特に画像とかなかったと思うので、今更かもですが載せておきます。キャラ紹介用1枚と作中にも一枚。
【挿絵表示】
あとやっと似合いそうな服が出たので、あるキャラも作成しました。作中に出しときます。
天を突く火柱が登り、王国がゲヘナの炎に包まれる直前に起きた。悪魔が襲撃するという異変。
それは王国に散ったレイナ一行たちの元にも当然
最初に気付いたのは遊撃として、王国中をその軽い身のこなしを活かして八本指の手先を始末していたクレマンティーヌと幽霊になったその親友が第2の目となりサポートしていた。
あらかた倒したと血に濡れたスティレットを振って血を飛ばしたクレマンティーヌはある方向を向いたまま震える親友を見た。
もしかしたら、今回は多くの目があれば助かるとクレマンティーヌについてきて、間接的にも手伝わせたから罪悪感かと、やはり、あの優しい友人にはそれでも厳しかったかと反省していると、親友がこちらへ飛んできてその形相に驚いてしまう。
思わず尻餅をつくと同時に、さっきまで自分がいた場所にいた親友の胴体に鋭利な物が突き刺さった。一瞬頭が真っ白になりかけるが、親友は何もなかったように素通りして、クレマンティーヌの横につく。そう言えば親友は幽体なのでレイナやマジックアイテムの眼鏡を装備した自分以外には見えない上に触れないのを思い出してホッとしたがすぐに気を引き締め、その襲撃者である長さから槍かと思ったそれを辿るといたのはーー
「っ!?こいつはっ!?・・・」
ーー八本指の手先と当たりをつけていたのだが。
そうではない正体に驚く。
悪魔。
地面に突き刺さったのはその悪魔が伸ばした凶悪な爪だった。正体がわかるやいなや、クレマンティーヌは素早く悪魔との距離を詰め、その脳天にスティレットを刺す。だが悪魔はしぶといと聞いていたのでもう1つのスティレットを心臓があるだろう場所にも。だが悪魔は本当にしぶとかった。
人間なら間違いなく死ぬ攻撃を受けたにも関わらず、遅れて離れようとした彼女の腕を捕まえて拘束する。そこへ現れたもう1体の悪魔が背後から襲う!
「ちっ!」
『ダメ!!!』
抜かったとクレマンティーヌが覚悟した時。親友の声と一緒に背後にいた悪魔の動きが縫い止められたように固まる。悪魔が戸惑う表情という珍しいものを見ながら、何が起きたと周りを刹那に見渡し、両手をその悪魔に突きだした親友の姿が見えた。
彼女の悪魔に向けられた腕から何かしらの力が働き少し光っているように見える。その光は固まる悪魔の周囲を囲んで捕まえているようだが、その厳しい表情から無理をしているのがわかる。
「いい加減に離せ!」
悪魔と自分の間に足を挟み蹴るようにして拘束を抜け出す。どうやら最後の足掻きだったらしくその悪魔は倒れると動かなくなった。すぐさま動けない悪魔に接近し、急所を何度も攻撃して倒す。今度は油断せずに距離を十分にとり、動かないことを確認してから疲れたように息を吐く親友の元に合流すると御礼よりも叱咤をとばしてしまった。
「もう無茶しすぎ!」
『ごめんね。クレア』
確かに助かったが、親友が辛そうにしている事をもの申せば、素直に頭を下げてきたのを見れば怒りはすぐになくなり、ただ心配だけが残る。・・・クレマンティーヌはそんな親友の姿に遠い昔に周囲をなんとか見返そうとして頑張っていた時の事を思い出していた。
「・・・ううん。私も不注意だった。助かったよ。でもそんなことできたんだ」
『私もクレアの役に立ちたかったの・・・。レイナさんに相談して特訓したら出来るようになった』
またあの女かというか幽霊を鍛えるとか、もはや何でもありだなとクレマンティーヌは、呆れも通り越して関心していた。そして今の自分の装備を見る。以前のように冒険者プレートで埋められていたそこには(レイナによれば確かにステータスは上がるのだが、殺された冒険者の怨念か、ステータスは上がるものの運が悪ければ致命傷を受けやすくなっていたらしい。よく今まで無事だったわと肩をすくめて呆れられた。もしかしたら、この幽霊になった親友が関わっているのかもしれない)代わりに合金で作られた胸当てがつけられ、その下地にはレイナの
