オーバーロードとヴァルキリー   作:aoi人

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22.戦乙女と死の螺旋1

 

 

 モモン一行が無事にトブの大森林で薬草を採取し頑丈な柵をというよりは防波堤・・・いや、砦のようになった(アインズとして村が保護対象になったためゴーレムを貸し出したことで異様に堅牢と化し、自衛もエモット家の母がネムから預かったゴブリンの角笛で呼び出したゴブリンたちと若い男衆で農作業の合間に訓練している)カルネ村をあとにすると、メンバーが増えていることに気づく。

 

「殿よ。某の背中の乗り心地はいかがでござるか?」

 

「・・・・・う、うむ。悪くはないが思ったよりフワフワではないのだな」

 

「申し訳ないでござる。今まで外敵が多かったため毛が元よりだいぶ堅くなってしまったでござるよ・・・」

 

「な、なるほど。それなら仕方ないな?。ではその体の大きさや尻尾が鱗に覆われているのも・・・」

 

「いや、これは元からでござるよ?」

 

「そ、そうなのか・・・」

 

 その新入りの背中に乗る漆黒の全身鎧を来たモモンが言葉に迷う姿は、その正体を知っているものなら失笑ものだろうがこの世界では違う。

 

「森の賢王と呼ばれる魔獣を手懐けるだけでなく。もうあんなに親しく・・・」

 

「あああああ、どんどん男として叶わなくなっていく・・・」

 

「英雄にふさわしい。貫禄であるな」

 

「ウワァ・・・・」

 

「さすがモモンさーーーん。その威信は留まることを知りません!」

 

「昔、やまいこ様が見せてくださった可愛らしい動物ブロマイドの中にあったのに似ているような・・・」

 

 尊敬の視線が9割だった。いや、まずい!1割気付き始めてる!恥ずかしいから思い出さないで!!と本気で思う絶対支配者モモン。

 

 そうしてはたと気づく。この違和感に気付くであろうもう一人の存在に、しかも、その人はかつてのギルメンを召喚できることに・・・うん、その時は絶対この森の賢王改めハムスケには乗らないでおこうと硬く心に誓う。

 

 

 

 

 

 

 エ・ランテルに着いたのはすでに夜遅く。人の賑わいも静まった時間だったが、ハムスケに乗って凱旋した漆黒の戦士の登場に人々は足を止めてその勇姿を拝もうと列を作っていた。

 

 門を通るときすぐに冒険者ギルドでハムスケを登録しないといけないということで、チームはここで解散となるはずであった。

 

「では私はこのままナーベと冒険者ギルドでハムスケの登録をしてくるのでまた後で合流しましょう。替わりにユーリを付けますので荷物運びは任せてください」

 

「そんな、悪いですよ。今回モンスター討伐ではあまり役に立ちませんでしたし、ここは我々に任せてくだされば・・・」

 

「あら、お気遣いありがとうございます。ですがモモンさんが言われる通り、ただ登録するだけでゾロゾロ行っても意味がありませんし、それに力仕事の方が得意分野ですから!」

 

 遠慮する漆黒の剣に、ユーリが力を証明するように力こぶを見せるしぐさをとり、場を和ます。最初は少し固かったユーリもこの依頼を通して彼らの人間性を好んだのか自然と対応できるようになっていた。

 

 変わったユーリにモモンも嬉しそうにうなずく。

 

「彼女もそう言っているので、どうか。使ってやってください」

 

「わかりました。ではユーリさんお願いします」

 

「姉さん。わかってると思うけど、薬草を袋ごと持ったときに潰さないようにね」

 

「な、ナーベ!?さすがの私も袋くらい普通に持てるから!」

 

 また変わったのはユーリだけではない、ナーベラルもまだ対応自体は冷たく感じるが、今のように冗談をいうようになった。

 

 トブの大森林で薬草を採取するとき、ユーリも頑張って薬草を採取しようとするのだが、必要以上に力が入り薬草を駄目にしてしまうことを気に病んでいたのをここで引っ張ってきた。

 

 そのやり取りに、モモンも漆黒の剣たちもひとしきり笑い、一旦別れることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 モモンと別れた漆黒の剣とンフィーレアとユーリがバレアレ薬品店に着こうとしたその時。

 

「皆さん。少しお下がりください」

 

 ついさっきまでニニャと楽しげに話していたユーリが落ち着いた声で全員を止めると一番前に出る。どうしたのかと思う漆黒の剣だが、彼女の態度から異常を感じ自然と自分の得物に手を掛け、ンフィーレアも馬車を止め周囲を警戒する。

 

