ONE PIECE-彼を王に-   作:完全怠惰宣言

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怪物に挑む者

レイズを探して船を進めるエース一行。

カリーナが何かを感知したかのようにハッとし、言葉では言い表せないような恐怖をまき散らす真顔になることがあったが、概ね順調に航海は進んでいた。

レイズを探す航海の最中、休憩のため降り立った無人島。

決してレイズが計算して積んでくれた食料を食い切ったとかそういったわけではない。

そこでキャンプを張っていると森の中から複数の人影が姿を現した。

 

「ゼハハハハハハハハ、オヤジいたぜ」

 

先頭を歩いていた黒髪の巨漢が後ろに声をかけると、その巨漢よりもさらにデカい男が姿を現した。

 

「グラララララララ、手前が風小僧の船長か」

「何の用だ、オレの相棒は今いねえぞ。アイツに用事なら後にしてくれ」

 

いつも通り強気の対応をするエースだが内心はそうもいかなかった。

レイズの半調教ともいえる教育を受けた結果、エースは現状の海の勢力図を頭に叩きこまれており、勢力図の頭の顔は直に出てくる。

無論、目の前の男が“白ひげ”の異名を世界に轟かせる“最強の海賊”と言われる“エドワード・ニューゲート”である事は既に分かっていた。

 

「小僧」

「あぁん?なんだジジイ」

 

船長同士のメンチのキリ合い。

しかし、どうみてもエースがチンピラにしか見えない。

 

「鼻垂れにアイツは過ぎた存在だ。悪いことは言わねえから諦めろ」

 

白ひげのその言葉が終わるのと同時に、彼には炎と斬撃、斬脚が飛んできた。

 

「おい、何手を出してんだよ」

「“手”じゃねぇ“刀”だ」

「“手”じゃねぇし、“脚”だ」

 

全身から炎を滾らせ、完全に戦闘態勢に有るエース。

刀を鞘に納めつつ、白ひげから視線を外そうとしないサガ。

一味で最も脚技の習熟度が高いシュライヤもまた白ひげから眼を外さず、かといって気をはらないように努めて普段どおりの声色を出していた。

 

「それで勝てたら、苦労しないのにね」

 

一人船から全体を見ているカリーナはこの仕組まれたであろう戦いの行く末を見守ることしか出来ない自分に歯がゆさだけを覚えていた。

 

「グラララ、威勢の良い餓鬼共じゃねぇか」

 

燃え盛る炎の中、白ひげは笑っていた。

全身に覇気を纏い、受けた攻撃は彼にして見たら痒い程度だった。

そんな中、レイズから受けた電々虫の会話が思い出される。

 

 

『お久しぶりです、白ひげの旦那』

『グラララ、小僧久し振りだな』

 

レイズから手紙が届いて直ぐに連絡があった。

息子に来いとおこなった勧誘を笑顔で流されて以来、仕事を任すことはあってもけして良い返事が貰えない。

そんな日が続いた最中のことだった。

 

『旦那のところに入っているビブルカードなんですけどね』

『あぁ、お前のじゃねえんだろ』

 

白ひげのその言葉に電々虫からはレイズの笑い声が聞こえてきた。

 

『さすが旦那、オレのビブルカードは旦那に預けてありますからね』

『さっさと要件を言いやがれ』

 

すると、さっきまで陽気な声色だったレイズの声が止まり、受話器から異様な冷たさが流れてきた。

 

『エドワード・ニューゲート、そのビブルカードはオレが王にしたいと心から思った男のだ』

『お前にそこまで言わすのか』

『あんたに見極めて欲しい』

『世界は“見えない力”で動かされていると言うのなら、オレはそんなモノすら乗り越える力をアイツに見た』

『だから、エースを見極めてやって欲しい』

『小僧、オレになんの得があるんだ』

『“親子二代”であんたと喧嘩できれば、それこそが海賊王が遺した“Dの意志”を受け継ぐに値する、そう思いませんか』

 

白ひげはレイズの妙なもの言いから、ハッキリと意味を汲み取ってしまった。

 

『グラララ、面白ぇ。もし、オレが不合格だと思ったらどうする気だ』

『・・・・ハッ、      』

 

目の前に並ぶ3人、真ん中で体から炎を発している男が件の男であると理解した白ひげ。

 

「生ぬるい、オレは“白ひげ”だぞ」

 

片手をただ振るうだけで炎は消え去り、その体には傷らしい傷も、ダメージすら見受けられなかった。

 

「グラララ。餓鬼共、もっと本気で来やがれ」

 

