食事が終わり後片付けをしようとすれば老夫婦がここは私たちがやりますと片付けを受け持ち、その時にご馳走したカレーライスは大変美味しく。ありがとうとお礼も言われた。
ガゼフはあの後もう一杯おかわりを頼んできたのもあり、カレーの残りはエンリらもおかわりをしたことできれいになくなった。
彼らの喜ぶ姿を見ていてとても気持ちのいい気分だったレイナにガゼフは明日王城の方へ共に来てほしいと言われ快諾した。
その流れで話を聞けば受け渡した捕虜はいつの間にか脱獄し、証拠の物品さえ消息不明になった。それにより王が戦士団の第2隊設立と増員を押し通すことができたが、貴族からの風当たりが強く証人として謁見をしてほしいというものであった。
ガゼフとしては恩人が渡してくれた捕虜や証拠を失ったばかりに王国のいざこざに巻き込むことを悔しそうにしていた。本来なら褒美を受けてもらうくらいで考えていたがそうもいかなくなったらしい。
深く頭を下げるガゼフにそう気にすることはないといい。自分が証明すれば風当たりも弱り、貴族たちも重い腰を上げるだろうといえば、彼は苦虫を噛み締めような表情で口を開く。
「正直に言えば恩人の一人である貴女を彼らに会わせるのは反対です」
必ず厄介事を招くだろうという確信がガゼフにはあった。
彼女の実力を知る者からすれば問題ないだろうがその容姿が問題である。彼女が町に出れば誰もが振り向く美貌の持ち主だ。それだけで貴族が黙っている訳がない。
あの蒼の薔薇だってリーダーが大貴族の出でアダマンタイトの冒険者でなければ貴族たちからちょっかいを受けていただろう。
果たして王や自分で彼女を守ることができるだろうか?今まで貴族派にいいようにされている自分たちではその場は納めることができるだろうが預かり知らぬところで、手を出されては何もできない。
「なに、そんなに心配する必要ないわ。もしもの時はあの時のように突破するから」
最悪の光景を思い浮かべてしまい顔を暗くするガゼフにレイナは笑顔で答える。確かに目の前にいる英雄は貴族が手を出してきてもはねのけるだけの実力を持っている。
どういう理由で一緒にいるかわからないが自分と互角の戦いを演じたブレインもいると考え、ガゼフの顔に笑みがよみがえる。
「そうですね。でも何かあれば私が王国戦士長ガゼフ・ストロノーフの名のもとに必ず助けます」
「ええ、期待しているわ。さて、このまま立ち話もなんだし、あれからの事を色々聞きたいわ。なにか飲めるものはあるかしら?」
「飛びっきりのいいワインがありますよ。摘まめるものも用意しましょう」
「それは楽しみだわ」
普段は使わないバルコニーでワインと老夫婦が作ったツマミと一緒に2人であれからの事を話し合う。若干機密の部分を漏らしている気がするが、レイナがそれを弱味になにかをするとは思わず、互いに様々な事を言った気がする。
「なんとヴァルキュリア殿は商人として活動しておられるのですか?」
「ええ、今のところ冒険者相手の商売だけどね。明日にでも目玉商品見せましょうか?王国戦士長が宣伝してくれるなら、何割か安く提供するわよ」
「それならば明日城にいくついでに部下たちもいる場所で行いましょう」
「あとヴァルキュリアでは長いでしょ?レイナでいいわよ?」
「あ、ではレイナ殿とこれからは呼ばせてもらいます」
レイナが商売を始めたことから、これから増える新しい戦士団についてなどで飲み交わす。
「なるほど、今日までセイラン副隊長が兵舎にいたのは戦士団の新しい部隊設立のためのスカウトというわけね」
「ああ、王には感謝しないと、今回も一部隊しかいなかったからこその危機でしたからね。セイランを隊長として今と同規模の部隊を1つ設立すると。当然貴族から反対意見はありましたが、今回の捕虜や証拠を損失したのは、貴族関係者でしたからね。王は押し通しましたよ。その時の王の威厳に当てられたのか王派閥に鞍替えする貴族も出てきました。変な話ですがこれもヴァ、レイナ殿たちおかげです」
「きな臭いものは感じてたけど、さすがに無理があったようね。貴族たちも信用が一番だって少しはわかったんじゃないかしら?裏切られた貴族派は自業自得よね。では新しい戦士団設立と今後の活躍を祝って」
