「ほらほらぁ❗お前らの相手はこの私だぁ❗」
見たことのない異形が多数のアンデットを相手取り、その手?に持った盾で攻撃を防ぎ、攻撃が緩くなれば盾を付きだし、アンデットの体を粉砕する。
「おおー❗レイレイの言ってた通り、数だけで大したことないねぇ❗」
声からして女なのだろうかその珍妙な姿からは想像できない綺麗な声に周囲の視線は集まり、目を凝らすものもいるがいるのはピンクのナニか。男は美人を想像して落胆を隠せず、女は紅くなって顔を手で覆い叫びながら逃げた。
不思議なほどそれは順調に進んだのは、アンデットがそのナニかに夢中といってもいいくらい集まるので誰もアンデットに捕まらずに避難場所に行けていた。
「ふんっ!」
「はぁっ!」
巨体の悪魔のような存在がアンデットの頭部や胴を粉砕。その背後を取ったアンデットは共にいる美しくかわいいエルフが切り伏せる。そこから2人は目にも止まらない動きで次々とアンデットを葬り、我先に逃げる市民の逃げ道を確保する。すると、2人の視界に子供をつれた親子がアンデットに囲まれその命を危機に瀕していた。
「いくわよ!あけみ!」
「わかった。お姉ちゃん!」
巨体の悪魔がエルフを持ち上げるとそのアンデットに囲まれた親子の元に投げた。エルフは高速で飛ばされながらもすれ違い様アンデットを蹴散らし、親子の元へたどり着くと、しっかりと着地。アンデットはそんな事気にせず、親子もろとも殺そうとしたが。
「ほんとアクビがでる遅さだね」
気付けばアンデットは姿を消していた。
のちにエルフの少女が姉と呼ぶ悪魔の話しは広まり何かの呪いで今の恐ろしい姿になったと悲劇に遭いながらも元の姿を戻す旅をしているなどの物語として語り継がれていくのであった。
「くそっ、スケリトルドラゴンかよ・・・」
大量のアンデットに奮戦していた冒険者チーム"クラルグラ"
そのリーダーと仲間たちは当初は圧倒して攻め立てていたが、数に圧され、疲労も溜まり、すでに後退を余儀なくされていたところにダメ出しのスケリトルドラゴンとアンデットに挟まれていた。
足元の虫を潰すようにスケリトルドラゴンが前足を持ち上げ、クラルグラ目掛け、その足を振り下ろす。
もう駄目だと全員が諦めかけたその時、スケリトルドラゴンが縦に裂けた。あまりの衝撃に全員が目を剥き、その光景に驚愕する。
目の前には赤いマントをなびかせる白騎士の姿があった。そして、白騎士が横凪ぎにその剣を振るえば、周りのアンデットも砂となって消えていく。
「うむ、彼女の言う通り、応用がしやすくなったと言うのか」
何を言っているのかわからないが白騎士はなにか納得したように頷いている。だがリーダーであるイグヴァルジはそんな事よりも目の前の白騎士の姿に昔憧れた英雄の背中をみていた。
そして、わかる。自分はあの境地に至れないだろうと。
「君たち大丈夫だったか?」
「お、俺は英雄・・・に」
「お、おい。イグヴァルジ?」
「なりたかったんだ・・・」
仲間の声にも反応せず、疲労困憊なのもあるだろうが彼からは覇気がなくなり、持っていた剣を落とそうとして。
「・・・君が目指す英雄はここで諦めるのかい?」
「!?っ・・・」
「もし迷ったのなら一度自分の原点に戻るのがいい。諦めるかどうかはそれからさ」
それだけ言い残して白騎士は街の夜道に消えていった。
このエ・ランテルの騒動が終わったあとイグヴァルジは仲間に無理を言って自分の故郷を目指し、そして、あの日飛び出した強い気持ちを取り戻し再スタートをきることになる。
「うん、思っている以上に体が動く。この程度の数ならあと100回は増援が来ても大丈夫かな」
紫のヘドロがアンデットを全員飲み込み全て消化する。ヘロヘロはユグドラシル以上に自由に体積を変動させて狭い路地などを担当。逃げてきた人間がいればそいつの周りのみ成分をかえて保護し、アンデットはいない方へ放り出す。
「う~ん、楽なのはいいけどやっぱり自分と同等か格上の戦いの方が楽しくて好きだな。手応え無さすぎだもん」
リアルではブラック企業に勤め、常に栄養ドリンク片手に働く忙しい彼は、実は結構のんびりだがプログラムと遊びにはストイックなところもある。彼がいるからこそ勤めていたブラック企業は保っているのが事実だったため珍しく他の社員より優遇されていた。だからこそ、長年ブラック企業でも働いてこれたのだろう。
「さて、もっちさんに連絡して・・・はいはい。次はあっちね。ふぅ~、この楽なのに忙しい感じ、ブラック企業が懐かしいなぁ」
・・・もう彼はワーカホリックの鏡といってもいいだろう。
「よし、ヘロヘロはB-3から4に移動。たっちは次の大物A-7へよろしく。うまくいけば、ほとんど被害出さなくて行けそうね」
