誤字の修正いつもありがとうございます。
これから出てくるオリジナル魔法は位階を表示しないと思います。(全くダメージが入らないとかだと困るので)
元ネタとかはありますが大丈夫でしょうかね?
あと不定期更新ですが、遅くなりましてすみません。
「戦士長と戦えるかと思って来てみればーーーなんだよ。いるのはゴールドの雑魚だけか」
扉から現れたのはどう見ても堅気には見えない長身の筋肉隆々の男。その正体は八本指に雇われ、六腕という用心棒のリーダーである闘鬼ゼロ。その実力は王国最強のガゼフ・ストロノーフに並び冒険者ではアダマンタイト級とされる
彼に対峙する冒険者のプレートがゴールドということに、ゼロの顔が拍子抜けと言わんばかりに溜め息を吐いた。名のある冒険者チームはマークしている彼からすれば、見ない顔な訳で、最近ゴールドになったばかり、それに実力も大したことのない存在だと決めつけていた。
「まっ、わかってた事だけどよ。そうまで言われるとやっぱり悔しいぜ」
「いいではないですか。言いたいことは言わせておけば。これからも冒険者を続けていれば、他にもやっかみを受けることが多くなるでしょうから」
「ゴールドになっただけでも周囲の目がだいぶ変わったであるからなぁ。あの方々はこんな重圧もものともしないでいたのは流石である」
「フフフ、あの人達と比べると気後れしますが、ペテルの言う通りですね。その足掛かりの1つに悪い噂が絶たない八本指の六腕のリーダーを倒したというのはどうですか?」
「そりゃいいなニニャ!一丁やってみっかねぇ!」
気負い等やましてや絶望などはなかった。彼らは笑顔まで浮かべ、いつも通りモンスターを狩るよう気安さで各々の武器を構える。彼らもわかっていた自分達はまだ未熟であることを、ある戦士たちの姿を見たときから。
それに驚いたのはゼロの方だった。今までは自分が姿を現しただけで、相手の士気は乱れ、総崩れになり楽な仕事になることが多かった。
だが所詮は冒険者のゴールド。すぐに五体満足な姿ではいられないようにしてやるとゼロも、姿勢を低くして利き手を腰の所に構える。
「ほう。雑魚の分際でよくしゃべる。すぐにその減らず口を黙らしてやる」
「いくぞ皆!!」
「「「おう!!!」」」
前衛にペテル。その横にダインが付き、ルクルットとニニャがの順で後衛に。昔と違って服装が変わり、フードマントであるが男装用のズボンから動きやすいスカートになって女性らしくなったニニャがいつのまにか唱えたマジックアローが1つ2つ、いや3つに増えてしかも魔力が強く込められているのか1つ1つがバスケットボールくらいの大きさに、一瞬ゼロの思考が止まる。なんとか避けようとするも足が動かない。下をみると自分の足を絡めとる太い蔓によって縫い付けられていた。
「マジックアロー!!」
「ぐわぁ!?」
当然避ける避ける事は出来ず、
ふらついたゼロに迫るペテル。それを確認したゼロが反撃のパンチを狙うも直前に目の前に投げられた玉状の物ルクルットが投げたそれはゼロの目の前で破裂すると涙が溢れて視界が悪くなり、攻撃は空を切った。
すぐにヤバイと思うも腕を振った状態ではガードも間に合わない。だが自分の体は修行により、生半可な剣では傷ひとつ付けれないと公私ともに自負してるゼロは、一撃を覚悟する。
直前で迫っているだろう戦士が構えた剣から斬擊がくると踏んだが、直後に衝撃と共に視界が上を向く。顎をかちあげられたのだ。ペテルは剣ではなく逆に持っている盾を下から上に振り上げていた。それはいつか見たレイナのシールドバッシュのようであった。
ゼロがゴールドだからと油断した所をニニャの予想外の威力を秘めた魔法で度肝を抜いた。いや、彼女だけではない。漆黒の剣を
ニニャは持ち前の魔法適正のタレントもそうだが、仲間たちに黙っていた秘密を打ち明け、受け入れられた事で、心の枷が取れただけでなく。エ・ランテルに滞在中だったナーベ(モモンの命令もあるが、本人も満更でもなかった)やレイナらに助言を貰うことで、取得していた魔法の運用手段が増えていた。
もしかしたら彼女は魔術師の大成するであろう第3位階にも届きそうになっているかもしれない。
(何も相手の出方を待つ必要はない。こちらの手札を知らせないように強化魔法は扉が破られる前に皆に施した上での魔法による奇襲。でもお2人に教えられるまでは決まった魔力で放ってたけど、
助言で貰い強くなったのは他のメンバーも同じだ。ペテルは剣の他に盾だけでなく全身を使った戦いを行うようになった。そんな彼の頭にはレイナの動きや最初は後輩にあたっていたモモンが一足飛びに越えていった動きが鮮明に残っていた。あまりに高い目標だが、戦士の可能性を身近で見たことで、視野が広がり、戦士として開花し始めていた。
(上手くいった!でもいつもより体が動きやすかった。なぜだろうか?士気が高かったが・・・それだけなのか?)