その一言と共に右手の長刀は振り下ろされた。

 

長刀を振るう。

ただ、それだけの筈なのにエース達は確実に気力が削られていた。

筋骨隆々、巨漢の伊達男。

そんな言葉が似合いそうな目の前の男からは、全盛期をとうに過ぎたなどと言われる衰えを一切感じなかった。

 

「くぁ~、なんだあのジジイは」

 

長刀から放たれる風圧で吹き飛ばされてばかりで対して自分達にダメージがない。

それを認めてしまえば何てこともない、相手にされていないという事実だけが残される。

エースにとっての理不尽の象徴であるガープとの特訓と似たような感じのこの立ち合いは、目の前の怪物からすればもしかしたら遊びにも等しい行為なのかもしれない。

 

「おい、エースなに寝転んでやがる」

 

息も絶え絶え、刀を杖の代わりになんとか立ち上がったサガ。

 

「まじで、“始まりの世代”の海賊は怪物かよ」

 

脚をガクガクと震えさせながらも気力だけで立ち上がるシュライヤ。

エースは2人を見て、何か心の真ん中にストンと填まった感覚を覚えた。

 

「はぁ~、オレは馬鹿だな」

 

レイズという兄貴分兼相棒を得て、カリーナが仲間になってサガとシュライヤが居ついた。

エースはそう思うようにしていた。

だが、実際はどうだ。

サガもシュライヤもエースという存在を見てくれる、共にある仲間と認めてくれている。

 

「サガ、シュライヤ」

 

だったら、船長なんて肩書を預けてくれた仲間に最大限の感謝を、エースは恐らく初めてサガとシュライヤを心から信頼した。

 

「2分、いや1分くれ。あのジジイに一撃かましてやる」

 

その目に紅蓮に燃え滾る意志を宿して立ち上げる。

 

 

エースの雰囲気が変わった。

歴戦の戦士でもある白ひげはその僅かな差を然り感じ取っていた。

 

「グララララ、似てるじゃねえか」

 

かつて幾度となく戦い、語らい、酒を酌み交わした海賊王(ロジャー)を幻視させる雰囲気を放つエース。

その前で屈伸やら腰を回すなどの準備運動を始めるサガとシュライヤ。

 

「(グララララ、レイズ。オメエの“家族”は化けるぜ)」

 

その時、レイズと最後に交わした会話の内容が白ひげの頭に浮かんだ。

 

『もし、オレが不合格だと思ったらどうする気だ』

『・・・・ハッ、“オレの家族”を“次代の海賊王”と“海賊王のクルー”を嘗めんじゃねえよ』

 

ニィッと顔が笑ってしまう白ひげ。

長刀を砂浜に突き刺すと右手に力を込め始めた。

 

「おい、オヤジまじか」

「全員退避、オヤジの“アレ”がくるぞ」

 

白ひげ海賊団のクルーは森の中へと逃げていくが、エースたちはその光景に不敵な笑みをもって答えた。

 

「1分だぁ、嘗めんじゃねえぞエース」

 

鞘に納めた刀を逆手に握り、餓えた虎のように獰猛な笑みを浮かべるサガ。

 

「オレたちにあのジジイがぶっ飛ばされる前に、やろうとしてることの準備終わらせれるのか?」

 

両脚の震えは収まり、その目に猛禽類を幻視させる鋭さを再び宿したシュライヤ。

 

「あぁ、“前座”は任せた」

「「上等!!」」

 

その言葉と共に駆け出すシュライヤとサガ。

シュライヤは「嵐脚」、「剃」を体得していた。

短期間で二式も体得できたのは、一種の才能とも言える。

教えていたレイズ曰く、シュライヤの身軽さと常人場馴れした体幹が有ってこその体得速度だった。

そして、レイズを探す旅の中、シュライヤはこの二式から一つの技を編み出そうとしていた。

速さが乗った攻撃ほど避けにくく、威力の有るものはない。

「剃」による加速、その速さというエネルギーを全て脚に乗せて放つ「嵐脚」は恐らく自身の新たな技になる。

その確信のもと、暇を見つけては練習を繰り返していた。

自分が“今”出せる最高の技を持って“世界最強”を押し留めるために、シュライヤは駆け出していた。

 

サガは自身の握る刀から“悲鳴”のような何かが聞こえている気がした。

所々にヒビが入り、あと一振すれば確実に砕け散る。そう確信が持てる状態の数打ちの一振から聞こえる悲鳴のよう何か。

しかし、それはサガに対する怨嗟の声ではなく、主人の働きに答えきれない自身に対する怨嗟の声にサガは聞こえた。

 

