オーバーロードとヴァルキリー   作:aoi人

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27.戦乙女とプレイヤーの影

 

 

 再びナザリック円卓の間

 

 

 モモンガことアインズは精神的死からなんとか持ち直し今は両肘を机に付け手を組み口元が隠れるような体制を維持していた。

その姿はまさに支配者の貫禄で周りにいるナザリック配下者たちに感動を与えていたがギルメンの中には似合っているとは思うものの忍び笑いをするものがいたが幸い誰にも気づかれなかった。

 

 それに気づきながらも努めて無視してモモンガはクレマンティ―ヌの話を脳内でまとめていた。

 

 人類救済を掲げておきながらやっていることは選民思想による優劣に対しての冷徹なまでの差別。実の子に対してさえそれは容赦なく振り下ろされ彼女の残虐性の根底になっている。

 

(全く本当に度しがたい者の集まりだ。零さんの逆探知魔法である程度情報を貰えたのは正解だった。クレマンティ―ヌもその事を慰めてみれば・・・)

 

 歪んだモノからは想像できない年相応の笑顔を見せるクレマンティ―ヌがいた。一瞬別人にも見えた彼女はモモンガに対する態度も軟化していた。誰か1人でも彼女を見る人がいれば・・・あそこまで歪みはしなかったのではないだろうか。

 

 正確には1人は友人がいたらしいが任務で亡くなっている。どれ程救いのない環境にいたのか。それはリアルの世界で富裕層と貧困層の違いに似ていて 鈴木 悟 としても許せるものではない。彼女はこの世界の裏事情をよく知る者として情報を集めるのを条件にナザリックで保護を約束したため大国スレイン法国は仮から完全な敵性国家へと変わった。

 

(ギルメンを連れていってほしいと言っていたレイナさんが最後にもしかしたらプレイヤー関係者かもしれない謎の気配を感じたと言っていた・・・。近々接触もあるかもしれないと・・・。何かあれば彼女が連れている人間2人を任せたいと・・・。それはつまり・・・)

 

 次に考えたのはナザリックに帰ってくる前に会ったレイナの安否についてだ。彼女は昨日騒動前からその気配に気づいていたらしい。その者の行動次第でレイナ自身が危険に晒される可能性がある。

 

 レイナの強さがあればどんなことにも対応できそうであるが未知の世界の未知の力やアイテムがあることがわかった先の騒動。

 

(もし彼女の身に何かあれば・・・)

 

 ふとそう考えたときモモンガの中で不安と焦燥感が生じる。ユグドラシル最後にヘロヘロさんと一緒に戦った彼女のおかげでユグドラシルで楽しかった思い出に浸ったり、この世界に来て1人ではないと安堵し、こうして一部のギルメンとも出会えた。

 

 それだけでなくアンデットであるモモンガに食事が出来ることも教えてくれた。現に今は円卓の上にはメイドたちが用意してくれた軽い食事がのっている。

 

 サンドイッチといわれるそれもお握りと一緒で手に直接持つもので中身の色んな種類があるレタスにハムを挟んであるやつやゆで卵を潰して少しピリリとした味付けにしたもの。試しに1つ持って食べてみたところお握りとはまた違った美味しさに手が止まらなかった。

 

 落ち着いた時にメイドがいれた紅茶を飲めばその香りと美味しさに側にいるメイドに御代わりをお願いしたほどだ(メイドはそれで感動に打ち震え御代わりを入れたあと御方たちから見えない位置に行き倒れてしまい今は別のメイドが立っている)。

 

 レイナによって喚ばれたギルメンたちもどうやら食事ができるようで彼らも食事ができることに驚き色んなリアクションをとってくれた。

 

「これは!?うまい!だが妻の作るものが・・・いや・・・しかし」

 

 たっち・みーはリアルの妻が作った手料理と比べ頭を抱え。

 

「こ、こ、こんなの美味しすぎて食べすぎちゃうよぉぉ❗」

 

 ぶくぶく茶釜は触手?を使って食べては食べては体が震えていた。

 

「うま~い!もう鮮度が違うというか。とにかく旨すぎる!!」

 

「こ、これは食べちゃうとあっちでは何も食えそうにないわね。舌が馴れちゃわないか心配だなぁ・・・」

 

 リアルとの食事事情を比べ別の意味で震える姉妹。

 

「これは向こうに帰りたくなくなりますねぇ。レイナさんには感謝してもしきれないなぁ。たまにとは言わずに何度も喚んでほしいと思っちゃいますね」

 

「ほんとね。食事で釣られているようなのが情けないけど。これだけでもこの世界に喚ばれて良かったと思う私がいるわ」

 

 ヘロヘロは体全体を使って食事を吸収しているし、餡ころもっち餅もどこからか口?らしい穴が体に開きそこへサンドイッチを放り込んで咀嚼?していた。

 

 メイドはどんどんなくなるサンドイッチや紅茶を補充するのが嬉しく笑顔で働いているのだ。

 

 そんな幸せそうなギルメンの姿をみるうちに心が満たされていったモモンガはレイナに対して感謝以上の気持ちを募らしていたのだ。

 

(もし零さんに何かあれば・・・)

 

 絶対に許しはしないと絶対支配者は誓うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでいつから気づいてたんだい?」

 

「昨日にアイアンチームと一緒にいた野盗の根城の近くにいたわね?そこでこそこそ此方の動きを観察していたのは貴方ね?」

 

「はじめからか・・・手厳しいな。でも人前に出るのは躊躇するものだ。それがどんな人物かわからないなら尚更ね」

 

「エ・ランテルがアンデットに襲われても?」

 

「・・・・・」

 

 謎の騎士の返事にレイナは昨晩の惨劇となりえた騒動を口に出せば騎士の流暢だった言葉は途切れる。

 