 なにも、今回成長したのはユーリたちだけではないのだ。モンスターの集団に襲われてからはレイナに助けられ色々アドバイスをされた。そのあとも、ンフィーレアの依頼途中でモンスターに襲われ、学んだことを実践し、それが身になっているのを実感した彼らも冒険者として成長したのだ。

 

 ンフィーレアもエンリが頑張るなか、戦いが苦手などという言い訳をしないようになり、エ・ランテルを離れる前に尊敬するおばあちゃんに出来るだけ攻撃呪文のコツを教えてもらっており、少しだけだが攻撃用の魔法を使えるようになったのだ。彼も物怖じせずその前髪に隠した目で警戒する。

 

「そこの扉の前にいる者。姿は隠せていてもさっきから殺気を隠せていませんね」

 

 ユーリの言葉に反応したのか木製の扉がゆっくり開きロープを巻いた()()()()が現れたのだ。その瞬間、ンフィーレアは異常を感じる。何故なら自分のおばあちゃんは第3位階の使い手で店には例え留守にしていても、魔法により、防衛されているはずなのに、そこから人が出てきたのだ。

 

 少なくとも、目の前の()()()()はリイジーの魔法を掻い潜る実力があると言われているようなものだ。

 

「あっれぇ~?ばれちゃったぁ~?。お姉さんどうして気づいたのかなぁ~気配は消してたのにぃ~。殺気と言われても納得できないなぁ~」

 

「それはよかったですね。今まで大したことのない者にしか会わなくて、そうだったらここに存在してないでしょう?」

 

 女の言葉にユーリが尚も冷静に馬鹿にするようにいい、女を挑発する。

 

「・・・んだぁてめぇ。私に気付いたくらいでもう上から目線かよ。見た目から武道家かなんか知らねぇけど、調子のってると楽には殺さねぇぞ」

 

「あらあら、怖いですね。できるものなら・・・ねっ?」

 

「ぶっ殺す」

 

 口調が変わり、殺気も隠さなくなった今の女が素なのだろう。その殺気を受けてもユーリは挑発をやめず、いいから来いと上向きの手招きしたことに、怒った女は地面を蹴り、その手に光るスティレットを突きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助けるのは今回だけであり・・・だ。・・・次こそはお前を殺す」

 

「ええ、いつでも・・・はちょっと迷惑ね。してくる前に連絡はほしいかしら」

 

「ふん。精々今のうちに残りの人生楽しむがいい」

 

 洞窟からカーミラによって脱出し、彼女とはそんなやり取りで別れた。殺すとか物騒なことをいいながら、次の勝負には何かしらで連絡をとることを約束して去っていった彼女の行動は素直に行動できないもの(ツンデレ)にしか見えなかった。

 

 チームの皆もそれに毒気を抜かれたのか、特に何も言わなかったが、ひとつだけ、今回の任務であった野盗の事について聞いたあとはレイナの言葉に従い、見逃してくれるようだ。

 

 無事にエ・ランテルへと帰ってきたレイナたちは、事が事だけに冒険者ギルドに報告を急ぎ、任務達成とともに成功報酬も渡したが、後日詳しく話を聞く必要があるかもしれないとリーダーのバオから言われ、しばらくはバレアレ家にいることを伝えた。

 

 冒険者ギルドから出ると、辺りはすっかり暗くなっていたが、レイナは自分達についてくる人影に話しかける。

 

「それで?お前はなんのよう?」

 

「頼む!俺をあんたの元でいさせてくれ!」

 

 人は少ないがどこに人目があるかわからないので路地裏に移動していた男は頭を下げた。

 

 洞窟から野盗の宝を回収し、残っていた馬車に詰め込んだあと御者扱いでエ・ランテルにつれてきたが、ここの兵舎につきだすか迷っている内に姿を消していた。

 

「断る。今日の野盗の件。今回が初犯というわけではあるまい。お前のような罪状持ちといると迷惑ね」

 

「ま、まってくれ!」

 

「カーミラの少し言葉を借りるけど精々どこ・・・へでも・・・」

 

「どうしました?レイナさん?」

 

 いけと名前も知らないが罪科ありの男を突き放しそうとしたレイナの動きが止まったことにエンリが声をかけるが、突然頭に声が聞こえたレイナはそれに耳を傾ける。

 

"くっそぅ・・・わた・・しは、こんなアバズレに・・・こんな所で・・・やられる訳には"

 

 それは死に瀕する声。無念の思い。魂の叫び。

 

 ・・・少々口が悪い気がするし、悪に染まった気配もある。

 

 が心の奥底に眠る。歪む前の声は耳に残った。

 

 "私を見て"

 

 声はすぐに聞こえなくなったが死んだという訳ではないようだ。回復魔法かポーションで命を拾ったのだろう。次に来たのは大量の負の思念。

 

 このエ・ランテルを目指して来るそれは・・・

 