ダインは回復魔法とドルイド特有の魔法に磨きがかかり、今回の襲撃を予想してバリケードの中にあった木箱には破られにくくするために土を入れるだけでなく植物の種も含まれており、破壊された事で床一面にばらまかれた(事前に戦士長には許可をもらっている)それを触媒にすることで彼が使うドルイド魔法の効果を引き上げている。
(いくら襲撃があるからって自分の家を土まみれにされるのを笑って許してくれたストロノーフ殿は、本当に王国市民の希望であるな。・・・それにしても今の魔法は会心の出来である)
ルクルットは狭い室内では自分の素早さを活かせないのはわかってたので、後方からの援護に徹して、最近は少し値は張るものの香辛料を混ぜ合わせて作った生物の五感を狂わせる癇癪玉を作成したことで、弓以外の援護手段を手に入れた。
(へへ。なんかツアレちゃんからの声援のおかげか、体の調子が良いぜ!どこに投げればいいかもわかった気がする。・・・ん?それって・・・いや、まさかな)
確かに昔の彼らではゼロの相手など出来
王国で彼らと合流した際、レイナは彼らがその実力に見合うように、ステータスやスキルを新たに調整して渡したのだ。戦士であるペテルならば攻撃や防御を補正したりだ。それと、ここまで上手くいったもう1つの要因もあって、ゼロに世にいうクリティカルダメージを与えれたのだ。
((((さてと))))
予想できなかった猛攻に、たまらずゼロは大きくのけ反り倒れてしまう。再び魔法での追撃を恐れるがなかなか攻撃はこない。疑問に思うより早く起き上がろうとするが・・・
「くそがぁ!!てめぇら絶対に!?」
許さんと吠えかけて、何故か首しか動かせなかったゼロは、漆黒の剣らを睨もうとして首を上げて見たものに愕然とした。
((((逃げるか))))
そこには背中を見せて逃走する漆黒の剣たちの姿。
元よりツアレたちが逃げる時間
最初にゴールドだからと油断したのが仇になった瞬間だった。
いっそ惚れ惚れするくらいに迷いがないその動きに、ゼロも彼らが逃走したと理解するのに数秒かかった。
「ふ、ふざけんなぁぁぁ!!?」
だが次に去来したのは怒りだった。たかがゴールドにしてやられたことにゼロのプライドはボロボロだ。しかし、立ち上がろうにもご丁寧に足だけだった蔓が首の下くらいまで伸びている。道理で首ぐらいしか動かせなかった訳だ。顎をやられたことで脳が揺れて、意識はあってもうまく動かせない。
なんとか怒りに任せて蔓を引きちぎって立ち上がったのはいいが、数分と言えど時間がかかってしまった。これで逃がしては六腕の顔を汚す。もう逃げられているかと思ったが漆黒の剣を追うと出たのは、ガゼフが鍛練場として使う中庭。そこをゼロと挟んで身構える彼らがいた。
屋内は不利だと少し空けた場所に移動したのだろう。そうだとしても今のゼロは頭にきていた。今すぐ飛びかかってーーと来たところでゼロは冷静さを取り戻す。
先程は相手を甘くみて今度は怒りに任せての攻撃ではまた足元を
「奴さん。怒りに任せて来てくるかと思えば逆に冷静になったぜ」
「モンスターのようにはいきませんか」
「ダメージがないという訳ではないでしょうが、見た目を裏切らない耐久力ですね・・・」
「うむ。先程の油断は助かったであるが、あの様子からではもうそれを宛には出来ないであるな」
挑発のつもりか何か言ってくるが、それで激昂するようではあの六腕をまとめる事はできない。
