宜しかったらどうぞ。
クロッカスの前には一人の青年が座っていた。
この2年間、話題に事欠かなかった一味の頭を任されている青年はある日ふらっと現れると土産とともに盛大な爆弾を落とし、クロッカスの悩みの種であったラブーンとの問題を解決してくれた人物だった。
「それで、新世界は楽しいかエース?」
クロッカスの対面に座り、紅茶を楽しんでいる(素振りを見せている)男『“
「おう、クロッカスさん!この2年間滅茶苦茶楽しかったぜ!!」
エースが海賊として正式に旗揚げし双子岬を出港してから2年の月日が流れていた。
その間、エース率いるシャッフル海賊団は話題に事欠かなかった。
東西南北の4つの海で潰した悪徳海軍の支部は20を越え。
新世界に入ってからも勢力を持っていた名のある海賊を潰して回り、壊滅に追い込んだ海賊団は50を越え。
そのついでに名前を無くした国は10ヶ国に及んだ。
一味の主戦力である5人は全員が億越えの賞金首となり、その賞金額に恥じない戦力となっていた。
一方で、一味と関わりを持ってしまった民衆の反応といえば、ひどく友好的であり、進んでシャッフル海賊団の海賊旗を掲げる島もあるほどであった。
エースとしての目的であったシャンクスへの挨拶も滞りなく行われたが、エースの仲間の面子に流石のシャンクスも腰を抜かしていた。
そして、ラブーンの定期検診とエースの近況報告に双子岬を訪れていたそんな日のことだった。
「エース、お待たせしました」
「おう、“マヤ”!ラブーンの調子はどうだった?」
シャッフル海賊団船医であるマヤの診察が終わり遠くからラブーンの鳴き声が聞こえてきた。
「新しい傷は確認できなかった。本当にエースとの約束を守っているんだな」
「おう、サガ。今回は邪魔しなかったようだな」
「あれは、マヤが襲われると思ったからであって、けして診療の邪魔をしようとしたわけでは」
「ほう、お前さん等は相変わらずの仲のようだな」
2年前は居なかった船医であるマヤ、そんなマヤに付き従うように隣を歩くサガ。
そんなサガの腰には居合い刀が携えられていた。
「さぁて、そろそろ行くか」
「あまり帰りが遅いとレイズが干からびちゃうもんね」
「あいつ、“あの状況”でよく死なないよな」
「はっははは、変わらんなお前さんら」
4人が灯台の隣に建てられたクロッカスの小屋から外に出た、ちょうどその時だった。
「おまえ、オレの特等席に何しやがる!!」
そんな怒鳴り声と共に4人の目の前で山ほどの巨体を誇るクジラのラブーンが殴られたのだった。
遡ること数分前、東の海の入口に一組の海賊達が現れていた。
「おおぅ、ナミ!!あれか?」
麦わら帽子を被り、子供のように眼を輝かせる一人の少年、“モンキー・D・ルフィ”は興奮をおさえること無く、後ろに控える少女へと声をかけていた。
「えぇ、あれこそが“
オレンジ色の髪をはためかせながら、自身の興奮に胸を躍らせる航海士“ナミ”。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ、興奮しているナミさんも素敵だ!!」
目をハートにし、高速で回転し続けながらも軽食の準備を手早く済ませていくコック“サンジ”。
「・・・・・、うるせぇぞエロコック」
「おぉ、なんか言ったかクソマリモ」
船を流れに任せることで舵きりから離れた戦闘員“ロロノア・ゾロ”は犬猿の仲であるサンジの奇行に悪態をつき、二人のいつも通りのにらみ合いが始まった。
「おいナミ!前方に山があるぞ」
砲撃手“ウソップ”が見張り台から叫ぶ。
彼のゴーグルにはハッキリと巨大な山が見えていた。
「はぁ山?霧で何も見えないけどそんなもの下った先には海しか見えない筈よ?」
「くぉらぁ、ウソップ!!てめえ愛しのナミさんが嘘ついてるとでも言うのか」
「でもよぉ、確かに山が」
3人のそんなやり取りの中、徐々に霧が晴れていき前方の視界が開けた時だった。
「ブオォォォォォォォォォォォォォ」
山と思われた巨大な何かから遠吠えのような声が聞こえてきた。
「や、山じゃねぇクジラだ。バカでけぇクジラだ!!」
