作者は何も考えていません。
船尾にて不満を隠そうとしないエース。
周囲は自身がやるべきことをやり、“鎮圧”した海賊島の財宝を金庫にしまい、プリンとペドロの作る昼食を心待ちにしていた。
「うらぁ、いつまでも拗ねてんじゃねぇよガキか?」
両手で書類を抱えたレイズがエースへと声をかけてきた。
「うっせぇな!島の件があったにせよまだ余裕あったろうになんであのタイミングで一旦離れたんだよ!」
「あの航路ならナミちゃんさえいれば“あの馬鹿共”の島まで渡りきれる。“船長”、晴れた日に降る雨のように清らかな青い髪、ここ最近姿を見せない王女がいるだろ」
「んっ?なんの話だ?」
「そこの国の王国護衛隊長も姿を見せないらしい」
「んー?あ!」
「皆、料理の準備が出来たぞ」
エースが何かを気が付いたのと同時にペドロから昼食の準備が出来たと報せがあった。
「まぁ、飯食いながら話すさね。行くぞ」
書類を風で浮かせるとエースの頭を優しく叩き歩いていくレイズ。
「あいつぅ、まぁた悪い顔してたなぁ」
「行儀が悪いけど食いながら聞いてくれ、お宝の話だ」
ペドロの作った海老カツサンドを食べながら、レイズは机に置いた書類に視線を送る。
「世界政府加盟国にして砂漠の楽園“アラバスタ”。とある海賊が縄張りにしてから雨が降らなくなり、民衆の反乱が目立つようになった」
「ママも面白がってほっておいたけど、レイズ“お宝”って」
「ユガラ、まさか」
「そろそろ本腰いれるか、ポーネグリフ探し」
“ポーネグリフ”、その単語が船内に響いた。
シャッフル海賊団全員の顔に意味深な笑顔が浮かぶ。
「なんでこの話になるとお前らスッゲェ悪い顔になるんだよ?」
エースは、エースだけは知らない。
レイズは仲間全員に頭を下げている。
エースが自身の出生を話した仲間にだけだが。
「“鬼の子”だから生きていてはいけないというなら、オレがそんな世界を否定する」
その瞳には世界に向けての憎悪がハッキリと映し出されていた。
「“あのバカ”が“あのバカ”らしく生きることを許さないならオレがそんな理をぶち壊す」
レイズの気の昂りに呼応するように周囲の風が徐々に冷たくなっていく。
「オレは、オレの船長を王にしたい。この船に乗った仲間が不幸にあうならあのバカとそんな理不尽をぶっ壊していきたい」
その時、クルーは始めて“フェンシルバード・レイズ”の素顔を見る。
「だから、あの太陽を沈めないために、力を貸してくれ」
そう言って頭を下げるレイズの答えを拒否するクルーは居なかった。
皆が知らず知らずエースという太陽と共に海を行くことが楽しくてしかたがなくなっていた。
だから、レイズの願いを承諾する。
ただ、一部の女子にとってエースこそレイズを手にするための一番の障害であると認識されることになるのだが。
「お前は気にせず前向いて走り続けろ、オレ達が勝手に着いてってやるだけだ。ほれ、ルフィくんのビブルカード」
エースの首に掛けられた紙の入ったネックレス。
可愛い弟の生存を知らせるその紙にエースはニンマリと笑顔になる。
「よっしゃ、野郎共!!目指すはウィスキーピークだ!急ぐぞ急げ!」
「記録室にエターナルポースあるから久し振りに“飛ぶ”よ」
「ほらほら、帆畳んで!!エースとレイズ二人掛りで飛ばすよ。2人は船尾にさっさと行く」
この数分後、壊れるんじゃないかなぁという速度で空を飛ぶジャック・ポッド号がいたとかいないとか。
ひとっ飛びの後、目的地に向けて順調に航海をするジャック・ポッド号、見張り台には夜目も鼻も利くペトロがいた。
レイズの「血反吐吐いただぁ?大丈夫、生きてるならまだ逝けるでしょ」という文字通りの「殺してくれ(精神が)死ぬ前に」訓練を瀕死で乗り越えたペドロは満月であろうと己の野生をコントロールする術を身につけていた。
そして、今晩の満月に際して集中させることで集中させることでとんでもない距離の見張りを可能としていた。
「お、あれは。夜組起床、島が見えたぞ」
伝声管を通して本日の夜対応組およびエースとレイズを起こしたペドロは自身の知り得た情報を伝達していった。
「あはははははははは、この状況下で喧嘩するのか」
「あー、多分あれだな。ルフィの奴が騙されたんだな」
「それでいて敵は倒すし、ナミはナミで一国の王女様を脅すなんてホント面白い一味ね」
甲板に集合したエース・シュライヤ・カリーナは抱腹絶倒といわんばかりに大笑い。
「んで、隊長殿が囮になって相手を撒く算段という訳か、・・・・・エース」
未だに笑いっぱなしのエースの頭を叩き正気に戻させたレイズ。
何やらエースに指示を出し、それに笑顔で了承したエースは空へと駆け飛んでいった。