まずは始末するのは魔法を打ってきた女と決める。こいつさえ殺せば決め手を欠いたチームなんぞ追い詰めるのは簡単だ。後はジリジリといたぶって殺してやる。切り札であるタトゥーの力も解放し、目指すは魔術師の女。
当然前衛の2人が邪魔してくるが、そんなものはこの力の前では吹き飛ぶだけだ。魔術師目掛けて地面を蹴る。高速の視界の中で前衛の焦りが浮かぶ顔と女の怯えた表情が見えて、優越感に溜飲はさがりーーー。
「私の相手をしてもらおうか」
頭上から男の声が聞こえると女の顔に余裕が生まれる。まさか誘われた?そう思った時にはなにかが目の前に着地する。着地した衝撃で砂煙が舞い視界は悪くなったがゼロは止まらない。何が来ようとこのまま吹き飛ばしてやると進みーーー。
「っ!?なんだと!?」
自分の肩に手を置かれ突進が止まる。咄嗟に突きだした拳さえもう一方の手で完全に受け止められた。しかも相手は少しも後ろに後退もせずにだ。逆に止められた時にゼロの体が悲鳴を上げた事に驚愕したゼロが見たのは、漆黒。
「待たせたな」
漆黒の全身鎧を来た自分と並ぶ大男。その胸元にはアダマンタイトのプレート。一時期八本指でも勧誘しようと話がでたが、噂で流れてくる彼の活躍から金では快諾出来ないだろうと、却下された二刀流の戦士。
八本指への作戦が開始する前に、レイナはモモンにこの襲撃を予想していたので相談したのだ。
漆黒の剣の面々は時間稼ぎであわよくばそれで倒せたら良かったが、やはり六腕のリーダー。その耐久力は馬鹿にならない。だがそれも目の前に降ってきた漆黒の戦士の前では
・・・もしここに彼ら2人の実力差を知る者がいれば、その容赦なさにこう叫ぶだろう。
鬼だ・・・と
「「「「モモンさん!」」」」
「さて私の仲間が世話になったな。ここからは私が相手だ!」
凄まじい膂力で押し戻され、ゼロの体が浮き上がり、元の場所に投げ飛ばされた。
☆
「・・・何故、ここにウルベルト様が?」
夜の王国を颯爽と飛び回り、八本指の手先を始末していたソリュシャン・イプシロンは自分の探知内に、ある御方の気配を一瞬だけ感じとり、その場に向かっていた。
気配はすぐに消えたが、予定ではその御方であるウルベルトともう1人の御方であるベルリバーと共にナザリックで待機されている筈であったのに、こうして王国へと来たということは何かしらのトラブルが合ったのだろうか。
焦燥感を覚えながらソリュシャンは気配があった場所に降り立つ。そこはしばらく人の手が入っていないのかボロボロの建物が多く見られる場所で、今回の作戦には関係ない場所であり、至高の御方が態々来るような所とは思えない。
アサシンの勘か、嫌な予感しかなかった。
だからと言ってスキルを使って潜伏するのは、御方を疑っていると言っているようなものである。
少しだけ葛藤した彼女は、潜伏スキルを使わずに意を決して建物に入った。
「これは・・・」
蒸せるような血の匂いに、だが彼女は顔を歪めることなくその惨状眺めていた。元々残虐性を含む彼女にとって常人なら吐き気をもたらすだろうが、特に思うことはなかった。
だが、その中心にいる山羊頭の異様な姿には言葉を失った。彼の足元には見たことのない像と魔方陣が張り巡らされ、その中心には彼が立っていた。
「ウルベルト・・・様?」
「・・・ソリュシャンか。何のようだ?」
「いえ。なぜこのような場所に?アインズ様からは此度の作戦には不参加と聞いたのですが・・・。それにその像と魔方陣は・・・」
「お前には関係ないだろう。俺が何しようとな。それとも何か?僕の分際で指図するつもりか?」
