ONE PIECE-彼を王に-   作:完全怠惰宣言

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この小説を書いていると私の作品制作において東映特撮(主にライダー系)の影響を多大に受けていることに今更ながら気づきました。
今回、本文内でエースがとある仮面ライダーの名セリフを言っていますが、大人になってもやっぱり彼らは永遠のヒーロなんだなと改めて実感しました。


Cの快盗/その心に灯る焔

2ヶ月。

エースとレイズが旅を始めてからそれだけの月日がたった。

その旅の中でエースはレイズから色々なことを教わった。

簡単な航海術、簡単に作れる料理、綺麗なお姉さんのいる店での楽しみ方、格好良く見える酔いにくい酒の飲み方、猿でもわかるギャンブルでのイカサマの仕方。

良くも悪くも色々なことを教えてくれるレイズはいつしかエースの中で嘗ての相棒と同じレベルで信頼のおける存在になっていった。

そんなある日、海賊になったらどっちが船長をはるかと言う話になった。

 

「そんなもん、エースがやりゃ良いだろ」

「そんなもんってレイズは船長やりたくないのかよ」

 

カリーナを釣り上げる前の晩、レイズが作ったノンアルカクテルを飲みながら話したのを何故かいまエースは思い出していた。

 

「レイズは船長に興味ないのか」

 

ストローを指したカクテルグラスを遊びながらエースが聞くと食べ物で遊ぶなとレイズに小突かれた。

 

「いいかエース、オレはな・・・・」

 

 

 

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ジャラララとエースの戦いはジャラララが振るう鎖の嵐をエースが一方的に避け続ける展開となっていた。

 

「ジャウラジャウラジャウ、巧くよけるじゃないか。しかしいつまで持つかな」

 

掌から打ち出される鎖を振り回し続けるジャラララを前にしてエースは自分がひどく冷静であることに驚いていた。

 

「(コレならいつもレイズとやってる模擬戦の方が何倍も手強いな)」

 

レイズと出会い、ガープ(クソジジイ)による虐待擬き(特訓)とは違う、本当の意味での特訓を受けるようになり、エースの実力は格段に上がっていった。

賞金首を捕らえ、つれていった先の海軍支部で海兵を交えた戦闘訓練、無人島を見つければレイズによる広範囲攻撃に対する実践講習。

ただ危険地帯に放り込まれていた()()()と違い、その一時一時が確実に自分の力になっていることをエースは実感していた。

特に、“風”という目視しにくい攻撃を受け続けたことで、目に写る攻撃ならある一定までなら避けられるようになっていた。

ジャラララの鎖による攻撃は今のエースにとっては簡単に避けれてしまう程度の速さしかなかった。

 

「(こいつ()()に苦戦するようじゃオレはレイズに顔向けできねえ)」

 

 

 

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「オレはな、”夢”がなかったんだ」

 

あの日、どちらが船長をやるかという話し合いの中でレイズがぽつりとつぶやいた。

 

「”世界一周”、”国王になりたい”、”腹いっぱい旨いモノ食べたい”、”誰も見たことがない景色を始めて目にしたい”そういった夢や野望っていうのがなかったんだ」

 

エースにとってそれはレイズが零す初めての弱さだったかもしれない。

旅をするようになり、エースは何かにつけてレイズと一緒に行動した。

情報収集がてら歓楽街に行くこともあった。

賞金首を捕らえにスラム街へと足を踏み入れることもあった。

海軍に賞金を受け取りに出向き、そのまま賞金すべてを一晩で遊びきった。

どれもこれも、初めての経験だった。

レイズには言ってやらないと決めているが”兄貴”がいたらこんな感じじゃないかとずっと思っていた。

そんな男が漏らした初めての弱音だった。

 

「だから、新世界に一度帰って今後をどうしようか考えようとしてたんだがな。そんな時に”とんでもないアホ”に会っちまったんだ」

 

そう言って真っすぐに自分を見てくるレイズ。

その瞳には綺麗な焔が灯っているようだった。

 

「そいつは、初めて会ったばかりの人んちの冷蔵庫を空にしちまう考えなしで、悪びれもせずに豪快に笑いながら楽しげに笑うんだ。海に出たばかりていうのを差し引いても無計画すぎて目も当てられないアホなんだな。そんなアホは空っぽのオレを海に誘ってくれたんだ」

 

そう言って立ち上がるとエースの頭を乱暴に撫でまわした。

 