「怨むなら、オレだろう」

 

刀一振一振、等級に関係なく自分が握った刀を万全に扱えていない。

ヒビの一つ一つがサガの実力不足を著していた。

懐にしまわれた、今まで使ってきた刀の欠片からも、息遣いのような何かが伝わってくる。

 

「オレみたいな下手くそに使われて、さぞ怨まれていると思ったいたが」

 

“今の相棒”を握る左手に一段と力が入る。

 

「お前“たち”の心、この一太刀に乗せて、あの化け物に目にもの見せてやろう」

 

師から教わり、友を越えることができた唯一つの技。

毎日毎日素振りをし、自分の体に教え込んでいくうち一つの試みを行った。

握力の弱くなった右手で柄を逆手に持ち、体だげでなく全身の関節から発生する“捻り”を一点に凝縮し刀を抜き放った。

その時の感覚を体に思い出させながら、目の前の怪物を改めて見直す。

 

「せめて、一太刀」

 

その身体に斬りつけてやる。

 

エースは深く息を吐く。

自分以外の全てを意識の外に追いやり、自分と自分に宿った“力”に意識を向ける。

“炎”という自然界の第四物質である「プラズマ」は気体・液体・固体どれにも当てはまらない。

だからこそ、漠然と“燃える”ことが自身に宿ったメラメラの実の力なんじゃないかと考えていた。

全身を炎に変えることのできる、と考えていたがこの力は自分だけで完結する力なのか。

炎は燃え上がり、燃え移り、燃え滾る、そうだったはずだ。

悪魔の実の力を使う時、レイズを手本にしてみた。

なのに、今まで自分の力を外に働かせることはしてこなかった。

燃え上がった炎を制御して自身の力とする。

これは、「メラメラの実」の能力者である自分しか出来ないことではないか。

 

「うっし、覚悟決めるぜ」

 

白ひげが自身の能力を使うために力を溜め込んだ右腕。

それを解き放とうとした、その時だった。

 

「嵐脚」

 

高速で接近したシュライヤ、その勢いを右脚に乗せて、今まで以上の速さが乗った蹴りを白ひげの右腕に叩き込んだ。

 

空牙(くうが)

 

その一撃は白ひげが振り下ろそうとしていた右腕を跳ね上げ右腕に溜まっていた力場を上空に打ち上げさせる程だった。

しがし、白ひげもシュライヤの行動を読んでいなかったわけでなく、空いていた左腕に僅かに力場を生み出しでシュライヤを殴り付けた。

本の僅かとは言え、白ひげの能力を受けたシュライヤはそのままの勢いで海に飛ばされていった。

 

「一刀流逆手居合」

 

サガはその僅かな隙を見逃さず、白ひげに肉薄していた。

身体を限界まで捻りその捻りを解放させ、その回転を利用しての超高速抜刀術。

今も世界の何処かで高みを目指す友に唯一つ勝てた、己の中で昇華した技。

 

巳雷衛昂(みらいえいごう)

 

サガの接近に気が付いていた白ひげは、左腕を黒く染めるとサガの一撃をその左腕で受け止めた。

金属が互いに打ち付けられる音が響き渡ると同時にサガは白ひげに飛ばされ森林へと吹き飛ばされていった。

 

炎戒(えんかい)

 

エースを中心にして、炎の円が広がる。

炎色が黄色く変わり火柱が上がる。

火柱が修まるとエースは自身の代名詞となった技を放つ構えをとっていた。

 

火拳(ひけん)

 

白ひげは両腕を振り切った状態。

それは、2人が作ってくれた大きな隙だった。

だからか、エースの攻撃は白ひげの身体へ到達した。

しかし、今回放った火拳はいつもと何か違った。

白ひげに打ち出された火は弾丸のような火玉で通常の火拳の速度を越えていた。

そして、白ひげの身体に当たった次の瞬間。

 

火巌華(ひがんばな)

 

火玉は華が開くように弾け、白ひげを火柱が包み込んだ。

気力を振り絞り目の前の怪物から目をそらさないエース。

燃え上がる白ひげは暫しその業火の中で動くことはなかった。

エースが一瞬、気を失いかけたその時、白ひげは両腕を振るいその業火を消し飛ばした。

 

「グララララ、中々だったぞ小僧共」

「ちくしょう、世界の頂きは高ぇな」

 

そう呟くとエースは意識を手放した。

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