オーバーロードとヴァルキリー   作:aoi人

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20.戦乙女と再戦

 

 

「引き込みたいなら言葉は選ぶべきよ。そんなことでは歴戦の戦士も子供のように泣いて逃げ出してしまうわ」

 

 洞窟の先、広い空間でその声は嫌に響いた。また女かとブレインは辛うじて考える。今日は厄日で、別の意味で女難に合う日なのだろうかと頭の片隅で思い。その瞬間、空気が一変した。

 

 今までも特に反応がなかった少女が、声の方を振り向き、とんでもない殺気を発っしたのだ。

 

「がっ、はぁっ・・・」

 

「ぐうっ、から・・・だ・・・が」

 

「な、なに・・・よ。こ・・・れ」

 

 その殺気に女と一緒にいる男女5人ともが息ができなくて苦しみ出す。ブレインもその一人だ。あまりに濃厚で、体が沈み、体の隅々からなにかがでていきそうだ。だがそれを直接向けられているはずの女は表情は変わらずに、仮面の少女を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 レイナたちがエ・ランテルを離れた後、モモンガは冒険者ギルドへと漆黒の剣となし崩しに同行することになり、道中は色んな話で盛り上がった。

 

 ルクルットはレイナとの出会いの話や、モモンたちの馴れ初めなどを聞いて盛り上がる。

 

「いやぁ、人一人投げ飛ばすモモンさんも凄いけど、その後のレイナさんの叱咤は痺れるぜ!」

 

「なかなかできることではないのである。ほとんどの者は助け船も出さないのが普通であるからなぁ」

 

「やっぱり、レイナさんは貴族ではないのかもしれませんね。あんなに綺麗なのに驕ることなく。他人のために怒れる人は素敵だと思います」

 

「すごいよな。貴族でないとすれば、遠いところの商人の出かも知れないんだな」

 

「ええ、彼女には助けられました。冒険者として力を見せれたのは良かったですが、やり過ぎて、人が離れては依頼を受けれる信頼も揺らぎかねませんからね」

 

 少し失った信頼はこれからの仕事で取り戻しますよ。というモモンガに漆黒の4人は感心したように頷く。

 

「へぇ、体も大きいながら器量も大きいんだな」

 

「漢の中の漢であるな」

 

「レイナさんも、そうした内面に気づいたから手助けしたのかもしれませんね」

 

 機嫌よく話すモモンと4人だが、逆に不機嫌そうなのが1人と気まずそうに俯く1人がいた。勿論、前者がナーベラルことナーベであり、後者はその理由がわかるユリことユーリである。

 

 あの後、モモンガ直々に2人は呼び出され、フードを被った女の正体がレイナだと言われ、当然、ナーベは殺害を進言。だが御方からは、彼女とは協力関係を築いていくと言われ、撤回するしかなかった。

 

 一瞬、レイナを陥れるために一時的に協力関係になったのかと思われたが、それを読んでたかのように、これまた御方自身が否定してからというもの。ナーベラルは目に見えて機嫌を損ねていた。幸い漆黒の4人にはモモンがレイナに親しくしていたのが不機嫌の原因だと思われている。

 

 本来なら、御方の指示に不満など抱いてはナザリックの者として、極刑も起こり得るが、それも、御方から仕方ないことだと寛容にも受け入れられ、すぐに納得しなくていい、だが少し考えてはくれないかと頭まで下げられては、御方を敬愛する部下として無下にはできない。

 

 それに、無理もないとユリは思う。彼女レイナの善性は、御方が保護したカルネ村の話で聞いて、自分にとって心地いいものであったが、彼女がこの世界にくる直前まで、ナザリックへと攻めてきただけでなく、御方の一人であるヘロヘロ様を殺したというのだ。

 

 ナーベラルには同じ三女として仲のいいソリュシャンという同じプレアデスの仲間がいる。そのヘロヘロ様の訃報を聞いた彼女の反応はそれはひどいものであった。

 

 ショゴスと言われるスライムである彼女の普段の姿は擬態と言われる能力であるのだが、そんな彼女が栄養不足のように痩せてしまい、目はどんよりと光を失い、美しかった金髪の巻き髪は、すっかり艶を失くしてしまったのだ。

 

 プレアデスはそんな姉や妹として、どうにかしようと普段は姉妹たちをからかうことの多いルプスレギナも今回ばかりは煽ることもせず奮闘するが効果はあまり出ず、不甲斐なさに姉妹揃って嘆いたものだ。

 

 しかし、そんな彼女が元に戻ったのは、御方の指示でリ・エスティーゼ王国へ執事長のセバスと一緒に潜入し調査する任務があったが、こんな状態ではこなすことが出来ないとして、不敬ながら御方にソリュシャンの役割を他の誰かに代えてもらうよう進言しようとしたときだった。

 