「さてと、カリーナ悪いけど空き部屋一つか二つベッドメイクしておいて」
「え?良いけど王女様をこっちに乗せるの?」
カリーナに空き部屋の準備をさせる、ということは女性を乗船させる予定があるということなのだが、カリーナの言葉に苦笑いを浮かべるレイズ。
「まぁ、あれだ使うか使わないかは本人次第だけど、多分使うでしょ なら」
レイズの最後の言葉は偶然吹いた夜風で消し飛ばされた。
それを聞き逃したことをカリーナは大変後悔することになる。
そして、カリーナが船内に入ろうとした時だった。
闇夜にも明かりを与える巨大な爆発が起きた。
「あちゃ、やり過ぎだよエース」
その有様にレイズだけは頭を抱えていた。
一方、ここは麦わらの一味の母船『ゴーイング・メリー号』。
操舵室前の手すりに座り、妖艶に微笑む
髪の色が黒と白という違いこそあれどその顔は瓜二つであった。
「さっきそこでMr.8に会ったわ」
「まぁ、あの爆発じゃあ跡形もないでしょうけど」
「なんであんた達がここにいるのよ」
ミス・ウェンズデー、ビビの怒りの形相でその2人が敵であることを把握した麦わらの一味。
「ビビ、あの2人は誰のペアなの」
ナミはこの状況であろうとも情報を流すことを第一と考え、実情を知るビビへと話しかける。
「さっきも言ったけど、Mr.0にはペアとなる女性エージェントが2人いるの。それがあの2人。黒髪がミス・オールサンデー、白髪がミス・ヴァケーションよ」
そのビビの叫びともとれる声にミス・オールサンデーとミス・ヴァケーションを挟むようにパチンコを構える狙撃手ウソップと銃を構えるサンジが姿を見せる。
「おい、サンジ状況わかるか?」
「いや、愛しのミス・ウェンズデーの危機に身体が反応しちまってよ」
そんな状況の飲み込めていない2人に対してなのかミス・オールサンデーがため息と共に手をクロスさせる。
「申し訳ないけど」
その言葉と共に甲板にて武器を持っていたゾロ・ナミ・ウソップ・サンジの手から武器がはたき落とされる。
「私たちにそんな物騒なモノ向けないでくれるかしら」
「そうね、思わず怖くなってしまうわ」
それに同調するようにミス・ヴァケーションが指を鳴らすと甲板にいる全員が蔦のような植物に拘束されてしまった。
「半端な実力で“この海”に来たからかえって哀れね」
「そうかしら?無鉄砲は新人に許された数少ない特権じゃない?」
ミス・ヴァケーションが蔦に拘束されたルフィ達を少し馬鹿にし、ミス・オールサンデーがそれを嗜めるようでいて小馬鹿にしたような言い草に全員がカチンときている。
そんな時だった。
「ちょっくら、ゴメンよ」
メリー号へと巨大な炎が降り立った。
「ほれ、こいつは無事だぜお姫様」
炎は人の形となり、ついでに持ってきたような言い草でビビの前に男性を優しく下ろす。
「ご無事ですかビビ様!!」
「イガラム!?あなたも無事だったのね」
「はい、こちらの御人が爆発の瞬間に私ごと上空に飛んでくださいまして」
炎が止むとそこには麦わらの一味にとってはつい最近あったばかりの存在が立っていた。
「エース!!なんでここにいんだ?」
ルフィのいち早い反応に苦笑しそうになるエースだったが、その不遜な態度に冷たい汗を感じるミス・オールサンデーとミス・ヴァケーション。
「にひ、久しぶりだなぁロビン姐さん。レイズに会えなくて大丈夫だったか?」
「!?久しぶりねエース。あまり年上を揶揄うモノじゃないわよ」
「ロビン!!“火拳”と知り合いなんて報告受けてないわよ」
「ごめんなさい、ノイン。現Mr.2の昇格試験の時に協力した賞金稼ぎが彼らよ」
「そいじゃ、役得で後ろから拘束させていただきますか」
ミス・オールサンデーもといロビンの気が抜けていたのか後ろから優しくハグされ動きを封じられた。
「レイズ!なんで」
「よ、久しぶり。あとカリーナは殺意を引っ込めて」
「ロビン姐さん久しぶりといいたいけどレイズに抱きしめられて羨まし」
つい最近あったばかりのエースの仲間たち。
彼らとビビの宿敵が何やら乳繰り合っている現場に全員が置いてきぼりになっていた。
「あ、そっちのお姉さん。っとノインさん?でしたっけとりあえずうちの船に護送という形で」
ロビンを姫抱っこ状態で連れ去るレイズ。
ノインの横を通り過ぎるときにノインにしか聞こえない何かを呟いて。
そんなノインもペドロに剣を突きつけれれ連れて行かれた。
「それじゃ、朝まで碇泊ということでよろしくな」
そう一言いうとエースも自身の船へと帰っていた。
「いいから、助けなさいよ!!」
ナミのそんな怒声を聞かないふりして。