オーバーロードとヴァルキリー   作:aoi人

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 書いてる量が多くなり、視点もごっちゃになったので分けた上で書き直してたので、時間がかかりました。

 今年もよろしくお願いします!


47.戦乙女と六腕1

  

 

 

 「いいお仲間に恵まれましたね。レイナ様は」

 

 「ええ、私には勿体ないくらいよ」

 

 セバスと並走しながら街を駆けていると彼から振られた事に私は同意で返す。

 

 本当に私は恵まれている。エンリやシオンは師弟関係以上に親しみを感じるし、彼らが旅の途中で様々な反応を返してくれるのでユグドラシルを冒険した事を思い出して楽しく思うのだ。

 

 直接師事を乞うてきたブレインはともかく。クレマンティーヌはなし崩し的に同行することになったのにだ。

 

 ブレインは修行バカだが、経験で劣るエンリたちの面倒も見てくれるし、意外とどこに珍しいアイテムがあるかも知っている。

 

 クレマンティーヌは変わった。旅の始めは、よく噛みついてきたが最近はそうでもない。模擬戦の時はいつも通りだが、私が料理を作っているとさりげなくエンリたちに混じってくるようにもなった。

 

 素直に教えてくださいとは口が裂けても言いそうにない彼女らしい行動だ。

 

 今回の事も私が首を突っ込んだことなのに協力してくれた。彼女くらいは不満を洩らすかと思ったが、呆れられたものの八本指関係の情報を多く寄越してくれたのは彼女であったし、その量にだいぶ無理をしているのではと聞いた。

 

 「・・・恩を受けっぱなしだし、・・・こ、これからも受けるかもなんだから、少しくらい返さないと気持ち悪いのよ」

 

 と答え。

 

 「全く素直じゃないよね」と肩をすくませ首を振る幽霊の親友を見てから、恥ずかしそうにそっぽを向くので、見えなくても大体わかるのかエンリたちも軽く笑っていた。

 

 「あのように互いを信じて送り出す。羨ましく思いました」

 

 そう言った彼の瞳にはハッキリと羨望の気持ちが見てとれた。

 

 「まるで他人事のように言うのね。セバスだって仲間でしょ?」

 

 「・・・・・」

 

 思ったままのことを言えば、彼は少し驚いているようだ。エンリたちもそれぞれ声をかけていたと思うが、彼には社交辞令のように感じたのかもしれない。

 

 彼にはアインズ・ウール・ゴウンの組織にいる仲間がいるが、それはそうあれとした設定であるために実感としては難しいのかもしれない。

 

 プレアデスという彼女たちも上司部下の関係に近いだろうし、彼は唯一のカルマが善である他の階級守護者とは担当場所も違うことから今までは気にしていなくてもこの世界にきてから一堂が集まると肩身が狭い思いをしていた可能性もある。

 

 「・・・実はよく考えるのです。私のたっち・みー様より引き継いだ"誰かが困っていたら助けるのは当たり前"という想いは悪を掲げるナザリックでは異質。勿論不満などありませんが、今回の不手際は全て私の落ち度というもの。さらに恩人さえ巻き込んでしまうとは不徳の至りです」

 

 そんな私が仲間とは罰当たりですよと苦々しい表情でそう告げる彼の両手はきつく握られており、彼がどんな感情をもっているかわかる。

 

 「関わった時点でもう一蓮托生でしょ?セバスは真面目過ぎるわ。それはいいことだけど、適度に気を抜くのも必要よ。張りつめ過ぎれば、いつ無理が来るかわからないわ。時には仲間を信じて、息を抜くのも大切よ」

 

 悟から彼らは休日を設けることに断固反対を訴えたのは、教えてもらっている。ゲームからリアルへ、当時は疲労などなかったNPCがどう変化しているかわからない。

 

 疲労はしないなんて確実には言えないのだ。悟もそれを危惧して休日をと言い出したのだろうしね。

 

 巻き込んだと言うがそれは私も覚悟の上だった。この手の裏にいる組織は少なからず力があるのは知っていたのに、放っておくことが出来ずに、私も手を貸した。

 

 きっと彼は私がいなくてもツアレを助けて1人で抱え込むのだろう。なのにどうして彼が検討違いなことで悩まなければならないのか。悪いのは八本指という組織でこうなるまで野放しにした王国の腐敗した貴族たちの怠慢である。