 丁度その時御方もソリュシャンの状態が悪い事を知っていたため、プレアデスの集まりに参加しており、彼女の調子について聞きに来ていた。やはりお優しい方なのだと、これなら交代の件も承諾してくださると感動していると現れたのが、()()()()()()になったソリュシャン本人であった。

 

 当然、御方も他のプレアデス一同も訝しげにどうしたのかと聞いても、やっと踏ん切りがついたと言うだけで、深くは話さない。

 

 まるで、その時だけは姉妹である彼女のことがよめず、他人のように感じてしまったのは彼女の姉にして、長女である自分を責めるばかりである。

 

 自分がそうなのだから、より近い位置にいるナーベラルはひとしおに感じているはずだ。そう思っていると、こちらの視線から感じたのかナーベラルは首を横に振る。

 

「違うんです。姉さん。私が怒っているのはモモン様が彼女を許すという言葉に納得できない自分に腹が立っているんです」

 

 そういう彼女を顔は普段はあまり変化しない表情もあって、よくわかるほどかわり、苦虫を何匹も噛み潰したような顔をしていた。

 

「モモン様がそう言っているのに・・・。そうしなければならないのに・・・全然そうは思えない自分自身が不敬で・・・あるのに私はそう心から誓えないことに、腹をたてているのです」

 

 ナーベラルが悩んでいる。今までなら御方が言うことは絶対と考えていたはずなのに、答えがでない自分の感情に悩みに悩み答えを出そうとしている。もしかしたら、モモンガ様が我々に期待しているのは、御方ばかりを師事することからの離反、いや、親離れを促しているのかもしれない。

 

 それが、敵であるはずの彼女の存在がそうさせているのだろ思うと複雑だが、ユリは何か事情があるのだろうと考える。そうして、目の前で成長していく妹をみて、自分も置いていかれないように努力するのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 冒険者ギルドに着いたモモンを待っていたのはンフィーレア・バレアレという薬師の少年の薬草採取とその護衛の依頼だった。どうやら、受付嬢がモモンの礼節ある言葉とナーベが第3位階の呪文を使えることと、それと互角の腕前の戦士と武道家で銅級(カッパー)でありながらも実力は未知だが、信用はできると紹介されたらしい。

 

 しかしながら、モモンは護衛自体はお安いご用であったが、採取に関しては一途の不安があった。そんな時に思い出したのが先ほど話が盛り上がった、シルバーの冒険者チームである漆黒の剣である。

 

 彼らのなかには、レンジャーに森司祭(ドルイド)が所属していた者たちがおり、気配を読むレンジャーや森など植物については抜きん出ているドルイドの力があれば、この依頼を十全にこなせると思ったのだ。

 

 そうして、話を聞いていた漆黒も交えて、依頼を聞くことになり、彼らも快諾。冒険者ギルドとしても、最近登り詰めてくる信頼できるチームであったので、手続きはスムーズに終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 目的地がカルネ村であることに面を食らい、ある意味トンボ返りであるが道中はモンスターが出た以外特に問題なく進み、逆にオークをものともしないモモンたちの実力を証明することができ、依頼人であるンフィーレアや漆黒からの信頼も得られたので嬉しい誤算だ。

 

「す、すげぇ。まさか昨日の今日で英雄級の実力者に会えるなんて、俺たちすげぇ縁の元で生まれたのかも・・・」

 

「ほんとですね。レイナさんもすごかったですが、モモンさんの剛撃ともとれる一撃はそれに並ぶかと・・・」

 

「ナーベさんやユーリさんも、魔法や拳の一撃でオークを倒したのはすごかったです・・・」

 

「まさに、英雄級の活躍であるな。これは負けられないのである!」

 

 ルクルットの言葉にプレイヤーの影かと一瞬緊張するが、すぐにレイナのことであることを知り、緊張を解く。そう言えば、オークを爆発四散させたと言っていたなとモモンガは思い出し、少し笑った。

 

 その後のモンスターの襲撃もモモンたちの活躍で切り抜け。その臨時収入により漆黒もホクホク顔であった。お昼に差し掛かり、見渡しのよい場所があったので、そこで休憩を挟むことになった。

 

 準備ができて、みんなが取り出したのは、何かの葉に包まれたもの。レイナのお握りである。モモンだけでなく依頼人であるンフィーレアもそれを取り出したときは、人の縁がこんなところで結ばれていることに驚きを隠せなかった。

 

 さて・・・モモンガとしては緊張の一瞬である。顔などみえる部分だけ人間にみえるようにするには逆に難しかったので、今のモモンガの鎧の下は全部が人間の幻術に覆っている状態だ。それもちょっと動いたくらいでは中身が骨だとわからないほどである。

 

 ゆっくりと兜を外す。その姿に自然と視線が集まる。あれほどの腕を持つのだ。どんな人物なのか響美を持つのは当然だろう。何故かナーベラルやユリからも視線が集まる。いや、そこは自然と対応してほしい。なぜ知っているはずの2人までもがじっと目を向けるのかと疑われかねない。

 

