商人。レイナがいろんな街を旅する上で考えた答え。旅なら冒険者という如何にもな職業がこの世界にあるのに、どうして、商人でを選んだのか、それはエ・ランテルに来る前に漆黒の剣という親切な彼らに冒険者の実態を聞いたからだ。
冒険者は確かに自由などと言われているが本当にそうだろうか。戦争への不介入。階級による依頼書の選別。まぁそれはわかる。未熟な人間に高額な依頼はリスクが大きく受けられない。
登り詰めてアダマンタイトになり英雄と呼ばれる彼らは結構国に、いや冒険者ギルドによって束縛される。英雄を育てたギルドとして他の国からも依頼が舞い込むのだ。まさに、ギルドの勢力争いである。愛国心あるものからしたらせっかく培った力を国のために使えずにやきもきする場合もあるかもしれない。
レイナは漆黒の剣の装備を見て、お世辞にも良いとは言えない。そこで思うのだユグドラシルで自分がどれだけ優遇されていたのかを。
ユグドラシルの初期装備でも、ある程度モンスターと戦えるスキルを持っているのだ。戦士ならHPアップ。魔法使いや僧侶ならMPアップなどの職業に有利なステータスの上昇。しかし、この世界の装備はひどい。命がいくつあっても足らない。あったとしても新人冒険者の収入ではまず手が届かない。
まだ伝説の装備があるだけましなのか・・・いや、しかし・・・
そうした事実から考えれば冒険者はの殉職率は驚くほど高いのではないだろうか。冒険者はのミスリルというベテランの域にいるはずの者たちでも、強力なモンスターに襲われ、全滅なんて珍しくないときく。
あんまりにも装備が貧弱で生き残れない。生き残れればまだチャンスはあるのだ。
だから、レイナは少しでも安全に冒険できるよう装備の強化を考えた。ユグドラシルでは専用鍛冶スキルをとっていないレイナだが、運と経験で多くの鍛冶を成功させてきた。データクリスタルを使った強化は誰でも簡単にできるようされていたが、それ以外はそれ関係の職業スキルが必要なのだ。レイナもまだ鍛冶がうまくいかなかった時を思い出す。
「いつも頼んですまないわね。なかなかあなた程の鍛冶師は居なくて」
「ん、なに気にするな。以前悪徳PKから助けてくれたお礼もあるし、ちゃんと素材も金貨も払ってくれる上客だ。なかには押し付けるだけのやつもいるしな」
「そうなの、もし揉めるようなら私が協力しましょうか?」
「それはありがたいが、こっちにも仲間がいる。そうそう、踏み倒そうなんてやつはいないさ」
「ならいいけど。そういえば、あなたが目標としている鍛冶師は誰だったかしら?」
「ん、あまのまひとつさんだな。俺が一番尊敬しているんだ。今でこそ、生産職一筋とされる彼だが、最初は戦闘もある程度できるビルドのとき、今でも難しい装備を作成したんだ。スキルあってもきついのに、ホントに経験だけで作り上げたらしく鍛冶師スキルを理由に偉ぶってた奴らの反応ときたら、だから俺もスキル頼りじゃない鍛冶師を目指して今も修行中さ。たまには戦闘も楽しみたいし、話せる仲間もできた。これからも俺は・・・・・・」
「いい話しなんだけど、長いわ・・・」
腕はいいけど好きなことになると話が長くなる彼。もし手が足らなくなれば彼を喚ぶのもいいかもしれない。
問題は今の手持ちのデータクリスタルは倉庫に沢山あるが、いずれは枯渇し、なくなってしまう。だがレイナにはまだ試していない秘策がある。ヴァルキリーになりそのレベルが最大になったとき、いくつかのスキルを彼女は得ていた。
その1つ"女神からの贈り物"(ビューナスギフト)なんとユグドラシルでは一ヵ月に一度消費アイテムやスクロールあとはランダムでデータクリスタルが手に入るという。なんとも優遇されたスキルであるが、後半ではそんなに効果が高いものは出てこないほぼ死にスキルである。
ではほぼ現実になったこの世界の法則ではどうなるのか。スキルのフレーバーテキストには真に必要なものが手に入るという。と言うことは、もしかしたら、とんでもないものが送られてくる可能性がある。
まぁ、未定ではある。出店として出すにも時間はまだある。もう少し冒険者の実態を知りたいところだ。冒険者ギルドでお金を出してでも依頼の同行を願えないだろうか・・・。特にシルバー以下のランクで色んな職業が集まるチームに・・・。
カランカランと店に来客を知らせる鐘が鳴る。
店番をしていたンフィーレア・バレアレはポーションの在庫の確認をしていたときに、その来客の到来を知る。そろそろポーション原料が心許なくなってきたのを確認して、またトブの大森林があるカルネ村へ冒険者雇って薬草の採取をしないといけないなと考え、密かにそれを楽しみにしている。
なぜなら、かの村には4年前ほどからおばあちゃんに連れられ薬草の採取をしに行ったとき、出会い一目惚れした女の子がいるのだ。しかも、住居もその家族が住む家で空いていた部屋を借りることができ、一つ屋根の下で暮らせることに少年はドキドキしっぱなしだった。