「レイナ殿たちの商売繁盛を願って」
「「乾杯!!」」
グラスを重ねて飲む今晩のワインはいつも以上に美味しく感じた。
☆
その頃ナザリックでは
今日もある習慣でモモンガは食堂へと来ていた。
そうして料理長が腕によりをかけた料理が振る舞われ、それを最近覚えたテーブルマナーで食事をする死の支配者がいた。
「旨い!料理長この料理はなんというのだ?」
「それはトマトのリゾットになります。取れ立ての新鮮な食材を使わせていただきました。特に今回は稀にとれる大きくMの称号を持つマキ◯マムなトマトを使用しております」
「なにかヤバそうな言葉が出てきた気がするが・・・すごいな。こんなにも天然ものが美味しいとは!いやそれもあるだろうが料理長の腕も良いのだろうな」
「お褒めにいただき光栄ですアインズ様」
崇拝するモモンガの賛辞に料理長は平静にそう返すが心の中では狂喜乱舞する異形の料理長がいた。レイナによってモモンガが食事を摂るようになって、自分が腕によりをかけた料理を至高の御方に食べてもらえると一番喜んでいるのは彼なのかもしれない。
そんなモモンガの周りには一般メイドが遠巻きにその様子を観察している。ここ食堂はモモンガが理想の会社を目指してシフトを組み交代制を採用した上に休日を作っても24時間開けられており、それは一般メイドたちはホムンクルスの種族設定があるため、
料理長が休んでる間はその配下が切り盛りするがモモンガが食べようとしなければ食べなくても良いアンデットの体を利用して1日1食食べに来るのだが、時間は彼が配下に叩き起こすよう言い含めているのでいつも料理を作るのは彼の仕事である。
(やっぱり、視線を感じる。確かに職場の上司がいれば目立つよなぁ・・・)
自分から距離をとっているメイドたちからの視線に気付き心の中でため息をつく。気を利かせたモモンガがメインの時間をずらしているが、それでも数人はメイドたちがいるので、彼女たちは至高の御方がいることへの緊張からか遠巻きでグループを組み、食事の手も止まってしまっている状態だとモモンガは思っていた。
(う~ん。俺としては気さくに話しかけてくれても良いのだがな。それは難しいかなぁ~)
ということを考えている至高の御方がいるが、そうとは知らないメイドたちは今日も小声で会話する。
「アインズ様を見守り隊、今日は私たちね」
「いつからかアインズ様が食堂にこられるようになって随分経つけど、いつみても輝いてらっしゃるわぁ~」
「うんうん、料理長が作った料理を食べられたときに嬉しそうにしてるのがいいのよねぇ~」
「アインズ様成分補給完了!これで勝つる!」
「普段は威厳があって、でも今は、その、ふ、不敬だけどかわいいというか」
「「「「わかる」」」」
食堂に来るようになったモモンガを拝見するため非番の時間を使いメイドたちが平等にこれるよう調整していることは知らず、それがメイドたちの息抜きを担っているなど知らない死の支配者であった。
さて、明日はモモンとして依頼を受けに冒険者ギルドへ行くのだ。英雄となったモモンはその知名度からなかなか街から離れられないのでいたがそれも落ち着いてきた。もし、めぼしい依頼がなければ王都に向かうのも悪くないなと考えながらしっかり料理を堪能して席を立つ。
「ご馳走さま。今日も美味かった。次も頼んだぞ料理長」
「はっ、いつでもお越しくださいませアインズ様」
ちゃんと作ってくれた料理長に感謝の言葉と料理に手を合わせたあと、モモンガは今日の仕事の分をまとめているアルベドがいる執務室に向かうのだった。
☆
「なるほどねぇ~。今日の午前中は皆王城に行くんだ。なら私はちょっと失礼しようかな」
「わかったわ。では終わったらまたここで合流しましょう」
一日が明け、老夫婦から朝食を振る舞われたあと、これから城に行くことを伝えればクレマンティーヌは一人で行動することを伝えてきた。きっと悟に頼まれた情報を集めるのだろうが元裏家業のため下手に王城に行って目立つ事を避けたのだろう。
りょうかぁ~いと言って昼の食事用に渡したカツサンドと飲料が入った小さい鞄を装備して彼女は離れていった。それに幽体となっている小さい友人もついていく。
