「うん。濃い味だけど悪くないわね。さらにボリュームも多いから冒険者には人気がありそうね」
「確かに、味より量と感じだな。危険な依頼もあるんだ。食べた気になれるし、値段も高すぎるって訳じゃない。なるほど、冒険者憩いの場か」
「うわぁ~。こんなに食べれるかなぁ」
レイナとシオンが料理をゆっくりと口にするなか、エンリは次から次へと料理をを口にしていく。言動と行動が逆である・・・。
漆黒の剣に今回のお礼として、いつも御用達の宿で3人に食事を奢っていた。2階は宿も兼ねるここは成り立ての冒険者たちが最初に泊まることになる宿で、そこは仲間集めも兼ねたところで部屋はほとんど4人部屋で構成され、滅多に仲間を最初から持つことがない彼らが、自分を売り込む機会を作っているのだ。
店主のおやじは元冒険者で、当時は仲間なんてそうそうできるもんじゃないため、よく一人で依頼を受け、死んでしまうなんていうことが多くあった。
その現状を嘆いたここのおやじが引退してから始めたのがこの宿である。安宿らしいが、なかなか住み心地はいいらしく。漆黒の剣もシルバーになってからはもう1つ上の宿で寝泊まりしているが、時々はここに来て、飯を食べに来るらしい。
「あはは、なかなか居心地がよくて、よくくるのですが、その度に親父さんから、ここはお前らがくるとこじゃないって活を入れられますよ」
「ほら、今もこっちを睨んでるだろ?でもあれはこっちを気にかけてくれているんだ」
「もし、空気が悪ければ、親父さんが間に入って話を聞く。どうしても上手くいかなければ、親父さんが新しいツテを用意してくれるのである」
「私たちを引き合わせてくれたのも、実は彼なんですよ。お陰で僕はこんなにもいい仲間が出来ました」
「なかなか、いい親父なのね。昔は冒険者で多くの冒険者を見てきた・・・か。これは是非話を聞いてみたいわ」
漆黒の剣からでてくる賛美にレイナは彼と話してみたいと思いそう口にする。そうすると、ルクルットがはやしてくる。
「レイナさんほどの美人なら親父もきっとデレデレになって教えてくれるんじゃないですかね?自分の武勇伝とか」
「こら、そんなこと言ってるとまた拳骨食らいますよ?」
「いいっていいって、飲み屋の場は無礼講って決まってるだろ?」
「はぁ、そうやって調子に乗って拳骨が常である・・・」
「ふふ、じゃあ、そうならなかったら、今日の奢りは全部ルクルット持ちにしましょうか?」
「えええ!?そりゃないぜ。ニニャぁ~!」
「それはいいわね。期待させた分責任とってもらいましょうか」
「レ、レイナさんまでぇ~・・・」
ドヨ~ンと落ち込むルクルットに冗談よといいレイナは席を立ち、今は食器を整えている親父の元へ向かう。
「主人少しいいかしら?」
「ん?あんた漆黒のと話していた怪しいやつだな。まぁあいつらがあんなに楽しそうなんだから、いいやつなんだろうけどな。挨拶するならそのフード脱ぐのが礼儀だぜ?」
「これは失礼。でもこっちも訳ありなのよ?きっと騒ぎにあるわ」
「!?」
そう言ってレイナは親父にだけ見えるようフードを少しあげる。すると親父は一瞬目を見開きレイナの顔を凝視すると、なるほどと頷きながら、目を反らし、作業を再開する。
「確かに、一体どこの自信過剰な女なんだと思ったがその顔なら、騒ぎになるだろうよ。とくに今ここは、冒険者の荒くれ者が一杯だからな」
「そういうことよ。今日この街に来てからずっと見られていれば辟易するわ」
ふぅと疲れたようにため息を吐く目の前に立つ女をこの店の主人は視界の端に捉える。
美人なんていったがそんなレベルじゃない。主人は一度王国の黄金と呼ばれるラナー姫を一目見たことがあるが、確かにラナー姫は美しかった。大人になればさぞとびっきりの美女になると確信する。そう、まだ子供だ。しかし、今目の前にいる女は、そんな彼女をかなり引き離している気がする。
キラキラ光る銀の前髪、吸い込まれるような蒼い瞳、シミや怪我など一度もないようにきれいな素肌。そして何より、マントのしたでもわかるその均整の整ったボディは、大人の色気を充分に引き出しており、親父がもう少し若ければ声をかけていただろう事は明白だ。
そんな彼女が素顔を今この場で晒してみろ。一気に冒険者たちの男とゆう男は、彼女に群がり、なんとか縁を持とうとするだろう。悪ければ夜遅く彼女を付け回し、あわよくば等と考える犯罪者を作ることになる。
親父はそんなのはまっぴら御免だし、少し話しただけで彼女の良さに気付き、なにより自分が目にかけたチームとなか良さそうにする彼女にそんな思いはさせたくないと思った。
「それで?そんな姉ちゃんが俺になんのようだ?ナンパって訳でもねえんだろ?」
「ええ、ペテルたちからあなたが元冒険者だって聞いてね。それでいろいろ聞いてみたいのよ」
水をむけてくる親父にレイナものって話を切り出す。
