ストライク・ザ・ブラッド 鮮血の真祖   作:魔王吸血姫

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吸血鬼なのに眷獣を持たない特殊な吸血鬼。
そんな吸血鬼もあったっていいじゃない。
ということで執筆しました。
お楽しみいただければ幸いです。


聖者の右腕
プロローグ


 第四真祖―――それは不死にして不滅。

 一切の血族同胞を持たず、支配を望まず、ただ災厄の化身たる十二の眷獣を従え、人の血を啜り、殺戮し、破壊する。世界の理から外れた冷酷非情な吸血鬼。過去に多くの都市を滅ぼした化け物。世界最強の吸血鬼。

 そんな第四真祖とは違う意味で噂されている吸血姫がいた。

 吸血鬼なのに眷獣を持たず、血を自在に操り、様々な姿に変身し、〝魔女〟のように魔法を行使する摩訶不思議な吸血姫。眷獣を持つ吸血鬼達に恐れられし真なる祖―――〝鮮血の真祖〟と呼ばれた少女。

 だが彼女は真祖であっても、第五真祖と呼ばれることはない。眷獣を持たない、吸血鬼としても特異な存在である彼女を、彼らと同じ枠組みに考えることは間違っているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フンフンフン~♪」

 

 鼻歌しながら軽快なステップで夜の街を行く金髪の少女。その瞳は血のように紅く、白い肌をゴスロリで包み込んだ小、中学生くらいの見た目だが、数千年は生きている吸血姫だ。

 ふと立ち止まって、白い月を見上げると嬉しそうな口調で独り呟く。

 

「ふふ、やはり夜はよいな。日傘を差さずに外を出歩ける………素晴らしきかな!」

 

 クルクルと舞い踊るようにステップを踏む。が、ピタリと止まり、今度は不機嫌な顔を見せて独り愚痴る。

 

「ヤツさえいなければ、朝も昼も快適なのにな。本当に忌まわしき太陽(ヤツ)め!」

 

 右手に持つ日傘をブンブン振り回す。太陽光を浴びて灰になるわけではないが、体が重くなって思うように動けなくなる。流石におばあちゃんみたいになるわけではないが。

 まあ、愚痴ったからといって、明日から太陽がなくなることはないだろう。はあ、と溜め息を吐いた金髪の少女は再び歩みを進める。

 

「………ぬ?」

 

 金髪の少女は、不意に前から歩いてくる少年に目を留める。白いパーカーのフードを深く被り、コンビニ袋わをぶら下げた、前髪の色素がやや薄い男に。

 その場に立ち止まって、その少年をジーッと見つめる金髪の少女。何処かで会ったような気がしたが、何故か思い出せない。ううむ、と唸っていると、金髪の少女に気がついた少年がギョッと目を剥いて、彼女の前に立ち止まった。

 

「おいあんた、子供がこんな時間まで彷徨いてたら危ないだろ。早くお家に帰んな」

 

「なっ、我を子供扱いするな!」

 

 心配した少年は、金髪の少女に怒られた。少年にとっては理不尽だが、彼女にとっては子供扱いされたことに怒っていた。

 少年は、ポリポリと頭を掻くと、金髪の少女の背負ってる〝ソレ〟を指差して言った。

 

「ところであんたが背負ってるやつ………()()だよな?なんでそんなもん持ち歩いてるんだ?」

 

「ぬ?ああ、これか?これは我の()()だ。何処でも寝られるように持ち歩いてるのだ」

 

「は?寝床!?」

 

 少年に衝撃が走った。棺桶の中で寝る子供とか一体全体何処にいるというのか。吸血鬼でもあるまいし………と思ったが、金髪の少女の紅く光った瞳と、口元から白く鋭い牙が覗いてることに気づいて、身を硬くする。

 そんな少年に、ニヤリと口元に笑みを作ると、優しく囁いた。

 

「ふふ、そう警戒するな少年。お主を襲って生き血を啜ったりはせぬよ。何せお主も―――吸血鬼であろう?」

 

「………ッ!?」

 

