オーバーロードとヴァルキリー   作:aoi人

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2.戦乙女と最初の村

 

 

 DMMORPGユグドラシル最後の日。

 

 俺はいつもより遅れて、ログインしていた。そうなったのもリアルでの仕事で残業していたからだ。なぜユグドラシルの最終日にと怒りがあったが、周りの同僚に引かれるほど鬼気迫る表情で残業を終えて来てみれば、円卓の部屋でヘロヘロさんがかなり慌てた様子であった。

 

 どうしたのかときくとブラック企業で働くヘロヘロさんが急に会社に査察が入り、そのまま帰宅。今日がユグドラシル最後の日を思いだしログインしてみれば、ここナザリック地下大墳墓に侵入しているものがいた。すでに6階層にいた侵入者は時間が差し迫ったためかすぐに動き出した。

 

 それには俺も大慌て、とにかく装備を確認し自分は問題なかったが、ここでヘロヘロさんの装備を霊峰へ預けていることに気付きさらにテンパる。急ぎ取りに行こうとすれば、もう時間もないので性能は落ちるが今着ている装備で迎え撃つとヘロヘロさんが覚悟を決めたので、俺も腹をくくった。

 

 俺たち2人は久しぶりにパーティーを組むと侵入者を迎え撃つため上の階層を目指した。

 

 

 

 「ナザリックの魔王とその仲間か・・・」

 

 ナザリックの最後の防波堤である第8階層の前で彼女に出会った。白い鎧の中心で蒼く輝くワールドアイテム'女神の涙'に身を包みプラチナの髪を三編みにまとめた彼女の姿に私は思わず高揚を覚えていた。彼女の姿に俺は覚えがあり、ヘロヘロさんも驚いているのか開口している吹き出しが出ている。

 

 ユグドラシルにおいて彼女の伝説は有名だ。特定のギルドに所属せず主にソロで活動し、たっち・みーさんと同じワールドチャンピオンの称号持ち、ユグドラシルで唯一の職業ヴァルキリーを与えられた存在。

 

 その時の活躍は伝説と語られ、ワールドエネミーを参加したどのパーティーでも討伐し、ソロでも3体程討伐に成功した凄腕プレイヤー。なにかアイテムを使ったのだろうが、長年来ることのなかった攻略者、さらには有名人で強者であることも含め、最後にここナザリックに来てくれたことに高揚が止まらない。

 

 そんな彼女をここ第8階層ではなくもっと相応しい所で戦いたくなり、ヘロヘロさんと魔法メッセージで相談し、彼も頷いてくれた。

 

 場所を変えようといえば彼女も頷いてくれる。話が分かる人だなと思いながら目的地へ向かう途中、プレアデスたちやセバスが彼女に反応し戦闘体制に入ったが、俺が止めたのでさらに時間が削られることはなかったが、ちゃんと彼らがシステム通りに動いたことに嬉しく思う。

 

 玉座の間を護るものとして最後の日までその役割をやらせることが出来なかったのが悔やまれるが、ヘロヘロさんに肩を叩かれ、彼女からも戦いたかったものだと言われ悪い気はしなかった。

 

 そして過去1500人に攻めこられた時も使わなかった玉座の間で私たちは対峙した。最終決戦らしくいこうとヘロヘロさんと相談もした上で(ここに来る前に玉座の間にいたNPCであるアルベドが戦闘に巻き込まれないよう別の所に移動指示を出して)だ。

 

 対戦は消費アイテムと回復魔法使用禁止のルールで

 

 数はこちらが2人と優位だがユグドラシルでは絶対ではない。彼女は唯一のヴァルキリー職でロールプレイしており、私も魔王ロールプレイで返す。後ろでヘロヘロさんが笑っているのは恥ずかしかったが、それよりも楽しいという思いが強くすぐに気にならなくなった。そう思えた事に、ナザリックへ来てくれた彼女に改めて感謝した。

 

 「魔王よ。これが最後だ」

 

 「やってみろ。出来るものならな」

 

 まさにラスボス前のらしい台詞を応酬し、1対2のバトルが始まった。ヘロヘロさんが前衛当然私は後衛で、そして始まったのは全く油断できないほどここユグドラシルで今まで戦ったどれよりも激しいと思うものだった。

 