 

 「セバス。私達は貴方を責めたりはしないわ。それに仲間だからこそ力を貸したいと思うのは普通のことよ。エンリたちもカルネ村を護ってくれた時からそうなんじゃないかしら?それが本心だと貴方ならわかるんじゃない?」

 

 「確かに彼女たちも貴女だけじゃなく私の身の心配もしてくれました。ですが・・・」

 

 巻き込んだという罪の意識からか、哀愁を漂わせるセバスに私はどうしたら彼の自身に対する罪悪感を拭えるか考えて、やはり彼の主人も好きそうな話をすることにした。

 

 ユグドラシルだけの話ではない。リアルで共に戦った者たちの物語。魔法も奇跡もない滅びに向かう世界だけど、一生懸命に少しでも世界を良くしようとした仲間たちを。その仲間がどうして集っていったのかを。

 

 「たっちから生まれたとか関係ない。()()()だからこそ、手を貸したいと思ったはずよ」

 

 「・・・私だから?」

 

 それは同じ苦労をした者たちだからこそ共感し、この人ならと信じて着いてきた。私にはないある種のカリスマ性。

 

 セバス自身を指しながら言うとセバスは自分の胸に手を当てて考える。これが他のナザリックの配下の者ではうまくいかなかっただろう。

 

 彼だからこそ協力を拒まなかった。

 

 彼の目の光が強くなる。あと人押しだと確信し、話を続ける。

 

 暗殺者を差し向けられた時に思い出した忍者や鎧武者の話やリアルで協力関係にあったウルベルトやベルリバーのことを話す内に彼の瞳は熱を・・・戻した。

 

 「そのようなことが・・・。大切な思い出を聞かせてくださり、ありがとうございます」

 

 深々と頭を下げようとするセバスを止めて・・・。

 

 「助けになったのなら話して良かったわ。・・・うん?」

 

 「どうかしましたか?レイナ様」

 

 話しは終わったのに知らない・・・いや、()()()()()記憶が流れてきた。

 

 これは・・・ユグドラシルが終わった後の何故か最近は見なかった記憶の足跡?

 

 そこには行動から何が起こるのかわかっていても行動した者たちがいた。

 

 

 

 『はい。こちら日の丸放送です!現場は混乱の嵐で企業の警備隊も抑えられていません!こちらのビルにテロリストが侵入しているらしいです!あっ警部が何かを指して・・・追ってみましょう!』

 

 子育てから復帰したリポーターが夫のカメラマンを伴い警部を追いかけて見つけたものは、企業が覆い隠していた不正の数々であった。

 

 『警部さん!こ、これは!?』

 

 『これを見てくれ!企業が隠していた事実の一端を!彼女を追って来たらとんでもない物を見つけてしまった!・・・どうしよう?』

 

 いつも私を逮捕しようと追ってきた警部が企業の混乱に乗じて、企業がとるに足らないと判断し、影響が小さな民間放送局からの電波ジャックによる全国生放送で企業の罪を白日の元に(さら)した。

 

 それは騒動が終わっても大手の放送局で連日放送されて、企業の手回しも全国で起こるデジスタンスの対処に忙しく間に合わなかった。ガセだと緊急会見で対応する企業だがここで大きな誤算が次々と起こる。

 

 『企業はデジスタンスの猛攻を抑えられず、一部の市民も暴動を起こしています。ここで某大学教授にお越しいただいております。教授これから世界はどうなるのでしょうか?』

 

 『言えることはただ一つ。これで世界は企業の手から逃れれるかの瀬戸際と言うことです。私たちの大学でも多くの生徒が革命の波に乗ろうとしています(零くん。君は本当にやったんだな。なら私も約束を護ろう。今後の若い芽のためにこの老骨にムチを打とう!)』

 

 大学時代にお世話になった恩師が、顔ばれすることも(いと)わずに、ニュースキャスターと対面し、企業の悪行を非難し始めた。勢いは止まることなく。世界中で人々が立ち上がった。

 

 『あいつ!・・・わざとらしくやりやがって!』

 

 『零さん。この声が聴こえますか?貴女がやったきたことは無駄じゃなかった。世界中が今も動いている。あとはそこの情報を持ち帰れば企業による独裁は終わりますよ』

 

