ONE PIECE-彼を王に-   作:完全怠惰宣言

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せぇーーーーーーーぞぉーーーーーーーん、ほぉーーーーーーーーこぉーーーーーーくぅーーーーーー。


揺らめいく焔、されど消えることなく

バイキング諸島。

生態系の全てが何らかの食材になる大食いの猛者達にとってまさに楽園のような島。

しかし、その島の固有種は化け物のように強く下手をしたら逆に刈り取られてしまうまさに弱肉強食の島。

そんな島の砂浜には複数のワンポールテントが建てられていた。

 

「そろそろかなぁ?」

 

今回の騒動の原因・賭けの胴元であり商品のレイズは絞りこまれた上半身を露にし、林へと視線を向けていた。

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

そんな林の中から男性の叫び声が聞こえてきた。

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ」

「お、ランスドボアか久し振りに豚カツにしよう」

「呑気にしとらんで助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 

林の中から全身傷だらけになりながら8mはありそうなランスのような牙を持った猪に追いかけられてきたラチェットが助けを求めていた。

 

「テラーズホロウ」

 

レイズの出てきたテントから女性の声が聞こえた。

 

「スクリーム」

 

真っ白で巨体な何かが現れ、口にあたる部分が裂けると、そこから風が吹き出した。

その風に当たったランスドボアは突如白目を向き倒れてしまった。

その顔はまるで本能に訴えかけられる恐怖による顔であった。

 

「れいずぅ、うるしゃいぃ」

 

身体にシーツを巻き付けテントから顔を出したペローナは自身に巻き付けたシーツが落ちないように支えつつレイズに抱きついた。

 

「ふふ、ごめんね。そろそろお昼だからラチェットに食材取りに行ってもらってたんだ」

「こ、殺す気か君たちは!!」

「「生きてるから問題なし」」

 

ラチェットの不満はレイズとペローナの二人のサムズアップにより無かったことにされてしまった。

 

「あふぁ、おはようれいずぅ」

 

新たにレイズのテントから現れたのは、素肌にサイズ違いのパーカーを胸のしたの位置までしかジッパーで閉じていないプリンだった。

 

「おはよう、じゃない!!いったい今何時だと思ってるのかね君らは」

「「えぇー、煩いなぁラチェットのくせに」」

「ぐ、数日前の私のバカ」

 

島についた数日前、絶対強者のレイズを除き格付けを行った結果、断トツで負けたラチェットは下っ端として扱われていた。そんなラチェットは未だ少女という年齢のプリンがほぼ半裸で男のテントから現れたことに今更ながら気がついた。

 

「ん?うぅん?まさか!?レイズそこまで落ちたか!!」

「ド阿保が、プリンにはまだ手を出してないよ」

「うにぃ?私は良いのにぃ」

「プリン、せめて16までは耐えろ。そしたらアタシも応援するから」

「あと4年かぁ、ペローナその時はヨロシク!」

「まかせな(レイズが凄すぎて後2・3人居ないとアタシがイキ死ぬ!)」

 

4人は和やかに過ごしていた。

一方、洋上では。

 

「なぁエース、いい加減機嫌治せよ」

 

船のちょうど真ん中で膝を抱え頬を膨らませて不機嫌さを隠そうともしない船長に対してクルー全員で手を焼いていた。

 

「(負けた、誰にも負けないなんて傲慢なことは言わない。だけど、世界の高みはあんなにも遠いのか)」

「あぁこりゃダメだ。ウチはカリーナが一番ベッタリだと思ってたけど、エースが一番ベッタリだったんだな」

 

「ジャック・ポット号」の設計思想が「2人いれば動かせる船」という厄介極まりないものだったが、世界政府のコネを使える時に使ったことで中型船舶でありながら自動化されるところはされており、秘密兵器まで詰め込んだ夢の船となっていた。

 

「そう言えば、カリーナは?」

 

風を受け進む船、操舵輪とビブルカード、船の水平機を確認しながらこの場に居ない唯1人の女性存在に不思議がるシュライヤ。

 

「新しく手に入れた武器が中々懐かないらしくてな、今も部屋で格闘してるよ。それよりもエースはいつまで拗ねてるつもりだ」

 

本日の食事当番のサガは桶には入ったちらし寿司を折り畳み机の上に置くと飲み物の準備に取り掛かっていた。

 

「(レイズに会いてぇ)」

 

この海で誰よりも自由に生きるために、憧れた海賊になるために出た旅路。

その最初の仲間であり、心の底で兄と慕う男。

バカ騒ぎもした、真面目に怒られもした、知らなかったことを沢山教えてくれた。

自分が指針になると決めた筈なのに、未だに目で追いかけてしまう。

自分はこんなにも弱かったのかと自問自答をしているエースは自身の背後の影に気がつけなかった。

 

「いつまでふて腐れてんのよ、このブラコン!!」

 

エースの背後、見事なバッティングフォームで新たに手に入れた棍を振り抜いたカリーナが立っていた。

そして、完全に油断していたエースは炎に変化出来ずメインマストへと見事に打たれていた。

 

「何しやがる、カリーナ!!」

「いつまでもめそめそしてるアンタが悪いんでしょ、このブラコン!!」

「だ、だれがブラコンだ!!この性悪女狐」

「へへぇーん、そんなアタシでもレイズは問題ないって言ってくれるはずだもん。たぶん、きっとおそらく

「おい、それただの希望じゃねえか」

「うっさいわね、あんただっていつまでイジイジメソメソしてんじゃないわよ。

 会いたいなら早く捕まえて、それから言いたいこと言えばいいじゃない」

「そう簡単じゃねえんだよ」

 

