オーバーロードとヴァルキリー   作:aoi人

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1.戦乙女と魔王

 

 

 ユグドラシル

 

 

 そこは今世界の終わりが近づいていた。人間と異形が住むその大地では数多くの生命が生まれ、そして時には戦いが起きては死んでいく。そうして何百何千と続いたが今日をもって世界の寿命がなくなろうとしている。

 

 そこに住まう人たちは、各々自由に過ごしていた。仲間と集まりはしゃぐもの、世界の終わりに涙を流し仲間と抱きつく者滅多に手に入らないアイテムを湯水の如く使う者もいれば。

 

 

 全力で戦う者もいた。

 

 

 

 

ナザリック地下大墳墓~玉座の間~

 

 そこでは熾烈(しれつ)な闘いが起こっていた。

 

 3つの影がそこにあり、白い影が紫の影と切り結びながら距離をとると、その後方にいる黒い影が放つ火の玉、いや雨といってもいい攻撃に正面から突っ込んでいく、慌てて紫が白を追うが、魔法の1つが命中、白は弾かれるようにぶっ飛ばされる。その速さは追撃していた紫の距離を一瞬でゼロにし・・・

 

 はぁぁぁぁっ!

 

 そのまま振り返えるように一閃!魔法を受けて吹っ飛ばされるのを利用しての急加速。追いかけてきていた紫を、白の会心の一撃がとらえる。

 

 紫は先の一撃で粒子になり消えていく。その正体は粘液状の所謂スライムという姿であることが、窺えた。そして、

 

 「ふふ、最後にこんな闘いができて・・・私は・・・モモ・・・ガ・・・さ」

 

 いろんな感情が込められた呟きを残して彼は、切られたところから粒子となり消えていく。残されたのは白と黒。その2つの姿がハッキリと見えた。

 

 白は、よく見れば青が散りばめられたドレスのような鎧に身を包んだ戦乙女。

 

 黒は、全身は黒で統一されているが、装飾品がとにかく派手なロープを羽織る禍々しい髑髏の姿は魔王と呼べた。

 

 どちらも傷を負っているが戦乙女の方が多い。しかし、関係ないと彼女は眼前の魔王に、手に持った剣の矛先を向ける。

 

 「最後はお前だ。ナザリックの魔王よ」

 

 「・・・・・なぜお前は闘う。もうこの世界《ユグドラシル》は滅ぶ」

 

 ナザリックの魔王が重々しく口を開く。そこには哀愁が漂い彼が今どんな気持ちでいるかわかる。戦乙女も思うことがあるのか追撃はせずに黙って続きを促した。魔王はそれに感謝しながら心情を語る。

 

 「我がナザリックの至高の40人も私を残しこの世界を去った。今私を倒した所でもう意味はない・・・」

 

 「そうね・・・」

 

 魔王の言葉が終わると戦乙女が言った。

 

 「アインズ・ウール・ゴウン、ナザリック地下大墳墓を拠点ととする異業種の集まり。たくさんの人間を倒した。とくに1500人による戦争はたった41人により壊滅させられたのはこの世界において有名ね。尊敬と畏怖として名を広げ、異業種からは希望を私たち人間には絶望を与え、その惨劇は伝説になったわ」

 

 戦乙女はそこで強く魔王を見つめる。

 

 「だからこそ!魔王モモンガに私は挑む!。人間の誇りを取り戻す!」

 

 「そうかお前も・・・」

 

 終わるとしてもこの世界(ユグドラシル)が好きだから

 

 「「いくぞ!!」」

 

 そこからは魔法と剣技の応酬、魔王が放つ魔法を自身に届く前に切り払いあるいは最小限の動きで避け、懐に入った戦乙女から浅くない攻撃を受ける魔王。そのまま連撃されると殺られると判断すればダメージ覚悟の自身も巻き込む魔法で吹き飛ばし、さらに転移魔法で距離をとれば最大威力に強化した魔法を放った。

 

 「魔法最強化(マキシマイズマジック)現断(リアリティスラッシュ)!!」

 

 「っワールドブレイク!!」

 

 大分距離を稼いだというのに即座に距離を詰められながらも放った最高威力の魔法は、向こうが迎撃に放った戦士系最強技の剣技によって相殺されてしまう。

 

 技の余波がはれた後、2人は間合いをとって対峙する。

 