「そ、そのようなつもりは・・・私はただ・・・」
「何も見なかった事にして去れ。それともモモンガに伝えるか?」
「・・・・・」
ウルベルトの黙っていろと言う言葉に彼女は従っていいのかと迷う。昔の彼女であれば素直に従っていただろう。だが彼は他の至高の御方が去るなかで、ナザリックを最後まで支えたアインズ・・・モモンガ様にも秘密にしろと言っている。
ソリュシャンにとって再会し、その想いを知った自身の創造主であるヘロヘロとモモンガを並べるのは不敬であると知りつつも、どちらが上かなどとは決められなかった。
しかし、モモンガとウルベルトでは天秤は確実にモモンガに傾く。今の目の前にいるウルベルトの不審な行動は・・・。万が一いや、億が一にもないと思うが・・・。そこまで考えて心中で否定する。だが彼女は気付かなかった。グルグルと回る思考に返事が遅れていることに。それを知った今のウルベルトがどう反応するのかを・・・。
ソリュシャンは感じる不穏な雰囲気に戸惑いつつも口を開きかけ、ウルベルトは遮ってめんどくさそうに首を振った。
「やはり・・・殺すか」
「っ!?」
次の瞬間ウルベルトが目の前に現れ、その腕をソリュシャンの顔に向けてきた。そして集まるのは今まで感じたことのない膨大な魔力。死が迫り、背筋に冷たい感覚が過ぎてもソリュシャンは動けなかった。
「ん?誰だあんたたち・・・」
ソリュシャンが入ってきた扉が開かれて現れたのは、ここで無惨にも殺された者たちを見限り、ほとぼりが冷めるまで外出していた青年だった。
扉を開けたところで背を向けるソリュシャンと対峙するウルベルト。そして、部屋の惨状を目にして言葉を失う。乱入者にソリュシャンに向けた攻撃の手が、ほんの一瞬だけ気が逸れて止まる。
「悪魔!?それにこれは!?」
「くっ!?」
それが彼女の命を救った。すぐさまウルベルトが魔法を唱える。彼女が立っていた場所の空間が捻れ、押し潰される。"グラビィティ"ウルベルトがユグドラシル時代に多用していた。
広域魔法でありながら、燃費がよく。威力は低いが範囲内の相手を上手くいけば転倒を付加する。ダンジョンの攻略の際は雑魚相手によく使って前衛がくるまでの時間を稼いでいた魔法であった。
だが、ソリュシャンは横に大きく跳ぶことで避けることが出来た。もしも青年が入ってこなければ・・・。ソリュシャンは何の抵抗も出来ずに、超重力に巻き込まれて消滅していただろう。
殺されかけた事実に彼女は、冷や汗を流す。これが自分が不快な思いをさせたのならば、罰として受け入れたかもしれない。
ウルベルトが大恩あるアインズに対して良からぬ事をしようとしているのは明白。そして何よりも・・・。
『ソリュシャン。紅茶が入りましたよ』
『いい茶葉で紅茶を淹れたの。貴女の意見が欲しいわ』
『ソーちゃん料理長が特別に焼いたお菓子もあるっすよぉ』
『一緒に・・・食べよ』
『とってもおいしそうだよぉぉ』
ソリュシャンは自身の創造主がレイナに殺されたと知り、落ち込んでいた時に励ましてくれた姉妹たち。
『あまり無理はするなよ』
異世界に来て忙しいのに時間を割いて、訪ねてこられたモモンガ。
『ありがとう。ソリュシャン』
再会したヘロヘロ自身との会話。
そして・・・
ソリュシャンは自分の腹部に視線をやった。
彼女の心に火が灯る。
ここで抗っても結局は死ぬかもしれない。
それでも・・・・・ここで死ぬわけにはいかない。
例えそれがどんな罪よりも深くても。
至高の御方に刃を向ける事になろうとも!
