それは見事なクロスカウンターだったと、後に冒険者チーム漆黒の剣は揃って言った。
元法国特殊部隊出身の漆黒聖典第9席次クレマンティーヌは自身の強さを一部を除き人類最強と自負していた。
確かに相手を嘗めて武技を使わずに突っ込んだのは自分の落ち度である。だが、相手が予想より強くても反応できる・・・はずであった。
「ひでぶゅ!?」
ゴッシャァァ!
どこかの世紀末で雑魚があげた断末魔の言葉をクレマンティーヌはあげて丁度良く?置かれていた樽やら木箱に突っ込んだ。
「ク、クレマンティーヌゥゥ!?」
連れのネクロマンサーカジットは隠れていた路地裏から思わず、心配して声を出してしまった。
「な、こっちにも!?」
「くっ、ばれてしまっては仕方ない。少々力押しでいかせてもらうぞ!」
カジットが紫色の珠(のちに死の宝珠と判明)を掲げて力を解放すると周囲にアンデットが現れ漆黒の剣とユリを囲み一斉に攻勢にでた。
チカチカする意識の中、クレマンティーヌは辛うじて生きていた。ユリがだいぶ手加減したのもあるが彼女が昔、なりふり構わず鍛えていたおかげだ。自分の命がヤバイと気付くと、念のために先程の薬師の店でくすねたポーションを使用し効果のほどは心配だったが既存の効能以上を発揮してクレマンティーヌを問題なく動けるくらいには戻していた。
意識がハッキリさせると、大量のアンデットに相手は苦戦しているかと思ったが、邪魔な冒険者もなかなかやるらしい。チームで動きアンデットを蹴散らしている。その要となっているのが自分を殴り殺す寸前までやった眼鏡の武道家であった。
押し寄せるアンデットを1体ずつ、確実に殴殺していく。彼女を押さえていられるのは、次から次へ召喚して対応しているからだろう。
このまま逃げることも考えたが、それをあの武道家や自分を追ってくる奴が見逃すとは思えない。あんまりな貧乏くじにクレマンティーヌは発狂しそうになる感情を抑えなければ目の前の女とまともに戦えない。今度は本気で武道家を相手してカジットと共に目標を確保、撤退するしかないと行動する。
「カジット!私がその女を相手する!。いくらかアンデットを寄越せ!抑えている内に目標を確保、撤退!」
「ぬぅ!?仕方ない!しくじるなよ!」
「させるとでも?」
「っ!?」
身構えたクレマンティーヌの前にユリは目の前にいた。
武技<流水加速>
拳が顔の横をスレスレに通り、後ろに下がる。それで、距離ができたところで、クレマンティーヌの普段のふざけた態度からは信じれない必死な叫びにカジットからのアンデットの増援がくる。
アンデットは捨て駒で、その対応の隙を狙うがユリはキッチリ防ぎあまつさえ反撃までしてくるのでカジットの方へ行かないように抑えることしかできない。
このままじり貧で進むようでは撤退かと考えていれば
「おい!カジットこのアンデットどもを街に放て!」
案に今クレマンティーヌたちに構うと街にアンデットが溢れるといい。気を反らした所を突破する。
「・・・皆さん。大丈夫ですか?」
「はい・・・なんとか・・・。っ!くっそぉぉぉ!!守れなかった!」
「ペテル・・・動いては・・・」
「・・・とにかくすぐにギルドに報告である。ルクルット」
「わかってるよ。今からひとっ走りしてくるさ」
クレマンティーヌらが姿を消した頃にはアンデットは全滅。残ったのは悔しくて顔を歪める漆黒の剣と主の命を守れずショックを受けながらも彼らを治療するユリだった。
☆
そこかしこから悲鳴が聞こえる。
レイナは目の前で母子を襲おうとしたアンデットの頭を切り飛ばし思案しながらも動きを止めないが、数が減らない。ここはエンリとシオンと共に抑えることができているが、このままでは他の地区に被害がでて、アンデットがアンデットを生み出し、大混乱と化していくだろう。
自分たちの後ろから冒険者たちが来て市民を避難させてくれているので守備範囲を狭めて行くことで徐々にだが、情報も集まり、アンデットが押し寄せてきた方からは漆黒の戦士が元凶を倒すため向かったという。
それにレイナは思い当たる人物がいることに笑みを見せると、ならばここを守るのは自分の仕事だと決める。
守らなければいけない。
敵を引き付け、護る鉄壁の要塞となる者。
背に弱き者を隠し、障害を切り伏せる者。
障害があれば、すぐに破壊し安全をつくる者。それを支える者。
慣れない立場で対象を守り、防ぎながらも攻勢に出れる者。
遠距離から自分を護る者を襲う障害を射ぬく者。
多くの個人を臨機応変に指揮する者。
とにかく手が足りない。
情けないものだ。
ユグドラシルプレイヤーランキング1位の力があっても、その場にいなければ助けれない。だがまだ間に合うはずだ。
