ONE PIECE-彼を王に-   作:完全怠惰宣言

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Dに集え/風迅と海賊処刑人

「お前が“海賊処刑人”か」

「あんたが迎いかよ、“風迅”」

 

死屍累々の海賊たちを周囲に積み上げ、方や黒く輝く鉄扇を打ち付け獲物を狙う猛禽類のような眼光を曝すレイズ。

方や近場に落ちていたモップの柄を打ち付け圧されまいと堪える野獣のような笑みを浮かべた“海賊処刑人”と呼ばれる男。

何故二人が戦闘を行っているのか。

時は1時間前に遡る。

 

――――――――――――――――――――――

 

「エース、悪いんじゃがお前さんたちに今回依頼した賞金稼ぎ2人を迎えにいって欲しいんじゃ」

 

ガープの海軍船の甲板にてレイズディーラーによるポーカーを行っていた時、突如ガープから声をかけられた。

 

「あぁん、どういうことだジジイ。何で俺たちが迎えになんざ行かなきゃなんないんだよ」

 

レイズとカリーナの見事な連携による絶妙なゲーム操作により金庫の中身が充実していた時に声をかけられたエースは不思議そうに顔をあげた。

その疑問に答えたのは、ガープの副官を任されたばかりの「ボガード」と呼ばれていた海兵だった。

 

「潜入させていた海兵からの連絡で、奴等は此方の情報を一部把握しているようだ。君ら協力者の情報を得ていないことは確認がとれたので、今回はそれを逆手にとり、君らには“DEAD END”レースに出るための仲間集めの名目で接触してもらう」

「それはいいんですけど、待ち合わせ場所と時間を教えてもらえませんか」

 

知略班であるレイズとボガードは仕事外の付き合いで友好に付き合いを深めており、数日に一回エースたちの船で愚痴を言い合う仲となった(99%がボガードのガープに対する物だが)。

 

「それはワシが決めておいた。”海賊処刑人”があの島の中央にある噴水広場に”午後1時”に、”銀獣”があの島の東にある高台に”13時”に来る手はずになっておる」

 

ガープの自信満々な発言を聞いた周囲全員が一度首を傾げた。

そして、近くの者同士で何やら話し始めること5分ほど、副官のボガードにその役を()()()()()

 

「ガープ中将、まさかと思いますがこれから向かっている場所が”海賊島”に準ずる場所である事と、”午後1時”と”13時”が同じ時間である事は理解されていますよね」

 

全員が固唾をのんで見守る中、ガープは呑気に海苔煎餅を齧っていた。

 

「ふむ、忘れ取った

「「「「「「「「「「ウソだろ――――――――――――――――」」」」」」」」」」

 

甲板に異口同音の悲鳴が木霊する中、嫌な予感がしたカリーナが胸元に手を突っ込み懐中時計を引っ張り上げ時間を確認する。

 

「・・・・・・レイズ」

 

その顔を若干青くしながらカリーナが最も信頼する男に声をかけた。

 

「まさか・・・・」

 

その意図を汲んでしまったレイズもその顔を同様に青く染めた。

 

「うん、今が午後1時」

 

甲板では先ほど以上の大きな悲鳴が上がったのは言うまでもない。

 

――――――――――――――――――――――

 

「(にしても遅えな海軍の連絡員は、こんなとこで待ち合わせなんて馬鹿だろう)」

 

噴水の縁に座り考え事をしている男。

彼の名は”シュライヤ・バスクード”、ガープの呼びかけに答えた賞金稼ぎの一人である。

そんな彼の周囲には300人を超える厳つい男たちが手に手に武器を持って集まっていた。

 

「おいおい、なんで”こんなところ”に”ハイエナ(賞金稼ぎ)”がいるんだよ」

 

いかにもガラの悪く、チンピラ風な男がシュライヤに声をかけてきた。

 

――――――――――――――――――――――

 

一味の中で最も”速い”レイズが一番の危険地帯であり、一番遠い中央にある噴水広場へと翔けていた。

エース同様に六式を習い、移動業である”剃”と”月歩”を体得したレイズは空をまさに疾風の如く翔けていた。

 

「(あのクソジジイ、いつか絶対にゼッタイに・・・諦めよ)」

 

エースからもどうにもならないと称される「歩く理不尽」に対して諦めることを選んだレイズは、能力も掛け合わせた月歩「無色の翼(エア・アキレス)」で目的地へと急いでいた。

あと少しで目的地が目視できるというところまで来たところレイズの耳にはっきりとした戦闘音が聞こえて来た。

 

海賊島で賞金稼ぎを見つけたら“そう”なるわな

 

――――――――――――――――――――――

 

300人を越える海賊に囲まれてしまったシュライヤだったが、その思考の大半は今回の仕事のことに占められていた。

 

「(やっとあのクズの情報をつかんだんだ。どんなことしても見失うわけにはいかねえな)」

 

思い出されるのは流されながらも必死にこちらへと手を伸ばし助けを求める妹の顔。

そして、自分の故郷を滅ぼしたクズの笑い声。

シュライヤの心はドロドロと煮えたぎった憎悪でいっぱいだった。

端から見れば心此処に有らずと云うのがはっきりと見てとれるシュライヤに対して声を掛けた男はしびれを切らした。

 

「さっさと答えやがれ。オレたちはあの”将軍”ガスパーデ様の一味なんだぜ」

 

その瞬間、シュライヤの周りにいた数人の海賊が宙を舞っていた。

 

「そうかそうか、手前ら”あいつ”の一味か。なら」

 

―ぶち殺しても問題ないよな?―

 

――――――――――――――――――――――

 