ソリュシャンは僕としての枷を外し、武器を構えた。
「そこのアナタ!すぐに逃げなさい!」
何故人間などを助けようとしているのか。違うこれはこの人間が邪魔なだけで、他意はない。
ウルベルトに切りかかるが、余裕で避けられる。当然だ。御方と自分のレベルは天と地ほどの差がある。そうして覚悟を決めたソリュシャンに逃げろと言われた青年が叫ぶ。
「だが!」
「アナタではすぐに殺されるわ!逃げるというのが嫌なら誰かに知らせて!」
まだ逃げてない人間に苛つきながら、ソリュシャンの頭に浮かんだのは、今王国にいるナザリックの仲間だけでなく仇敵だったある女の姿が浮かぶ。今は八本指の本陣にいるだろう彼女ならウルベルトを止められるかもしれない。
壁を時には天井さえ使って仕掛けるが、どれも捌かれる。ウルベルトは魔術師だとわかっていたが、こうまで通用しないのにソリュシャンは焦りを覚える。彼の動きを見たのは初めてだが聞いていた魔術師のものとは思えないほどに、動きが洗練されたものであったからだ。
「・・・なるほど」
「ぐぅっ!?」
攻防中にも関わらず、ウルベルトは何かを納得するように己の掌を見詰めると、向かってきたソリュシャンの攻撃を、
「バーンフィンガー」
ソリュシャンの首から上が爆発する。そして抵抗しようと伸ばされた手が力なく垂れて・・・。
ドシャッ
とウルベルトの足元に首のない彼女の体が落ちた。
「ふむ。魔法使いに近接用の魔法なんてと思ったがなかなか使えるじゃないか」
たった今ナザリックの仲間たちが作ったNPCを殺したばかりだというのに、その表情が動くことはなかった。
「・・・あいつは逃げたか」
淡々としたまま次に目を向けたのは邪魔をした青年で、扉に前に彼はすでにいなかった。予定が狂ったが誤差の範囲ではあった。
「あいつらの仲間ならば逃がす理由はないな」
例えそれが過去のことであろうと。
「ネガティブバースト」
青年を追いかけようとしたウルベルトが
一瞬で瓦礫の山と化したそこを歩き、それの前に立ち止まる。ボロボロの姿で倒れたそれを無造作に蹴り上げる。
「スキルで特化しているモモンガほどじゃないが、結構効くだろう?」
「うぅ・・・」
そのロマンビルドから多種多様な魔法と一部魔法特化を使える友人を誉めるなか、純粋な火力特化である自分の力をひけらかして笑うウルベルト。
無理やり顔を上げられたソリュシャンが答えられずに呻く。潰れたと思われた頭部は元に戻っているがその姿は酷いものであった。綺麗な金髪のロールヘヤーは崩れ、至高の御方からいただいた専用の服は先程の魔法で、耐久値を越えてほとんどが破けてしまい。人型も維持できずに擬態が解けてしまっている部分が多くみられた。
「やはりユグドラシルとは違うな。最初の一撃はスライムだからか頭部を引っ込めて余計なダメージを逃がしたのか?・・・興味深いな。ヘロヘロやアイツには勿体ない。私の配下にならないか?」
「・・・・・」
その声には怪しい魅力が漂っていた。だがソリュシャンが返す言葉は決まっている。
「・・・私を・・・支配できるのは・・・長年ナ・・・ザリックの・・・ために動・・・いて・・・くれた・・・大恩あ・・・るモモン・・・ガ様だ・・・けです」
「そうか、残念だ。まぁ後で私の望むままに調教しよう。今は我が世界で眠れ」
「あ・・・」
黒い渦が目の前に。転移門に似たそれだが、どこか違うと感じた。吸い込まれていく。意識が真っ暗に閉ざされていくのをソリュシャンは何も出来ずにただ呆然と受け入れることしか出来なかった。
☆
投げ飛ばされ、背中から壁に激突した。クラクラする頭を振ってゼロは立ち上がり、目の前の漆黒の戦士をみる。彼の背後に2人と1匹いるパートナーの1人の魔術師が舞い降りるのを眺めることしか出来なかった。
「モモンさん。加勢は必要ですか?」
「いや、大丈夫だナーベ。試したいこともあるのでな。ここは俺1人でやってみよう。お前は後ろの仲間たちを頼む」
「わかりました」
