映画楽しみ。
ウタ可愛い。
「君、こんなとこで何してんの?」
本日、まだまだ子供という年齢のレイズが祖母ととある島に補給で立ち寄った際に見つけた日当たりの良い大きな木の下には蹲って泣く少女がいた。
「グス、いえでしてきた」
そう言って泣き腫らした顔を再び抱えた膝で隠しグスグスと泣く少女。
現在のレイズならその場で少女が泣き止むまで待っていただろうが、当時のレイズは嫌そうにため息をつくと町へと戻っていった。
本日、祖母は昔馴染みと会うからとお小遣いを手渡され町へと放り出されていた。
だから、軍資金はあるから普段できない豪遊をしようと意気込んで一歩を踏み出した。
「はい」
少女が蹲って動こうとしなかった木の下。
そこには両手にソフトクリームを持ったレイズが眠そうな目をしながら立っていた。
「え?」
「早く取れ、溶ける」
そう言われ少女は思わずソフトクリームに手を伸ばしていた。
「冷たくて美味しい」
「そか」
先程までの泣き顔が嘘のようにハニカミながらソフトクリームを美味しそうに嘗める少女。
「聞かないの?」
「何を?」
半ばまでアイスクリームを食べ終えた少女がレイズに問い掛ける。
アイスクリームを食べ終えているレイズはどこから取り出したのか、バイオリンの調律をしていた。
「あたしが家でした理由」
「興味ない」
そこから再び会話が途切れる。
風が心地よく少女の頬を撫でる。
少女が隣を見るとレイズがバイオリンを構えていた。
そして、始まる演奏。
それは。
クラシックと呼ぶには軽快で。
ジャスト呼ぶにはポップで。
少女の心を、頑なに閉じ籠っていた殻を糸のように解きほぐしていった。
「すごい、カッコいい!!」
「ただの
「だって、本当にカッコ良かったんだもん」
するとレイズは再び木に寄り掛かると紙に何かを書き始めた。
「それなに?」
「さっきの曲の楽譜」
「書けるの!?」
「バアちゃんが煩くてね、書けるようになったの」
少女は身を乗り出してレイズの書く楽譜を見詰めていた。
「むぅ、読めないよぉ」
「そうしたら、“船”に戻った時にでも音楽家に聞いてみな“海賊”だろ?」
「なんで解ったの?」
「ここ、“海賊島”だよお嬢ちゃん」
2人がいるのはとある海の気候穏やかな海賊島。
引退した海賊の集まる場所であり、誰もが穏やかに暮らしている。
「うむぅ、ふぁああ」
「ふ、おネムかな?」
「おにいちゃん、もう少しここにいてね。起きたら帰るから」
「あぁ、迎えが来るまではいてあげるよ」
「あいがとぅ」
その言葉を最後に少女は眠りについた。
レイズは約束通り楽譜を書きながら迎えに来た男に一言だけ言った。
「娘、大切にしろ“シャンクス”」
「あぁ、世話掛けたなレイズ」
その言葉と共に空へと翔んでいくレイズ。
木の麓には自分が来ていたサマーカーディガンを着せた少女、“ウタ”と楽譜が数枚置かれていた。
「忘れもんだぞ」
シャンクスが楽譜を手渡そうとするが、レイズは顔を横にふり受け取りを拒んだ。
「ウタに上げる」
「曲名も無い楽譜を渡すのか」
そう言われて少し考え込むレイズはインク壺風を通して楽譜に曲名をいれた。
“新時代”
そう書かれた楽譜をシャンクスは笑いを堪えたような笑顔で胸にし舞い込む。
「それじゃあなレイズ」
「またいつか、シャンクス」
ふっと、意識が浮上してきたのを自覚して起き上がるレイズ。
「“記憶の挿し込み”か。久し振りだな」
レイズ自身が自覚している特典のような何か。
正史で新たな情報が解り、それが何らかの理由で自分が関わる時、“後付け”された記憶が挿し込まれ、歴史が修正される。
甲板で誰かが流しているであろうラジオから歌が聴こえてきた。
「良い曲じゃないか、なぁウタ」
レイズの部屋の壁に無理なく挿し込まれた新たな品。
そこに描かれているのは世界的な歌姫となった少女。
新たな冒険が幕を開ける。
僕を信じて?
信じますとも!