でもアオハル-ナミ編-見て復活。
オレって結構安いな。
カリーナにとって夜とは最も恐ろしいものだった。
暗闇が自分を覆い隠し、この世界に自分は必要とされていない錯覚に襲われるからであった。
そんな彼女は、久しぶりに夜に眠りについていた。
なぜだか知らないが、”あの二人”を感じれるこの船は大変落ち着けたからであった。
翌朝、久しぶりに熟睡したカリーナが甲板に顔を出すとそこには目を疑う光景が映し出された。
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深夜、甲板で夜空を見上げるエースがいた。
エースはこの世の不条理を嘆くだけだった子供時代に思いをはせていた。
義兄弟が無残に殺されたと知った後、ダダンに止められてもなお、敵討ちに行こうとした。
しかし、その夜ダダンが電伝虫を使用しているのが聞こえてきた。
「ガープさんよ、あたしにとってエースもサボもルフィも正直”ただのクソ餓鬼”なんだよ」
口から出てくる言葉とは裏腹にその声には悲壮感が滲み出ていた。
「エースはクソ生意気なクセして無鉄砲で、誰にでも喧嘩吹っ掛けるようなやつだ。
でもよ、あいつの心根は誰よりも真っすぐなんだよ。
ルフィは甘ったれでエースとサボの後にくっ付いてるだけのはなたれさ。
そんなあいつは誰よりも自分に正直なんだ。
サボも、生まれを知った時は心底驚いたけど、あいつが一番真っすぐに生きようとしてたさ。
でもよ、なんでだよ。
なんでサボは死ななきゃなんなかったんだ。
悪いけどガープさん、しばらくウチに顔出すのは控えてください。
今、あんたの顔見ちまったらあたしは、あたしは歯止めが利きそうにないんでね。
後、これだけは言わせてもらうよ。
あたしの馬鹿”息子”達を二度と理不尽にさらすんじゃねえ」
実の親の顔を知らないエースにとって、この時初めて”母親”が生まれたように思えた。
口を開けば喧嘩になり、何かあるとすぐ殴られる。
旅の門出にも顔を出しもしなかったクソババアだったけど、それでもエースは愛してくれたと感じることが出来ていた。
「なあ、ダダン。オレはお前が胸張って”息子”って言ってもらえるだけ立派になってやるぜ」
カリーナの出生を聞いてからレイズとの間に会話はなかった。
互いに思うところがあるのだが、前に進んでいるカリーナへどのように力になってやれればいいのか解らなかったからでもある。
ただ一つ、己の真ん中に熱い炎のような何かが灯ったような気がしたのだった。
「・・・・・エース」
甲板へと続く唯一の扉の前にレイズが立っていた。
「お前に、この間言ったこと覚えているか」
そう言って右手に握られた”手配書”を風に乗せてエースに投げるレイズ。
そこには、最近発行されたばかりの1000万ベリーの賞金首と900万ベリーの賞金首の顔が映し出されていた。
「カリーナを痛めつけたのはたぶんこいつらだ。貴族のくせに海賊を名乗って好き勝手やってきたツケがこのザマだ」
「”
「そして、”運の悪い”ことにそいつらがこっちに近付いてきてるんだ」
レイズのその言葉を聞いたエースの顔は憤怒に染まっていた。
「なぁ、レイズ」
いつもの調子でレイズへと声をかけるエース。
「カリーナの部屋には”
カリーナ自身にも”
レイズも普段と同じ調子で声をかけているが、普段の二人からは考えられないほどに、周囲の景色が歪むほどに怒気が溢れていた。
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「ジャウラジャラジャラジャラジャラ、ジャウラジャラジャラジャラジャラ。あの船かあの餓鬼が乗っているのは」
体中に鎖を配した服を着た巨漢の男が大声をあげながら笑っていた。
「はい、ジャラララ様。”ビブルカード”はあの小さな船がある方角に動いておりますので、はい」
その横にいる刀を腰に差したモノクルを上下に頻回に動かす執事風の男が報告を上げている。
「しっかし、ビュンゾウの言う通り”あの小娘”をとっ捕まえた時に爪を切らせておいて正解だったぜ。まさか逃げられるとは思いもしなかったからな」
「いえいえ、私たち一同”若様”のお手を煩わせることこそなきように努めておりますゆえ万全を敷いたまでのこと」
甲板に鎮座する豪華絢爛なソファに体を預け肥え太った肉体を揺らし笑い声をあげるジャラララ。
その横では表情を一切変えることなく、手元のビブルカードと呼ばれる不思議な紙を見続けるビュンゾウ。
「(しかし、この木偶の坊に付いていくのもそろそろ限界かと。あの小娘を捕らえ小娘で遊んでいる隙に本国と連絡を取り私の今後の安定を確約させなければ)」
ビュンゾウにとってジャラララに付いてきたのは、自身が故郷で行っていた残虐非道な行いの追及を逃れるためとジャラララの父親である某国の国王に恩を売るためである。
某国親衛隊に所属していたビュンゾウは居合の名人であり、国に仇なす存在を今まで何人も斬り殺してきた。
