ONE PIECE-彼を王に-   作:完全怠惰宣言

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暗いよ、辛いよ。
捏造だけどさ、辛いよ。


Cの快盗/彼女は如何にしてその道を選んだのか

“女狐カリーナ”

アウトローをターゲットにする新進気鋭の女盗賊。

弱冠13歳ながら盗んだお宝は数知れず、あまりに鮮やかな手口は古参の泥棒達からも称賛されるほどであった。

そんな、彼女は如何にして“盗賊”という道を選んだのだろうか。

意外かもしれないが、カリーナは“新世界”で育った、幼少期まで何処にでもいそうな少しお転婆が過ぎる女の子だった。

彼女が、10歳になったとき人生が大きく変わった。

カリーナはその日、家族と共にシャボンディ諸島を訪れていた。

そこで、彼女は“とある存在”と出会ってしまった。

 

世界貴族“天竜人”

 

カリーナは“誰か”に押し出され、天竜人の歩く前に飛び出してしまった。

不敬を咎められたカリーナはその場で奴隷にされてしまった。

両親に助けを求め、辺りを見回すと自分の知らない誰かから多額のベリーを受けとる両親の姿があった。

彼らは、カリーナに目もくれることなくその場を後にした。

天竜人は余興だといってヒューマンショップにカリーナを売り払い、なにもせずに帰っていった。

ある意味、カリーナは幸運だったかもしれない。

彼女には竜の爪痕が残ることはなかったのだから。

檻に容れられたカリーナを買い取ったのは好色家で知られる貴族だった。

幼いながらも美しさがあったカリーナを気に入り競り落としたのであった。

貴族が帰国することとなり、船にのせられたカリーナ。

しかし、彼女は両親に会いたい一心で走る船から海へと飛び込んだのであった。

何とか近くの島に流れ着いたカリーナは、両親から教えられたある技術を駆使して両親の元に帰るための資金を作り始めた。

それが、“盗み”だった。

子供だからこそ侵入可能なルートを駆使して盗み続けた。

換金の際には子供だからと低く査定されることは日常茶飯事だった。

それでも、両親に会いたい一心で彼女は盗み続けた。

気がつくと、新世界から東の海に流れ着き3年の月日が流れていた。

そして、現在彼女は人生最大の窮地にたたされていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「もう一度だけ聞こう。女狐”カリーナ、お前ほどの盗賊が何で傷だらけで漂流なんかしてんの」

 

一目見たときから、自分の中に育った“快盗の勘”が警告をならしていることにカリーナは気がついていた。

目の前の男レイズは口調は砕けているが、先程の柔らかな笑みと違い、目が笑っていないのだ。

嘘をつけば殺される。そんな考えが頭をよぎるほどだった。

 

「ま、バレてるなら仕方ないか。実は此の辺りで仕事をしたんだけどね、思いの外身体が成長してたみたいで今までだったら通れてた場所でつっかえちゃってね」

 

そう言ってカリーナは年不相応に育った胸を腕を組むことで持ち上げ、レイズに見せつけ反応を試した。

しかし、自分から一切視線をそらさないレイズに少しだけ女のプライドが傷ついたのはカリーナの秘密である。

一方のレイズも内心では某一味のコック(未定)のように目をハートにしメロリンしていたのであった。

 

「その時に、そこの城主に出くわしちゃってね。しかもそいつがジャラジャラの実の能力者で、此の有り様よ」

 

そう言いながらも悪戯小娘を思わせるおどけた笑みを浮かべた。

その時、カリーナは暖かな暗闇に覆われた。

まるで、暖かな布団にくるまれているような安心感が彼女を包み込んでいた。

 

「・・・・や、やだなレイズ。いくら私が美少女だからって急にこんな「もう、良いから」

 

カリーナの耳にレイズの声が聞こえてきた。

 

「カリーナ、もう良いから。頑張ったな、本当に頑張ったんだな」

 

そう言うレイズの声が震えていることにカリーナは気が付いていた。

それだけではない。

レイズを退けようとした手に水が落ちてきているのが分かった。

そして、それが涙であることも。

 

「お前にとっては、憐れみの行動だと断じられてもオレはなにも言えない。だけどな」

 

―泣いてる女の子を平気な顔で見てられるほど汚くなれないんだ―

 

カリーナがはっきりと覚えているのはここまでだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「もう、良いのか」

 

カリーナが泣き疲れて眠ったのを確認して部屋を出たレイズへと声をかけたのは湯気がたつミルクが入ったカップを両手に持ったエースだった。

 

「なんだ、やっぱり聞いてたんじゃないか」

「まぁ、あれだな。悪かった任せたのに」

 

そう言ってカップを差し出すエースとそれを受けとるレイズ。

扉の前、二人はただただじっと立っているだけだった。

 

「なあ、レイズ」

 

暫しの沈黙の後にエースは意を決したように切り出した。

 

「前にお前が話してくれた“人拐い村”の話だけど」

「あぁ、恐らくカリーナはそこの“商品”出身だろう。本人も薄々気がついているみたいだったがな」

 

賞金稼ぎ時代レイズは少なからず政府主導の作戦に参加したことがあった。

その一つが新世界のとある島を拠点にしていた人拐い屋の殲滅作戦だった。

その村は大人全てが人拐い屋を生業にしており、子供を赤ん坊の頃に拐ってきてまるで家畜を育てるように育て、ヒューマンショップに売り捌いていたのだ。

彼らは、必要とあれば町一つを虐殺して赤ん坊を全て拐ってくる残虐性を持っていた。

いくら世界政府加盟国に“お得意様”がいたとしても、庇いきれる範囲にも限度があった。

そして、人拐い村は村民全員が賞金首となり、海軍主導の殲滅作戦によりその全てを消されたのだった。

その作戦にレイズは参加していたのだった。

皮肉なことにこの作戦に参加したことでレイズは「風迅」の異名を得たのであった。

 

「カリーナの奴、この後どうするんだろうな」

 

エースとて“鬼の子”、知られれば確実に良い未来は訪れない。

そんな自分よりも、カリーナのことが心配でならなかった。

 

「なんで、世界はこんなにも残酷なんだろうな」

 

エースのそんな呟きを最後に二人の間から会話がなくなった。




まだまだ頑張りますよ

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