身構えたモモンにナーベが問いかけて、漆黒の剣の方を指した。ナーベは不満に思うことなく彼らを護るような位置であるゼロと彼らの間に立つ。
「助かりました!モモンさん」
「ナーベちゃん久しぶり!いやぁいつ見ても素敵だ!」
「いいタイミングで助かったのである」
「モモンさん・・・」
いつも通りなルクレットの言葉に一瞬だけ、表情を歪めかけたナーベはなんとか表情を取り繕う。見かねたペテルがルクレットをのし退け代表して礼を言った。
その後ろでニニャが一騎討ちで戦うというモモンに不安に揺れる視線を向けていたが、ゼロの攻撃を不動で受け止めたこともあり、幾分か期待も含めて熱っぽかったが背を向けていたモモンは気付かなかった。
「この俺が・・・力負け・・・しただと?」
「立ってくるか。まぁあれで再起不能になったら拍子抜けだがな」
「・・・そんな筈がねぇ!何かのマジックアイテムの力か!?そうなんだろう!?」
「さぁどうだろうな?・・・こいよ。お前のお得意の素手に合わせてやる」
「嘗めやがって・・・野郎ぶっころしてやぁぁぁぁぁる!!」
立ち上がったゼロが闘志を剥き出しにして地面を蹴り、モモンに飛びかかる。豪腕が的確にモモンを襲う。対峙したモモンは背中のバスターソード抜かず、両拳を目の高さに合わせる。
迫るゼロの凶器である豪腕を、その拳を横に払うことで、逸らす。並みの相手では逸らすことも出来ずに直撃したであろうそれにゼロはモモンの実力を認め、本気へと切り替えた。
タトゥーの力も引き出して、全力で殴りかかる。そうすることで遂にモモンは逸らすことが出来ないと感じてか防御に専念し出す。
攻防が始まって一度も攻撃をしていないそれがモモンが圧されていると見えた漆黒の剣は援護するべきか迷うが、彼のパートナーであるナーベが落ち着いた様子で眺めているので手を出すのは危ぶまれる。防戦一方のモモンに気をよくしたゼロの攻撃はさらに激しくなる。
「どうした!?さっきから全然手が出てないじゃないかっ!構えた拳は飾りかよ鎧野郎!?」
「・・・いいだろう」
ゼロの言葉にモモンが答えると、迫るゼロの拳より早くゼロの横っ面をモモンの左拳が捉えた。軽い音ながらもゼロの動きが止まる。さらにそこからもう1発ときて最後に右のストレート。それは所謂ボクシングのワンツーであり、旅の途中でユーリに教えてもらった基本の攻撃であった。
ストレートを浴びたゼロの巨体が揺れる。畳み掛けるようにボディブロー。屈強さなど関係なしとばかりにくの字に曲がり、顎が下がった所をアッパーでかち上げる。
たたらを踏みのけぞるゼロ、完全に決まったと思ったが、最後の意地かゼロは全身のタトゥーの力を解放した。タトゥーが怪しく光輝き、元々の全身凶器であるゼロの能力をレベル以上に引き上げた。
踏み込んだ地面は埋没し、今までにないスピードでモモンとの距離を詰めた。全力の拳。いくら鎧が堅くてもこの1撃を食らえば只では済まない。
その拳を前にモモンはーーー。
武技"要塞"
ゼロの拳に硬い手応えがあったが、それは鎧を凹ませた感触ではなく・・・。煙が晴れた先にいたのは先程と変わらない姿のまま拳を大きく構えたモモン。
「嘘・・・だろ?」
自慢の一撃を防がれたゼロが呆然とした顔面に放たれる右のストレート。ゼロにはモモンの背後に死神を見た気がした。数秒もない世界で遅く感じるも体は全く動かない。絶対的な死が来るのをゼロはこの男には敵わないという思いと共に受け入れようとした。
「あ、あれは!?」
「モモンさん!空から!」
既に観客となっていた漆黒の剣から異常を知らせる声が、ゼロの鼻先まで迫っていた死を止める。彼らは油断なく周囲を警戒していたのだろう。空を見上げた彼らを追ってモモンとゼロも揃って空を見上げた。
そこには真っ赤に燃える空を背景に大量に召喚された悪魔の姿があった。一瞬ナザリックの増援とも考えたが、彼らからは明確な殺気を感じ、敵であることが理解できた。
「なに!?っ」