 混線する通信からそれを知った私は手元にあるメモリーを見つめる。企業のメインコンピューターから抜き取った企業の闇が記憶されたメモリー。

 

 隼人は私がというが、攻める糸口になったのは彼が殺されそうになる原因になったデータだというのに・・・。それさえ企業の末端組織で当初の明たちのやり方では尻尾切りにあい、本当の改革にはならなかっただろうことから企業の深さは恐ろしさを感じる。

 

 その企業には裏で取引を持ち込み、密かに財閥に取り込み体制も改善(バレないようにだが)企業に対する情報を収集させる新たな目として機能した。

 

 企業にくる指令書や明たちデジスタンスの協力もあり、遂に企業に致命的なダメージを与える証拠は私の手の中。

 

 あとはこれを ドゴーーン!

 

 ・・・どうやらそうはいかないらしい。

 

 インカムからさっきとは違って、うるさいくらいに、建物のことなど知るかと破壊する機動兵器の出現を告げる声が聞こえてくる。

 

 資料で見たことのあるその機体は全身が黒くて細い印象を受けるもので、きっとここのデータに異常があれば起動する管理システムなのだろう。

 

 無機質なはずのカメラアイが、確かな意思を持って私を見据えて怪しく光る。

 

 『目標を捕捉。全てのデータを破壊します。それが私の役目』

 

 「また機械人形。企業も懲りないわね」

 

 私は逃げれないのを悟り、攻撃態勢に入る機械人形と対峙した。

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 目的地についてセバスに話すことが終わっても記憶は止まることなく流れてくる・・・。

 

 

 

 

 

 記憶は飛びアーコロジー内の一室。勝利の祝杯を2人で味わっていた。別の広い部屋では他のデジスタンスや隼人もいたのだが、隼人が明に何かを囁くと、明が凄く焦るも、次には私を見つめて決死の覚悟を目に宿すと一言「話がある」と、この部屋に連れ出したのだ。

 

 デジスタンスの小さい祝杯なのだが、何故かドレスをと仲間の女デジスタンスから注文されたので、今は支配者層のパーティーに出るような物を着ている。

 

 身内での集まりなので、そこまで豪華な衣装ではなく、ゆったりめの衣装になって軽く化粧をしただけだが、大丈夫だろうか?。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 会場に来たときに、無言の間が・・・。変という事はないはずだが、衣装を褒められても明や隼人以外からは目を合わせてくれなかったのが気になる・・・(あまりに魅力がありすぎて老若男女問わず、目を合わせれなかっただけである)。

 

 明はこちらをまっすぐ見て、何かを重要な話が始まるのだろうと身構えるが。

 

 「零。凄く綺麗だ」

 

 「ありがとう。でもさっきも聴いたわよ?」

 

 「いや、何度見ても君は美しい。俺は・・・」

 

 「明?」

 

 「零。俺はお前がーーー」

 

 衣装を褒められ、重要な話じゃなかったのかと考えていると予期していないことを告げられた。戸惑う私に彼はゆっくりと話してくれた。

 

 そこで知った彼の想いに私は言葉を失うも、高鳴る心臓が邪魔でなかなか答えを出せなかったが。私はーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まるで何かを伝えようとしているように。

 

 

 

 

 

 

 

 大勢の報道陣が詰めかける大舞台の裏側で、彼は微動だにせずにいるのを見て声を掛ける。この日が来るまで毎晩うわ言のように弱音を聴いてた身としては心配であった。

 

 「いよいよね、大丈夫?緊張してない?」

 

 「だ、大丈夫だだだ。お前のお、おかげでこここたててたんんだ。むむむだにはしない」

 

 「駄目ですね。声もそうだけど目が泳ぎまくっている。決戦前に企業相手に宣戦布告した面影がまるでないですよ」

 

 「そうじゃないかと思ったわ。明」

 

 「な、なんだれ!?」

 

 「おまじないよ。世界に立つんだからかっこいい姿をみせてよね」

 

 「あ、ああ!!」

 

 「見せ付けてくれちゃってさ。でも2人ともお幸せに・・・」

 

 私からのおまじないに真っ赤の顔にしてから決意を固めた彼は世界を変える舞台へと踏み入れる彼の姿は勇ましくて、舞台裏から隼人と一緒に見守っていた。

 

 『不味いぞ。零スナイパーだ!』

 

 「!!?っ」

 

 突然彼の仲間で周辺を警備していた者からの耳元のインカムの通信に全身が総毛立つ。まさかまだ企業の影響が?ここを狙える所は全部チェックしていたのに!

