オーバーロードとヴァルキリー   作:aoi人

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40.戦乙女とベルリバー

 

 

 

「明さん本当にやるんですか?今ならまだ・・・」

 

「何を言っている?零を助けるためなら何でもすると誓っただろう。引き返せるものか。・・・気が進まないのもわかるがこれは零が見ている()なんだ。なぜモモンガがいるのかわからない処か知らないはずのナザリックがあるのかもわからないが・・・」

 

 ウルベルトの部屋で誰にも聞かれない声で2人は話していた。彼の言葉にベルリバーはそうだという納得はできなかったために戸惑いながらも口を開く。

 

「本当にそうなのでしょうか?彼らの反応は夢にしてはリアルですよ」

 

 例えば自分たちの世話役に当てられた一般メイドたち。今は席をはずさせているが確かにナザリックにそのような設定のメイドを意味もなく設置したのは知っていた。随分前でベルリバーは細かい顔などは忘れて久しい。

 

 そんな彼女らが今は目の前にいて見れば見るほどにハッキリと存在して、個々で反応が僅かに違うこともここが夢だと断定するには迷いが生まれた瞬間だった。しかし、ウルベルトは首を横に振り否定する。

 

「元々この試み事態も初なんだ。どんな事が起こるのかさえ未知数なのはわかるだろう?夢に入った目の前の事は自分達のイメージが投影されている可能性さえある。入って早々零に会えただけでも奇跡に近い」

 

「そうですけど・・・」

 

 それでも納得ができないベルリバーは先日の事を思い出していた。

 

 

 

 ベルリバーは久しぶりのナザリックを歩き回っていた。今更かもしれないが既にユグドラシルがサービス終了して二度と見れないと思っていたのだ。探検したくなるのは致し方ないだろう。

 

 誘っても忙しいと言ってウルベルトはついてこなかった。だが実際歩いてみればゲームよりもリアルな質感に夢中になり、気が向くまま第6階層の闘技場を訪れていた。

 

 そこではナザリック所属する階級守護者のシャルティアやコキュートスを始めとしたNPCたちが集まり、戦闘行為以外動かなかった彼らが動かなかった表情で難しい顔をしながらあーでもないこーでもないと戦略を練る姿を見た時のことだ。

 

 特に激しいのはペロロンチーノが愛を込めて創造したシャルティアであった。今はコキュートスとの模擬戦を行い攻防を続けている。その周りではなんの設定もされていなかったPOPモンスター達までもが真剣な表情で戦いの行方を見守っている。

 

 シャルティアの凪ぎ払った槍の側面をコキュートスが片方の腕と副腕で持った剣で受け止めると空いた反対側の腕に持ったハルバートをシャルティアめがけ振り下ろす。

 

 ユグドラシルでは装備していなかった赤いタワーシールドを上に構えその攻撃を防ぐが完全に動きが止まったところを浮いた盾の間を狙ったコキュートスが無防備な腹に向け蹴りを放つ。ベルリバーは知らないがそれはレイナの動きを真似たもので彼は仮想敵として目の前の仲間のために取り入れたものであった。

 

 だがそこには彼女はおらず、彼女とは違う白い姿があった。それに覚えのあるコキュートスが「コレハ!死せる勇者の魂(エインヘリアル)!?イツノマニ!?」と驚愕すると共に放った蹴りは白いワルキューレに命中。だがそれは延びきった彼の足を万力のように捕まえ固定する。

 

 隙だらけになったそこでシャルティアが上空で現れた。あれはテレポーションだろう。そのまま彼女は急降下して槍を突きだしコキュートスを・・・。

 

「マイッタ!ワレノマケダ・・・」

 

「相手をありがとう。コキュートス」

 

 シャルティアはコキュートスの眼前に槍先をすんどめしていた。降参する言葉に槍を引くと同時にエインヘリアルも霧のように霧散し、彼女は対戦相手に笑顔でお礼を口にする。

 

「ダイブン、マケコシテシマッタナ。メイジツトモニ シュゴシャサイキョウヲ ナノレルノデハナイカ?」

 

「まだまだだわ。何度もあの女とのイメージを繰り返しているんだけど、未だに勝つイメージが浮かばないの・・・。

 

      あのレイナという人間には」

 

 その名前を聞いてベルリバーの意識が持っていかれ、闘技場に踏み出していた。

 

「これはベルリバー様!」

 

「コンナトコロニ、ナニカ ゴヨウデショウカ?」

 