一方で、彼は生粋の切り裂き魔だった。
軍に入ったのも定期的に人を斬れるからであった。
そんな彼の本性を見抜いていた当代の国王はジャラララのお目付け役を任せ、二人を国外で亡き者にする計画を遂行したのである。
無論、ビュンゾウにバレているとは知らずに。
ビュンゾウが今後の身の振り方を考えているその頃、見張り台にいた兵士は一つの違和感を覚えた。
望遠鏡でよくよく覗いてみるとそこには自分の常識をはるかに超えた景色が映っていたのである。
「若様、団長」
見張りの兵士の声が聞こえ見張り台の方に視線を向けるジャラララとビュンゾウ。
「ジャウラジャラジャラジャラジャラ、どうした”化け物”でも見えたのか」
ジャラララは能力者になって以降無敗を誇っていた。
それはビュンゾウが勝てそうな人間を判別していたのも大きいが、この東の海において”能力者”であることは大きなアドバンテージを占める要因になる。
勝ち続け、もともとあった虚栄心が肥大化していたジャラララは見張り台の兵士の声に”怯えの感情”が含まれていることに気づきもしなかったのである。
「う、海を。海を走り抜けてくる者たちがいm」
兵士は最後まで報告することが出来なかった。
なぜなら、彼のいた見張り台が突如として”削り取られた”のであった。
「おうおうおうおう、これまた大層な船だな。おいレイズ、オレは我慢しなくていいんだよな」
甲板に現れたオレンジのテンガロンハットを被り鉄パイプをステッキのように器用に回す青年が隣の男に声をかけた。
「そうだな、エース。あの”贅肉ダルマ”がお前の相手だ。後の”雑魚”はオレに任せろ」
まるで、これから買い物にでも出かけるような気軽な様子に周囲は困惑していた。
その中でジャラララとビュンゾウは其々に違う思いを巡らせていた。
「どっちも細っちい上に無礼だな、ワッシに逆らうとどうなるか教えてやるぞ。者どもかかれ」
ジャラララのその声に反応した兵士が一斉に二人へと襲い掛かった。
攻撃の間合いまであと一歩というところで兵士たちは突如として、得体のしれない寒気に襲われた。
その寒気は自分たちの目の前にいる二人の青年から発せられていた。
すると、今まで目を合わせることもなかった二人の青年と誰しもが目が合ったような気がした。
その時だった。
「「うるせえよ、お前ら黙れ」」
それは、大声ではなかった。
それは、怒りに任せた声ではなかった。
しかし、二人の声を聴いた甲板上にいたすべての兵士が、二人の声を聴いた瞬間に気絶してしまったのであった。
その異常ともいえる光景を前にビュンゾウは警戒心を露わにしていた。
「(今のは、まさか。イヤこの
ビュンゾウが刀に手をかけながら自分の思い浮かんだ考えを否定するように顔を振る。
そんな中、ジャラララは形容しがたい顔をしていた。
「お前ら、一体何なんじゃ。ワッシを誰と心得ておる」
この期に及んで自分の立場を理解しようとしないジャラララの顔にエースと呼ばれていた男が2枚の紙を投げつけた。
その紙は突然の突風によりジャラララの顔に張り付いた。
「ああ、知ってるよ。手前らは薄汚ねえ賞金首ってことは」
そう言って手に持っていた鉄パイプをジャラララへと向けるエース。
「手前が何者だとか”どうでもいい”んだよ。手前はオレを怒らせた」
エースの頭に先ほどレイズに泣きついていたカリーナの声が聞こえてきた。
”本当は解っていたんだ、でも認めたくなかった”
その声には彼女のこれまでが詰まっているようだった。
”認めちゃったら、私には何もなくなっちゃうから”
この世の理不尽を自分も体験してきたつもりになっていた。
”大好きだったお父さんもお母さんも嘘になっちゃうから”
ふと隣を歩くレイズを見る。
”そうしたら、わたしまで”ウソ”になっちゃうから”
レイズの顔は一緒に旅するようになって初めて見る”無表情”だった。
”
エースとジャラララの視線が合う。
”
レイズとビュンゾウの視線が合う。
見張り台の残骸から双眼鏡が落ちてきた。
双眼鏡が甲板に落ち壊れる音ともに戦闘が始まるのであった。
ズバリ、エースのお相手は?
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何故か生きてる幼馴染み系女流剣士
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恋愛処女帝
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砂漠の王女
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サラダなあの子(推薦は感想に記入を)
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馬鹿野郎、エースがホルホルだろ(無回答)