「ほう、元冒険者と聞いてなにが聞きてぇんだ?。一番手こずったモンスターか?それとも・・・」
「そういうのも興味はあるけど違うわ。あなたが見てきた冒険者が持つ装備についてなんだけど・・・」
「ああ、おれが知ってることなら教えるぜ」
「では・・・」
宿の主人の話によれば装備に能力付加のついた物は滅多にないとのこと。あってもかなり高額で冒険者でも、ミスリルクラスでギリギリなんだとか。あとは装備の傾向とかも聞けたので、なかなか実りのある成果となった。
あんまり長話しもなんなので今回はここまでにして、お礼のチップを渡してから漆黒の剣と合流し、彼らにある話を持ちかける。
彼らはその提案に驚くも、喜んで引き受けてくれたので、後から感想が楽しみである。
酔った漆黒の剣を見送り、レイナたちは再び冒険者ギルドへと来ていた。中に入ると昼に受付嬢をしていた人が待っていてくれたので、その人の案内され、一つの会議室に連れられていく。
「思っていたより、早かったですね。まだ冒険者の方たちはこられていないので、先に案内しますね」
「依頼とはいえ、こちらが頼むのですから当然ですよ」
そういうと、受付嬢は少々驚きながら続ける。
「今時、そんな人いませんよ。特に貴族は勿論。商人もそこまでできた人は珍しいです」
「そうなの?交渉する相手を不快にさせないのは当然だと思うのだけど・・・」
「レイナさんなら当然ですよ」
「私が知ってる商人らしいのはンフィーしか知らないから、わからないけど、私もそう思うなぁ」
「そのンフィーレア・バレアレさんも珍しいなかに入りますけどね。普通はあれだけ稼いでいれば遊びもしそうですが、そんな噂聞きませんし、逆にガードが堅いとは聞きますね」
「まぁ、あいつの育ての親の婆さんがそんなこと許さんだろうし、他にも理由はあるだろうけどな」
そう言って、フードを被ったままのエンリを見ながらシオンが呟く。
「?シオンはその理由わかるんだ?」
「ふう、本人がこれじゃあな。あいつの今後の頑張り次第か」
「まぁまぁ、そうなんですか!?それは気になりますね~」
「あまり囃し立てない方がいいわ。それでこじれたら大変でしょ。あなたもあまり、話を広げていては、情報の秘匿が出来てないって、いつか面倒事に巻き込まれるわよ」
「うっ、それは嫌ですね。わかりました。この事は胸の内にしまいます」
「ええ、それがいいわ」
「では、こちらでお待ちください。冒険者の方には少し話をつけてありますので、入ってきて驚くことはないと思います。それでは私はこれで」
「わざわざありがとう」
「いえいえ。(ほんとできた人だな。他の依頼者もこれぐらいおおらかだったらいいのに・・・)
軽く頭を下げて去った受付嬢が示す扉を開け着いた会議室はだいぶ広めで数チームくらい入れそうだ。まだレイナたち以外誰もいないので邪魔にならない隅の方へ3人で座る。
時をあまり置かずして、待ち人たる冒険者たちが入ってくる。
彼らはこちらを見るが、話が通っていたのは事実なのだろう。嫌な顔ひとつせず、挨拶をしてくる。
「あんたが、変わった依頼をしてきた商人か?俺は今回リーダーをさせてもらうバオだ」
一際大きな体を持つ男が、子供なら泣きそうな笑みを見せてくるが、当然レイナは気にしない。ただ、宿屋の主人など冒険者は皆、厳つい者が多いのだろうか(漆黒は除く)と考えるくらいだ。
「はじめまして、その商人であるレイナ・ヴァルキュリアよ。今回は突然の依頼に関わらず、この場を用意してもらいありがとうございます」
「なに、こちらもギルドに帰って来てみれば、他の冒険者がいう白銀の女神と呼ばれるあんたに興味があったんだ」
「は、白銀の・・・女神・・・ですか?」
当然知りもしない自分の渾名に、レイナは思わず、は?と威圧しそうになるのを堪えた。
良ければ、顔を見せてくれないかという彼に、レイナは結局は見せることになるので、渋々了承し、フードを取ると、バオは「本当だったか・・・」と呟き、後ろは一斉に騒がしくなる。
唯一の女である戦士らしい赤毛のブリタという(後程チームの紹介で知った)彼女もレイナの美しさには驚いているようだ。
エンリとシオンもフードを脱ぎ、顔見せをしたとき、エンリもヒゥーと口笛を吹くものもいたが、シオンだけ嫉妬や羨ましいなどとの声が聞こえてきた。
それから、こちらの要望など依頼の詳しい情報を擦り会わせ、料金のほうも、どうやら相場より色をつけた事であちらが遠慮して、本当に良いのかと再三確認をとるくらいで満足してくれているので話はスムーズに済んだ。
最後は互いに握手(他のチームメイトもしたいと言ったので行い。喜びはしゃぐ彼らにリアルでは人気声優だと言っていたピンクの異形種もファンの握手会でこんな気分なのだろうかと考えた)をして、明日の昼から活動するらしいことを告げてきた。