部屋から出たあと、レイナとモモンガはそのあとに見た光景に少し驚かされる。エンリとシオン、ブリタが一つの机に座り、談笑していたのだが、その相手がなんとナーベラル・ガンマことナーベとユリ・アルファことユーリであった。
モモンガにしてみれば、ユリはわかる。きっと
「では、ユーリさんには妹が他にいるんですね。大所帯で苦労も多いのでないですか?」
「そうね、普段のこの子やもう一人の子は手がかからないんだけど、次女が特にやんちゃでね。いつもイタズラを仕掛けてくるもんだから・・・もういい歳なのに少しは落ち着いてほしいものだわ・・・」
「なるほどな。道理で落ち着いた雰囲気が出てると思ったが、兄弟多いやつの長男長女はしっかりしてるもんだ。さっきもナーベさんが何かいいかけて、拳骨かましてたけど、慣れたものだったもんな」
「だまひぅ・・・笑うな」
「ほら、またユーリさんに睨まれた。こうしてみると冷たい印象が強かったけど、可愛いわね」
等という会話から
「あの人の強さを見て憧れたのが始まりだな。エンリも守るものがあるからでな」
「・・・ですから、私はどんなに苦しくても強くなると誓いました。もう絶対妹を怖がらせないように!」
「その考えは感心するわ。そうね。私たちもあなたを見習って強くならないとね。・・・のためにも」
「ふん、・・・にしては見込みがありますね。今のところ他の・・・のなかでは一番ましな気がします」
「結構、皆しっかりした考え持ってるのね。ふぅ、私も外に飛び出したんだけど、今度故郷に帰ってみようかしら」
という会話を聞き、安心する。人間とは馴染めないと思っていた彼女たちが一つのテーブルを挟み、声を交わす。その姿はユグドラシルでもよくみた光景だ。
確かに、ナーベラルもユリも端から見れば人間に見える。しかし、彼女たちはドッペルゲンガーとデュラハンである。育った環境も違い価値観も違う彼らの姿が尊く感じる。
フレンドや時にはソロの人も交えて、種族も関係なく(中の人は人間だけど)会話を交わすそれは、いつか求めていたものだった気がする。
レイナもモモンガも、それをみて、ここが異世界だろうと、こういうところで、あの世界と同じなんだなと思う。
「あ、2人とも出てきましたよ」
「結構長かったけど、何をしていたんですか?」
「それはぼ、私も気になります。モモンさん。どう言ったことを話していたのですか?」
「モモンさーーーん。この女がなにか失礼をしたのならば私が・・・ひぅ」
「はぁ、全く懲りないんだから、でも、楽しくていいわねこれ」
こちらの姿をみた5人が集まってくる。その既視感に2人は
笑うのだった。
その日、漆黒の剣は悪いと思いながらも、合流するはずの宿へと向かっていた。ルクルットのわがままで、その実力はアダマンタイト級だろう神官戦士のレイナに、あろうことか、食べ物をもらうというのだ。
確かにあのオニギリというものは手で手軽に食べれるし、何より美味しかった。また中に何が入っているかわからないのもよかった気がする。
そうして宿を訪ねてみればすでに彼女はそこにおり7人という大所帯で、談笑している姿があった。
その内容が少し異様で荒くれものがいる中でもかなり目立っていた。
フードマントをかぶり顔を見れないようにしたレイナたちに漆黒の全身鎧をきた巨躯の戦士に、目を疑うような、レイナさんほどとも言える美貌をもった2人の魔術師と武道家らしい女性。そして、その首もとからアイアンのプレートを着けた女戦士。見た目も強さも全てがちぐはぐなそれは、不釣り合いでしかし、どこか、釣り合ってるような気がした。
「なにか知らないけど、すごい楽しそうですね」
「ん!?うお、すごい好みだ!!これは混ざらなければ!レイナさ~ん!」
「あ、あのバカ本当にいってしまった・・・」
「いつものルクルットの悪い癖がでたのである。さらに断られるのもいつも通りである」
漆黒の剣たちの前には、レイナに話しかけたあと魔術師の女性に振られ、膝をつくチームメイトの姿があった。
同行するチームが来たので、レイナは漆黒の剣に約束したお握りを人数分をわたし、ついでにモモンガにも3人分を渡す。
「いえ、レイナさん。自分は食べないので・・・(骸骨だし・・・)」
「なにいってるの。ユグドラシルではあなたも料理バフ使ってたでしょ。思い込みでせっかくの食事を無駄にするのは勿体ないわよ。せっかく保存食以外が食べれるんだから、本当に無理なら残して捨ててもいいから」