共にソロで動いていたときに出会った彼女は戦った時間は少なかったが盾を使ったテクニックは随分と参考になった。
いつもはお調子者でメンバーたちを引っ掻き回す傍迷惑キャラだが、芯のところはしっかり者のお姉さんで、場に馴染めない者がいれば、自分を道化にして、引っ張っていく。馬鹿な弟がいると愚痴をこぼしているが、それは照れ隠しで弟が心配なのだろう。
「も~。そんなんじゃないよぉ~❗そんなこと言うなら手伝ってあげないよぉ❗・・・・なぁんてね。レイレイの頼みだから喜んで力を貸すよ❤️」
障害やルールを守らない者がいれば取り敢えず殴る。リアルでは教師をしているという彼女は頭はいいのに、行動は物騒である。ただそのあり方は、迷う事の多い人生で思うままに生きろと言われているみたいで気持ちがいいものだ。
その人の妹も姉から天才肌とか言われていてもその姉を尊敬し自分に奢らないしそれが嫌味にならない。あのリアルでは珍しい人格者だ。
「脳筋ってここまでいい言葉に解釈できるのね・・・」
「お姉ちゃんはもっと自信もとうよ!私の自慢のお姉ちゃんなんだから!!」
「あんたみたいに僕はとうてい出来ないよ。でも・・・友だちのレイがそう言ってくれるなら、頑張ろうかな」
また力を借りることになるけど、貴方ほど人を護ることができる人はそうはいない。貴方の背をみて、もう大丈夫と安心させて、憧れて、その助けた人がまた誰かを助ける。その流れが集まって小さな波になり、いつか大きな波になる。
「そこまで言ってもらえると照れ臭いな。何いつでも喚んでくれといっただろう。人助けなんだ。お安いご用さ!」
会ったのはユグドラシルの最後だったけど、ブランクにも負けず、後ろの彼を守っていた。装備も少し劣る物なのに切り結んだ時は少し驚いた。やはりまだみぬ強者がいることを再確認できた事は嬉しかった。
「ヴァルキリーにそう言ってもらえるとプレイヤー冥利につきますねぇ。私も思い通りに動けないのが悔しかったですが、何よりモモンガさんや貴女と最後に遊べて楽しかった。ああ、やっぱりユグドラシルをもっと遊びたかった。これは少しばかりの夢の続きとして楽しませてもらいます」
ユグドラシルに誘ってくれたのは今でも感謝している。結婚して子育てママになっても時々遊びに来てくれたのは、嬉しかった。私が守り、貴女が後ろから敵を排除する。時には2人で無謀な突撃して勝ち取った勝負もあった。最高の相棒。
「レイにそこまで思われるってちょとした自慢ね。あんたと大学で出会ってから私は変われた。レイは私の恩人なの!それにこんなに楽しそうなこと混ぜてくれないと逆に怒っちゃうから!」
初めて会ったのは茶釜に誘われた女性プレイヤー限定イベントだった。此方を本当に使えるのかと(種族が種族なだけにわかりにくいが)懐疑的な視線を向けてきたのはよく覚えている。
回復系で戦士など能力が中途半端で足手まといになると考えていたのだろう。すぐに証明できてからは頭を下げられたし、それからは良くしていた。茶釜が指揮官なら彼女はその補助をする副指揮官でチームを動かしていた。
「まさか、ユグドラシルが終わってまたこの体を使うなんてね。あんたも大変ねぇ。こんな異世界にとばされるなんて、まぁあんたなら普通に生きれそうだけど、いいわ。手伝ってあげる」
「我が願いに答える信頼なる勇者たち、いでよ」
ぶくぶく茶釜。
やまいこ。
あけみ。
たっち・みー。
ヘロヘロ。
相棒。
餡ころもっち餅。
召喚
「よ~し❗レイレイのために張り切っちゃうぞぉ❤️」
「みんなで戦うのは久しぶりだな」
「あぁ~そうだねぇ。鈍ってないかボク不安だなぁ」
「お姉ちゃんの背中は私が護るよ!」
「ユグドラシルの最高潮期くらいから・・・、いつの通りの連携とは行かないですかねぇ」
「ちょっとレイ!私だけ名前言われてないけど!?」
「気にする必要ないわ。いつもそう呼んでるからいいでしょ」
「ハッキリ開き直られた!?」
「正直貴女の名前懲りすぎて長くて私も覚えてないわ」
「そ、そんなぁ、張り切って辞書まで出して考えたのにぃ~」
「本名を言うわけにはいかないでしょ?。諦めなさい」
「じゃあ今から貴女はアイでいくわよ。名前ないと指示出すの大変だし」
「り、理不尽だぁぁぁぁ!?」
その卓越した防御力と周りを操るのに長ける軍師
味方を護り敵を打倒する白騎士
近付く敵を粉砕し味方に寄せ付けない半魔巨人
その彼女を慕い攻防長けた戦士であるエルフの少女
酸で溶かし尽くす紫の禍々しいスライムの上位種族
後ろを任せていた頼りになる弓使いのダークエルフ
その支援と情報魔法を使いこなす種族不明の大福餅
頼もしい味方たちが舞い降りた。