ONE PIECE-彼を王に-   作:完全怠惰宣言

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アニメ1000話には間に合わなかったけど、ONE PIECEに関わる全ての方々に感謝を


道化芝居は終わりを迎え、新たな時代の幕が開く

とある島の砂浜。

現在そこでは世にも珍しい光景が広がっていた。

 

「ウオロロロロ、オレ達はレイズの野郎に一杯食わされたってことか」

 

砂浜に造られた櫓に腰を据え、大樽5個を空にしたカイドウは海王類の蒲焼きを肴にして、6個目の大樽を上機嫌に飲み干していた。

 

「マンママンマ、相変わらず細々した子だね。まぁ、このレモネードのレシピで許してやるとするか」

 

こちらも大樽に造られたレイズ特製のレモネードと、決着後到着したカタクリ手製の特大ドーナツを物凄いスピードで消費していくビッグ・マム。

 

「グラララララ、それでこの小僧がレイズの“頭”になる訳か」

 

巨大な杯に溢れんばかりの酒を注ぎ飲み干した白ひげ、肴として準備された干物などを食べながら自分の隣に座る男に目をやる。

 

「は、えっと宜しくお願いします(無理無理無理無理無理、何この化物の集団は)」

 

ガチガチに固まり珍しく正座して目の前の食事にも一切手をつけない件の船長であるエース。

 

レイズ争奪戦終了後、既に準備された宴の席。

最初こそ怒りを露にしていたカイドウとビッグ・マムであったが、滅多に味わえない物に意識を削がれ、気を良くしていた。

さして、今回の道化芝居の協力者である白ひげもまた、体に馴染む酒を飲みながら、宴を楽しんでいた。

 

「ペロリン、おいレイズ!お前、今回の騒動でママと結んだ海賊協定に関する内容全部履行させる話だったろ!!」

「えぇ、そのつもりですけど?それよりペロスの旦那、お茶は口にあいましたか?」

 

調理場として造られた一角、そこで料理や飲み物を準備し続けたいるレイズ。

助手としてシュライヤにサガ、3海賊団の下っ端が駆り出されている。

そこに現れたのはビッグ・マム海賊団の実質的No.2シャーロット・ペロスペローだった。

 

「く、いまいましい。お前本当にうちの婿に来いよ」

「おいおいおいおいおいおい、諦めろよペロスペロー」

 

そこに横から現れたのは見事に“丸”な男だった。

 

「おや、クィーンの兄御。うちの料理長(プリン)の作ったお汁粉はいかがですか?」

「おう、何だ初めて食ったが白玉の中にチョコが入ってるじゃねえか!!しかし、チョコの甘さを殺すことなく小豆の風味を損なうことなく、何てすげえお汁粉だ」

 

クィーンは初めて食べるお汁粉の新たな可能性にご機嫌だった。

既に大鍋5杯を完食しているにも関わらずその食欲が衰えることはなさそうであった。

 

「おいおい、レイズあまり調子に乗らすんじゃねえよい」

「あれ、そろそろドクターストップかなマルコ?」

 

マルコもまた、綺麗に盛られたワンプレートを片手に集まってきた。

顔に赤みがさしていることから、少し酔っているようではあった。

 

「うちの奴らがそろそろ連れてくるころだから、準備だけしておけよい」

「了解っす。はい注目、調理は20分休憩。調理組も食べて飲んで少し落ち着いて」

 

レイズの声と共に調理場にいた人間すべてが疲れ切ったかのようにその場に座り込んだ。

最奥で鍋をかき回していたプリンへと近付くレイズ。

その前をスラリと綺麗な長脚が行く手を阻んだ。

 

「レイズ、いくら何でも“あの子”はカタクリ兄さんから聞いている以上の報酬じゃないか?」

「くふふふ、スムージーさんお久しぶりです」

 

足長族特有のタトゥーの入った脚を宝物を扱うように地面に降ろし、自身を超える長身の女性であるスムージーと相対するレイズ。

 

「だったら、今この場であなた方がどれだけの契約違反をしてきたか暴露しましょうか?言っては何ですが、僕は相当の不利益を被っている筈ですが?」

 

笑顔を浮かべ、スムージーと相対するレイズ。

スムージー自身も、ビッグ・マム海賊団としてレイズに犯している契約違反を四皇が3人も集まっているこの場で暴露されることで生じる不利益を計算できているわけではなかった。