「す、捨てるだなんて・・・わ、わかりました。少し怖いですけど食べてみます」
「ええ、頬が落ちないように気を付けてね」
「はは、頬がないですけどね・・・。ありがとうございます」
そんな内幕もあり、モモンガは冒険者ギルドに依頼を探しにいき、漆黒の剣もそれに同行するかたちで向かうため、レイナたちは同行するチームと一緒に別れることになった。
目標である野盗の調査のため、襲撃があった地点を下見にいくらしく。戦士たちはその護衛で、斥候が主に、襲撃者たちの痕跡を探しすのが主軸で。チームは2つに分け、もしも、1つのチームが襲撃されれば、残りが逃げるルートを作り、倒せるようなら援軍として向かう手筈となっている。
道中は暇なため、レイナが一人一人の様子や装備を観察し、話が聞けそうなら、質問もしていく。その度にチームの誰もが(ブリタを除き)鼻の下を伸ばし、気分よく答えてくれた。
彼らはアイアンになって長いので、経験の元、様々な知識や技術を教えてくれた。
戦士は見習いであるエンリに対して、レイナとは違う戦い方をブリタが間に入り教えてもらい。
シオンも斥候が戻ってきた時は、チームでの役割、観察するポイント等を手解きしてもらう。陰遁ができることがわかればペアになって実際の斥候としての動きを教えてもらったようだ。
同行するという依頼なだけにそこまでしてくれるのは悪い気がしたが、彼らに言わせるとお金も充分以上にくれるため、ただ同行させるだけなのは悪いし、後輩に教えているみたいで、こちらも楽しいのでいいのだと笑って言ってくれたのでそれに甘える形だ。
痕跡の追跡も順調なので辺りが暗くなってきたので、そろそろ野営したあと、本格的に身を隠しながら盗賊の根城を探すようだ。
「では、少し腹ごしらえしませんか?良ければ皆さんの分もありますよ」
「え、これはありがたい。変わった食べ物ですが、普段は狩った動物や硬いパンなので、食べれるなら何でも食べますよ」
「ええ!?もしかして、レイナさんが作ってくれたんですか?」
「か、感激だ。こんな美人でしかも気が利く。レイナさんけっぐわっ!」
「抜け駆けすんな!レイナさん是非俺と!」
「はいはい、それはまた今度返事するわ。飲み水もありますので言ってくれたらそそぎますよ」
「あ、でも、中身が違うのが増えてるんですね」
「これは、なんだろう?歯応えがよくて、風味も香ばしい。今まで食べたことないけど、これもスッゴく美味しい!飲み物も普段は飲むのよりなんか飲みやすい!」
「あまり食べ過ぎても動けなくなるわよ?エンリそれは昆布っていって専用のタレで煮込んで、ゴマを混ぜたものよ。飲み物は少し工夫して飲みやすくなってるわ(生理食塩水に砂糖とレモン汁を少し入れた飲み物だけど説明してもわからないわよね。本当ユグドラシルって食材や飲み物にしても、細かかったわよね。おかげで助かってるけど・・・)」
「お、美味しいっ。しかも、携帯しやすそうだし、食べやすい。こんな仕事に合う食べ物初めて知りました。レイナさんのすんでた国のものなんですか?」
「ええ、私の知る人がほとんど知ってるんじゃないかってくらいの食べ物よ。ソウルフードってやつかしら」
「う、うめぇ!こんな仕事中でなかったら、もっと食べたいぜ!」
「うう、このオニギリって奴と一緒に入ってるコリコリしたのを食べると手が止まらん。なんなんだこれは・・・」
「も、もう食べ終えてしまった・・・。レイナさん・・・」
まるで雨のなか捨てられた子犬のような(見た目は大の男)瞳を向けてくるチームメンバーにレイナはため息を吐きながら残りのお握りを全部どこかから取り出した風呂敷の上にひろげる。
「はぁ、しょうがないわね。食べすぎて動けないなんてことにならないようにね。まぁ、そんなに気に入ってくれたなら、この仕事終わったら、またつくってあげるわ」
「うおおおおおお!よっしゃ!やる気が漲ってきたぁぁぁ!」
「はぁ、いつもこれぐらい頑張ってくれたらなぁ・・・」
「そういうリーダーもしっかり確保してんじゃねぇですか・・・」
「むむっ、レイナさんの料理に関しては負けませんよ!」
「やるな!嬢ちゃん!俺らも負けてらんねぇぞ!」
「そこは、張り合うところじゃないぞエンリ・・・」
「うっそ、みるみるオニギリってやつが減っていく・・・」
「・・・いっそ装備とかじゃなくて、おにぎり屋でも始めようかしら」
はしゃぐ彼らを見ながら、