オーバーロードとヴァルキリー   作:aoi人

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13.戦乙女と少女の叫び

 

 

「そうか、ありがとうエンリ」

 

 そう言ったレイナは、まさか彼女があの時、自分に師事する裏側でそこまで追い詰められていた事に気付かなかった己に腹をたてた。ちょっと歳が上だからってお姉さん面して、なんでもわかってる気がして、全く。ふざけてる。

 

「レ、レイナさん?」

 

 エンリは涙に濡れた顔で信じられないものを見たと、困惑した目で見ていた。何故、お礼を言われたのか、まるで理解できないと、自分は彼女を裏切ったのに、どうして・・・

 

「エンリがそうしたのも無理がないわ。たった2日一緒にいた者を信じれる者なんて、ただのお人好しか、馬鹿しかいないわ。命まで賭けない。もしかしたら1人で逃げるかもと考えるのは当然よ」

 

「そ、そんな事、レイナさんはあんなに親切にしてくれたのに」

 

「親切にしてもらったのはこちらの方よ。見ず知らずの他人を家に泊めてくれるだけじゃなくて、色々教えてくれたじゃない」

 

 レイナは立ち上がると、そっとエンリを頭から抱きしめる。

 

「それに、最後は無我夢中だったのに私が教えた技を使って伏兵を吹っ飛ばしたんでしょ?なら私のことを無意識で信じてくれたのよね。だから、ありがとう」

 

「う、うううう、レ、レイナさ・・・ん。ご、ごめんなさい。わ、私がもっとあなたを信じていたら・・・。ごめんね。ネム・・・怖い思いさせて・・・うわぁぁぁん!!」

 

「エンリも怖かったのに偉いね。失くすかもしれない命まで背負ってよく頑張った。なかなかできることじゃないわよ」

 

「ううう、怖かった・・・。お父さんお母さんも何よりネムも死ぬんじゃないかって!レイナさんごめんなさい。ううぅ~」

 

「よしよし、もっと泣きなさい。そしたらスッキリするわ」

 

 いつも大人びた口から優しい声を出しながら、レイナはエンリの頭を撫でていた。人払いされた薬師の家で少女の後悔の鳴き声はしばらく続いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 エンリが泣きつかれて、旅の疲れも手伝ったのだろう。まだ昼なのに寝てしまうと、今まで遠慮していたンフィーレアから空いている部屋を貸しますと言ってくれエンリをそこに寝かすと、レイナはその部屋を後にした。

 

 漆黒の剣との約束までまだ時間はある。そのうち、エンリも目を覚ますだろう。とりあえず、ここの家主にでも許可をもらわねば

 

「と言う訳で、彼女が起きるまでお邪魔していていいですか?」

 

「なに、気にするな。なんじゃったら今日はここに泊まっていきなさい」

 

 レイナが廊下である扉の方へ話しかけるとしがれた老婆の声が返ってきた。レイナに突然話しかけられたのに老婆はあまり驚くことなく答える。

 

「ありがとうございます。あ、ではせめてポーションをいくつか見繕ってくれませんか?出来れば効能毎に数本。当然お金は払いますので」

 

「おお、今までにない太っ腹な注文じゃな。よしきた。お安いご用さ」

 

「お願いします」

 

 リイジーのあとを追い、再び店の前に来ると、シオンとンフィーレアが気まずそうにそこにいた。

 

「す、すみません。でる機会をうしなって・・・」

 

「あんなエンリは初めてで僕も動転するばかりか、心の傷を広げるようなこと・・・」

 

「そうね。そこはすぐに空気を読むか、時間をおいてからにしてもらいたいわね」

 

「「・・・・・」」

 

 レイナの言葉に2人はシュンと落ち込み、黙りこむ。そんな2人はレイナは苦笑する。

 

「そう落ち込まない。私だってエンリがあんなに苦しんでたなんてわからなかったもの。逆に早くあの子の力を求める理由がわかったのだから悪いことばかりじゃないわ」

 

「そう・・・でしょうか?」

 

「ええ、あなたも何かくるものがあったんじゃない?さっきの私の立ち位置に替わりたいとか」

 

「な、なにを・・・」

 

 顔を真っ赤にしてなにか言おうとするンフィーレアの口を人差し指で押さえる。

 

「でも、簡単じゃないわよ。女に自分の胸を貸せるのはね。同じ女か、一人前の男だけよ」

 

 レイナの言葉にンフィーレアは真っ赤なまましかし、しっかりと頷いて答えた。

 

「まぁ一件落着か」

 

 そんな様子を見てシオンは安堵から肩の力を抜いた。

 

 

 

 

 

 

 リイジーが選んでくれたポーションを買ったあと、(その購入代金と現物を見てンフィーレアは驚き小声で何か呟いていた。)客間にて彼からこのエ・ランテルの事を聞きながら時間を潰していると扉が開き、そこから、恥ずかしそうに立つエンリが顔を覗かしていた。

 

「み、みんなごめんね。みっともないとこ見せて・・・」

 

「なんのことだ?なぁレイナさんにンフィーレアなにか知ってるか?」

 

「いや、心当たりがないわね。エンリ疲れたのか椅子に腰かけたとたんに寝ちゃうんだもの」

 

「ん~、僕もなんのことかわからないな。夢でもみたんじゃない?」

 

「・・・みんな。ありがとう」

 

 なにも言わずに、なかったことにしてくれる仲間にエンリは泣き腫らしているのにここ一番の笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それに心臓を射ぬかれ、昇天しかけた少年がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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