その正体にいち早く気がついたサンジが叫ぶ。
「どどどどどどど、どうするよ!?」
あまりの事態に声も体も震えるウソップ。
「
そんな2人を余所に呑気な声色でルフィが喧嘩を提案する。
「あんたはじっとしてなさい!!」
そんないつもの調子のルフィに拳骨をいれて黙らせるナミ。
「おい!左に抜けられるぞ!!」
そんなパニック状態の中、ゾロが活路を見出だし全員がその声にしたがい、メリー号を全力で左に傾けていた。
「あ、オレ良いこと思い付いた!」
「ちょっとルフィどこ行くのよ?」
「ナミさん、取り敢えずあのバカのことより今はこっちだ」
ルフィが持ち場を離れ船内へと消えていく。
一味の最大のピンチにいなくなった船長よりも、まずはこの窮地を脱するべきだと残りのクルー全員でメリー号を左に傾けるが、勢いが殺しきれずかなりの速度でクジラに突っ込んでいく。
「「「「(終わった)」」」」
ルフィを除くクルーの心が絶望に染まった時、ズドンと砲撃の音が聞こえ、正面のクジラに砲撃が当たったのを4人が目視した。
「良し!!」
砲撃を実行した犯人であるルフィはメリー号が減速していくのを感じ得意気に笑った。
メリー号は徐々に減速していくがそれでも止まることはなくクジラに見事ぶつかり、羊を模したフィギアヘッドが折れ、デッキに飛んできた。
「し、死んだ」
これから起こる最悪を予感したナミが悲嘆に暮れる。
そんな中、ゾロとサンジ、ウソップはオールをひたすらに漕ぎ少しでも速くクジラから逃げようとした。
顔を上げることの出来ないナミの隣にルフィが息を切らして立っていた。
「る、ルフィ?」
「おまえ、オレの特等席に何しやがる!!」
そう叫ぶと、勢いをつけ右腕を伸ばしその反動を利用して高速の右ストレートをクジラの目に打った。
「「「「お前が何しとんじゃ!!」」」」
4人にツッコマレたルフィの顔は自分が何をしたか理解していない顔だった。
そんなルフィの(苛立たせる)顔に炎を纏った拳が突き刺さり、ルフィはダイニングスペースへと壁を突き破り吹き飛ばされた。
「てめぇ!!オレのダチに何してくれてんだ!!」
理解が追い付かない麦わらの一味に更なる混沌が舞い降りた。
瞬間、動いたのはゾロとサンジの2人だった。
2人は反射的に侵入者へと攻撃を仕掛けていた。
「
二本の刀を交差させ侵入者へと突進して行くゾロ。
「
彼の代名詞とも言える3本の刀を使用した斬撃術「鬼斬り」。
今まで幾人の敵を斬りつけてきたこの技。
「あら、危ないわね。刃物はダメよ」
そんな彼の攻撃は腰からサソリの尾を生やした女性の、そのサソリの尾により軽々と防がれ、その先端の針がゾロの首筋へと伸ばされていた。
「
落下の勢いも利用し、空中で身体を何回も縦回転させ、あたかもナッツを粗く砕く行程のように敵を叩き潰す踵落とし。
今まさに侵入者を捕らえんとした脚撃。
「ほぅ、見事な技だ。だがまだ温いな」
侵入者との間に現れた銀髪の新たな侵入者が持つ刀の柄頭で受け止められてしまい、その衝撃すらメリー号に伝わらない様に霧散させられ、その体裁きからサンジの動きを封じてしまった。
ナミとウソップは自分が見ている光景を信じることが出来なかった。
東の海での激闘という確かな結果があり、勝ち進んできた一味三強。
その三人が簡単にいなされていた。
「・・ォムの」
ルフィが吹き飛ばされたダイニングスペースから彼の声が聞こえてきた。
「バズーカー!!」
多くの敵を粉砕してきたルフィ最大の技が侵入者へと叩き付けられる。
その確信は無惨に砕かれた。
「悪りぃな、オレには効かねぇんだよ」
ルフィの技が当たる瞬間、侵入者の身体が燃え上がりルフィの技がすり抜けた。
「ん?おい、ルフィ!?」
あまりの勢いで侵入者を通りすぎてしまったルフィ。
そんな彼の服を侵入者が掴む。
「なんだ、お前!!ん?エース!?」
「「久しぶりだな」」
周囲を置いてきぼりにして義兄弟は再会した。
原史よりも大分速く。
もしかしたら年内最後になるかもしれません。
来年もこんな感じで細々とやらせていただけたら幸いです。