 すぐに膝を折って迎えようとするナザリックの面々に手の平で制するとベルリバーはシャルティアに歩み寄った。

 

「随分、精が出ますね。シャルティアはいい動きだったぞ。コキュートスも惜しかったな。俺だったらあの蹴りでやられていたな」

 

「そんなこと・・・ベルリバー様は魔法戦士なのですから。信仰系の私より攻撃手段は多そうですし、状況も違って来るでしょう」

 

「ソノトオリデス ベルリバーサマハ シコウノオカタ ノナカデ キョウカマホウ ニタケタ オカタ ナンドソレニ タスケラレタ トキイテマス」

 

「思ったより評価が高い・・・。んんっ・・・まぁ味方任せな立ち位置だけどね。ところで・・・シャルティアに聞きたいことがあるんだ」

 

「はっ、何なりと」

 

 ジッとベルリバーを見上げる彼女の瞳はアンデットの吸血鬼だというのに生気に満ちており、強い意識を感じる。ユグドラシルではどんなMODを投入しても変わることのなかった表情がここではコロコロとかわり、種族のせいで表情からはわからないコキュートスでも声で感情を読み取れるようになった。

 

 ・・・もうそれは生きた人間と何が違うというのだろうか。

 

「君はどうして零・・・いやレイナさんに勝ちたいんだい?」

 

「それは・・・」

 

 シャルティアは少し迷うように考えるとゆっくりと口をひらいた。

 

「その・・・最初は負けたことへの復讐でした。・・・あいつは何故か倒れた私にとどめを刺すことなくそのまま放置して至高の御方の元へ行き、ヘロヘロ様を倒し・・・も、アインズ様を追い詰めました。階層守護者の誇りを傷付けられました。・・・だから必ず殺そうと・・・」

 

 悔しそうに語るシャルティアとコキュートスも階級守護者として挑むこともできずに侵入を許してしまったことに悔恨があるのか歯をギチギチ鳴らしていた。

 

 一瞬ベルリバーは緊張で硬直しそうになるが続いて発せられる言葉に硬直は解ける。

 

「そう思っていたのですが・・・今はその打倒すべきライバルと言いますでしょうか。可笑しなことかもしれませんが、今では殺意よりも勝ちたいという想いがそれよりも強いのです。あの女の度肝を抜いてやりたいと・・・すみません。これ以上うまく説明ができません」

 

「そうか・・・」

 

 その答えにベルリバーはここがただの作り物ではなく。存在するものであるという確信が生まれる。ベルリバーは笑みを浮かべるとシャルティア頭に手をおき、撫でてみる。

 

「ああ、その気持ちは大事だよ。憎しみではどうしても動きが直情的になってしまう。どんなに怒っても心はクールにそれがPVPでは重要だ」

 

 サラサラの銀髪は心地よくセクハラにならないかドキドキだったが2人の反応から問題ないようだ。コキュートスは四本の腕で腕組みして満足そうに頷いているのと、撫でられ赤面したままハワハワしているシャルティアはどこか娘を愛でている気分になる。モモンガが今のナザリックを大切にする気持ちがわかった気がした。

 

(心からそう感じたのなら良いじゃない。()()()()も大切にしなければそっちの方が悲しいわでしたか・・・そう言ってましたね零さん・・・)

 

 自分の命を救ってくれた零を御礼に(何故かタイミングが悪くどこかの誰かが(背後に山羊頭の悪魔が見える)仕事を言いつけに来る)と誘った話題の映画のクライマックスで紆余曲折ありながらも最後まで共に戦った主人公とその相棒のモンスターが主人公を庇い重症を負いながらも最後のボスにとどめを刺す。

 

 そして力尽き消える寸前のモンスターが最後に飾ったセリフに年甲斐もなく泣いてしまった時に彼女が言ってくれた言葉は今も胸の奥で輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

「とにかく俺はこれから作戦の調整に入る。お前も準備だけはしておけいいな?」

 

「・・・・・はい」

 

 部屋の机に例のアイテムを置いたウルベルトの背を見届け、ベルリバーは自分の部屋へと向かう。今の2人は宝物庫から神級装備を与えられている。

 

 あとはどこまでブランクを取り戻せるか・・・。

 

「明さん・・・本当にそれでいいのか?俺は・・・」

 

 護るべき人を傷付けてでも強行手段に打って出ようとする彼を心配するベルリバーの声はナザリックで使っていた()()()()()()()()の彼の部屋で虚しく消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツアレ入りますよ」

 

「あっ、・・・セバ・・・さ・・・あな・・・たは・・・」

 