 

 『かなり長距離だ!嘘だろ?針の糸を通すようなもんだぞ』

 

 針の糸だの関係なかった。いるということは出来る自信があるのだ。通信の向こうで驚愕する声が聞こえる前に引き留めようとする隼人の腕を振り切り私は舞台に立ち、今から演説しようとする彼の元へと走る。

 

 今までスピードには自信があった。しかし、今の自分はこれ程歯痒く思うほど遅く感じた。

 

 ゆっくりと世界が進む中、私に気付いた彼が振り向き、彼の背後にあった頼みの綱の防弾ガラスがひび割れるのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 記憶はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「くう!?」

 

 「レイナ様!?」

 

 「あ、ありがとうセバス」

 

 「いえ、気にしないでください。それより大丈夫ですか?途中から心ここにあらずでしたが?」

 

 体がふらつき倒れそうになるが、セバスが支えてくれたので倒れる事はなかったが心配されてしまう。問題ないことを伝えて、体を離す。

 

 セバスの様子からそのモヤを拭うことは出来たようだが、それで私が不調になっては本末転倒だ。

 

 なんとか本調子に戻そうとしている内に、クライムたちが合流する。

 

 「大丈夫ですか?レイナ殿顔色が悪そうですが・・・」

 

 「平気よ。これくらい何でもないわ」

 

 「しかし・・・不調の原因がわからなければ・・・」

 

 「クライム君。女性からは言いにくいこともあるのです。貴方にも覚えがあるのではないですか?」

 

 「?、あっ、さ、察することができず。すみません!ですがそれこそ・・・」

 

 「大丈夫だから。今は八本指が先決でしょ?」

 

 「もしもの時は私が彼女を護ります。それでは安心できませんか?」

 

 「・・・セバス殿ならまかせられます」

 

 クライムにまで気付かれかけたが、セバスのフォローで彼にも心当たりがあったおかげで、これ以上追及されることなくなったが、そんなに必死に頭は下げないで欲しい。他の人も突然頭を下げるあなたに注目してるし、騙すことへの罪悪感と嘘でも羞恥心はあるから。

 

 リアルではそれに対しての薬があったが、この世界にあるはずがないことを考えると少し憂鬱な気分になる・・・。

 

 詮無(せんな)きことを考えていると話は一番の障害になる八本指の内にいる六腕の話になった。

 

 彼らのメンバーは腕に自信のある元傭兵が5人でやっていたらしくスカウトされたようだ。名前の由来も"盗みの神"が八本指でその兄弟神が"六腕"であったことかららしく。

 

 ここにもプレイヤーの影が・・・後程調査がいるかと頭の片隅に追いやっておく。その数あわせの末席の入れ替わりは激しく。これまでも何度か変わっているらしく。幻魔のサキュロントがその位置で、新人のためか腕も六腕では最弱らしい。

 

 注意にするのは元からいる5人。

 

 千殺のマルムヴィスト・・・刺突を得意とする剣士。武器には致死性の毒が塗られており、かすり傷も許されない。こいつの毒がどれ程かではあるが・・・。

 

 空間斬のペシュリアン・・・剣士らしいが彼の武器を見たものはおらず、いつの間にか切り裂かれているらしい。空間斬というのはどこか私自身も使えるワールドブレイクの系統かと思うが、武器が不明とくれば、仕掛けは武器にありそうだ。

 

 踊る三日月刀(シミター)エドストレーム・・・踊り子衣装が特徴で、武器は通り名の三日月刀。ただ普通に使う訳ではなく自身の周りを滞空させて、自由自在に操作できる珍しい能力だ。ラキュースの浮遊する剣群(フローティング・ソーズ)とは違うようだが・・・。

 

 不死王レイバーノック・・・この世界では非常に珍しい理性を持つエルダーリッチ。その恐ろしさは魔術師としてで、()()()()()使いMP切れも種族が違うためか、余裕がある。王国は魔術師を甘く見ていた節があるのであまり宛には出来ない。

 

 彼の話が出たときにセバスの気配に殺気がのったのだが、どうかしたのだろうか?今は話の途中なのでスルーしたが後で聞いてみよう。

 