餡ころもっち餅は安全な建物の上から情報系魔法で街のあちこちの映像を自分の周りに投影しながら、必要のある支援魔法を仲間たちに配っていた。まずはメッセージの共有化。PKではいちいち作戦を口に出していては相手に筒抜けになるし、逆に相手のメッセージを傍受できればかなり有利を取れる要と言える手だ。
「それにしても、誰も妨害魔法使ってないのかやり易くてすっっごく楽ね!あ、そう言えばモモちゃんがいるんだっけ?彼の攻勢防壁ヤバイからなるべく写さないようにしないと・・・この状態だと私のことどう判断するかわからないし」
彼女は茶釜と同じピンク色の体をしているが、彼女ほどナニかを連想する姿ではなく、美味しそうな桜大福ような見た目をしており、ユグドラシルではスライム種の亜種だった気がする。
かなり珍しい種族で支援魔法や情報系魔法に強いタイプでもともとのプレイスタイルも相まってその手のことについてはトップを張れる自信がある。
「うんうん。レイの方もさすがね。現地人の子達もなかなかやるじゃない。うまくレイの手が届かないかどうかのアンデットを始末してる。アイの援護もあってだけど、見込みがあるわ。それにしても、彼女のオンラインネームなんだったかしら?なんか難しい外国の言葉だったはず・・・」
ブツブツいいながらも、頭の回転や手を止めず、餡ころもっち餅は情報系魔法を追加、保険もかけて、支援も切らせない。
「文字の形は覚えているけど・・・読み方が・・・あ!そうだ。一時期モモちゃんも嵌まってた言葉だったわね。今度モモちゃんに会えたら聞いてみよ」
・・・絶対支配者の知らぬところで彼の心を満たすだけでなく削るフラグまでが立つのだった・・・。
掴みかかってくるアンデットの胴体を切り飛ばし、接近を許してしまった奴はクレイモアの柄の方で殴り、後ろへよろめいたところで頭に刃先を突き入れる。
エンリのその隙を突いたアンデットがいればシオンが弓ではなく投石によって粉砕する。
それでも数が多いので危なくなればレイナが神速で迫り、アンデットを一撃で葬り、アイが妖精を思わせる羽根で上空を飛びながら弓を射つ。しかしただの矢ではない。彼女のスキルによってアンデットが苦手とする聖属性を宿した一撃が何十発も流星のように降り注ぎ、アンデットの群れを浄化する。
「てやぁぁぁ!!」
「そこだ!」
「エンリ!シオン!疲れで周りが見えてないよ!敵は待ってくれない!すぐ行動!」
「相棒の言う通りだけど、無理は禁物よ」
こちらではレイナとエンリがアンデット相手に大立回りし、できた隙を相棒やシオンがフォローする内にアンデットを倒すと餡ころもっち餅の通信が入った。それでエ・ランテルに入り込んでいたアンデットは全て撃破したことがわかり残りは元々来ていた砦の方面から数が減って来ているらしい。
「〈
「は、はい。・・・まだ・・・やれます」
「だ、大丈夫だ、です。俺もやれます」
「レイのお陰で傷と疲れは治ったけど、精神的な疲れまでは簡単にはとれないよ。あとは私たちに任せて、2人は避難場所でできるだけ休んで。万が一そこにアンデットが来たら、迎え撃って、レイか私が来るのを待っていればいいわ。それでいい?レイ」
「ああ、二人の協力で市民には誰一人も被害が出ていない。私はお前たちの師匠として鼻が高いわ。だからここからは私たちに任せなさい」
自ら師事する人物の言葉に2人は嬉しいやら悔しいやら複雑な気分を味わいながらも、このままいても足手まといになるとわかるので頷くしかない。
「わかりました。レイナさんあとはお願いします!」
「変わりに避難場所は死守してみせますのでなんの憂いもなくやっちゃってください」
そうして、2人は避難民の後ろについて下がっていった。
「さて、弟子があんなに頑張ったのだから師匠らしく出来ることやりましょうか」
「珍しくレイがかなりやる気だねぇ。相棒としては少し焼けちゃうなぁ」
「全く下らないこと言っていると置いていくわよーーー」
「あ!?やっぱりちゃんと覚えてるじゃない!?何で最初に言ってくれなかったの!?」
「なぜってあんなに長い名前な上に呼びにくいったらないわ。確かにカッコいいけどね。その手の事は黒歴史って恥ずかしがる人もいるのによく使えるわね・・・」
「うーん、確かにそうかもだけどここに喚ばれてこの体になったら開き直ちゃった~」
「一児のママになって落ち着いたと思ったのに。・・・昔に戻ったみたいで楽しいけどね」
「私もだよ。またこうしてレイと戦えるなんて思ってもいなかったもん」
「・・・私から言い出してなんだけど懐かしむのはあとにしましょう。今のままじゃ落ち着いてろくに話せないわ」
「だね。そうと決まればちゃっちゃと倒しちゃおうか」
どこか懐かしいなやり取りをしながらレイナは建物を足場に跳躍しアイは妖精の羽根で空を泳ぎ、2人は目指す砦の方へと向かっていった。