「これはレイナさん!本当に来てくれるとは!感激で胸が一杯です!」
「ああ!またもう一度あなた様に出会えたことを神に感謝しないと!」
「「結婚を前提に付き合ってください!!」」
「相変わらずね。貴方たち。返事は・・・ごめんなさいね」
「「ぐわぁぁぁ!?あっさりフラれたぁ!でも、そのクールさがいい!」」
「お前ら・・・」
戦士団の鍛練場にレイナが顔を出した瞬間飛び出してきた戦士2人のダイビング告白をレイナはサラッと断る。ものの見事にフラれ膝をつく2人はすぐに復活する。
その姿にやっぱりと思いつついつもの鍛練でこれくらい復活が早ければ強くなるのにという両方でガゼフは痛む頭をおさえ、今日の鍛練はこいつらはいつもの倍だなと決める。
ここに鍛練後2つの死体ができることが確約された・・・。
残酷な未来を迎える2人をエンリとシオンはカルネ村でいたときに何度か見ていたので苦笑で済ましている。ブレインはガゼフが普段はどう鍛練しているのか気になったのか周りを観察していた。
「2人ともいい加減にしなさい。レイナ殿待っていましたよ」
「セイラン副隊長。丁度良かったわ。これ戦士団へのお裾分け。お昼にでも皆で食べてね」
「これは・・・かたじけない。これだけあれば皆に充分行き渡るでしょう。感謝します」
集まる戦士団の中から昨日再会したばかりのセイランも現れるとレイナたちは持っていたバスケットをすべて渡す。どうやら中身を確認した彼が言うように数に余裕はあるようで昨日の暗い表情もなく笑顔を浮かべている。
「戦士長に頼まれたのよ。部下たちにも私が作ったものを食べさせたいって言ってね。お礼なら戦士長に」
「そうですか。あとで言っておきます。お~い。皆喜べ!今日のお昼はレイナさんが作ってくれた料理だぞ!」
「ま、マジですか!?こりゃ気合いが入るぜ!」
「女神さまが作ってくれた料理!争い待ったなしだな!」
「レイナさんの・・・うおおおおお!?みたことないやつだけどすごく美味しそうだぜ!」
「強くて優しくてさらに料理まで・・・パーフェクトだ・・・」
予想通りというか予想以上に歓迎されたレイナたちはこれから王の元へ行くことと後でここに寄ることを伝えると、ほぼすべての戦士たちに心配されたがそのほとんどが貴族に対するものであった。
豪華な絨毯の上をガゼフ先頭に歩いていけば多くの城に使える召し使いや貴族たちに出くわすが、そのほとんどの者がレイナに注目してしまい。あわや転倒や壁に衝突しそうになっていた。
中には一瞬レイナにちょっかいをかけようとする貴族もいたがガゼフが無言の威圧をだせば冷や汗をかいて去っていく。
「ここが王が居られる玉座の間です。心配はしていませんが失礼のないように」
「ええ、いつでも大丈夫よ」
いざ門が開かれると奥の大きな玉座に座る白髪頭に王冠をのせた年配の方が王なのだろう。ガゼフに続いて入ってくるレイナたちに強い視線向けてくる。
玉座の他には中央をぐるっと囲むように席が用意されており、豪華な衣装を着た者たちが余裕そうな顔からレイナをみた瞬間に驚愕の顔を浮かべて目を離そうとしない。
中央にきたガゼフが膝をつき頭を下げたのでレイナもそれにならっておく。2人続くブレインを除き緊張していた2人には同じようにすれば良いと伝えていたのでスムーズとはいかないが同じ姿勢になっている。
「我が王よ。この度の謁見の許可嬉しく思います」
「なに、お前の恩人なのだ。ならば私の恩人でもある。私からも礼が言いたかった。そこのものたち面を上げよ」
ガゼフが口を開けば王がうなずく気配と同時に顔を上げれば、王は小声でなにかを呟くとざわつくこの場を杖で床を叩くことで粛然とする。
「うむ、ソナタが我が友を助けてくれた恩人か。私からも礼を言わせてくれ。誠に大義であった」
「王からのお言葉嬉しく思います」
「うむ、歓迎しよう。お前たちは私とあのものたちを残して去りなさい」
「し、しかし、王よ!」
レイナの王の前だというのに決して臆さない言葉に、彼女が教養をもつことがわかった王は満足げにうなずくと周りの貴族に向かって退室するよう促すが、貴族たちは不満そうにして動こうとしない。それに焦れた王がここ数年はみたことがないほどの一喝をしてみせた。
「私の命だ!すぐにここから去れ!あとガゼフの証言を嘘だと言っていたが当人がきたのだ。もうあれこれ言い訳は聞かんぞ。汚名返上の機会がきたのだ。しっかりとするようにな」
「・・・・・」
王の言葉にすっかり勢いをなくした貴族たちはレイナたちをひとにらみするとこの場から離れていった。
貴族の怯えようから昨晩、ガゼフが言っていた以上に王は捕虜や証拠を逃し、紛失したことをキレたという話は本当なのだろう。威圧的に貴族を玉座の間から出ていかすとさっきとは違う、にこやかな笑顔でレイナたちを見ていた。
「すまんな。お礼だというのにお堅い言葉になってしまった。あれらの目があるうちは王として振る舞わなければあとでうるさくてな」
「王のお気持ちもわかります。上に立つものはあのような態度でなければいけませんから、気にしないでください」
