オーバーロードとヴァルキリー   作:aoi人

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10.戦乙女と吸血姫(ナザリック)

 

 

 ~ナザリック地下大墳墓地表~

 

 

 「本当に行かれるのですか?」

 

 「ああ、裏からの調査では入らない情報もある。それに人間の街にに溶け込むには柔軟に立ち回れるとしたら、セバスやユリと数が少ない。私自身が行くのが一番の安全なのだ」

 

 「わかりました。何卒お気をつけください」

 

 「意外だな。もう少し渋ると思ったが・・・」

 

 「ふふ、何を言いますか。言っても聞きませんでしょう?お声から楽しみでしょうがないと嫌でも伝わってきますよ」

 

 「う、うむぅ・・・」

 

 アインズが直々に街へ行くことに当初は反対していたアルベドに不思議と思い聞いてみれば、やぶ蛇になったことにアインズは漆黒の全身鎧の下でみえない汗を流す。

 

 「そ、そんなに分かりやすかったか?」

 

 「ええ、特にあのレイナという人間が旅立った時から、物思いに更けることが多くなりましたから」

 

 そういったアルベドの頬は嫉妬で大きく膨らみ目はそっぽを向くように横に逸らしている。こうしてみるとアインズだけでなくアルベドもどこか人間らしくなっている気がする。

 

 それもレイナという侮れない人間が存在しているからだろうかとアインズはいい変化だとうんうん頷く。最もアルベドが油断ならないと思うのはレイナの強さだけではなく。アインズが彼女に惹かれている気がするからなのだが

 

 だからこうして、自分の我が儘でアインズを縛るのは逆に不利になりかねないと、押し止めたい気持ちを抑え外へ仕事にいく旦那を見送る妻のように彼を送り出すのだ。

 

 「ああ、すまんな。アルベドたちには心配をかける」

 

 「ですから無事にお戻りください。それが一番のお返しになりますので」

 

 「なに、私はアインズ・ウール・ゴウンの王だ。そう簡単には負けんよ」

 

 「では指輪を・・・」

 

 アルベドに差し出された豪華な箱にギルドアインズ・ウール・ゴウンの指輪を置く。彼女はそれを大切に蓋を閉めた。

 

 「では、お帰りをお待ちしています」

 

 「ああ、行ってくる、行くぞ。ナーベ、ユーリ」

 

 「「かしこまりました。モモン様」」

 

 深くお辞儀をするアルベドに返事をして、今回旅に同行を命じた2名に声をかける。1人はドッペルゲンガーで有りながら種族レベルを抑え、マジックキャスターとしての強さを抑えたナーベラル・ガンマ。プレアデスのまとめ役でナザリックでも珍しいカルマ善よりであり、モンクとして前衛を務めるユリ・アルファ。もし、アインズが単独行動するときにはナーベラルについて行動の指示、前衛を任せる予定である。

 

 最初はナーベラル一人の予定が、レイナさんというプレイヤーの存在がいることがわかっているので、護衛が一人でしかも、本来は後衛のマジックキャスターは容認できないとアルベドたちが反対し、急遽、前衛であるユリにもお鉢が回ってきた。

 

 本来なら、階層守護者をつけるのが無難なはずだが、その防御力随一であるアルベドは統括としてナザリックを任せないといけないし、次の候補は一仕事終えた森祭司でありながら力はシャルティアの次にくるマーレは無邪気さに隠れた人間軽視に不安を覚えたので、様子見することにした。

 

 そうして、出発しようとしたとき、アインズたちの前に一台の馬車が見えた。その前にはアインズたちに先を越してリ・エスティーゼ王国へと発つ予定のセバスとプレアデスが一人ソリュシャン・イプシロンが令嬢らしいドレスを着て待機していた。

 

 そのソリュシャンの顔をみたとき、アインズに不安がよぎる。

 

 ()()()()()()()なのである。なにも心配ないと思えるほどに。

 

 それがかえって不気味だと思うのはアインズのなかにいる鈴木悟がアンデットに染まっていないからなのかわからない。レイナがナザリックを去った後ヘロヘロの姿がないことに取り乱す彼女の姿が思い起こされる。そして、その後レイナによって倒されたことを知った彼女は・・・

 

 「うむ。セバスやソリュシャンも問題はないか?」

 

 なんとか声にその感情をのせずにはいれたと思うが、アサシンを持つソリュシャンはそういった感情の機敏には強いはずなので心配になる。

 

 「これはアインズ様。はい、準備ができましたのでそろそろ出発しようと思っていた所です」

 

 「アインズ様。はい、問題ありません」

 

 アインズの心配も杞憂に終わったようだ。セバスはいつもの厳格な表情で、ソリュシャンも影を感じさせない()()で答える。

 

 「大丈夫です。護衛にはエイトエッジアサシンにシャルティア様にその眷属の方がおられますもの」

 

 「そうか、ならば心配ないな。しかし、無理はするな。お前たちに何かあれば、私は勿論。ナザリックにとっても大事になる」

 