クレマンティーヌが前に装備していた物とは見た目はそう変わりないが、彼女の性格からか荒かった部分が綺麗に施され、急所を守るために、装甲が追加されているものの。重量は以前よりも軽量化されている上に動きやすさが向上しているのだから文句の1つもつけれない・・・。
そう言えばと親友の姿も見れば、亡くなった当時の神官服(ボロボロで致命傷になった傷であいた穴が痛々しい)を着ていのだが、それが補修された上に今は彼女の紫色の髪と瞳に合う同色となっている。まさか幽霊の装備にまで手を加えれるのかと、只でさえその実力や技術に疑問がある中で、レイナにまた問い詰めたい事が増えてしまった。
「ほんと・・・何者なのかねぇ~」
『レイナさんいい人だよ。この服も要望通りだし、それだけじゃなくて、どうしたらいいか相談にのってくれて、助言もくれたよ』
思わず呟いたその言葉に親友からの返事に、ほんと何者なのかと疑念は深まるばかりだ。時たま親友がフワフワとレイナに話しかけてから、側からいなくなる理由も今知った。でもあの苦しそうな表情をみると胸が苦しくなるからやめてほしいと思う。そう口に出そうとした時には心境を読んだように親友は悲し気に話す。
『もうクレア1人だけを苦しませるの嫌だから』
「・・・・・(それはちょっと卑怯じゃないかな)」
そんなことを言われては止めるのもできない。赤くなった顔を見られないようそっぽを向きながら、クレマンティーヌは再び襲撃してきた悪魔たちと向き直る。
「それじゃ背中は任せたよ!親友!」
『任せてクレア!』
その後、やっと悪魔を倒しきったというところで王国のどこかで巨大な火柱が発生し、炎の壁に包まれた上に、大量の悪魔のおかわりを相手にしながら2人は炎に包まれた王国を駆け回った。
☆
憧れの人に少しでも近づきたくて、村を飛び出してみれば大冒険の連続だった。それまではカルネ村に移り住む時の位が精々だった。
シルバーの冒険者をゴブリンとオーガの群れから救い。
エ・ランテルでは人の善意と悪意を知った。
その都市に溢れたアンデッド退治。
元盗賊団の生き残りの剣士や素性がしれない女軽戦士といった仲間が増えて、賑やかになっていく。
王国では
そして今回の王国の浄化するための八本指に対する徹底検挙。
これでまだ数ヶ月の内なのだから。あののんびりしたカルネ村の日々がどこか遠くの出来事のようだ。
そして何よりもすぐ近くに
旅の途中から伸びてきた髪を邪魔にならないように、後ろでくくったシオンは、作戦直前に追加された場所を目指しながら、前を歩くガガーランに声をかける。
「新たに確認された八本指の拠点ですか?」
「ああ、今はそこへ向かっている」
「・・・他の拠点は大丈夫なんですか?」
蒼の薔薇も合流して動き出した八本指討伐作戦は、新たに付け加えられた拠点に誰を回すかの会議が先程終わったところだ。
チーム分けされた彼らは皆早足で持ち場に向かっていく。エンリたちも疑問は走りながら語り掛ける。
「なに、あんたらのリーダーが集った冒険者や最近増員した戦士団も動いてくれている。人員は当初よりも多いからな。充分制圧するのは可能のはずだ。まぁこっちはその分少なくなってしまったがな」
お前らがいなければ俺1人になってたかもしんねぇなっ!と豪快に笑うガガーランに、いくら何でもそれは・・・と言いたげなエンリとシオンら3人が向かっているのは郊外の屋敷だ。そこには裏で流通しているライラの粉末を流す大元がいるらしい。
「う~ん・・・・もっ・・・ない・・・でも・・・ア・・・ズさ・・・きょ・・・めだ・・・と・・・言って・・・でも・・・まそ~」
向かった先で3人は1人の人影に気づく。人影は小声で何か言っているが、あまり良くは聞こえなかった。それは少女のようで見たこともない着物をきていた。
「おい、そこで何をしているんだ?」
