オーバーロードとヴァルキリー   作:aoi人

30 / 58
28.戦乙女は王国へ

 

 

「では零さんはすぐに王国へ?」

 

「ええ、さっきも話したけど例の件はしばらく不干渉の約束はできたからね。よっぽどのことをしない限り何かの行動中に乱入してくるといった接触はしてこないはずよ」

 

「それより零さんに何もなくて良かったです。正直すごく心配だったんですから!」

 

「心配してくれてありがとう。向こうもさすがにプレイヤー2人の前に来るのは躊躇すると思ったからね。悟は姿が魔王だし、人間の私の方が適任かと思ってね」

 

 人避けがされたエ・ランテル1と呼ばれる高級宿黄金の林檎亭宿舎の部屋で零と悟は互いに向かい合って椅子に座り情報交換を行っていた。

 

 零が来たのは悟がモモンとして復興の手伝いでこのエ・ランテルに残る以外でも英雄が近くにいることへの住民に対しての安心を与えるためあんまり宿から動けないからだ。

 

 ここ数日は人的被害はなかったとはいえ建設物は破損が目立つ中炊き出しを手伝いで残っていた。それもだいぶん落ち着きも取り戻したので今日中に王国へと発つつもりなのを悟に伝えるためである。

 

 別の理由に冒険者ギルドからや教会の勧誘が激しいことも理由の一つだ。何度断っても止む気配のない勧誘は相棒がリアルへ戻った時から弟子関係であるエンリたちにも向き始めたのでここまでと決めたのだ。

 

 あとはあの日依頼を受けた冒険者チームアイアンチームも野盗の調査だけでなく壊滅の知らせやアンデットの襲来を生き延びたことで1ランク上がりシルバーに昇格している。

 

 漆黒の剣の彼らも騒動の先んじてギルドに報告したことやこれまたアンデットの襲撃を退けたことでゴールドへ昇格が決まり、この時嬉しいことに零が商品の試しに彼らに性能の宣伝をしてもらうため格安で貸し出していた装備のおかげで生き延びられたと冒険者仲間に広めたことで零に冒険者たちが買いに殺到しいい商売になったことか。

 

 その商品とは軽く魔化された鎖帷子(くさりかたびら)だ。この世界にはない合金性でなにかと力がない内は目立つことを避ける冒険者が人目を気にせずに装備できる物でエンリたちと冒険をするなかでゲームのユグドラシルと違い重ね着が出来ることに気づいてだ。

 

 ゲームでは出来ないことが出来ることに驚きもあったがよく考えればリアル基準なのだから当然だろう。ゲーム脳であるからの盲点である。

 

 零が作った鎖帷子は軽く動きやすいことからどの職業でも重宝するので大変売れてしまった。エ・ランテルで換金した分も合わせて暫くは問題なく生活できるだろう。

 

 それを聞いた悟が羨ましそうにしていたのでナザリックも調査のため店を王国に出すのだからその際ナザリックの部下に店を任せてみるのはどうかと提案したら目に鱗といった反応をしたあとでいいですねと悟も乗り気のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ行ってくるねンフィー。体しっかり治してね」

 

「うん。ありがとうエンリ。エンリこそ気を付けてね。外は危険が一杯だ。ここに寄ることがあればいつでも歓迎するよ」

 

 エ・ランテルを離れる際にンフィーレアも着いていきたそうにしていたが本調子でない者を旅に連れて行けそうになく彼は祖母と一緒に自宅の薬品店で残ることになった。

 

 また冒険者ギルドや教会に捕まりそうになるがなんとか避けると目の前に青髪の男が現れる。なにを隠そうブレイン・アングラウスである。

 

 どうやら人助けしながら無事生還できただけでなくここの市長から王への恩赦への打診はできたらしい。しかし、今はまだアンデットの騒動で手が空いていないので王国へは一人でいくよう言われその時レイナも王国へ旅立つ噂を聞きつけついでとばかりに合流したのだ。

 

「約束通り人助けはやったし、恩赦の方も切符は手に入った。あんた・・・いやヴァルキュリアさんに付いていきたい。その戦いの術を見せてくれるだけでいい!お願いする!!」

 

「ええ、約束は守るわ。ただ見せて覚えさせるだけなんて中途半端なことはしないわ。2人の弟子を見ながら貴方にもある程度助言や模擬戦をメインに学んでもらうわ。もう力を野盗に落ちぶれる間違った使い方はさせない。わかったわね?」

 

「・・・感謝します!」

 

「あと私の事はレイナで構わないわ。さんでも何でも呼びやすいのを付けてくれて構わない」

 

 エ・ランテルで人助けをしたことで今まで自分がしてきたことを後悔しているのか涙を流しながらブレインは頭を下げた。

 

 レイナ御一行に1人追加かと思えば王国への道中、夜間に紛れてレイナを襲う影が林から飛び出してくる。

 

「甘いわ」

 

「ぐう!?」

 

「「レイナさん!?」」

 

「こいつ!?」

 

 エンリもシオンも反応できず、辛うじて反応できたブレインも対応が間に合わずレイナへの接近を許すがレイナはその襲撃者の高速の攻撃を避けるだけでなく相手の手首を掴み背中に回して間接を極める。それだけで相手はなにもできず身動きを封じられた。

 

「なっあ、う、うごけねぇ!?どうなってやがる!?」

 

「貴女がモモンが言ってた合流予定の女戦士ね。殺気が素直で狙う場所がバレバレよ。血の気が多いのは聞いてたけどもう少し隠さないと」

 

