ONE PIECE-彼を王に-   作:完全怠惰宣言

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今行っている会社の周辺でここ最近マスクとアルコールティッシュを見なくなりました。
一時の衝動買いや転売目的の方は自重してください。


その果てにつかみ取れ/Lがあるということ

「結局、目覚まさなかったなシュライヤ」

 

甲板で仁王立ちをしながらレース開始のファンファーレを待っていた。

あの後、簡易的な治療を行われたシュライヤはジャック・ポット号の私室に運び込まれ、ロビンとレイズによって治療が行われた。

数日が経ち、今なおベッドで死んだように眠るシュライヤ。

 

「体は回復してるはずだよ。あとは心の問題なんだよ」

 

その後ろでデッキチェアに座りモクテル(ノンアルコールカクテル)を飲むレイズ。

つい先ほどまでシュライヤの容態を診ていたが、医者でない彼はすでに手は尽くしたと休んでいる。

その隣ではレイズと共に現在までシュライヤの看護をしていたロビンとカリーナがレイズの肩を枕に寝ている。

 

「シューちゃんにとってガスパーデに勝てなかったことは起きるのを拒否るぐらいにショックだったのねん」

「目的がはっきりしていただけに”それ”が折れた衝撃は相当だったんだろうな」

 

出航の準備を終え、レイズの入れたお茶で休憩しているサガとベンサム。

中型船に分類されるジャック・ポット号だが、最低人数で航海ができるように作られている。

3人いれば楽に航海できるように設計された船は今、出航の合図を待っていた。

 

「いいんだ、オレはシュライヤが起きるのまってるから」

 

そう仁王立ちのまま前だけ見据えるエース。

 

そんなエースの背をレイズは眩し気に見ていた。

船全体に流した風で船底の倉庫に潜む存在を感知していたが、ぐっすりと眠るその存在に対して起きるまで放置をすると決めた。

そして、風を操り熟睡するロビンとカリーナを横にしブランケットを掛けなおすと徐に立ち上がった。

 

「シュライヤの様子見てくる、始まったら後は頼むぜ”船長(エース)”」

 

そう一言つけたすと船内へと歩いて行った。

レイズが船内へと消えてから一向に仁王立ちをやめないエース。

 

「いつまでそうしてるつもりだエース、さっさとこっち来い」

 

サガに呼ばれ後ろを振り返ったエース。

 

「ちょっちちょっちエースちゃん。なんなのようその顔」

 

振り返ったエースの顔はとてつもなくだらけ切った、見るに堪えない顔をしていた。

 

「デヘヘヘヘヘヘヘヘ、オレ”船長”だって」

 

認められたいと願っていた男に、この時だけとはいえ”船長”と呼ばれたことに嬉しさがあふれ出し、顔だけでなく全身がとろけ切っていた。

 

「ヴァカなのエースちゃん」

「バカだなエースは」

 

そんな感想を受けたエースはそれでも顔のニヤケを正せそうになかった。

 

「・・・・・・で準備は出来てるの」

 

寝起きにレイズがいないことに不機嫌を隠そうとしないカリーナ。

 

「大丈夫そうよカリーナ。あとは開幕の合図を待つだけね」

 

顔は笑顔だが雰囲気は冷たいロビン。

 

「さあ、レースを楽しもうぜ」

 

そこには、無邪気に笑うエースがいた。

 

 

レイズは船底の倉庫に来ていた。

 

「お、“これ”だな」

 

目の前に子供一人が隠れられそうな箱があった。

箱を開けると中には汚れた子供が眠っていた。

 

「・・・はぁ、起きろガキ」

 

そう言うと子供が入っている箱を転がした。

その勢いもあってか、盛大に転がりながら中の子供は転がり出てきた。

 

「痛えな、何しやがる」

 

頭をぶつけたのか痛そうに押さえながら立ち上がる子供。

その子供に冷やかな視線を向けながら床に落ちていたナイフを拾うと手で遊び始めるレイズ。

 

「はい、良いですか。君は今海賊船(に偽装しているけど)に武器を所持して密航している訳なんですが、そんな君はオレに()()されても文句が言えない、状況おわかり?」

 

そういって意味もなく笑顔を子供に向けるレイズ。

それは決して子供に向けてはいけない大人が放つ妖艶さと絶対的捕食者の側面を併せ持った笑みだった。

真っ正面からその顔を見てしまった子供は処理が追い付かず気絶した。

 

「・・・クフフフフ、シュライヤ早く起きろよ。()()()()が向こうから来てくれたぞ」

 

その呟きは船底の静かさに消えていった。

 

 

「おーおーおーおーーー。なんかすごいことになってるけど皆大丈夫?」

 

船底の倉庫から密航した子供を空気圧で作り上げた風で触れないようにして持ち上げながら、両手に飲み物と軽食を乗せたお盆を持って甲板に現れたレイズが見たのは死屍累々に甲板に寝っ転がるエースたちだった。

 

「あ、あーーーーーーーーーーーーレイズ、おま、お前何してたんだよ

 

レイズを、というかその両手にある軽食と飲み物を見て多少元気になったエースがレイズに詰め寄る。

その後ろをいつもより回転速度が遅いベンサムが、その後ろを某〇子さんのように這いずりながら近寄るサガ。

ロビンとカリーナはその場で座り込んで動く気配すらなかった。

 

「ワリィ、ワリィ。とりあえず食べれるなら食べて飲んで休んでよ。ここからはオレの能力で船進ませるから」

 

そう言うと甲板に折り畳み机を広げ持ってきた軽食(ソフトボールほどの大きさのおにぎり50個)を置くとロビンとカリーナのもとに近寄る。

その後ろではエースが両手におにぎりを持って自分たちがいかに大変な思いをしていたのかを熱弁している。

 

「二人は先にお風呂かな?もしよかったらこの子も一緒に入れてあげてよ」

 

そう言うと風で浮かせていた未だ気絶中の子供を二人の間に降ろす。

 

「別にいいけど、この子は誰よレイズ」

 

ワタシツカレテマス、カマッテクダサイイタワッテクダサイ。

そんな心の声が聞こえてきそうなカリーナの声に可笑しそうにクスリと笑いながら笑顔で爆弾を落とすレイズ。

 

「密航者」

 

レイズの発言から数秒甲板では一切の音が消えた。

 

「「「「密航者!?」」」」

「あら、大胆な子ね」

 

ロビン以外の4人は驚きのあまり疲れを忘れて叫んでいる。

マイペースなロビンがレイズには可笑しく見えた。

 

・・・・・・・・・・にいちゃん、じいちゃん

 

子供の声を聴けたのはレイズだけであった。

 




蛞蝓よりも話の進みが遅いですが、これからもよろしくお願いします。

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