「そんなアホがどんな将来を描くのか、もしこいつが大物になるならその姿を間近で見てみたい。そう思ったんだ」

 

そう言って頭からてを離すと甲板へと足を進めた。

 

「だからよ、オレにとってお前がこの先の道標なんだ。あんま頼りにはしてないけど、お前がオレやこれから仲間になる奴らの前を走り続けてくれ」

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

「(オレよりも強くて、何倍も賢くて、大人で、カッコイイ。そんなレイズがオレを”(カシラ)”として認めてくれたんだ。そんな男に)」

 

今まで伏せていた顔をジャラララに向けるエース。

その顔には”覚悟”が映し出されているようだった。

それは、何の信念もなく、自分が優れていると勘違いしているジャラララには出来ない顔であった。

 

オレは、そんなレイズに顔向けできねえような男にはなりたくねえんだよ

 

そう叫ぶとエースは鎖の嵐の中を猛スピードで駆け抜けていった。

闇雲に走っているように見える行動だがよく見ると手に持った鉄パイプでジャラララの放つ鎖を絡めながら走りぬけていた。

鎖がすべて鉄パイプに巻き付いたのを本能的に理解したエースは鉄パイプを甲板に突き刺しジャラララの動きを完全に封じ込めてしまった。

その肥えきった体では身動き一つできないジャラララは目の前に来た鬼のような形相の青年に対して思わず弱腰になっていた。

 

「ジャ、ジャウラジャウラジャウラ。お、お前気に入ったぞ。オレ様の”部下”になれ」

 

怯えながらも自分が絶対の強者であることを疑わないジャラララはエースが自分にへりくだる姿を幻視していた。

 

「黙ってろ、この馬鹿野郎が。誰が手前みたいなクズの下に就くか」

 

ジャラララを見るエースの瞳は凍えるような寒さが感じられた。

 

「お、お前。ワッシが誰なのかわかっているのか。ワッシに手を出したらどうなるのか覚悟はできてるのか」

 

ジャラララはついに自分の立場を振りかざすことでエースを退けようとしてきた。

 

「は、出来てるよ」

 

しかし、それはエースには何も意味をなさなかった。

なによりも自由でありたいと願うエースにとっては。

その時、この場にいる誰もが気が付いていなかった。

エースが握りしめた右手が黒く染まっていることに。

 

「心火を燃やして、手前をぶっ潰す」

 

そう言ってジャラララの顔面を黒く染まった右手で思い切り殴りつけるエース。

ジャラララはその勢いのまま後方へと吹き飛ばされ、海に落ちていった。

 

「は、手前じゃオレの()()()()にもならなかったな」

 

決め顔をするエース。

そして、そばに寄ってきたレイズを見つけると子供のような笑顔で出迎える。

 

「どうよレイズ。オレの成長ぶり」

「あぁ、ま、合格じゃない」

 

頭を掻きながら何かを告げようとしているレイズと得意げに笑っているエース。

 

「なぁ、エース」

「なんだよ、こんなことで褒められても嬉しかねえぞ」

「もしかして()()()って言いたいのか」

 

数秒後、顔を真っ赤にして海に飛び込むエースがいた。

 

 

―――――――――――――――――

 

 

カリーナが甲板に顔を出すとそこには所狭しと金銀財宝多種多様な宝石が所狭しと乱雑に置かれていた。

 

「おう、カリーナ起きたか」

 

財宝の中央に寝転がっていたエースがカリーナに気が付き声をかけてきた。

 

「なんなの、この財宝は」

 

さしものカリーナですら自身が見ている光景を疑っている。

昨晩まで何もなかったはずの甲板には小国の国王ですら目を回しかねない量のお宝であふれていた。

 

「ちょっと待っててくれ。今レイズがここの支部長に話つけにいってるからよ」

 

そう言って再び寝転び空を見上げたエース。

そんなエースにつられる様に空を見上げたカリーナ。

そこには雲一つない青空が広がっていた。




アンケートに関しまして期限は年末としましたがある程度集まりましたら期限内であっても終了させていただきます。
ホルホルネタはいずれ小ネタとして扱います。

ズバリ、エースのお相手は?

  • 何故か生きてる幼馴染み系女流剣士
  • 恋愛処女帝
  • 砂漠の王女
  • サラダなあの子(推薦は感想に記入を)
  • 馬鹿野郎、エースがホルホルだろ(無回答)

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