広場へと近づくにつれて人が空へと舞い上がる姿がレイズの目に映るようになった。

そんな奇妙な光景に少し好奇心が疼いたレイズは自分も気が付かないレベルで速度を落としていた。

その瞬間、レイズに向けて大砲の弾が飛んできたのだった。

そして、レイズが風を纏ったのと同時に大爆発を起こしたのだった。

ガープのいい加減さに多少イラついていたレイズ。

普段は子供っぽいところが多々目立つエースと体が急成長しているがまだまだ子供のカリーナが一緒にいるので抑えているのだが、レイズは「相手に右の頬を叩かれたら、その相手を往復ビンタし、フラついたところでトドメを刺す」過激的半〇スタイルな男であった。

そして、現在「歩く理不尽(モンキー・D・ガープ)」によって受けたストレスにより、普段はナリを潜めている報復主義な一面がちょうどいい言い訳を見つけて顔を出したのであった。

見た者を虜にするような笑みを浮かべたレイズは空中にて姿勢を保てる最低限の風を残し、残りの纏っていた風を広域に拡げ、自身の最大干渉可能領域である半径5kmの大気へと能力を伝播させていった。

そして、懐から扇を取り出すと干渉を受けた風を扇に纏わせ、圧縮し始めた。

扇を核にし圧縮された風は長刀を思わせる外観となりレイズの右手に現れた。

その風の刀を恰も居合いの如く構え広場の密集地帯に狙いを定めたレイズ。

次の瞬間、居合いのように風の刀を振り抜いた。

すると、刀の形状をしていた風は巨大な真空刃となり密集地帯へと撃ち込まれ、砂煙を上げて大地を抉り取ったのだった。

 

西風の阿(ゼフィロス・アート)

 

その惨状を上空から見ながら、呟かれた声色には何処か晴れ晴れとした気配があった。

 

――――――――――――――――――――――

 

周辺の雑魚を手を変え武器を変え吹き飛ばしていくシュライヤ。

その数が50人を越えた時だった。

 

「舐めやがってこの野郎、“これ”を見てもまだそんな態度でいられるか?」

 

先ほどシュライヤに声をかけた男がバカみたいにデカイ大砲を持ち出してきた。

 

「おいおい、品がねえな」

「しゃらくせぇ、食らいやがれ」

 

発射された大型の弾はシュライヤを目掛けて飛んできた。

誰しもがシュライヤの終わりを疑わなかった。

すると、シュライヤは自分の側に落ちていたスコップを蹴りあげると逆手で構え、スコップの緩やかなカーブと体捌きで上空へと大砲の弾を打ち上げた。

 

「「「「「えぇーーーーーーーーーーーーーー」」」」」

 

その光景を目撃してしまった海賊たちは一斉に驚きの声をあげていた。

パッと見細身のシュライヤが直径が5mは有ろう砲弾を上空へと打ち上げてしまったのだから仕方ないだろう。

数秒とたたずに爆発音が聴こえ、シュライヤも安心し上空を見上げた次の瞬間、シュライヤは自分へと降ってくる巨大な刀を見た。

 

「おいおいおいおいおい、洒落にならねぇぞ」

 

そう呟くや否や、シュライヤは走り出した。

少しでも、あの刀から逃げるために。

その咄嗟の判断がシュライヤの命を救った。

刀が地面に触れた瞬間、シュライヤはあまりの風圧に吹き飛ばされ、民家へと吹き飛ばされた。

 

ゼフィロス・アート

 

誰かの呟きをシュライヤは確かに聞いた。

 

――――――――――――――――――――――

 

シュライヤを囲んでいた海賊たちは先程の数十秒に起こった出来事に我が目を疑っていた。

すると、広場の反対側に何者かが着地する音が聞こえた。

振り向くとそこには、笑顔を顔に張り付けた優男(レイズ)が扇を開いたり閉じたりしながら此方にゆっくりと歩いていた。

突如現れた男に気を取られていると、崩壊した家から瓦礫をどける音が聴こえ、シュライヤがそこから現れた。

帽子で顔は見えないのが逆に不気味な気がした。

ふと、シュライヤとレイズの視線が交差した。

すると、突如準備体操を始めるシュライヤ。

かたや、身体中の関節を鳴らし始めるレイズ。

一通りの動作を終え、再び視線が交差したその時だった。

 

「「てめぇ(お前)か、やりやがったのは?」」

 

数秒の静寂が訪れた。

 

「「上等だ!!!」」

 

その声と共に二人は駆け出し、進行上の邪魔者たちを吹き飛ばしながら近づいていった。

そして、冒頭に戻るのだった。

 

――――――――――――――――――――――

 

「で、遅れた理由は?」

 

すべての海賊(多少のとばっちりを含む)をなぎ倒し、無事だった噴水に腰掛け、互いに休憩をとり始めたレイズとシュライヤ。

ちゃっかりと飲み物を互いに拝借してきてるあたり抜け目がない。

 

「ガープ中将が原因」

 

その一言で、何となく察してしまったシュライヤは黙るために拝借してきたワインを呷る。

 

「しかし、いや。相手を知ればお前が出てくるのは当たり前かシュライヤ」

 

レイズもブドウジュースを呷るとシュライヤが今回の作戦に参加した理由に納得を示した。

 

「あいつは、あいつだけは、オレが手を下す」

 

思い詰めたような、濁りきった目をしながら呟くシュライヤをしり目にレイズは周りの気絶した海賊達から財布を抜き取っていた。

 

「ま、暫くは厄介になるぜ風迅」

「レイズで良いよ。ま、よろしくなシュライヤ」




アンケート終了。
王女の人気がスゴいのか、エースの人気がスゴいのか。

エースはハーレムにすべき?

  • 是非とも
  • イヤイヤ、お姫様一人で手一杯だろ

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