 今日はセバスたちがいる屋敷にレイナは訪れていた。目的は治療した女性の見舞いである。ベッドの上で身を起こす彼女は扉を開けてセバスと共に入ってくるレイナを見て口足らずながら尋ねてくる。

 

 一瞬見せた笑顔からは昨夜の狂乱は嘘のように思える。記憶操作は完璧のようで安心するが、さっきからセバスと自分を交互に見て不安そうなのは何故なのだろうか?なんか前もこんな事があった気がする・・・。

 

「良かったわ。私は貴女を治した者なのだけどどこかまだ痛いところとかない?一応治した者として気になってね」

 

「あ、それ・・・は・・・あり・・・が・・・とう・・・ござい・・・ます。おか・・・げで、とくに・・・もん・・・だい・・・はあり・・・ません」

 

「その声の方は・・・」

 

「それは長いこと使われなかったためでしょう。暫くすれば喉が慣れて昔のように喋れる筈です」

 

「そう・・・本当に録でもない組織なのね」

 

 セバスの説明にレイナは安心するも表情は歪み、それを許容する組織に腹が立った。あれほどに傷付くのを強制して使い潰す気満々ということはそれだけまだ囲っている女がいるという事だ。

 

「セバスはこれからどうするの?」

 

「これからですか?そうですね。また街を探索しようかと」

 

「そう、貴方なら問題ないでしょうけど。そいつらきっと報復に来るわよ?彼女も完全に傷が治ったと知られたら取り戻しに来るかもしれない」

 

「むう・・・」

 

 レイナの言葉にセバスが唸り、ツアレはまた連れ拐われる可能性に身を震わす。悪いことをした気分だが、無視もできない。

あの場にいたのがあの男だけではない筈だ。

 

 監視する者がいてもおかしくなく。セバス自身は自衛ができるが人間の彼女が病み上がりでなくてもそれが出来ないのはわかる。そうなると彼女の身をあんじて撤退したのは悪手だったかもしれないが命には代えられないだろう。

 

「だからあいつらが容易に来れないところに彼女を(かくま)う必要がある。(さいわ)い私はそこに心当たりがあるわ。彼女が動けるようになるまではここにいてもいいから。考えてくれないかしら?」

 

「・・・わかりました。貴女なら信じれます。ですがよろしいのですか?下手をすれば貴女も巻き込まれますよ?」

 

「今更よ。逆に囮になるでしょ?こんな美人が網にかかったんだもの。商品にしようと血眼でくるんじゃない?その美しい花の下に鋭いトゲ付きの猛毒持ちなんて知らずにね」

 

「ふふ、怖い御方だ」

 

 実力もそうだが、今の彼女は王国にとって大恩人にあたる。そのような者に手を出せば今のランポッサ王ならただの兵士ではなくガゼフ率いる戦士団を差し向けるだろう。レイナの不敵な言葉にセバスが笑う。

 

「あ、あの・・・む・・・りは・・・なさら・・・ない・・・で」

 

「ありがとう。心配してくれるのね。そうだ。まだ名前を聞いてないわね?教えてくれない?私はレイナ・ヴァルキュリア」

 

「あ、れ・・・イナ・・・さん。わた・・・しは・・・ツ・・・アレ・ツ・・・アレニ・・・ーニャ・・・ベ・・・イロ・・・ンです」

 

「・・・いい名前ね」

 

 心配してくれた彼女に名前を聞いてみると聞いたことのある名前にレイナの瞳が一瞬見開く。怪しまれないくらいによくよく彼女の顔を見てみれば、どうして気付かなかったのかとも思えるほど彼いや、彼女に面影が似ている気がする。

 

 

 

 

 

 それはアンデット騒動が治まり、復興も落ち着いて来た頃にニニャ個人から相談を持ちかけられた時だった。彼女たちが泊まる宿の一室に通されたそこにはモモンに扮した悟の姿もあった。

 

「レイナさんもですか」

 

「まぁね。それでニニャは私たち2人に相談って何かしら?」

 

 軽く挨拶してから用件を目の前の本人尋ねてみる。彼は落ち着かない様子で体を揺らすと一度大きく深呼吸を行い、決心したのか顔をあげた。

 

「お二人に相談したいのは・・・」

 

 それから語られたのは彼の生い立ちと捜し人である姉の捜索についてだった。貧乏だが森の木を伐採して平和暮らしていた故郷の村に貴族が訪れた。

 