 彼女はその強みである回復魔法を縛りにしているのに、ヘロヘロさんのブランクもあるだろうが、疲れのためか彼女の攻撃に防御が精一杯でこちらの魔法攻撃も対魔法装備の剣によって切り払ったりなどたっち・みーさんを彷彿とさせるプレイヤースキルを魅せる彼女はとても輝いていた。

 

 「グラブス・ハート!今です!ヘロヘロさん!」

 

 「ナイスです。モモンガさん!」

 

 「ぐぅ!?やはり厄介な技ね!でも!」

 

 「ぬぅ!?もう、動けるとは化け物か!」

 

 「それはこっちのセリフ・・・よっ!」

 

 使用した相手を確率で即死させ、そうならずとも一時的に朦朧状態にできる魔法も彼女の言うように一度だけ即死攻撃を無効し、それに伴う状態異常は防げず一瞬動きが止まり、そこにヘロヘロさんの攻撃が通るが、直ぐに彼女は動きだしヘロヘロさんの次の攻撃を受け流しカウンターを決め彼を追撃する。

 

 「その装備いただきますよ!」

 

 「それを待っていたわ!」

 

 「何を!?」

 

 「この近距離なら避けれないでしょ!?」

 

 再度激突した瞬間ヘロヘロさんがその種族特性である相手の装備を溶かすその身体で包むと彼女がふっと笑う。そも瞬間神級装備が弾けとびヘロヘロさんに大ダメージを与え拘束も解くだけでなく他の敵プレイヤーの行動もキャンセルされる。あれは装備のレア度で威力が変わる自爆技!本人にはダメージはないがその装備は完全にロストしてしまう糞運営ならではの死にスキル、まさかここで使うとは、いや今だからこそか・・・

 

 「まさか耐えるなんてね!どんな装備しているのよ!」

 

 「咄嗟に防御して、モモンガさんの補助魔法がなければやられていましたよ」

 

 「誰も自爆は使わないからほぼ死んでた対自爆防御魔法でダメージ全損は防げましたよ」

 

 「何千とある魔法から瞬時に使用できるなんてどこが中の上よ。この詐欺師!?」

 

 「さ!?、ひどい!」

 

 「モモンガさんは無自覚ですからね~」

 

 何気に酷いことを仲間からも言われる。そんな掛け合いにも懐かしさを覚えながらも攻防は終わらない。本来ならば、負ければレベルダウンの他にも、ペナルティが存在するために、ピリピリした空気になるのだが、最後ということもあり、自分達の間に交わされる掛け合いは、純粋な楽しさから来るものがあった。

 

 そしてついに防戦一方だったヘロヘロさんが勘を取り戻してきた中、彼女が勝負を挑んできた。ヘロヘロさんに背を向け私を狙ってきたのだ。勝負を焦ったかと思ったが私が放った魔法をあえて受けると、その時のノックバックを利用して背後から追いかけてきていたヘロヘロさんが反応した攻撃を身を滑らすように避けて胴を切り払う。本来スライムであるヘロヘロさんには斬撃属性は効きにくいが、いつの間にか持ち換えていた対スライム用の太刀がヘロヘロさんの残ったHPを全て溶かす。

 

 最後にここまで戦えたことに満足したヘロヘロさんは別れの言葉を話してログアウトしていった。もし決着がついたらそれをメールでおくろうと誓う。

 

 ユグドラシルのサービス終了まで残り時間は少ない。俺たち2人は互いに持てる全ての力を放った。その瞬間今まで感じたことのない衝撃を受け、吹っ飛ばされたところで意識を失った。

 

 

 

 ・・・・・。

 

 

 

 次に目を覚ましたのは自分のリアルの部屋ではなく見覚えのあるボロボロのナザリックの玉座の間で身体にはしる痛みによってだった。

 

 同じく起きて周囲を窺っていた彼女、レイナ・・・さんと一緒に色々話し合う。(正直、面と向かってこんな綺麗な女性と話したことなくて緊張した)最初はユグドラシル2など大型のアップデートでのベータテストかと思ったがあまりにリアルと同じ感覚にいつしかここは現実になったのではないだろうかと思った。

 