「ん~?」
ガガーランの声に振り向く少女。そのしぐさは少女らしいものであったが、月明かりしかないここで眼が馴れ、彼女の周りの光景が見えてくると3人は驚愕する。
「うぅぅ・・・」
「・・・・・」
「これは・・・この数をこの少女が?」
彼女の近くには数人の男が倒れてうめき声を上げている者や完全に気を失っている者もいたからだ。思わず息を飲むシオン。
状況からしてこの少女が倒したのだろう。幸い外傷はそんなにはなく、気を失っているだけのようだがこれだけの人数を相手にして少女は無傷なことに警戒度が高まる中、ガガーランが代表するように前に出て、エンリも続く。
「ただの少女という訳じゃないな?それにこの実力・・・周りにいるのは八本指として、お前は別の組織に雇われたのか?」
「んん~?なんのことかなぁ?」
「ふん、まともに答える気はないか・・・じゃあ「待ってください」あん?」
こちらの質問に惚けた返事にさらに警戒が高まり、今にも飛びかかろうとしたガガーランに待ったをかけたのはエンリだった。
エンリは伸ばしていた大剣の柄から手を離して、謎の少女に近づいていくという無防備さに、ガガーランが思わず怒鳴ってしまうのも無理はない。
「おい!?エンリあぶねぇぞ!?」
「すみません。ここは任せてくれませんか?」
「任せろって・・・」
「・・・・・ガガーランさんここはエンリを信じましょう。ビックリしてそれどころじゃなかったですけど彼女からの敵意はありません。大丈夫ですよ・・・たぶん・・・きっと」
「どっちなんだよ・・・」
止めようとするガガーランにシオンが引き留める。最近はよくわかるようになった敵意感知によって彼女からこちらに対する敵意がないことはわかるが、確信を持てないのは倒れた彼らの惨状による恐怖から半信半疑だったためにガガーランも呆れていた。
エンリはこちらにも敵意がないことを示すために武器を持たずに話しかける。
「ガガーランさんも聞いたけど貴女は八本指の関係者だったり、私達と戦うつもりだったりする?」
「ん~ん、全くの無関係だし、そっちがそうしない限りはぁそんなことしないよぉ」
「だそうです。ガガーランさん」
「おいおい、信じるのかよ?嘘かもしんないぞ?」
「何て言うんでしょうか・・・彼女からはそんな嘘をつかないようなそんな気がするんです。それに随分と綺麗な衣装も着ていますし、話せばわかり会えるかなって」
「あらぁまぁ、貴女この衣装を誉めるなんて見る目があるのねぇ気に入ったわぁ」
「ふぅ・・・危なっかしいけど、それこそエンリらしいか・・・」
これが人の腕をパクパク食べていれば、それも難しかったかもしれないが、アインズが極力人がいるところでのスプラッタを控えるように言っていたのを守った彼女のファインプレーだろう。
さらに衣装が誉められらことに上機嫌になる少女は特に危険には見えないが、
フッと笑うと緊張もどこかに飛んで行ってしまった
「ふはっ、わかったよ。少し警戒しすぎたようだ。確かに俺の目から見ても良い衣装を着ているんだ。裏に話がわかるやつがいる可能性はあるよな」
「ガガーランさんにシオンも。心配させてすみませんでした」
頭を下げるエンリ。気にするなと言いたいが、やはり心配するこちらの身にもなってほしく思うので、やんわりと苦言を吐くことにする。
「そうだぜ。結果的に敵意がなくてよかったが、心臓に悪いからな。とりあえずどうしてここにいるのかは聴いても良いんじゃないか?」
「そうね。私たちはここに八本指の幹部がいるって聴いて捕まえに来たんだけど貴女は?」
「私もぉだよぉ。今は私の・・・」
「待てエンリ!?急に敵意がたくさ・・・!?」
少女に再び目線を合わすように屈もうとするエンリと答えようとする少女の姿に安心しかけた所で、突如前触れなく感じた気配に叫びを上げた。
「なにっ!?どこからだ!」
「なに・・・これ、この肌を刺すような感じは・・・」
「・・・こんなの聞いてないよぉ私も狙われてるのぉ?」