 

「貴様、我々を脅す気か!!」

 

その言葉に笑顔をより深めるレイズ、その笑顔を直視したスムージーは、瞬間的に背筋を凍らせてしまった。

 

「脅す気“は”ありませんよ。どちらの立場が現状で上なのか理解していないのは貴女ではないでしょうか?解ったら退け、邪魔だ」

 

その言葉に思わず愛刀に手が伸びるスムージー。

そのスムージーの手を掴んだ者がいた。

 

「“邪魔をするな”ではない。落ち着けスムージー」

「邪魔をするな、カタクリ兄さん」

 

ドーナツ造りを終えたカタクリであった。

 

「レイズ、お前もスムージーに当たるような真似をするな。今日という日にお前と決着をつけさせるな」

 

カタクリに睨みつけられたレイズ。しかし、その顔にはどのような感情も写ってはいなかった。

しかし、カタクリと顔を合わせると。

 

「へいへい、申し訳ありません。それじゃ、オレは行かせていただきますよ」

 

ヘロヘロのプリンへと一直線で歩いていき、お姫様抱っこでプリンを抱き上げると近くのソファーへと進むレイズ。

その姿に、同じくヘロヘロの筈のカリーナとペローナ、ページワンを引き摺りながら突進してくるうるティと上機嫌に大股で近づくヤマトの姿があった。

 

「カタクリ兄さん」

「解っている、だが此処で我々の負債をばらされることの方がどれだけの不利益になるか考えろ。それとも、“婿”をプリンに盗られたことがそんなに気に食わないか」

 

レイズへの負債の相殺のために、花嫁修業として送り出される候補にスムージーも確かにいた。

しかし、年齢や立場などの観点からプリンが選ばれたのだった。

そんなスムージーの視線の先には複数の美少女に抱きつかれ、困ったような笑みを浮かべるレイズがいた。

 

「ふん、わたしはもう知らん」

 

苛立ちを隠すこと無く本船に戻っていくスムージー。

 

「ペロリン、レイズと関わって一番の不利益は可愛い妹達の姉妹喧嘩が増えたことだな」

「ペロスにぃ。その不利益すら帳消しに出来るほどの魅力があいつにはある」

「解っている、クラッカーまでの兄妹たちからの評価が高いなんて珍しいこともあるからな」

 

ビッグ・マム海賊団を支えるペロスペローとカタクリ。

二人の心労は当分癒されそうになかった。

 

「プリン、お疲れさま」

「むぅ、まだ大丈夫だもん」

 

レイズに抱き抱えられながらソファーへと着席したプリン。

口では余裕そうにしていても、動けるだけの体力が無かった。

だから、この状況に甘んじて抱きついているのであった。

 

「レイズ~、何でワッチらのとこにこないんでありゃしんす?」

 

プリンが人生の春を謳歌していると、ソファーの後ろからレイズの首めがけて猛スピードで突っ込んできた女がいた。

 

「うるティ、勢いを殺して飛び付こうね。あれ、ペーは?」

 

背中への頭突きで多少ダメージを受けたレイズだったが、いつもセットで付き合わされているうるティの弟であるページワンの姿か無いことに気が付いた。

 

「へ?ぺーたん?あれ、いりゃしゃんせ?ぺーたーん何処いったでありゃしゃんせ?」

 

周囲をレイズに肩車させて見渡すうるティ。

すると。

 

「あ、兄貴」

 

ソファーの真後ろに砂に埋まったページワンがいた。

 

「えぇ!!ぺーたーん、どうしたんでありゃしんす?」

「姉貴がオレ事突貫したせいで埋もれたんだよ!!そんなんだから、兄貴に貰われないんだよ」

「あぁん、誰が粗暴で可愛げがないだコラァ!!」

「そこまで言ってないけど概ねそうだろうが!!」

 

レイズの真後ろの砂浜で起こる一方的な姉弟喧嘩。

それをBGMに笑っていると、レイズの後ろからスルリと腕が延びプリンごとレイズを抱き締めた。

 

「レイズ、いつになったら僕のトキになってくれるんだい」

 

酒気を帯び、頬を染めたヤマトが自分の体を押し付けながらレイズに抱きついていた。

 

「前も言ったけど、オレを惚れさせたいなら憧れになろうとするなよ」

「でもぉ、ぼくはぁ、おでんになるんだぁ」

「はいはい、っとみんなゴメン。ちょっと用事」

 