「たしか、お前の名前は・・・」

 

「ブ、ブレイン。ブレイン・アングラウスだ、です」

 

「そうか、ブレインお前にチャンスをやる。今からここは相当な騒動が起きるだろう。それを前に出来るだけ人を助けろ。その結果によっては、私の元に来るのをゆるそう」

 

「ほ、ほんとう、ですか?」

 

「あくまで私がだ。もし、今起きている事が事実でお前が貢献出来ればこの国も、お前に恩赦は出すかもしれない。そうすれば、私の元に来ても汚名にはならないだろう。だが、強くなり、変な気を起こせば・・・わかるな?」

 

「は、はい!」

 

「よし、行け。命ある限り民間人を逃がし、異変がくれば対応しなさい」

 

 名前を尋ね、知ると矢継ぎ早に要件をレイナは伝え、男は飛び出していく。ちゃんと方向を間違えずにいけたのは男の勘か・・・。

 

「レ、レイナさん。これは・・・」

 

「な、なんだ。ヤバイぞこれは・・・」

 

 どうやら、2人も気付いたらしい。少しの間面倒をみていただけなのに、才能があるようだ。

 

「一仕事終えた後だけど、行くわよ2人共、私についてきなさい。やばくなったらすぐに助けるから、やれるだけやりなさい」

 

「「っ!、わかりました」」

 

 再び剣を握るレイナに続いて2人も臨戦態勢に移り、ブレインとは違う道をいくがそんなには離れていない。レイナはああいったが、彼がやばくなっても助けれる範囲にはいれておく。

 

 だが、数は向こうが上で範囲も広い。力を隠していては間に合わない命も多い。全力を出して助けれないのなら諦めれる。だが、出さずに助けれないのならばそれは・・・なんだ。

 

 ならば私は・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エ・ランテルの4分1を占める墓地を隔てる砦では、大量のアンデットの襲撃を受け、必死の防衛戦が繰り広げられていた。

 

 兵士が槍や投石で抵抗するが、数が多く、更にはそのアンデットの遺骸が砦の端に溜まり、即席の階段となり、扉を壊さずとも、乗り越えようとしてくる。

 

 そこの隊長はこの緊急時に冒険者の力も借りようと伝令を出してから、予想よりも早い冒険者の姿を見つけ、安堵しかけるが、彼らが首に下げるプレートをみて落胆を隠せなかった。

 

 かなり、切羽詰まっているのか。彼らの後ろにいるこの世界基準で強い魔獣の姿が見えないらしい・・・。

 

 銅級(カッパー)の3人は、戦士、武道家、魔術師みたいだが、まだ後ろにいる銀級(シルバー)の4人は何故かボロボロだがまだ使えそうである。

 

「おい、カッパーは民間人の避難を、そこのシルバーは俺たちと一緒に・・・」

 

「その必要はない。私たちがいく。いくぞ!ナーベ!ユーリ!ハムスケ!敵首領のいるところまで突っ込むぞ!」

 

「「はっ!」」

 

「ま、まってくだされぇ~!殿ぉぉぉ!」

 

 砦を駆け上がり、アンデットの海へ飛び込む戦士と武道家。それに続き第3位階の<フライ>を唱え、上空をいく魔術師。それを泣きながら追う魔獣・・・。それを止めようとするが、逆にシルバーの冒険者に止められる。

 

「ここは我々に任せて行ってください!」

 

「バレアレ殿を宜しく頼むのである!」

 

「おうよ!レイナさんのお陰でまだやれるぜ!」

 

「目的も果たせず、またお礼を言うまで死ねません!」

 

「だ、だがたった3人でここを突っ込むなど・・・」

 

「彼らの実力は我々が保証します!!」

 

「う、うむ。しかし・・・!?」

 

 彼らの言葉に隊長は渋い表情をするが、次にあれだけ扉を叩いていたアンデットの音がないことに驚愕し、恐る恐る扉を押さえていた兵士に開けるよう指示し、そこにはアンデットの影はなく、その残骸とも言えるものが残っているだけで、いつもの静寂がたたずんでいた。

 

 漆黒の英雄・・・

 

 誰かがポツリといった言葉はこのエ・ランテルを中心に広がっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私たちのチーム名と被りますね・・・」

 

「あはは・・・。完全に名前負けしますよね・・・」

 

「これはチーム名の変更も視野にいれないといけなくなるである・・・」

 

「いや、でもよ。他の候補にしても、いいのあるか?」

 

「「「・・・・・・・・」」」

 

 いつもはツッコまれ役のルクレットのツッコミに霧の奥から来る第2波のアンデットの軍勢を確認して武器を構えることで無視したシルバー級冒険者<漆黒の剣>の仲間たちはその場を誤魔化した。

 

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