 最後の1人。そんなエルダーリッチよりも注意するべきだと話すのが。

 

 闘鬼ゼロ・・・六腕のリーダーで修行僧(モンク)で実力は飛び抜けており、自力でガゼフを上回ると噂されているらしい。彼に振った剣は肉体に阻まれて有効な攻撃にはならない。全身の動物を(かたど)ったタトゥーからその動物が持つ力を引き出せるスキンヘッドの大男。

 

 ユグドラシルでも覚えのある力に少し関心が向く。倒したことのあるモンスターを最低条件に、幾つか条件があって扱える職で扱いが難しい部類に入るものであったはずだ。

 

 彼が自力で編み出したのか、どこかで知ったのか興味が湧く。

 

 意外と情報があるのは簡単には王国が殲滅に踏み込めないようにとの脅しの意味もあるのだろう。

 

 作戦会議は佳境に入り、セバスと私が正面から囮として行き、その裏で本隊が動くことになった。クライム以外からは渋る人が多くいたが、クライムだけでなく戦士団からの説得もあったので任せてもらえた。

 

 それぞれが準備の最終チェックに入ると、セバスに近寄り、先程の件について聴いてみれば、通り名が悟と被ることにご立腹らしい。

 

 彼自身は気にしないだろうが、ナザリックでは冷静な彼であっても許せるものではないらしい。他のナザリック者では聞いた瞬間殺しにいくだろう。

 

 「彼もいい部下に恵まれたわね。でも、彼がどう思うかわからないのに貴方が怒るのは筋違いだと思うわよ?」

 

 「そうでしょうか?」

 

 「彼をどうするのかは聞いてからでも遅くはないはずよ。不死王って言うのは、まぁ私にも思うところはあるけど・・・」

 

 ユグドラシルで実際に不死者王と呼ばれていた異形種の姿を思い出す。彼の場合は悟と違ってバリバリの近接オンリーだが。

 

 彼は普段は公明正大(こうめいせいだい)良い男だが、一度戦闘になれば、まさにバーサーカーで、彼を狙って徒党を組んだ異形種PK(プレイヤーキラー)が、その悪鬼の如しの姿に腰を抜かす者までいて、可愛そうになるくらいに返り討ちされていた。

 

 最初は出会った時は、一方的に袋叩きが起きているのかと思いきや、その逆で無双していたのだから忘れられない光景の1つだ。

 

 「それに、不死であれば名乗れそうな名前は、彼らしくないかしら」

 

 そう、あのアンデットの彼にも、当初の不死者王よりも阿鼻叫喚の暴れっぷりが広まるに連れて変わった呼び名があったのを考えると、不死王というのはインパクトが弱い気がする。

 

 元人間で中身は鈴木 悟であることも考えればもっと適した名前が・・・。

 

 「彼は魔法のことにはかなり詳しいけど、どうなの?」

 

 「そうですね。よくウルベルト様やぷにっと萌え様にタブラ様も交えてよく会議していましたね」

 

 今でも鮮明に思い出せますと懐かしそうに言うセバス。少しは怒りを逸らす事ができたかなと話を続ける。

 

 「私も苦戦させられたけど、彼の多彩な魔法は脅威よね。何千とある魔法を状況に合わせて瞬時に使ってくるんだからーー」

 

 ユグドラシル最後の戦いを回想しながら言い掛けて、ピーンと彼に合う名前を思い付く。

 

 「そうね。魔法を使い勝利に導く・・・魔法で導く・・・王

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔導王なんていいんじゃないかしら?」

 

 「!!!」

 

 その時見せたセバスの表情は当分忘れそうにない。

 

 

 

 

 遂に準備が終わり、作戦が開始された。囮である私たちは門番が守る堅牢な扉を見据えて走り出す。本気で走ると一歩で距離が詰めれるので抑えた上で、だ。

 

 向こうもこちらに気付き武器を構えるが、こちらの距離を詰める方が早い。武器の構えも素人に毛が生えた程度の驚異しか感じず、制止の声も無視すれば先手は簡単であった。

 

 

 

 

 作戦が始まればいつも通り戦える。

 

 

 そう思っていた。

 

 

 記憶の最後に見たアレだけは頭から消えることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 明の絶望に染まる表情だけは。

 

 

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