 貴族は村の中から若い娘を集めるとその中から当時美人になると噂されていた彼の姉に目をつけた。無理矢理連れ去られようとする姉を庇おうとした両親は護衛の騎士に切りつけられ、命はとりとめたものの、後遺症が残ってしまった。

 

 ニニャは祖母に庇われる形で大好きな姉を連れていこうとする貴族の男を最後まで睨み付け憎悪を募らせていた。それからは姉を取り戻すため体を鍛え始めたがすぐに限界が来た。それというもの。

 

 「チームの仲間にも秘密にしている事です。ぼく、いえ、私は本当は女で男と偽って冒険者をしていました」

 

 「(ええええええ!!?)・・・そうだったのか」

 

 「・・・薄々は気付いてたけど。男にしては小柄だし、事情がありそうだから聞かなかったけど。今それを言うということは・・・」

 

 突然のカミングアウトに驚きをなんとか出さずにすんだモモンと女として彼女の動きに違和感を持っていたレイナはそれほど驚くことなく頷いて返す。

 

 「はは、レイナさんには見抜かれてましたか。はい。この後チームの仲間にも事実を話そうかと思います。いつまでも嘘をつくのは躊躇われて・・・お二人にはこれから頼む事も事ですから」

 

 「わかったわ。そこまで信じてくれたのなら私はできることは協力してあげる。モモンはどうするの?」

 

 「・・・君たちには最初の依頼に誘ってくれた恩がある。それがなければここまで矢継ぎ早にアダマイタントにはなれなかっただろう。冒険者のイロハも教えてもらったからな。俺も協力は惜しまない」

 

 「そんな・・・モモンさんならそれがなくてもアダマイタントになれてましたよ。・・・でもありがとうございます!」

 

 勢いよく頭を下げたこの時の彼女の笑顔は年相応の少女のものでモモンもレイナも見惚れそうになるほど輝いていた。できれば、彼女の姉を救うことでそれ以上の笑顔を見たいと思うくらいには。

 

 「(うおっ!?女だと意識してしまえば、そうとしか見えないなぁ。逆に気付かなかったのは失礼だったかな)う、うむ。気にするな。困っていたらお互い様だ」

 

 「(予想以上の威力ね。元々愛嬌あるから(わだかま)りがなくなるとここまでとはね・・・庇護欲を駆り立てられるわ・・・)そうね。今までの話でどんな案件かは予想できるけど最後まで話してくれる?」

 

 「勿論です」

 

 やはり彼、いや、彼女からの頼み事は行方不明の姉を探すことだった。貴族の元は訪れたが、知らぬ存ぜぬで追い返されたようだ。

 

 彼女も魔法の才能を見抜いてくれた師の元で修行するうちに世間も知ることができ、そうなるだろうと覚悟はしていたらしい、貴族が連れていった女を飽きれば捨てるなどこの王国では当然だった。

 

 それでも姉の行方を諦めなかったのは純粋にレイナもモモンも凄いと思う。普通なら絶望して心折れることだろうから。

 

 一応その貴族の名前を聞いたレイナは頭の中のブラックリストに載せておくとモモンがその名に反応していた。

 

 「どうかしたの?モモン」

 

 「いや、最近聞いたことのある貴族だ。依頼途中でうちのナーベとユーリにちょっかいをかけてきた奴がいてな。後で調べたらそんな名前だったと今思い出した」

 

 「っ!?あいつ懲りもせずに!またどこかで姉さんのような想いをする人が!」

 

 悔しそうに拳を固めて近くにあった台座に振り下ろそうとしたそれをモモンが包むようにして優しく拳を掴んで止めた。

 

 「いや、慰めにはならんが、今回ヤツの物見遊山は空回りに終わったようだ。大方ナーベやユーリの美しさに当てられて、そこらの娘では気が向かなかったのだろう。現にヤツはギルドに護衛として2人を指名していた貴族の中の1人だった。当然2度とこないよう手を打たせてもらったがな。君が君自身を傷つける必要はない。その怒りはヤツを殴るときにでもとっておけ」

 

 「・・・は、はい。モモンさん」

 

 なかなか良いこと言うものだなとレイナは感心する。スラスラと出たのは本来の鈴木 悟の優しさとモモンとしての男気からだろうか。今のでニニャの顔は真っ赤だ。

 

 「ふふ、さすがは漆黒の英雄様。乙女のハートを射ち抜く心得もあるとはね」

 

 「レ、レイナさん!?な、何を言って・・・!」

 

 「茶化さないでくださいよ。レイナさん。今のどこにそんな要素があったんですか?」

 