友人に話しかけられて答える彼女は楽しそうだ。友人の存在に気付いた彼女はどうしてもというので、あるアイテムを装備させることで幽体である彼女との意思疏通が可能になった。
そう今の彼女はメガネっ娘だ。メガネは目立つかと思い別のアイテムを考えたが、なんと普通にメガネはこの世界でも存在しており、値段はそこそこ高いがちゃんと市井に溢れてはいるらしい。
ただ視力を補うとかではなくおしゃれアイテムとしてだが。
クレマンティーヌもわかっているだろうが最近はレイナ以外から見たら独り言を言っているようにしか見えないことがある。エンリたちは事情を知っているので構わないが他に目がある時は極力控えるようには伝えている。
それを見送る自分たちの手には彼女が持つ鞄というよりはバスケットが抱えられている。一番大荷物なのはシオンとブレインで(ガゼフも持つというが王国の有名人に荷物持ちさせては悪目立ちする理由から却下となった)両手が塞がっている状態だ。
このほとんどはお城に詰めている戦士団皆へのものだ。昨日の晩ガゼフが仲間たちにも是非私の料理を食べさせたいと言っていたのでまだまだ余裕のある豚肉から簡単シンプルなカツサンドを作ったのだ。パンや少し使う野菜はユグドラシル産のを使っているので味見したがかなりの出来映えだと自負している。
「すみません。レイナ殿。私が頼んだとはいえこれほどの量は大変だったでしょう?」
「頼まれたからには誰一人かけるには忍びないでしょ?鍛練と警備が仕事なんだから1枚では到底足りなさそうだし、かなり余分に作ったから十分なはずよ」
「なるほど。朝から随分作ってるかと思えばそういう理由だったんですね」
「レイナさん味見させてもらえましたが、あんなに簡単に作れるのにすごく美味しかったですよ!」
ちゃっかり味見をさせてもらっている抜け目のないエンリのに全員がにこやかに笑う。
「それはお昼が楽しみだな。なぁガゼフ時間があるようなら模擬戦してくれないか?今の俺がどれだけ強くなったのか知りたいんだ」
「いいだろう。私もお前がどれだけ強くなったのか興味がある。いいですかレイナ殿?」
「ええ、2人がいいならね」
「あ、あの私もいいですか?私もレイナさん以外に対人戦ははじめてなのでこの際良ければ・・・あ、でも迷惑なら・・・」
「エンリはまだまだそういうところは村娘のままだよな。あの良ければ俺もお願いします!」
「ああ、こちらこそレイナ殿に鍛えられた君たちに興味がある。胸を借りるつもりで受けよう」
ブレインの言葉を皮切りにエンリたちまでが参加を表明するとガゼフは笑って快諾する。
確かにガゼフほどの実力者相手に出来るのはそうそうないだろうし、レイナも今の弟子たちが戦士長にどれだけできるかも気になったので止めることはしない。
万が一、重症を負っても回復魔法があるため問題にはならないだろうと思い、気になることをガゼフに訪ねてみる。
「先に王様に挨拶した方がいいのかしら?」
「いえ、いまの時間帯なら王は会議中でしょう。セイランが王に伝えていればすぐにでも会えますでしょうが、先にこの荷物を部下たちに渡してからにしましょうか」
戦士長に連れられるフード被った4人は目立っていたが、民からの信頼を受けているガゼフがいることで不安がらせることもなく王城へとついた。
「この者たちは私が信頼している恩人とその仲間たちだ。王へも連絡が届いているはずだ」
「こ、これは戦士長殿。しかし、この、ような怪しいものを王城へいれるのは・・・せめて素性を明かしてくれなければ、通した私がクビになってしまいます」
「ふぅ・・・、わかった。すみませんレイナ殿と皆さんそのフードを解いてもらえますか?」
門の前で番兵2人に止められることがあったが、4人がフードをとれば息を呑む音が聞こえる。その中心はレイナとエンリだがやはりレイナの方に注目がいっている気がする。
「「・・・・・」」
「はぁ・・・おい、もういいだろう?」
「あ、す、すみません。どうぞお通りください」
「では私が案内します。こちらです」
見惚れる番兵にガゼフがわかっていたとばかりにため息を吐くと強めに声をかければ彼らは慌てて道を開ける。そこを無事通った一行はまずは戦士団が使っている鍛練場に向かうことにした。