「お前ぐらいなものだ」
「そうっすかね、今日の出来はいかがですか?」
「実に
「本職と比べられるとは、貴殿方ご兄妹に誉められるのは嬉しいですね」
「ふん、貴様はオレ達の誰とも普通に接してくれたからな」
桜咲き乱れる春島。
一際見事な桜の大樹の下でレイズと大男は優雅にメリエンダを楽しんでいた。
「しかし、本当にこんなことで良かったのか。ママがお前に与えた負債はこんなことで済む物ではないだろう」
「かといって、かの女王に何かを願うなんて自殺行為ですよ。オレだけが知っている“背を預ける”貴方とこうしてメリエンダを楽しませて貰える。その間、ペロスの旦那達が女王を誘導してくれる。それでお仕舞いにしましょう」
適温の紅茶で喉を潤し、目の前に堆く積まれた巨大なドーナツの山を瞬く間に消費していく大男。
もし、エースに出会わず、この男が船長になると言っていたのならそんな未来があったかもしれないと思ってしまうまでに、レイズは目の前の男に憧れていた。
「それで、“カタクリ”さん。今回の出来レースについてはご兄妹皆様承知いただけていると言うことで宜しいでしょうか?」
レイズは自分のグラスにアイスティーを注ぐ。
「然別。もっとも、貴様の花嫁候補達はあまり納得してなかったがな」
カタクリと呼ばれた巨大な口を更に大きく開け、巨大なドーナツを優雅に食べ続ける男は、兄妹達のみで行われた話し合いの席で癇癪を起こした妹達の顔を思い浮かべていた。
「ははは、こんな奴相手に過大評価ですよ」
その様が思い起こされるのだろうか、レイズはただただ笑っていた。
「ふん、貴様が婿に着てくれるのであればオレも安心なのだがな」
「オレも、あんたが旗揚げするって言ってくれたらこんな面倒事にならなかっただろうにな」
互いの奇縁により自身の知られたくない素性を同時に知ってしまった。
故に生まれた奇妙な友情。
シャーロット・カタクリにとって目の前の歳の離れた友人は実母以上に奇妙な存在だった。
「マンママンマ、オレは今機嫌が良いんだ。ソコを退くなら見逃してやるぜ“
「ガキ1人に豪勢な出迎えじゃのリンリン。風の小僧の価値を知っていればそうなるかもしれんが」
新世界とある海域。
シャーロット・リンリン率いるビック・マム海賊団本隊と海軍きっての過激派大将サカズキ率いる赤犬大隊は互いのトップがメンチをきりあっていた。
「センゴクからオレ達に手を出すことを禁じられているだろうに。“上”は何があっても今の均衡を崩すつもりはないだろうからな」
「黙れや海賊風情が!!」
海軍の演習航路に突如現れたビック・マム海賊団の大艦隊。
大隊演習の名目で着ているため手が出せず苛立ちから全身がマグマ化し始めているサカズキ。
そんな2人の後ろには今回のレイズの協力者が冷や汗を盛大に流していた。
「(ママを遠回りさせるだけのはずが、何で海軍が居やがる)」
長男シャーロット・ペロスペローは母が海賊島で交わしてしまい結果、レイズを騙した形になっているとある男の大切な物の返還期間の延長を打診され、弟妹達との協議の結果現状に至っているこの状況をひどく後悔していた。
「(ち、ドフィのためとは言えこんな問題の処理に駆り出されるなんて)」
海軍にスパイとして潜入しているヴェルゴ。
偶々、本来の主との関係を知られ尚且つ消すに消せない状況にて持ちかけられた取引。
自分よりも遥かに格下のはずのレイズだが約束は守ることを知っていたため、仕方なく自分の正体を隠匿する変わりに演習航路の変更を行った。
その結果がこれである。
「「(あのクソガキ、ここ迄計算してやがったな)」」
このにらみ合いは2日にも及び、結果何事もなく終わったがこれが全て一人の青年が起こした企ての結果であることは協力者だけが知る事実であった。
「さ・て・と、そろそろ次行きますか」
3日間に及ぶカタクリとの休暇を楽しんだレイズ。
そう呟くと机の上にとある島へのエターナルポースを置いた。
「こいつがそうか」
きっちりと身支度を整え、口元をマフラーで隠したカタクリがエターナルポースを手にするとまじまじと見つめる。
「はい、幻の蜜蜂“ドラゴンハニー”の生存確認がとれている旅島の一つです」
「ふん、これでママを宥める材料が一つ増えたな」
「究極の蜂蜜ですもんね」
カタクリは旅島と呼ばれる海流にのって移動する島の一つであるレイズが発見した島を探していることになっていた。
その島に生息する巨大な蜜蜂“ドラゴンハニー”が作る蜂蜜は市場に出回ればグラム単位で1000万ベリーはくだらないといわれる高級品であった。
今回、その成果を手土産に我儘な母を宥める材料としてその島への航路を開拓するためにレイズ捜索から離れていることになっていた。
実際は2人で呑気にお茶会を楽しんでいたのだが。
「しかし、よく海軍を動かせたな」
「別に、何てことありゃしませんよ。その人が勝手に勘違いしただけで勝手に動いてくれただけですから」
「悪魔め」
「カッカカカカカ」
「次、会う時は敵同士だな」
「貴方とはやりあいたくないですよ」
2人は背を向け歩き出した。
レイズが準備した小船にはその船体に似合わないサイズの木箱が鎮座していた。
「カタクリさんからの差し入れかな?」
木箱には手紙が貼り付けられており、差出人は確かにカタクリだった。
『レイズ、今回は我々が譲渡され過ぎでありお前に貸しを作る形になるのほ明白だ』
「でしょうね、そうなるように動いてるんですから」
『貸しの清算にもならないが、お前がコックを探していると聞いた、こいつを連れていけ。ママにはオレから言っておく』
「おや、ありがたいですけど誰が入っているんでしょうか?」
手紙には追伸文があったがいつまでも木箱に入りっぱなしでは大変だろうと思い、レイズは木箱の蓋を開けた。
『追伸』
レイズにしては珍しく、注意が散漫であった。
何時もなら風を流して中身を大まかに確認するはずだった。
しかし、憧れた男と過ごした時間が警戒心を薄れさせていた。
箱を明けると中には色とりどりの愛らしいクッションと自前であろう調理器具、その中央には綺麗な三眼をパッチリ明け、悪戯が成功したような嬉しそうな顔をした可愛らしい美少女がいた。
『オレ達の可愛い妹を宜しく頼む』
「えへ、お嫁に着ちゃいました」
シャーロット・リンリンが実子、三十五女。
シャーロット・プリンが花嫁修業の名目で参戦。