 なんとか抜け出そうとするクレマンティ―ヌを捕縛したままレイナは何でもないように助言する。置いてけぼりのエンリやシオンの2人は呆然とするなかブレインは目敏くその流れるような捕縛術を目に焼き付け己の技へと昇華する方法を模索していた。

 

 そんな彼女クレマンティ―ヌが合流したのはモモンにお願いされたからだ。

 

 この世界の裏から情報を彼女の知る情報網で集めさせるためナザリックの庇護下に置いたはいいが生かされただけでなく直接モモンによって保護された彼女を妬む部下がいたのでレイナというストッパーがいることでナザリックの部下ひいてはスレイン法国からの追っ手への牽制にもなるということでそうなった。

 

 始めその話が出たときは断ろうかと思ったが彼女があの時エ・ランテルで聞こえた心の叫びの主だとわかるとレイナは彼女の更生も考えて引き受けることにした。

 

 彼女には失礼だがモモンから彼女の生い立ちは聞き及んでいる。人を優劣で判断するスレイン法国は人間のレイナでさえ敵視する存在になった。もしクレマンティ―ヌを追って法国が来ればレイナは容赦しないだろう。

 

 クレマンティ―ヌの役目としてはレイナたちに付いていきその先々で情報を集めてレイナたちとも共有しモモンにも伝える橋渡し役である。その身軽な身体能力もあって適任だとされたのだ。

 

 ならばなぜクレマンティ―ヌはレイナを襲ったのかといえば"嫉妬"である。レイナの事を話す漆黒の戦士モモンがすごく嬉しそうだったからだ。

 

 彼に引かれかけているクレマンティ―ヌからすれば気になる異性が楽しげに話していた目の前の女は自分のライバルになる人物で彼が認めるほどの実力者なのもあり本当かどうか確かめてやろうとしたのだ。

 

 結果は見事に返り討ち。体はピクリとも動かせない。魔法なのか知らないがレイナをモモンが認める存在なのは認識しなければならない。

 

「貴女も私といるときは修行を行ってもらうわ。あとは・・・そうね。私に隙があると思えば攻撃をしてきてくれて構わない」

 

「本気か?」

 

「ええ、私にとっても臨戦態勢をとるのに良い練習になるわ」

 

「・・・わかった。あと・・・試すようなことしてごめんなさい」

 

 自分とレイナとの実力の差と人間としての器の大きさも違うレイナに捕縛を解かれたクレマンティ―ヌは右手首に残る感触を左手で擦りつつ試した事を謝りひと悶着あったレイナ一行は3人から一気に5人へと増え王国へと旅立ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

~大国スレイン法国~

 

 

「由々しき事態だ」

 

「さよう。まさか王国を滅ぼす為の作戦がこのような事態になるとは・・・」

 

「我々は神の怒りに触れたのか・・・」

 

 そこでは神官風の衣装を着た男女が中央を囲むような机に座り話し合っていた。

 

「ニグンたちの様子を見るために行った大儀式での大爆発で神殿は崩壊し多くの犠牲者が神殿関係者以外にも出ている。それだけでなく・・・」

 

「ああ、神殿にあった本ばかりか人の記憶まで奪われてしまい。おかげで破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)の探索に出ていた漆黒聖典を戻すはめになった」

 

「一体あそこで何が起きたのだ?唯一の生き残りも真っ暗しか見ていないと役にたたん」

 

「現場から戻ってきた者たちの話ではひどく美しい女に邪魔されたとしか。あとはもしまた来れば今よりひどい目に遭うと男の魔術師に言われたと・・・」

 

「・・・その2人はプレイヤーか?」

 

「・・・・・」

 

 一人の神官の言葉に全員が押し黙る。タイミングの悪いことに世界のためとはいえ村を焼くように指示したのだ。今更どんな言葉を並べても罪のない村人を殺したのは変わらない。

 

「せめてというのか。彼らはもしかしたら善良な存在かもしれないことか」

 

「エ・ランテルを襲ったアンデット襲撃からその元凶以外は殺さずに多くの命を救ったことか」

 

「もしかしたら話し合いは可能・・・か?」

 

「もし出来ないなら秘宝を使うしか・・・」

 

「お前!?それがどういうことかわかって言っているのか!?神かもしれないプレイヤー様を操るなど!?」

 

「だが他にどうすれば良いのだ!?話によれば女の方は何人も仲間をつれているそうじゃないか!?従属神にしてもそれが数人、神が2人ではどうやっても勝てんぞ!」

 

「落ち着きなさい!2人とも!」

 

 ヒートアップしていた2人を咎めると会議室は一様に沈黙が支配した中ある一人の男が口を開く。

 

「もしもの時は彼女がいる。それを忘れたのか?」

 

その一言で会議室は少しだけ安堵の息が漏れる。

 

「そ、そうですな。もし何かあれば彼女を投入すれば解決出来るだろう」

 

「ええ、彼女。法国最高戦力がいればいくら神と言えど・・・」

 

「とにかくもっと情報だ。漆黒の英雄や白銀の女神の噂を中心に情報を集めるのだ!なにか交渉できる手があるかもしれん!」

 

 スレイン法国の会議はこれにて一旦終わりを迎えるのだった。

 

 

 

 

 




勢いが落ちてきてストックが無くなったのでこれからは不定期になります。

誤字などの修正ありがとうございます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。