 それを口にすればレイナさんもそう思ったらしく。そう仮定して話を進めようとする前に、とにかく今ボロボロな状態はどうにかしようと彼女が取り出したのは神精樹の雫だった。消費アイテム最高レアで神話級装備よりも貴重といわれるそれに最初は断ったがとにかくすぐに回復しようといわれ押し付けられた。

 

 そうして飲んだそれはリアルでも絶対のめない美味しいものだった。二人して声を揃え叫ぶほどに、自分がアンデットであることも忘れそれを飲み干し沸き上がる力に足場が悪いことを考えず飛び起きてバランス崩すほどに・・・

 

 レイナさんの距離がめっちゃ近い。しかも俺の両手が狙っていたように鎧とドレスの隙間に入り込んで彼女の小さくもなく大きすぎない双丘を言い訳も出来ないほどに、がっちりと掴んでいた。さ、さらに狙った訳でもないのに指が動いて揉んでしまう形に・・・!直に伝わる体験したことのない柔らかさに一瞬思考が吹っ飛び、そして少し視線をあげれば、顔を紅潮させ目を潤ませる彼女に、今はないはずの心臓が跳ねた。

 

 

 

 

 「この人間風情がぁぁ❗」

 

 その言葉ととんでもない殺気に私はモモンガ・・・さんを突き飛ばし(ついでに胸を揉んでいた手も取れてホッとした)ほとんど反射で剣ではなく対物理盾を展開してスキル<かばう>も発動させそれを受け止めた。

 

 ゴギャン❗

 

 と金属同士とは思えない音と衝撃に大理石の地面が私を中心にひび割れる。

 

 瞬間スキル<カウンター>を発動。私は盾をはねあげ、押し返されたのが信じれないのか驚愕を顔に浮かべる目の前のサキュバスの無防備な腹に、はねあげた力をそにまま足に伝え蹴りつける。いきよいよくカウンターの効果でノックバックする彼女の目と合うと私はダンジョンで脱出するためのアイテムを使いその場から逃げ出した。

 

 

 

 

 

 「はぁ、はぁ・・・」

 

 外に脱出できた私は後ろにあるナザリック地下大墳墓から全力で走った。リアルにはないはずの草原をただひたすら走るその早さは人間では到底だせるものではないがそんなこと考えることなくだいぶ離れてから私は立ち止まり地面に寝転がる。

 

 少しだけ乱れた呼吸を整えてから目を開けるとそこにはリアルではもう見れなかった本物の青空が広がっていた。

 

 「凄く綺麗ね・・・」

 

 感動したのは景色だけでなく、優しく吹き抜ける風は心地よく乱れた息を整えるために吸う空気は美味しかった。上体起こし周囲を見回す。あのスモッグや大気汚染されたものとは比べるべきもない。そこには美しい世界が溢れていた。

 

 あ、服・・・と思っても先程の戦闘でボロボロだった装備は神精樹の雫のおかげで神級装備も含めて健在だ。がしかし、もし本当にここが異世界なら今の装備は目立つ、どこに人の目があるかわからないので、今のうちにおとなしい装備に変えよう。

 

 近くの茂みのなかに入りインベントリから別の服を取り出し着替える。目立つ鎧から落ち着いた動き安い布製の装備はユグドラシルで旅するときによく着ていたものだ。防御力は伝説級より低いがどんな環境でも適応できるというスキルを持ちその見た目とその性能から旅人ロールするにはもってこいな代物であり色だけは上は紺で下のスカートは白で他の人とは違いを出して、腰まである髪は先端で結び動きやすくしてある。

 

 「行こう。・・・とその前に"導の妖精よ我に道を"」

 

 両手を前にかざし、そう唱えるとそこから光る玉に羽が映えた存在が生まれる。これは広大なユグドラシルのマップを旅する上で迷子なった時や新しい町など行くときに使う呪文で今自分から一番近い町やその次に近い所へ道を案内してくれる。もしやと思い使ってみればこの見知らぬ大地では大変重宝しそうだ。

 

 フヨフヨと目の前を飛んでいく妖精のあとを追って歩き出した。

 

 

 

 道中は比較的平和でのどかな平原を見て楽しんでいたが道すがらの森に近づくとゴブリンの大群と遭遇した。奴等はレイナを見て獲物と定め襲撃してきた。

 

 「うん、こんなものね」

 

 レイナを数に物をいわせ取り囲んだまではよかった・・・。

 