 バッと身を引いて構える少年。普通の人間にしか見えないはずの自分を、初見で見抜くこの金髪の吸血姫は危険だ。

 だが少年は、まず確認した。

 

「なんで俺が吸血鬼だってことがわかったんだ?」

 

「お主の血の中に、恐ろしい獣が幾体もいるのを感じたからのぅ」

 

「………なんでそんなことが分かるんだよ」

 

「分かるぞ。我は血を自在に操れる故、血から情報を読み取ることができる。たとえそれが体内にあったとしてもな?」

 

 金髪の吸血姫の言葉に、少年の脳裏にある噂がよぎった。それは、吸血鬼なのに眷獣を持たず、血を自在に操れると噂されたとある真祖の話を。

 少年は、臨戦態勢に入って金髪の吸血姫に訊いた。

 

「あんたまさか―――〝鮮血の真祖〟ってやつか?」

 

「ほう?その呼び名を知っていたか。ふふ、ああそうだ。我こそは、真なる祖である吸血姫だ。眷獣などというものに頼る()()()()真祖どもとは違う、始まりの吸血鬼ぞ」

 

 高らかと告げる金髪の吸血姫。他の吸血鬼達からしたら、彼女の方が紛い物の真祖だと言われそうだが。

 金髪の吸血姫は、より一層身構える少年に苦笑いすると、スカートの裾を軽く持ち上げて自己紹介を始めた。

 

「我が名はルミア・ブラッディー・サイス。気軽にルミアと呼んでよいぞ、少年―――いや、第四の真祖とでも言っておこうか」

 

「………っ!?あんたにはなんでもお見通しってわけか………」

 

 参ったな、と少年が頭を掻いていると、金髪の吸血姫―――ルミアが顔を覗き込んできて怒ったような口調で言う。

 

「あんたって名前じゃないぞ少年。ルミアだ」

 

「お、おう………って、顔(ちけ)えよ!」

 

 顔を赤くしてルミアから離れる少年。そんな彼をニヤニヤしながら見つめるルミア。

 少年は、コホンと咳払いすると、自己紹介した。

 

「俺は暁古城だ。普段は高校生として生活してる、だから―――」

 

「お主が世界最強の吸血鬼であることを内密にしてほしいのだな?」

 

「………!あ、ああ」

 

「構わないぞ。その代わり、お主に頼みがある」

 

 ルミアの言葉に、少年―――古城がまた身構えた。

 

「血を飲ませろ、とか言う気か?」

 

「まさか、お主の血を飲もうとする勇気は我にはないぞ」

 

 苦笑いで返すルミア。どの真祖かは忘れたが、飲もうとして眷獣に襲われたあの苦い思い出が甦る。

 ブンブンと嫌な記憶を取っ払うと、左手を古城に差し出して言った。

 

「平和条約みたいなものを結ばないか?我は争いを好まぬ。平和が一番だからのぅ」

 

「なんだ、そういうことなら喜んで結ぶぜ。俺も面倒事は勘弁してほしいからな」

 

 迷わずルミアの手を取って条約を結ぶ古城。彼も争い事は好まないらしい。平和を望む吸血鬼の同士が誕生した瞬間だった。

 ルミアは、さて、と言って古城から離れると手を振った。

 

「ではまたな、少年。いや、暁古城だったか」

 

「ああ。じゃあな、ルミア」

 

 古城も手を振って別れを告げた。彼としては、ルミアはもう金輪際会いたくない相手だが。嫌な予感が、そう思わせたから。

 古城と別れたルミアは、小さな公園を見つけると中に入っていき、木の下に背負っていた棺桶をそこに置いた。

 

「うむ。今日はここで寝るとしよう」

 

 ルミアは軽く伸びをすると、棺桶の蓋を開けて中へと入る。そして欠伸と共に棺桶の蓋を閉めて眠りに就くのだった。

 このあと、彼らの平和を脅かす事態になろうとは思いもしなかった。




早速平和同盟を結ぶルミアと古城。
だが、その平和を脅かす事態は、刻一刻と迫っていた。
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