「他の店とはポーションの入れ物一つとっても違うのね。それにこの金貨数枚の奴は今までので一番効果が高いみたいね」
「初めてきたが結構大きいな。ポーションは信頼第一な商売でもあるだろうがここまでとはな」
そうこうしている内に、客が棚のポーションを吟味し始めたようだ。声からして女の人と男の声が聞こえる。なかなかわかっている発言に気分が良くなる。尊敬する人物や自分が手掛けた物を誉められたら嬉しくなる。
冒険者だろうか?。聞いたことのない声なので最近昇格したチームだろうか?。噂には聞かないがもしかしたら上客になるかもしれない。そんな来客を出迎えるため、ンフィーレアは店のカウンターへ続く扉を開ける。
「あ、ンフィー久しぶり~!元気だった?」
そこには好きな女の子がいた。
小さく手を振る笑顔の女の子(天使)がいた。
ガシャンと扉を閉める。
・・・・・。
ふぅ~、何でだろう一瞬カルネ村にいるはずの幼馴染みで初恋の人で絶賛片思い中の女の子がいた気がするんだけど・・・最近疲れてたからなぁ~。幻覚かなぁ~。
すーはーすーはー。よし!もう大丈夫。きっとこの扉を開けたら別のお客さんが・・・
「もう!なんで閉めるの!?ビックリするじゃない!」
「え、えええええええエンリ!?なぜ!?どうして!?」
そこには正真正銘の赤い鎧と大きな剣を背中に差した片思い中の女の子が怒った顔で(でも可愛い。女神!)カウンターを叩く姿と、その背後で苦笑し合う。カルネ村で見かけたちょっと警戒している男(ンフィー想像)とエンリに負けないくらいの(ンフィーアイ基準)美人のお姉さんが見えた。
「そ、そうなんだ。大変だったね」
「ううん、レイナさん・・・がいてくれたお陰で村の皆は全員無事よ。転んで怪我した人もいたけど、レイナさんが治療してくれたからほぼ損害はなかったわ」
バルアレ薬屋はもう人も来ない時間だからと貸し切りにして、レイナたちは客間に通され、向かい合うように、カルネ村で何が起きたのかアインズの存在を隠して話した。
「あのレイナさん。エンリをいえ、カルネ村を救ってくださり、ありがとうございました」
「どういたしまして、わたしもあの村に世話になったし、助けることが出来て良かったと思ってる」
ンフィーレアは恩人であるレイナの言葉に感動していた。一食一泊のお礼とはいえ、命を賭けて数十人の襲撃者を退けるとは、英雄譚でも聞いてるみたいだ。だがそれとは別に気になることが彼にはあった。
「そ、それで、どうしてエンリが・・・」
「ああ、この姿のこと?。私からレイナさんを師事して鍛えてもらってるのよ」
エンリがマントから少し除かせた(そのしぐさに一瞬ドキッとするが)そこにはいつもの村娘が着るようなものでなく。動きやすい服の上にある赤い鎧が見えた。
さらにはその背にはエンリの身の丈以上ある大剣がのぞいている。それらが指すことにンフィーレアは焦りを隠せず、口に出してしまう。
「ね、ねぇ。そんな危ないことしなくてもさ。村で冒険者はでも雇って守ってもらったり、村の他の男の人とかに、いや、ぼ、ぼくが冒険者を雇ってもいいし、ぼくが守っ・・・」
「ンフィー」
自分の名を呼ぶ彼女の声に顔をあげると、そこには強い意志を宿した瞳をもつ、今までみたことのないエンリがいた。
「ンフィーが言いたいことはわかるよ。女の私にはそんなのは似合わないって言いたいんでしょ?」
「え、ち、ちがうよ。ぼ、ぼくは・・・」
「私ね。その襲撃があったとき、両親とはぐれたあと、妹と喧騒がある方から逆の森へと逃げようとしたの」
「・・・・・」
「他の村の仲間の声でレイナさんが襲撃者を止めていてくれてるのを知ってたのに、私は彼女を信じないで、もしかしたらって考えて他の人の命も無視して、森へ逃げようとしたの・・・伏兵がいることも知らないで・・・」
「私がレイナさんを信じれなかったから、あんなに強いと思ってたのに、いざとなれば見捨てて、逃げた先で私だけじゃなく大切な妹の命まで失うかもしれない状態になって、必死だった。私の命はどうなってもいい。でも妹は・・・ネムだけはって、そしたら、レイナさんの教えのおかげで助かった」
「あとから聞いたけど、奴らレイナさんに苦戦して、人質を捕ろうとしたらしいのよ。もし、私がなにもできなければ、人質に捕られて、レイナさんも危険な目にあったかもしれない」
「レイナさんを信じなかったのにその教えてもらった技で助かったのに!。私はなんて、浅ましいだろうって・・・。ねぇ、ンフィー。私は嫌よ!自分のせいで大切な命が失くなるのも、力がなくてすぐ近くにある命を失うのも!!」
「だから、私は何を言われても、この意志を貫くわ」
そう言いきったエンリにンフィーレアもシオンも隣の部屋で話を伺っていたリイジーも声をかけれなかった。一人を除いて。
「そうか、ありがとうエンリ」