そう言うと船長たちの集まる席へと歩いていくレイズ。

その顔に笑顔の仮面を張り付けて。

 

「(あ、あかん。胃が死ぬ)」

 

化物3人に囲まれ顔色を悪くしていくエース。

目の前の好物もすっかり冷めきり、氷で満たされていたオレンジジュースも氷が溶け不味そうだ。

 

「はいはいはいよ、ちよっと失礼させてもらうよ」

 

そんなエースの背後から両手と風を操り、追加の食べ物を持ってきたレイズが唐突に船長だけの会合に参戦した。

 

「ウオロロロロ、おいレイズ。いくらお前でも場を弁えた方が身のためだぞ」

「マンママンマ、海賊の酒宴で船長同士が顔を付き合わせているのに、他の人間が来ることなんてご法度だろう」

「グララララ、お前らが仁義をぬかすか」

 

化物3人の意識がレイズに向いたことで盛大に息を吐いて落ち着くエース。

 

「いやぁ、歴戦の王者が孵りたての雛に寄って集って威圧してるところなんて面白味無いですからね。それに」

 

そう言葉を切るとレイズはエースへと視線を向ける。

少し落ち着いたのかいつもの笑顔に近い顔立ちになったエース。

そんなエースの顔に顔を綻ばせるレイズ。

 

「それに、今は雛でもいずれ“王”になる器と見定めた男だ。船長のために命張れないようなダセエ真似オレがするとか思われてるのは正直癪だ」

 

レイズから笑顔の仮面が剥がれ、無表情の仮面のような顔が現れた。

 

「白ひげの親爺にカイドウの旦那はオレにある負債は今回の件でチャラに出来たけどシャーロット・リンリン、たんまり溜め込んだあんたらの負債はどうするつもりだい」

「んが!?レイズ、お前ぇ!!」

 

4人の皇の一人、ビック・マムとして国を治め、女傑として君臨するシャーロット・リンリン。

そんな彼女の恥をかかされているという怒りの感情の乗った睨みに対して負けること無く、冷徹に睨み返すレイズ。

 

「頭張ってる男を守れないからと尻尾巻いて逃げたす男と思われてたならますます癪だ!叔父貴の名で飯食ってるわけでもねぇし、オレが惚れ込んだ男をバカにしたいならまずは溜まりに貯まった負債の清算をしてもらおうか!!」

「このクソ餓鬼が!!」

 

ビック・マムがその手に何かを掴もうとした時、両脇から薙刀と棍棒が突き付けられた。

 

「おいリンリン、口で負けそうだから攻撃しようとした訳じゃねえよな」

「ババア、この宴も協定の範囲だぞ。オレも戦争がしたいが今は未だその時じゃねぇんだ」

 

白ひげとカイドウの覇気にあてられ、冷静さを取り戻したビック・マム。

 

「マンママンマ、冗談だよ。レイズ、お前も忘れてないかい?“アイツ”に返すのは問題ないが、“アイツ”がここにいることがそもそもの条件だろ。いない奴に返せとは虫が良すぎじゃないか?」

 

勝ち誇ったようにレイズを見下すビック・マム。

顔を下げたレイズを言い負かしたと思い笑っているビック・マムだったが、レイズの耳にはとある男が息を切らし走ってきた音が聞こえていた。

 

「だとよ、良かったな“ペドロ”」

「そ、それは本当か!?ビック・マム!!」

 

レイズの呼び掛けに応じるようにその場に辿り着いたのは一人の男。

悪魔の実のゾーン系統の特徴と一致しない獣人。

グランドラインに存在するミンク族の男、ジャガーのミンクであるペドロが息を切らして立っていた。

 

「ぺ、ペドロ!?お前なんでここにいるんだい!?」

「グララララ、間に合ったかマルコ」

「あぁ、どうやらギリギリだったぽいなオヤジ」

 

酒気帯び飛行禁止のタスキを掛けられたマルコが白ひげの後ろから現れた。

海賊王と共通の男と交友のあった白ひげにレイズはペドロを迎えに行くよう頼んでいた。

 

「くそがぁ!!でも約束は約束だ!!オレだって仁義は弁えてるつもりだ」

 

ビック・マムはそう叫ぶと右手を空に掲げた。

すると、彼女の一団に属する船から大量の光る玉が彼女の元に集まってきた。

 