 「そろそろ、ユグドラシルの最後ね・・・」

 

 「ああ、そうだな。世界が崩壊するのに我々はまだ戦う愚かしいことだ」

 

 「ふふ、そこは同意するわ。だけど貴方たちナザリックの戦いは最後にして最高の戦いだった。例えこの身滅びようと魂に残るだろう!。ああ、本当に・・・」

 

 「私もだ。例えこのあと地獄に落ちようとこの世界のことを俺は絶対に忘れない!ええ、本当に・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 「「楽しかった」」

 

 静かな玉座の間で最後は本音で魔王と戦乙女が笑い合う。それはどこか神聖でどこまでも場違いでありながら、神話の一枚の絵のように美しかった。

 

 世界の終わりに、全身全霊を尽くす。

 

 戦乙女がその背に光の翼をはやし高く飛ぶ、剣を掲げそこに聖なる力の奔流から生まれた翼から光が集い巨大な槍へと変化した。

 

 "汝、久遠の絆断たんと欲すれば、言の葉は降魔の剣と化し汝を討つだろう"

 

 魔王が詠晶を唱えると立っている少し前に、禍々しい魔方陣が広がり、膨大な魔力が形を成し、彼女が顕現させた聖なる槍と対を張るような黒く禍々しい巨槍が、魔方陣の中央に現れ、魔方陣を発射台に解き放たれるのを今か今かと震えて待つ。

 

 両者が放つ最大の威力を誇るゆえに起こる波動に、大地が揺れ天が悲鳴あげるなかそれは同時に放たれた。

 

 「ニーベルン・ヴァレスティ❗」

 

 「ファイナルチェリオ❗」

 

 聖なる巨槍が振り下ろされ、黒い巨槍が打ち出され衝突すると玉座の間を破壊が蹂躙した。

 

 

 

 

 

 

 彼女がそれに気づいたのは意識がハッキリとした直後だった。

 

 いきなりこのナザリック地下大墳墓を大きく揺らす揺れが発生した。しかもそれが起きたのは自分が普段は守っているはずの玉座の間からだと知り、彼女アルベドは焦燥感の元そこへと向かって走った。

 

 なぜ自分は持ち場から離れたのだろうという苛立ちと、ほんの数分前にそう自分に指示した最愛の人物への心配でその顔は大きく歪んでいた。

 

 そして玉座の間の扉前まで来るとその現状に顔を青くする。その玉座に続く大きな面構えを誇った扉は無惨にも破壊され、見えるはずの荘厳な玉座は瓦礫で埋まり、通れなくなっていた。

 

 そこではこのナザリック守るメイドたちプレアデスたちが必死に瓦礫を撤去している姿があった。

 

 「あなたたち何があったの!?」

 

 「あ、アルベド様!」

 

 アルベドは見覚えのある黒髪を夜会巻きにしたメガネの女性ユリ・アルファを見つけ声をかけた。

 

 「ぼ、私たちが玉座の間を護っていましたが・・・突然とんでもない力が玉座から・・・」

 

 「なんですって!?セバスはどうしたの!?」

 

 「そ、それは・・・」

 

 姿が見えないプレアデスの指揮をとる竜人の執事長の姿がないことをアルベドがたずねるとユリがいいずらそうにある方向を見る。

 

 ユリの視線の先を見たアルベドは目を見開く。そこには壁に寄りかかり、小さくない傷を負ったセバスが緋色髪の眼帯を着けたシズ・デルタと蟲人間であり、他とは一風違う衣装を着たエントマ・ヴァシリッサ・ゼータに介抱されるセバス・チャンの姿があった。

 

 ユリにどうしてこうなったのか詳しく聞けば、玉座の間への扉が突然大きな力によって破壊され、それが玉座の間を護るプレアデスに襲いかかり、それを庇ったセバスが大怪我を負ったというのだ。

 

 「ぎょ、玉座の間を・・・護る私が彼女たちを護ることしかできず・・・面目ございま・・・せん」

 

 「セバス様動いては・・・」

 

 「ここはぁわたしたちにぃ任せてぇ」

 

 動こうとするセバスにシズとエントマが制止する。

 

 信じられなかった。アルベドはここ玉座の間を護るプレアデスを信じていた。特にその実力から自分たち階級守護者に並ぶとされるセバスが瀕死の傷を受けたという事実に驚いていた。

 