ワァーキャーと始まる喧嘩を肴にサガとシュライヤは昼食を取り出した。

 

「しかし、オレらも反省だな。航海関係はレイズに頼りっぱなしだった」

「あぁ、再会したらその時は今後もよろしくと願わせてもらおう」

 

寝ていてもご飯が出てくる、出しとけば洗濯されている、無人島が有ったら訓練に付き合ってくれる、エースとカリーナの面倒を見てくれる、等々面倒なことはレイズに押し付けてきた感が満載なサガとシュライヤは心に沿う固く誓ったのだった。

 

「だいたいね、エースは狡いのよ!!」

 

練習用に作られた棍を杖にしてエースを睨みつけ指を突き刺すカリーナ。

 

「あぁん、何がだ!!」

 

思わずという感じで言い返すエースはカリーナのその強気に押されてしまった。

 

「あたし知ってるんだから。レイズがどうしてあんたと旅してたか」

 

 

 

それはまだ船も小さく3人しか居なかった時。

 

「エースは爆睡ね、ほんとお子ちゃま」

 

東の海のとある島、村もあり買い出しを終えたエースは夕飯を食べ終えると部屋に戻りすぐに寝てしまった。

 

「ははは、まぁ無人島で2日間オレとやり合ったんだから疲れて当然でしょ」

 

コーヒーと緑茶の準備をして甲板に出て来たレイズにカリーナは若干恥ずかしそうにしながら腕を絡めた。

カリーナが準備した机に飲み物を置くと2人は星空を眺めた。

 

「ねぇ、レイズはどうしてエースと旅してるの」

「ん?どういうこと?」

 

コーヒーを味わい、レイズが準備してくれたお団子を摘まみながら、カリーナは予てからの疑問を呟いた。

 

「だって、正直エースと一緒にいる意味が解らないんだもん。あ、悪く取らないでね。レイズの方が強いし、レイズの方が賢いし、船だってレイズの所有物。ここまで言って何だけどエースに魅力が無いのよね」

 

カリーナの発言に苦笑しながらレイズは星空を見上げた。

カリーナの言っていたことは確かに的を得ている。

現状、エースは何も持っておらず、何者でもなかった。

しかし、レイズにとってエースである事が何よりも魅力的だった。

 

「いいかい、カリーナ」

 

そこから語られる2人の出会い、レイズを海に連れ出したエースの言葉。

カリーナと出会うまでの全てをレイズは語った。

 

「確かに、エースは何もまだ持っていないけど、空っぽのオレを海に誘い出してくれた。だから、オレはエースが何者になるか見てみたいんだ」

 

そう、夜空に浮かぶ満月を見ながら微笑むレイズはカリーナからしたら、とても神秘的に映ったのだった。

 

あたしたち(カリーナ、シュライヤ、サガ)はあんたとレイズがいたから、今こうしてあんたの船に乗ってる。だけど、レイズは違う。レイズはあんたが、エースが海に連れ出したんだ。決めたのはレイズだし、そこをエースの手柄とかエースが理由とか正直どうでもいいけど、少なくともレイズにとってエースがいることが海に出た理由の一つである。それを自覚しなさい」

 

エースは心を思い切り殴られたような気がしていた。

レイズと出会い、海に出ようと口説き落とし、旅をしながら色々なことを教わり、気が付いたら仲間が増えた。

それでも、レイズと一緒にいる時は義兄弟といた時とも、仲間といる時とも、何か違う安心感があった。

それは、エースにとって初めて背中だけでなく、心と魂を預け合える存在に出会えた証だったのかもしれない。

 

「この先、あたしがどんなに魅力的になって、世界有数の美女になって、世界中の男を虜にする美貌を持ち合わせるようになっても」

「盛ってるな、てか願望だろそれ」

「確かに、どのような大人になるかはまだ解らんが、自身の願望山盛りだな」

「そこの2人黙れ」

 

サガとシュライヤのヤジを切り捨てると、また一段と大きくなった胸を張りカリーナはエースを睨みつける。

 

「そんなアタシでも、レイズがの隣が一番似合うのは『ポートガス・“ゴール”・D・エース』だと確信できちゃう。そう確信しちゃうくらいエースの隣にはレイズが、レイズの隣にはエースが居るのが当たり前なの。あぁ、もう本当にあんたは狡いわ」

 

いつの間にか、甲板にへたり込んでいたエース。

自分がいじけている間も、仲間たちは号令を待っていてくれていた。

そう感じた時、不意に潮風とは違う涼やかな風がエースを通り過ぎていった。

 

-いつまで待たせるつもりだ、早く迎えに来いよ-

 

「ッ!!」

 

急いで声のした方に振り向くエース。

そこにはレイズのいつも座っていたデッキチェアとレイズの愛用している扇があった。

 

「へ、へへへ。そうだよな、オレは馬鹿だな」

「そうよ、あんたは大馬鹿よ」

「おまけに兄貴が大好きなブラコンだもんな」

「船長なのに副船長が居なければ腑抜けっぱなしだものな」

 

カリーナのヤジにサガとシュライヤも乗っかる。

 

「あぁー、レイズとまた騒ぎたいな」

「あたしは抱きしめて貰って、ショッピングデート」

「また、二人で賭場荒らししたいな」

「訓練の手伝いをしてもらわねば」

 

4人それぞれレイズとやりたいことを呟き始める。

そして、誰からか漏れた笑いが船に響き、4人の笑い声が船内に響いていった。

それは、まるで船も笑っているようであった。

 

「うっし、レイズを迎えに全速力でレイズを迎えに行くぞ!!」

「「「アイサー、キャプテン」」」

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