モモンは途端に懐に手をいれていたアイテムが携帯のように震えているのに気付き、それを取り出す。それはレイナをを模した人形で、協力関係を結び2人の状況がわかるように互いの人形を預かりあっていた。何かあれば人形が本人の状況を知らせるというアイテム・・・。
人形ならば動かないのは当然だ。だが、これは共有したお互いの情報を渡すためのものだ。他の者が見ればただの人形。しかしモモンには
「(零さん!?)くっ!?ナーベは漆黒の剣たちについて行動しろ!私はこの現況の元を探る!おい!六腕の!命は預けてやる!もし逃げようものなら地獄の底だろうと追うからな!ここは協力してあいつらに対応しろ!」
「わかった・・・」
「任せてください」
先程投げ掛けられたモモンの脅しとしか思えない言葉に、文字通り命を預けられたゼロは逆らえる筈がなく、殺されかけたためか声は弱々しいが確かに同意して、悪魔に狙いを定める。
ナーベも不満を洩らすことなく漆黒の剣に付き、いつでも魔法を行使できる構えをとって、この場で悪魔を迎撃するようだ。
「これはただ事じゃないな・・・モモンさんは行ってください。我々はここを制圧したら、逃がしたツアレさんたちを追います」
「ここだけとは限らないであるからな。彼らも悪魔の襲撃を受けているかもしれないのである!」
「くっそ!悪魔なんてどこから現れたんだ!?」
「考えても仕方ないでしょう!・・・モモンさんどうかお気をつけて」
突如現れた悪魔に漆黒の剣たちも動揺を隠せないが、ナーベが合流することで、不安もある程度軽減したようだ。各々が武器を構えて悪魔と対峙する。
モモンが単独行動をすることについては、不安は大きいが目の前の英雄の初めてみせる様子から送り出すしかない。その時の彼らは皆一様に不安を表情に張り付けている。特にモモンに特別な感情を持っているニニャは
思えば彼女には悪いことをしたかもしれない。姉の仇でもある八本指の手先である六腕を、ユグドラシル関係の手がかりだからと言って見逃すようなことをしたのだ。それどころではなくなったとは言え、思うところはある筈なのに何も言わないでいてくれた。
「済まない!」
もしかしたら嫌われたかもしれないし、それが今後の冒険者活動において汚点になるかもしれない。これ以上は考えている時間も惜しい。謝罪だけを口にしてモモンはその場から跳躍。跳んだ先にいた悪魔を両断して屋根に着地する。
その背後を多数の悪魔が襲撃するが、地上から放たれたナーベのライトニングが直線上にいた悪魔を屠り、今度は数を優先してこれまでの倍以上八つの光弾を生成したニニャのマジックアローが包囲しようとした悪魔に撃ち込んだ。それでも余った悪魔をルクルットの矢が仕留める。
飛び道具がないペテルやダインは大声や己の武器を打ち鳴らして悪魔の注意を惹き付けようとしていた。それもあって周辺にいた悪魔のヘイトを集める事に成功したのだろう。
一瞬で仲間を殺して去ろうとするモモンを無視して、彼らの方に悪魔が集まりだした。ペテルとゼロが前線に出て近づいてきた悪魔を倒す。一歩後ろにダインがついて、悪魔が洩れた時に対応できるように立ち回る。
ゼロと漆黒の剣たちの連携はやはりぎこちないが、さっきまで戦いあっていた者たちが今は肩を並べて集まる悪魔に的確に対処している。
こうなることはわかっていたのに援護してくれた彼らに心の内で、再びお礼を言いながらモモンは王国の町を屋根伝いに疾走した。
そこは瓦礫で埋まり、そこだけポッカリと王国に穴を開いているようだった。放たれた魔法は床に書かれた魔方陣と像を残して建物を崩壊させただけでなく、余波で吹き飛んだ瓦礫は魔法の範囲外へも被害を出していた。
いや、まだマシな方だろう。もしも
爆心地とも言えるそこには大悪魔が立っており、その両腕にはぐったりとした女性が抱えられていた。青と白の旅装束の服は破けて白い肌と下着一部も露出している。大悪魔の腕の外に洩れて流れる銀髪の女性。
瓦礫の中では純白の鎧を傷つけられた白騎士が、異様な気配を持つ
王国の長い夜は始まったばかりだった。