 外されたその顔は黒髪黒目の日本人。鈴木 悟 の人間の姿

 

 を少し、オーバー労働で痩せた所を健康そうに肉付きの良いようにした。顔面偏差値としては低いであろう顔だがどこか親しみ溢れる雰囲気のある男であった。

 

「なるほど、王国戦士長と同じ髪と目の色なんですね。もしかして故郷は同じとか・・・」

 

「くっ、顔では負けてねぇと思うが・・・ナーベちゃんやユーリさんはこういうのが好みなのか・・・」

 

「なんとも、優しさがある御仁であるな」

 

「・・・・・・・・イイ」

 

「・・・・・・・・ハァ」

 

「サスガ・・・・・モモンガサマ」

 

 ンフィーレア以外の意外な好評価にモモンガは驚く。当然その感情は表情によく現れた。

 

 そうして、始まったお食事タイム。

 

 みんなレイナからもらった葉の包みを開き、お握りを口にすれば上がるのは歓声。うまいうまいとンフィーレアも漆黒もお握りを食べるなかモモンガは一人躊躇していた。ナーベラルもユリも主が食べないので口をつけずにいる。

 

 そうしていると当然目立つので他のメンバーから声をかけられる。

 

「どうしたのですかモモンさん?」

 

「もしかして、食欲ないとか・・・」

 

「なら、俺・・・がぁ」

 

「こら、自分の分で我慢するのである。食べ過ぎれば折角のレンジャー足の早さが生かせないのである」

 

 そんな彼らにモモンガは手と首を振り、答える。

 

「ええ、その・・・初めて食べるので、少し考え事を」

 

「あ~、確かに最初は何かわからないから、躊躇したな」

 

「でもレイナさんが作ってくれたこれはホントに美味しいですよ。何でできているのか聞いたら麦の一種としか答えてくれませんでしたが・・・」

 

「レイナ殿の故郷の食べ物とは言っていましたが、これが市民に広がれば、飢餓に苦しめられないと思うのである」

 

 彼らの言いたいことはわかるが、これは、自分自身に問題があるので、何と言えばいいかわからない。このまま、ずっと睨みっこしているわけにはいかない。この後も護衛の仕事が続くのだ。少しでも遅滞の理由をつくる訳にはいかない。

 

モモンガは意を決して、お握りを一噛りした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

う、うまい!!

 

その声は歓喜に溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<希望のオーラlevel1>

 

 後から来た女を包むように光の波動が広がったように見えた。

 

 その場にいるものを、悪寒と震えから救いだし、息ができるようになって彼女を見れば不思議と力が湧いてくる。

 

「い、息ができる。レイナさんこれは・・・」

 

「心を強く持ちなさいと言ったでしょう?。下手をすればあのまま窒息死していたかもしれないわ」

 

「レ、レイナさん。あ、あなたはいったい・・・」

 

「・・・凄い殺気ね。まさか絶望のオーラ並とは思わなかったわ。あなたの味方さえ怖がらせてしまうとは」

 

「ふん、つい反射で出ただけよ。それより、待っていたわ。また貴女と戦える事を・・・私が負けたあのときから」

 

 女は仲間の言葉を半ば無視しつつ会話を続ける中ででた化け物だと思った相手から漏れる信じられない言葉。負けた?このレイナという女にこの化け物は負けたというのか。

 

「なるほど、その時の記憶はあるのね。(それだと、この世界に呼ばれる前からある程度干渉があったと言うことに?。それとも直前だったから?)ところでそれ以前の記憶はあるのかしら?」

 

「当然であり・・・だ。御方から創造されてから1日たりとも忘れたことなどない」

 

「(ということはこの世界に来てから今までのことがデータとして反映されて再構築されたのか)あら、結構簡単に教えてくれるのね。いいわ。あなたとの再戦、答えてくれたお礼に受けてあげる」

 

「・・・たとえ、受けないと言われても無理にでも受けてもらう・・・。そちらが受けてくれるなら手間が省けたな」

 

「ええ、いつでもどうぞ」

 

 レイナという女が化け物と戦うというのに恐れもなくそう言った瞬間、少女が槍を構え両者が消えた。

 

ガキィィィン!!

 

 金属音がなったとき、2人は洞窟の中心でぶつかっていた。少女は槍を突きだし、女が持った盾で防ぎきり、反撃とばかりに剣で少女を斬ろうとして、少女の持つタワーシールドで防がれていた。

 

 ゴゥと空気が膨れ、衝撃が洞窟にいる少女とレイナを中心に広がる。ほとんどの者が尻餅をつく中、倒れそうになる体を必死に支える。

 

「ほう、強くなったわね。あの時は言えなかったが名を名乗ろう。レイナ・ヴァルキュリアよ」

 

「私は・・・私は今はただのカーミラ。お前を倒すまで本当の名は捨てた者だ!」

 

 今、目の前で化け物とそれ以上だという人間の戦いが始まろうとしていることにブレインは目が離せなくなった。

 

 

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