「うむ。聞いていた通りできた御方だ。しかし、実物は聴いてた以上に美しい。ガゼフが何度もソナタを
「お、王よ!そんなことよりも話を進めましょう!?」
「そんなに焦るでないガゼフよ。私は嬉しいのだ。戦いばかりだったお主が認める娘が現れたのだからな」
王とレイナたちしかいなくなった玉座の間では王とその配下とその恩人だからかある程度緩い空気が漂っていた。ガゼフの他にも一人慌てる者がいるがそれを楽しそうに王が見て、ライバルは多そうだとレイナたちに聞こえない声で呟いた。それから身分差を感じさせない雑談が始まる。
「ほう、ではレイナ殿は今は商人をしておられるのだな」
「はい、実はこの後ガゼフ殿の戦士団も交えて装備を御披露目しようと考えているのですが要らぬお節介でしょうか?」
「戦士団の装備に関しても考えていたのだ。彼らが満足するのなら渡りに船だ。よし!その装備にしても王国が持とう。いまの今まで貴族に邪魔されてろくな装備が与えられなかったのだ」
「ええ、きっと満足いただけるかと思います。ランポッサ王よ」
「よろしく頼む。そうじゃな。ソナタが商人ならあれがあればこの先便利だろう。それを褒賞と共に渡そう」
「ランポッサ王よ。それは?」
「明日だ。すぐに用意するので楽しみにしておくが良い」
「ふふ、王も人が悪い。気になって今晩眠れないかもしれません」
「それは悪いことをした。そっちのアウグストス殿の恩赦の件も抜かりはない。エ・ランテルの件はソナタら皆が解決してくれたのだろう?思いの外楽しくて遅くなったが礼をさせてくれ。助かったありがとう」
「あ、い、いえそんな私なんて・・・」
「ヤバイな。王に感謝されるとか考えたことないぞ」
「・・・ふん。まぁ礼なら受け取ってやるよ」
王の言葉に緊張をしながらも受けとる2人と、少し不躾な態度をとるブレインに思うところのあるガゼフだが、ランポッサは特に気にせず笑っていた。2人の反応もブレインの態度も久しぶりに愉快な気分になれたという。
それからも打ち解けた王とレイナは終いには旧知の仲のように会話を始めていたのでガゼフは別の意味で頭を抱えてしまった。どうかこの2人が自分がいないところでプライベートな事を出さないのを願うばかりだ。
謁見は無事に終わり、戦士団の元へ向かっていたレイナ一行の前に若い貴族が立ち塞がる。ガゼフが代表してなにようか訪ねるが貴族はガゼフを無視してその後ろにいるレイナに声をかける。
「これは美しいお嬢さん。よければこの後御茶でもいかがかな?いい茶葉が手に入ったのさ。2人きりで話さないかい?」
男は貴族らしく綺麗な刺繍がされた服装をしているが王の恩人でもあるレイナの全身を値踏みするように眺めると目は嫌らしいものに変化して丁寧だがどこか嫌悪感を感じる口調でしゃべり近づいてくる。
眉を潜めるレイナのことなどお構いなしにその手をとろうとする貴族に待ったをかけたのはガゼフ。男とレイナの間に割り込み、今にもレイナの手をとろうとした男の手首を掴んで止めた。
「これはストロノーフ殿。私の邪魔をしないでいただきたい」
「そういう訳にはいかぬ。この御方は王の・・・ひいては私の恩人なのだ。気安く触らないでいただこう」
「ちっ、平民出の癖に生意気な・・・まぁいい。ではお嬢さんまた会いましょう」
止められた貴族はガゼフ睨むが戦場で鍛えられた彼が怖じ気ることなく睨み返したので、貴族は舌打ちをすると乱暴に腕を振り払い去っていった。
「ガゼフ殿。あの者は?」
「・・・あの者は最近貴族派で勢力を伸ばしてきているものです。あまりいい噂もない方なので注意してください」
レイナの問いにガゼフは苦渋に満ちた声でそう答えた。やはりきたかと呟く彼は鬼のような表情で貴族が去った廊下の先を睨み付けるのだった。
☆
「遠目だったけどとんでもない美人だった」
「ティアの言ってることは本当」
蒼の薔薇が滞在する王城の部屋で普段は言葉で淡々としゃべる双子の片割れが身ぶり手振り加え興奮ぎみに語るのを彼女の趣味を知る他の面々は呆れ気味に聞いていた。
先日話していた白銀の女神が訪れ、あのガゼフに連れられていたと言うのだ。当然2人は彼女たちを尾行し玉座の間までついていき、盗み聞きまでして彼女の正体が白銀の女神であることを知り、こうして報告にきたのだ。
「マジかよ、本当なのか、そりゃ?ガゼフのおっさんがねぇ。事実なら今この城になかにいるんだろう?」
「・・・どうするんだ?ラキュース会いに行ってみるか?」
「この後は戦士団がいる所にいくみたい」
「実力を知れるチャンスを逃す手はない。できればもっと近くでみたい。お近づきになりたい。ボス。行こう」
「本音が洩れてるわよ!ふぅ、そうね。折角だし顔見せくらいはしときましょうか」
「ボス。大好き。抱いて」
「はいはい。調子がいい事を言わない。早速いくわよ。運が良ければ実力も知れるのは本当だしね!」
ティアの返事に呆れながらラキュースは立ち上がる。そうして、蒼の薔薇たちは早くと急かすティアに続いて向かうのだった。