 さらにユリの報告にアルベドは追い詰められる。

 

 「そ、それにさっきまでヘロヘロ様も玉座の間に・・・あと」

 

 「な、なに?あと、なんだというの?」

 

 「その・・・」

 

 なにやらいい淀み目を泳がすユリにアルベドは苛立ち詰め寄る

 

 「ユリ!はっきりしなさい!?」

 

 「み、見知らぬ、人間の女が御方と一緒に玉座の間に・・・」

 

 「なぁ・・・っ!?」

 

 最愛のモモンガ様だけでなくヘロヘロ様が戻ってきたと言われる以上にアルベドは驚愕し、怒りそして、不信が胸中に溢れる。

 

 「・・・あなたたちはそれをみていたのに止めなかったと?」

 

 「っ!?」

 

 隠そうともせず殺気を放つアルベドにプレアデスの面々の動きが固まる。そこへ待ったをかけたのは彼女ら配下に持つセバスだった。

 

 「お待ちください!アルベド様・・・。我々も当然その人間に対して迎撃しようとしました・・・。しかし、誰であろう至高の御方たちによって止められたのです」

 

 「そんなっ!?」

 

 バカなといいかけてアルベドは数分前に自分を遠方から玉座の間から出るように指示したモモンガの姿が過る。あの時、至急玉座の間を空けるように言っていた御方の声はなにやら焦っていたように聞こえた。疑問に思いながらも逆らうことは出来ず持ち場を離れたのだ。

 

 もしその話が本当ならこの玉座の間に彼らがいてこの崩落に巻き込まれている可能性がある。そして、その原因は恐らく・・。アルベドはプレアデスたちと一緒に瓦礫をどかすために手を貸す。

 

 やっと人一人通れるようになった時はアルベドはいってもたってもおれずに服の一部が破けようとも気にせず玉座へと入り目にしたのは、最愛のモモンガ様に押し倒された白い鎧を着た人間の女の姿で・・・アルベドは目の前が真っ赤になり装備した斧をその女に振り下ろしていた。

 

 

 

 

 最後ぐらい派手に決めようと目立つ必殺技を、互いに出したのだが、放つ瞬間、不思議な感覚が生まれる。自分の内からエネルギーが吸われる感覚だろうか?そのエネルギーは自分が放とうとしている槍に集中して集まっていた。

 

 なんかヤバイと止めようとするも、すでに遅く。極限まで集まったそれを放つしかなかった。それは向こうも一緒で・・・。互いに放ったのも同時。聖なる槍と闇なる槍は正面から衝突、拮抗もつかの間、大爆発した相反する力の奔流に巻き込まれ、意識が飛びかけたがそれ以上の痛みによって意識失うことはなかった。

 

 このDMMO-RPGには当然、命に関わる程の痛みなど受けるはずがないのだ。しかもそれだけではない。上空から落ちた時の痛み(吹っ飛ばされた時程ではないが)続いて感じる匂いや口に広がる砂利の味などあり得ない現象に理解が追いつかない。

 

 「どうなって・・・え?」

 

 言葉を漏らすが自分の口元が動く感覚に驚愕にする。確かにユグドラシルは一世を風靡(ふうび)したがここまでリアルには体感はなかったはずだ。よくみれば目にかかるプラチナ色の前髪も一本一本鮮明である。

 

 「まさか大型アップデート?公式発表前にバグでダイブした? 「あいたた、おっかしいな何でこんなに身体が痛いんだ?」・・・」

 

 疑問を口に出していると、目の前からついさっき聞いた威厳あるものではない平凡な男の声が聴こえた。目を向けると自分と同じで仰向けから上半身だけを起こして、周囲を窺う骸骨の姿があった。

 

 そしてやっぱりというか目が合う。

 

 「「あ、どうも」」

 

 お互い声が重なった。

 

 

 

 這う這う(ほうほう)(てい)でこの部屋の中心?に集まった私レイナとモモンガはこの現状について話し合っていた。

 

 「さっきからGMコールを試してるんですがコンソール自体が出ないんですよ。」

 

 「だったらログアウトは・・・いや、ダメね。こっちも反応がないわ」

 

 冷静になってきたので2人していろいろしてみるが全く反応がないことにため息が洩れる。そして気づく自分達のボロボロの姿にさっきから痛みもひかない上に徐々にだが力が抜けていっている気がする。