 レイナはあの時期待したのだ。目の前にいるあの強い気配を持った者は自分や悟と同じプレイヤーか人助けをするこの世界出身の強者か。

 

 だが先ほどの会話から彼は例えエ・ランテルがあのままアンデットに呑み込まれようとただ人目に入るから出ることはないという意思を感じたのだ。

 

 今も感じる彼の力は王国一と言われるガゼフよりも高く感じるしレイナ以外には見つからない隠匿も出来るのだ。ならばレイナたちやモモンガたちがどうにかする前にズーラーノーンの企みを阻止することもできたはずだ。

 

 レイナたちがいなければあの城塞都市は滅んでいた可能性が高い。知らずレイナの口調は冷たいものであった。

 

「それほどの力があればアンデットの群れの撃退ぐらいは手伝えただろうに。できないとしないでは印象もガラリと変わるわ。お前はどっちなの?」

 

「すまない。この体では少しの間しか戦えないんだ。きっとアンデットの群れを全滅させるまでに魔力が切れてただの傀儡になる」

 

「・・・なるほど。一応は言い訳にはなるわね。よく見れば生気は感じないし何かのアイテム、いや魔法かしら・・・。生気がない?もしかして貴方・・・わざと気配を出したわね」

 

「気づいたかい?これも君の実力や対応でどんな人物なのかを見定めるためさ。悪く思わないでくれたまえ」

 

「誉めといて最後は落とすって・・・貴方結構嫌なやつね」

 

「昔からの仲間にもよく言われるよ」

 

 向こうの思惑に気づいたレイナがそう言えば(わざ)とらしい驚きを見せる。それに嫌味をいえば淡々とした態度で返事をする彼にレイナは諦めるように溜め息を吐いた。まるで感情が一定から変化がない。

 

 レイナの今の態度には人間なら少しは反応に変化があるはず。彼がどんな人間か判断のしようもあった・・・。そこではっとレイナは気づく。この感情が一定から変化のないと言うことに種族による精神の抑制は・・・。

 

「貴方。人間ではないのね」

 

「そこにも気付くかい。君はどうやら今までのプレイヤーとは違い理性的で頭も回るらしい」

 

 アンデットなどにある特性に近いそれは彼が人間以外の別の種族である証拠。どこまでも人を試すとは信用は出来ても信頼は難しいナニからしい。口に出したプレイヤーという言葉もこちらの反応を伺う一手だろう。顔に出さずに済んだレイナはこれ以上主導権を握らさないよう言葉を選んでいく。

 

「それで?そのプレイヤーになんのよう?」

 

「否定はしないんだね。いや、なに君がどんな目的で動いているか。君の他にもプレイヤーがいるかとかね」

 

「その目的によっては味方かもしくは敵に?」

 

「答え次第さ。君たちプレイヤーはこの世界にとって英雄にも災厄にもなりかねない危険すぎる存在だ。他の事象すべてを捨てても対処する必要があるんだよ」

 

 他の事象。先のエ・ランテルの件もそうだと言っているのか()()()()()()()さっきより奴の気いや魂がよく見える。

 

 奴が言っていたように魔力で目の前の傀儡を操っているのだろう。どこか宮殿の中心で寝そべる白いドラゴンが見えた。

 

「っ!?見られた?それも君の力かい?」

 

 ここでやっと目の前のドラゴンの感情が動いた。すぐに戻ったということはやはり種族特性の精神の抑制が働いたようだ。

 

「さぁどうかしら?さっきのアンデット騒ぎを見ていたんでしょう?なら私がどっちなのかわからない?」

 

「君たちプレイヤーは何か目的があって行動するからね。手っ取り早いのは直接聞くことが一番なのさ」

 

「嘘をついても見破れると・・・大した自信ね。心配しなくてもこの世界を滅ぼそうだなんて考えてはいないわ。信用できないならこれからも私のことを見ていたらいい」

 

「そうさせてもらうよ。今の君なら信用はできる」

 

 公認のストーカーを認めてしまった気がするが悪用はしないだろうし話を続ける。

 

「ところで一つ聞くけどこの世界にある悪い組織やこちらにちょっかいをかけてくる連中を成敗したりとかも許さないとは言わないわよね?」

 

「その対応は自己防衛に任すよ。余りに過激でそいつらを滅ぼすのに無駄に生態系を巻き込んだりしない限りこっちは手を出さないさ」

 

「良かったわ。もしそんな悪党も手を出すなとか言われたらぶん殴っているところよ」

 

「・・・怖いね。だがその言葉で君はまず問題は無さそうだ。しかし、君以外の彼らはどうかな?」

 

 拳をグッと握りこむのを見せれば一瞬だが気圧されているようだ。少し気に食わないドラゴンではあるが根は善良のようだし、今回は互いに初見で打ち解けるのは難しい。最後の問いかけも彼ならば間違った選択はしないとも思えたので頷いて答える。

 

「そうか、ではまた会おう。その時敵対関係にならないことを願うよ」

 

「まぁ見ていなさい。期待を裏切ることはしないわ。そう言えば自己紹介はまだだったわね。私はレイナ・ヴァルキュリアよ」

 

「そうだったね。いつもは先に名乗るのだが柄にもなく緊張していたようだ。僕の名前は ツァインドルクス=ヴァイシオンだ。ツアーでいいよ。周りからはそう呼ばれているからね」

 

「しっかり覚えたわ。私もレイナで良いわよ。じゃあねツアー」

 

 緊張したというツアーの言葉に最初にあったギスギスした空気が緩和して自然と砕けたものとなった。そうしてレイナの初のプレイヤーを知る者との邂逅(かいこう)は終わり、ツアーは夜空の向こうへと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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