 本気で言っているのだろうか目の前の男は。端から見ていたレイナも少し頬が熱くなるくらいなのに、それを面と向かって言われれば意識は当然してしまう。現にニニャはさっきまでは幸せそうだったのに、今は不満げに頬を膨らませている。

 

 少し話が脱線しかけたが、概ね話しは理解できたので最後に彼女と姉の本名を聞いて解散の流れになった。

 

 

 

 

 まさか、こんなところでの探し人が見つかるとは運命とはこういうことを言うのだろうか。後で()に連絡をとる必要がある。

 

「じゃあ、色々手回しの用意があるから私はこれで失礼するわね」

 

「れい・・・なさ・・・ん・・・ほん・・・とう・・・に・・・あ・・・りが・・・と・・・うご・・・ざいま・・・した」

 

「貴女には返しきれぬ恩ばかりですね。何かあればこのセバス・チャン全力で力をお貸しします」

 

 2人に見送られレイナは屋敷を出た。

 

 人気がないのをあ確認してレイナはある人物にメッセージで連絡をする。

 

(もしもし、レイナよ。聞こえるかしら?ダイン)

 

(・・・「ちょっとお手洗いにいってくるである」)

 

 どうやら仲間たちと一緒のようだ。王国に発つ前に彼にはメッセージの呪文を教えている。この世界の人間が使えるか不安だったが、元よりあったがある国がそれを利用されて滅んでからは廃れてしまったが存在はしていたらしく。

 

 まだ彼からの発信は無理でもレイナから発信すれば繋がることがわかり。何かあればチームで一番冷静な判断ができる彼に連絡できるようにしていた。

 

 彼の準備が整うまで静かに待っているとダインから返事がきた。

 

(これはレイナ殿。久しぶりであるな。それで何かありましたかな?)

 

(ええ、この前頼まれた例の件で進展があったからね)

 

(!?っそれは本当であるか?)

 

(間違いないわ。容姿も面影があって名前も確認済みよ)

 

(それはいい報告であるな!すぐに話してもいいであるか?)

 

 嬉しいがすぐにそうしようとせずに知らせるかどうか確認してくるダインにやはり彼を中継役にしたのは正解だったとレイナは思う。

 

(待って、そうできたらよかったんだけどね。そうは簡単にはいかなさそうよ。八本指ってダインは聞いたことある?)

 

(・・・王国を裏を牛耳るという噂では・・・まさか!?)

 

(そのまさかよ。彼女の姉はそこの組織の娼婦として働かされていたわ。身も心もボロボロにされてね)

 

(・・・・・)

 

 メッセージ越しだが彼の怒りを感じる。それでも怒りに任せて行動しない彼は相談するにはドルイドとしての魔法適性でメッセージを教えれる事も含めて適していた。

 

 怪我の方は回復魔法で全快にしたので命に別状は無いことと今は一時的に身の安全も確保しているのを伝えれば彼はすぐに落ち着いたようだ。

 

(さすがはレイナ殿であるな。回復魔法では世界一かもしれないのである)

 

(嬉しい誉め言葉をありがとう。・・・だからダインには彼女以外の仲間にこの事を知らせてすぐに王国にこれる準備をしてほしいの。もし今の彼女にこの事を伝えれば準備もままならず、チームを抜けてでも来ることは想像に固くないわ)

 

(わかったのである。ペテルやルクレットには我輩から伝えるのである)

 

(そして今回の事で私は護衛に貴方たちを雇うことを冒険者ギルドに依頼するわ。人手はあればあるほどいいから。この前話したバオというリーダーがいるチームもいれば話をしてみてちょうだい。相手は組織。こちらも数を揃えないと不味いから)

 

(了解である。準備が出来たらすぐに向かうのである)

 

(細かい指示はまた後で出すから。よろしく頼むわ)

 

 メッセージを切ったレイナは次はモモンガにも連絡をとりダインに伝えた内容を知らせた。当然彼も知り合いの肉親にこの世の地獄を体験させた貴族への怒りが爆発した。

 

 彼を落ち着かせ、ならばヤツには因果応報な目に遭わせる作戦を次の会議で考えようと決める。途中から彼の声が少し震えていたような気がするがそんなに怖い声を出していただろうか?少しナザリックの影響を受けたのだろうかと考えながらレイナはメッセージを切った。

 

 レイナは路地裏から出ると王国の冒険者ギルドに向けどういった内容なら怪しまれずに依頼できるか考えながら足を運ぶのだった。

 

 

 


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