるのを必死にこらえていた。

 

「(おいおいおいおいおいおいおいおい、“エース”だよエース。オレが知ってるエースより若いし、泳げたってことはまだ海に出たばかりなのか)」

 

読書もそこそこに窓からエースの戦いを見る。

何処に置いてあったのか鉄パイプを片手に、雑魚はお呼びじゃねえとばかりに海賊無双しているエース。

体裁きに無駄が多いが後々のことを考えると十分な仕上がりなのではないかと思える。

そこいらのチンピラ相手だったら問題なく戦っていけるだろう。

 

「(でも、そいつらを甘く見てるとヤバイんだよな)」

 

なんせ、そいつら東の海(イーストブルー)では珍しい、能力者(・・・)がいる海賊団だったからな。

 

 

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雑魚は粗方片付け終えたオレは頭目である男と対峙していた。

 

「さて、あとはお前さんだけだな。降参するなら今のうちだぜ」

 

今のオレの実力は大体測れた。

これ以上の戦闘は意味がないと促すと目の前の男は体をブルブルと震わせ始めた。

 

「ちょっとあんた、あんまりアテクシのことお舐めになるんじゃないわよ」

 

いかつい図体に野太い声、いかにもな強面がオカマだった事実に少し噴き出してしまった。

 

「いいこと、坊や。あんたがぶっ飛ばしたのはうちの海賊団でも雑魚よ。本命はアテクシ、アテクシが相手してあげるわ」

 

そう言うと猛然と突っ込んでくるオカマにオレはタイミングを合わせて鉄パイプを振り下ろした次の瞬間。

ガキンという金属が互いにぶつかったようなような音がして鉄パイプが弾かれた。

 

「んおっほっほほほほほほほ、アテクシは“ゴチゴチの実”を食べた“全身硬化人間”。如何なる者もアテクシを傷つけることは出来なくてよ」

 

そう、勝利宣言をするかのようにオレを指差してくるオカマ野郎。

そこからは形勢逆転とばかりにオレが攻められ始めた。

能力者の土壌で戦うことの難しさはルフィで痛感していたが、こいつはルフィ以上に能力を熟知していやがる。

周りで倒れていた雑魚共も息を吹き返してオカマを応援してやがる。

時折、オレの足を引っ掻けたり、槍をつき出したりと邪魔してきやがる。

そして、ついにオレのスタミナが切れて足がもたついちまった。

その隙をオカマが見逃す筈がなくオレは恩人の船へと投げつけられた。

 

「んおっほっほほほほほほほ、雑魚はお呼びでなくてよ。あんたたち、その目障りなゴミを片付けちゃあなさい」

 

オカマの声が響くのと同時に周りの奴等が一斉に撃ってきやがった。

オレはこんなとこで死んじまうのか。まだ“サボ”との約束も果たしてないのに。

 

「ジャスト3分、それが今のお前の実力か」

 

いつの間にか瞑っちまってた目を開けるとそこには、扇を片手に優雅に立つ恩人がいた。

 

 

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オレは、既にキリのいいところまで読み終えていた本を机に置いて窓から戦闘を覗いていた。

オレの知る“エース”は“能力”を主軸にした肉弾戦を得意としている。

でもそれは“能力者”になった後に構築したスタイルだったんだろう。

“今”のエースは鉄パイプを使用しての棒術擬きで戦っていた。

肉体を瞬間的に自然現象へ変化させられる自然系(ロギア)の能力を持たないエースは常に周囲に気を配り、自分の死角を作らない見事な戦いぶりだった。

ただ、時折“誰か”に背中を預けていたような仕草が垣間見えたことからエースの中にまだ“サボ”が生きているように思えて少しうれしく思えた。

そして、自分の中にある思いが芽生えていた。

 

-エースを“王”にしたい-

 

原作で涙ながら放たれた彼の心からの感謝の言葉。

そう思わせる世界がこの世界である。

ただ一人の青年にこのように思わせる世界なのだと。

そして、そんな青年を“王”にしてやりたい。

不特定多数から愛されなくていい、エースを慕ってくれる誰かに愛されていると感じてほしい。

そんな風に思ってしまった。

そう思ったからか、気が付くとエースの前に立っていた。

 

「ジャスト3分、それが今のお前の実力か」

 

そう言ってしまったが、慣れない能力者相手で本当にゴロツキ共を相手にした経験がないと考えると十分だった。

 

「ここからは、オレが相手だ」

 

扇を広げ風を回す。

 

「“風迅(ふうじん)のレイズ”、“エアエアの実”の力を得た大気・気圧操作人間。切り刻まれる覚悟はできているか」

 

 

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恩人、レイズが現れてからの戦闘は一方的だった。

オレが苦戦した能力者も気が付けば気絶していやがった。

その後、海賊団全員を海軍に引き渡しホクホクした顔で戻ってきたレイズを見て、似ても似つかないはずの“相棒”を思い出した。

 

「なあレイズさん、この後はどうするんだ」

 

なぜだか、この人はオレを受け入れてくれる気がした。

 

「そうさな、とりあえず一旦偉大なる航路(グランド・ライン)に戻って、そこから考えようと思う」

 

そう言って笑ったその顔は年上のはずなのにルフィを思い出させる無邪気さがあった。

だから、つい言っちまったんだろうな。

 

 

「オレの名はポートガス・D・エース。レイズ、オレと一緒に世界を周ろう。この出会いは“運命”だ」

 

 

誰も知らない物語。

後に五帝の一人「焔皇(えんこう)」と呼ばれ、偉大なる航路(グランド・ライン)に最年少で君臨することになるシャッフル海賊団船長“ポートガス・D・エース”。

後に「焔皇の右腕」、「空魔(くうま)」と呼ばれるシャッフル海賊団副船長“フェンシルバード・レイズ”。

彼らの出会いはこんなものだった。

 

 




時系列的に可笑しいだろうとか、なぜサラダ?という内容も今後は出てきますがご容認いただきたい。
作者はサラダだとローが好きです。

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