 振り抜いて剣についた血を払ったレイナの周りにはゴブリンたちの惨殺死体が広がっていた。

 

 いきなり遭遇したのには驚いたが特に恐怖は感じなかった。命を奪うことに躊躇いがないわけではないが奴等の下卑た笑みを見てそんな気も失せてしまった。あとあまりに遅いので一体ずつ背後をとり技を試し切りをさせてもらった。どうやら問題なく使えるらしい。

 

 死体は匂いがひどいので一纏めにして火の呪文で燃やす専門の魔術師よりは弱いが充分だったのか死体はすぐに燃えて灰になった。

 

 自分の懐のなかに(結構あたたかい)隠れていた導きの妖精による探索を再開し、しばらく歩くと町いやあれは村だろうか森を背に木や土でできたのどかな農村が見えてきた。丁度この村の娘だろうか?こちらに背を向けている姿もあった。辺りはすでに日が傾いており、すぐに暮れてくるだろう。

 

 レイナは騒ぎになるかもしれないと、導きの妖精を優しく撫でて、御礼をいえば、彼?彼女?は嬉しそうに周囲を飛んだ後、空の彼方へ昇るように消えていった。ユグドラシルではただ消えるだけだったそれにしても、感心と、ここが仮想世界との違いを見せられた気分であった。

 

 なんかもうこれで会うことはないのではという心配もあったが、後日同じ呪文を試せば杞憂であったことを後日知ることになる。とりあえず目下の目的である、人のいる村に着いたのだ。

 

 第1村人の彼女に声をかけて、宿がないか聞いてみないと何の情報もないところで野宿をする羽目になるかもしれない。

 

 出来ればそんな危険を犯したくないレイナは、今の姿に怪しいところがないか確認して、何度か脳内でシミュレーションを行い、深呼吸してから声をかけるのだった。

 

 

 ☆

 

 

 彼女はその日は忘れないだろう。

 

 エンリ・エモットは日が傾いたとき彼女は今日の農作業のノルマを終えて母親と夕食の手伝いをするため帰路についてたところ、「もし・・・」っと後ろから声をかけたれたその声には聞き覚えがなく声色からして女性であるのはわかった。

 

 「はい、なんで・・・しょうか」

 

 振り向くとそこには自分が今までみたどんな女性よりも美しい人が立っており、返事が尻すぼんでしまう。日に照らされるプラチナの髪に綺麗な白亜の肌。吸い込まれる碧眼、着ているものはよくみる冒険者が着ている物に似ているが、彼女に合うよう青と白で上下に別れており、かなり上物であることが窺えた。

 

 「え、あ、どうしました?」

 

 「君はここの村出身?私は旅人でね。今日はこの村で一晩過ごしたいのだけど、宿があるなら案内してほしいのよ」

 

 ちょっと挙動不審に言葉を返してしまったけど、彼女は特に気にした素振りもなく、聞けば案内を頼みたいというものだった。こんな綺麗な人が旅人。てっきりどこかの貴族のご令嬢だと思った。

 

 「宿ですか?生憎この村にはそのようなものは・・・」

 

 「そうなの・・・」

 

 野宿するしかないかと悲しげに呟く彼女に私は

 

 「あの!良かったら家に泊まりませんか?」

 

 そう声をかける。

 

 「いいの?そうしてくれると助かるけど・・・」

 

 「大丈夫です!私の知り合いで薬師の友達がよく森の薬草を取りに来た時に泊まる部屋がありましてそこなら・・・」

 

 遠慮するその人に私は何故か強く勧めて声も大きくなる。

 

 「そうなの、助かるわ。ありがとう」

 

 「いえいえ、では行きましょう!」

 

 彼女を誘えたことに気分が高揚する自分がいる。そして、村の中を歩くと当然他の村の仲間と会うので、私の一歩後ろを歩く彼女の美しさに老若男女問わず、足を止めてしまう。特に若い男衆はまじまじと彼女を見詰める。あまりの露骨さにため息が洩れそうになる。

 

 私の家がみえるとそこを指差して教える。いい家ねと言ってくれた彼女の言葉に笑顔が浮かぶ、そして彼女は少し足を早め私に並んだ。

 

 「まだ名前を教えてなかったわね。私は・・・レイナ・ヴァルキュリア。一晩お世話になるわ」

 