「ほらよペドロ、お前のソウル消費しきれなかった50年分だ」

 

その言葉と共にペドロにソウルを投げつけるビック・マム。

ペドロと呼ばれた獣人にソウルがぶつかると、ペドロの身体は金色に輝きだした。

 

「ビック・マム今し方の無礼申し訳ない。その詫びに此方を受け取っていただきたい」

 

ペドロの一幕が終えたのを見計らい、懐から拳大の宝箱を差し出すレイズ。

 

「んぁ~?こりゃなんだい?」

「タマゴさんの失くされた瞳の代わりになればと探していたモノです」

 

レイズの言葉を合図に宝箱を開けるビック・マム。

 

「おやまぁ、なんて綺麗な宝石だい」

「義眼、としてお使いいただければタマゴさんもさらに箔がつくでしょう」

 

先程までの険悪な雰囲気は消え去り、宴の状況も手伝い、先ほど以上に場に楽しさが溢れていた。

エースはそれを成した自身の副船長を見ていた。

 

「おい、小僧」

 

そんなエースに白ひげは飲み干し空となった巨大な杯を差し向けてニヤリと笑う。

 

「テメエのとこの副船長にここまでさせておいて、いつまでビビってるつもりだ?」

 

白ひげのその言葉に、エースは今とある感情と決別する決心を着けた。

白ひげの差し出した杯を掴み取るとそこに並々とカイドウが飲んでいた酒を満たす。

突然の行動に、その場にいた全員の視線が必然的にエースへと向けられる。

エースは覚悟を決めたように杯を持ち上げると一気に酒を飲みだした。

一滴も溢すこと無く、その場にはエースの酒を飲み干す音だけが存在していた。

 

「お控えなすって!!」

 

飲み干した杯を櫓に置き、立ち上がるエース。

そして、始まるのは自身が定めた襲名式だった。

 

「手前、東の海にて生を受け、山賊にて育った無鉄砲者にございます」

「憧れに身を焦がし、義兄弟との約束のため海に出たまだまだ新参者にございます」

「歴戦のお歴々方から見れば、未々ひよっこ、生意気なクソ餓鬼ではございます」

 

そう言葉を切るとエースの視線はレイズへと向かった。

そして、レイズはエースが今まで見たこと無いような優しい笑顔を向けていた。

 

「ですが!!この身を流るる鬼の血と共にいずれは王になろうとする野心は本物にございやす!!」

 

エースのその言葉に何かに気がついた顔をするカイドウとビック・マム。

そして、事前に知らされていた白ひげは嬉しそうに笑顔になっていた。

 

「名を『ポートガス・“ゴール”・D・エース』と申す駆け出しの海賊を以降宜しくお願い致しやす」

 

その言葉と共に気絶するように倒れたエース。

 

「グララララ、良い啖呵だったぞ小僧」

「まったくよい、おい点滴準備」

 

エースのきった啖呵に気をよくして再び酒を飲み始める白ひげと、気絶したエースを白ひげの宿営地に運ばせるマルコ。

 

「ウオロロロロ、やはり血は途絶えてなかったか」

「マンママンマ、ただの小僧で終わるか鬼になるか楽しみじゃないか」

 

エースの出自を察したカイドウとビック・マムもまた気分よく宴を再開した。

 

「アイツが、ロジャーの子」

 

そして、憧れた男との約束それだけを胸に生きてきたペドロの前にそれまでとは別の光が射していた。

 

「ペドロ」

 

そんなペドロに声を掛けたのは得意気に笑うレイズ。

 

「オレはエースを王にする」

「お前、それは」

「お前はどうしたい?これからも木の上で夜明を待つのかい」

「オレは「それとも、夜明を間近で感じたいなら、いい加減に降りてこいよ」

 

レイズとペドロの視線の先には顔を真っ赤にして目を回すエースとそれを取り囲み大騒ぎに発展している宴の場があった。

 

「オレは、もう一度海に出ても良いのだろうか?」

「決めるのはお前だけど、あの太陽を支えてくれる奴は多い方が嬉しいかな」

 

時代のうねりは加速し、ここから一気にその姿を現していくことになるのだが、それはまた次回。




凍結解除後もこんな感じでゆっくりとやっていく所存です。
次回から一気に時間が飛びますがご容赦ください。
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