 「もったいなき御言葉しかと身に刻みます」

 

 「では行ってくる」

 

 旅立つ3人の背中を見つめるソリュシャンの顔が歪む。

 

 「ええ、必ず・・・あの女を・・・」

 

 「・・・どうしました。ソリュシャンもう少ししたら出発しますよ」

 

 「はい、セバス様」

 

 セバスは一瞬殺気を出すソリュシャンを疑惑の目を向けるが、無理もないとこの場は見逃すことにした。何かあれば、自分が仲介すればいいと。

 

 そう、レイナを狙うのが彼女だけなら・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは2度目の敗北だった。1500人の人間が大挙して至高の御方が住まうナザリックを攻めてきたときは、彼女は破れた。その時はまだ、人間の数十人を道連れにできた(何故かわざとやられに来た奴もいたが)分ましだった。しかし、その時の屈辱は忘れもしない。そして、至高の御方が彼らに返り討ちしたあと再び自身を復活させたあと、彼女は誓った。もう二度と遅れをとらないと。

 

 それは完膚なきまでに完敗であった。あの時のように、数に押されたのではない。当時、気まぐれに守護階層を見回っていたときその女に出会った。他に仲間の姿もないことからこの女は無謀にも1人でこのナザリックへと踏み入れてきたのだ。

 

 愚かな女だと思った。しかし、女は今まで見てきたどの女よりも美しかった。自分と同じ銀髪。自分との共通点に親近感が湧き、だが心なしか自分より輝いているとも感じ嫉妬する。殺したあと記念すべき100人目の花嫁として飼うのも悪くないかと思い先手必勝と攻撃を仕掛ける。

 

 

 

 女は強かった。奇襲の一撃を防ぐばかりか反撃してきたのだ。

 

 お陰で戦士である自分でも大ダメージを受け、その後の戦闘でも始終ペースを握られ、あっという間に行動不能にさせられる。ここまでかといや、ペロロンチーノ様より頂いたあれを使えばまだ!彼よりもしもと持たされたあれを使うのは惜しいが背に腹はかえられぬと止めを刺されるのを待つが、女は剣をしまったのだ。

 

 意味がわからなかった。まさか、気付いて?そして、女は何かを言うと背を向け去ろうとする。シャルティアは叫んだ。どうして止めを刺さないのかと、しかし、シャルティアの声は届かず、女は姿を消す。

 

 シャルティアは愕然とした。見逃されたのだ。階層守護者一の強者として生まれた自分が、ナザリックの第一防衛を任された自分が、何よりペロロンチーノ様に創造された自分が、人間ごときに!

 

 その後、動けるようになってもなお、失意したままシャルティアはそこから動かなかった。しばらくして何故か意識がハッキリとし始めて、アルベドからメッセージが届く。

 

 全守護者に第6階層のコロッセオに一部を除いて、集合せよとゆうのだ。

 

 シャルティアは痛む身を起こし、自室に戻ると、ボロボロの自分の姿に狼狽える眷属を押し退け、大致死《グレーターリーサル》で回復、身を綺麗にして、ドレスも見映えが良い様に整え、ナザリックでも使い手が少ない転移門《ゲート》を使い第6階層へと向かう。

 

 そこで知らされたことにシャルティアは失望する。なんとあの女はナザリックを走破しただけでなく御方が去る中残ってくれていた至高の御方モモンガ様をあと一歩の所まで追い詰めたというのだ。しかも、ヘロヘロ様がその時に倒されてしまい消えてしまった。

 

 勿論失望したのは、追い詰められた御方たちではない。それを防ぎきれなかった自分にだ。

 

 だから彼女は慢心しない。人間だからと油断はしない。今は弱くてもいずれは自分と互角かそれ以上になると考えて。モモンガに階層の警備を任されてからも彼女は強くなるために、戦闘時の知識をデミウルゴスに、戦闘時の技をコキュートスに、今までぶつかってばかりであったアウラには眷属たちとの連携を頭を下げて短い時間だったが教えてもらった。

 

 そして、この度の王国へいくソリュシャンの護衛の指示。もしかしたら、道中、あのレイナという女に遭遇するかもしれない。

 

 これは彼女に手を出すなと言った御方に対しての裏切りになるだろう。でも、もう一度戦いたい。そして、勝たなけれ前に進めない。モモンガの正妻の座を賭けて、アルベド《ライバル》と争えない!

 

 ソリュシャンにははじめからもし彼女に会えばどうするか話してある。彼女は快諾してくれた。そこには彼女の思念もあるだろう。今のソリュシャンの強さではヘロヘロ様の仇はとれないから、丁度よく自分を使って倒せずとも弱らすことができれば・・・と考えているかもしれない。その考えを不敬とはとらない。こちらも彼女の任務を逆手にとり、事を起こすのだ。共犯ともいえる。

 

 シャルティアは今度こそと至高の御方に気づかれないよう牙を研ぐ。

 

 「待っていなさい。わたくしが必ず貴女を殺す!」

 

 

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