 「エンリ・エモットと言います。」

 

 「いい名前ね。エモットさんと呼んだ方がいい?」

 

 「そんな。エンリでいいですよ。レイナさん」

 

 「わかったわ。エンリ」

 

 自己紹介した私たちは家のなかに入り両親と妹のネムを紹介する。その時父がレイナさんに見惚れ、母と一悶着あっただけでなくレイナさんを見た人が村中に広め一目見ようとたくさんの若者がきたのはすごく恥ずかしかった。

 

 

 

 「ふう、随分と元気のよい者たちだわ」

 

 さっきから押し寄せてきた男たちがいなくなり、レイナは精神的に疲れたのかため息を洩らす。

 

 「すいません・・・旅で疲れているのに・・・」

 

 「いや、エンリが謝ることじゃないでしょ?それにしても旅人は珍しいの?あんなに歓迎されるとは思わなかったわ」

 

 「そ、それはいつもじゃないですよ。レ、レイナさんが凄い美人ですから」

 

 謝るエンリに気にしてないといっても苦笑と共にこんなに歓迎されることに戸惑いを口にすると小さくその理由を聞く。

 

 「嬉しいこといってくれるわね。エンリも美人だと思うけど」

 

 「わ、わたしなんてそんな・・・」

 

 否定するエンリにレイナはそうなのかと首を傾ける。実際は彼女の友人の薬師が誠意しているので、みんなから見守られているのだ。勿論玉砕すれば村の中から何人かが立候補するだろう。

 

 「所でエンリはここら辺のとこについて詳しいかしら?」

 

 「ここでは村長が一番詳しいと思います。私の友人がここから近い街に住んでいるのである程度の話しは聞いてますので少しくらいは」

 

 「そう、今日は遅いし挨拶も兼ねて明日村長には話を聞きにいきましょうか。でもその前に良ければ色々聞きたいんだけどいい?」

 

 いいですよと承諾してくれるエンリに、じゃあといっていくつかの質問を上げていく。

 

 この世界に魔法はあるのか、ここで使われている文字について、使用される金銭についてなどこれから必要になる常識を聞いていく。

 

 魔法に対してはイエス、私生活から荒事向きなものまであり、先に話した友人や彼女の母親も覚えているようだ。エンリも使えるのかと聞いてみれば今教えてもらっている最中でまだ上手くはできないらしい。あとは生まれながらの異能タレントというのも興味を覚える。

 

 文字についてはエンリが知っているらしくいくつかの言葉を見させて貰う(書いて貰うために普通の用紙を出すがひどく驚かれたこんな上質なものは、そうそうないとのこと)正直何を書いてるのか言ってくれないとわからなかったのでこうして彼女と会話出来てるのが不思議に思える。

 

 金銭については銅貨、銀貨、金貨さらには白銀貨とあり、生憎銅貨くらいしか持っていないらしくそれを見せて貰う。ユグドラシル通貨に似ているが細部はやはり違うようだ。確か換金アイテムもあったので、それを見せて換金できないか聞いてみると素人のエンリから見ても銅貨で換金できる品物ではないらしい・・・一番換金率が低いアイテムなのだが・・・

 

 そこまで聞いて私は頭を悩ませる。ここではリアルやユグドラシルでの常識が通用しない。もし私がユグドラシル初心者ならまだ受け入れられただろうが、もうレベルカンストさらにいくつも冒険して手に入れた経験やアイテムなどから価値観がとんでもないことになっているのに気づく。

 

 まさかと思いアイテムからマイナーポーションを恐る恐るエンリに見せてみれば、こんな赤いポーションは見たことないといわれポーション自体はあるらしいがこの世界のは青くしかも経年劣化するようだ。

 

 「そ、そう・・・なの、ふぅ、ありがとうエンリためになったわ」

 

 「いえ、こちらも色々話せて楽しかったです!」

 

 なるべく動揺が顔にでないようにしてみるが声は震える。

 

 エンリはそのことに気付いていると思うがあえてスルーしてくれたのだろう。ほんと性格も器量もいい子だなと思う。

 

 「なにか困ったことがあったら言ってね。力になるから」

 

 とにかく、教えてくれたエンリに私はそういい。すっかり遅くなった時間で寝泊まりするのだった。

 

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