 

 まさか瀕死で死にかけるのはこんな気分だろうか?とにかく再びヤバいという気がするので、なにかないかと思いインベントリを開こうとして自分の手が黒い渦のなかに沈み自然と頭の中に何があるかが浮かんできた。

 

 「うわ、それどうなってるんですか?」

 

 「いや、アイテムを取ろうと思ったら勝手にね・・・」

 

 へーすごいですねとモモンガも同じように手を伸ばして別の渦に手を突っ込んだり離したりしている。私は頭の中にあるアイテム一覧からあるアイテムを2つほど取り出し、1つを彼へと渡す。

 

 「あれ、これって・・・」

 

 「神精樹の雫ね」

 

 ってすごいレア物じゃないですか!?と驚くモモンガに私はこのアイテムについて考えていた。これは確か世界に1つしかない神精樹の雫をなん千年かけて集めたもので、人間と異形とくにアンデットは回復するとき専用のアイテムがあり、ポーションなどでは逆にダメージ受けたりとすることがある。しかし、これは確かどんな種族にも効果があり、説明には生者も死者も求めてやまない物で更なる領域へ伸ばし死者は生前の記憶を思い出し祝福されるだったか・・・。レア度はなんと神話級以上のいわれるただ一つの消費アイテムだ。

 

 当然その効果もチートと呼ばれる品物である。HPは当然自然回復以外は無理なMPも回復状態異常完全回復暫くデバフ無効ロストした以外の装備の耐久完全回復なこれはここナザリックを攻略するために他のプレイヤーから買えるだけ買ったアイテムである。

 

 一緒に飲もうとモモンガにいって渋る彼になぜと聞けばアイテムコレクターの性だという理由に呆れながら後でもう1つあげると言い聞かせ押し付ける。

 

 互いに向かい合い雫が入っているビンを乾杯とカチンと合わせ一気に飲んだ。すると今まで飲んだこともない澄んだ味に感動し、同時に身体中が虹色の光に包まれると痛みが消え、ロストした装備までも元に戻ってしまった。

 

 (効果がさらに高くなってる?)

 

 ユグドラシルでの効果よりさらにパワーアップしている事実に驚くも飲んだ瞬間に、感じた味覚への衝撃に、そんな場合ではないというのに思わず。

 

 「「うまい!」」

 

 彼にも衝撃的だったのだろう。2人して叫んでしまうと同時に立ち上がってしまった。

 

 ボロボロの元玉座の間で二人して立ち上がろうとすればどうなるだろうか?それだけでなく足元は瓦礫やひび割れで不安定。それが悪かったのだろう。目の前の彼の巨躯が足元の瓦礫に足をとられ、バランスを崩しグラッと揺れると、私の方へ倒れてくるのは必然で、咄嗟に支えようとした私の足元も悪く、崩壊した床の穴に足を滑らし、なすすべもなく押し倒されてしまう。

 

 背中を強打したはずだが、思ったほど痛みはなく、それよりも気になることがあった。今の私は彼と床の間に挟まれているのだが・・・重いとかよりも、どうしてそうなるという思いの方が強かった。

 

 「あっ」

 

 彼も気づいた。彼は小さく声を出すがこの事態に身体が膠着してしまう。そう彼の骨だけの手が私の胸を鷲掴みしているのだ。鎧は着ているというのに鎧の隙間彼の細い骨の手。それも両方・・・がだ。予想外な事態に私もどうすればいいかわからず、動けないでいた。

 

 ハラスメント行為とか警報がならないなとか骨なのに冷たくなく逆になんか暖かいなとか色々考えが浮かんでは消えていく。そんな中、彼も急いで手を離そうとしたのだろうが、胸と鎧の間に入り込んだ手は抜けず、その際に彼の指が動く。動いてしまう。

 

 そうなればどうなるかなどは明白で・・・。

 

 むにゅむにゅ

 

 っ・・・!

 

 動いた彼の指を敏感に感じ取ってしまう。声が漏れそうになるのは堪えることはできたが、きっと私の顔はトマトのように真っ赤になっていることだろう。

 

 そんな私の反応に再び彼が膠着してしまう。・・・・・嫌に時間が遅く感じる。そしてそんな気まずい空間は、彼が口を開きかけたところで。

 

 「この人間風情がぁぁ!!」

 

 第三者の乱入で終わりを迎えた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

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