ガガーランは周囲を見渡し、エンリは身震いを抑えるように自分の肩を抱く。少女の声は小さくて聞こえなかったが、戸惑っている雰囲気は
「皆!上だ!」
全員が一斉に臨戦態勢に入った。気配をたどり首を巡らせて見上げた空には幾多の魔方陣が浮いていた。そこから次々と影が生まれてくる。
影の姿は魔方陣から出てくるとよりその姿をハッキリと捉えた。意思があるとは思えない凶悪な人相、頭には禍々しく曲がった角、背中にはコウモリのような翼膜のある翼。
「悪魔だと!?何故王国に!?」
ガガーランの叫びが夜の空に響くと同時に王国から炎が燃え上がった。
大きなガラスが割れる音が屋敷から響くと同時に悲鳴が上がった。大きな扉を蹴破るように開けた男に続いて女も飛び出してくる。
「なんだい!?どうしてこんな所に悪魔が!?」
「姉御!とにかく逃げましょう!」
金髪を長く伸ばし、寝巻きの上にガウンといった
それに遅れて金髪の女の子も慌てた様子で屋敷から出てきた。よくその女の子を見れば、暗くて分かりにくかったが黒い肌に金髪の赤と青のオッドアイ。全体的にどこかで見た
(あ、レイナさんの相棒であるあの人に似ているのか)
思い出したのは自分に弓の稽古をつけてくれたダークエルフのレイナの相棒であるもう1人の師匠の事。
彼らも自分達とこの惨状に気付き、足を止める。
「なっ!?この惨状は・・・って蒼の薔薇のガガーラン!?これはお前たちの仕業!?」
「姉御下がって!」
「そういう訳じゃないが、まぁいいだろう。お前は麻薬部門の幹部ヒルマだな?突入して探す手間が省けたが、こりゃそれどころじゃないな・・・」
ヒルマと呼ばれた女がガガーランの姿を確認すると顔を歪める。その間に大男が割り込み彼女を庇う位置にいる。
「ところでその男は護衛だろうが、さらに後ろにいる子供もお前の知り合いか?もしくは八本指の商品にしようとしているのが逃げ出したか?」
「えっ!?・・・誰よこの子は?あんた知ってるかい?」
「・・・・・いえ、こんなダークエルフの女の子なんて預かっていませんぜ。しかし、どこから・・・」
振り向いた先にいたダークエルフの少女にヒルマは分かりやすく首を傾げる。演技かもしれないが、それにしては本当に知らなさそうである。
「・・・その人は私のぉ上司ですよぉ~」
答えは意外なとこから出てきた。男たちを昏睡させていた着物姿の少女である。しかし、少女の外見から、ダークエルフの少女の方が幼く見えるため、上に立つ者とは見えずにみな首を傾げる。
一斉に向けられる視線に彼女はオロオロしながらも、ちゃんと説明してくるあたり、少女が言っていた事は正しいのかもしれない。
「あ、ある人の命でここが八本指の拠点の1つと聞いて彼女とそこの人を捕らえに来たんです。と、途中で悪魔がきて台無しになりましたが・・・」
「なるほどということは敵の敵は味方というなら楽なんだが「そ、そう思っていただいても良いですよ」・・・わかった。という訳だ。エンリ助かったぜ。お前のお陰で無闇に争わずにすんだ」
「い、いえ。そんなお礼なんて・・・」
「エンリ。そこは素直に受けておけよ。俺もお前の直感は素直に感心してるんだぜ」
「そ、そう?じゃ、じゃあどういたしまして」
少女の
「ここまでかねぇ・・・」
「・・・姉御俺が片一方を引き受けます。その間に・・・」
「やめな・・・無駄に怪我して最悪死ぬよ。ここは大人しくして・・・」
ヒルマは自分を犠牲に逃げろという護衛の言葉に首を振った。そしてチラッと倒れている男たちを一瞥して、生きていることに安堵しているように見えた。
そこに死角である上空から槍のように爪を伸ばし、強襲する悪魔を捉えた。
「姉御!?」
男が気づいてヒルマを庇おうと動くが間に合わない。警戒のため少し距離が空いていたためにガガーランたち前衛組も同様、たとえこの場に
ーーー大丈夫だ。
すでに矢は放たれている。
☆
気付いた時には回避も間に合わない状況に気付いたヒルマは己の過去を走馬灯で見ていた。生まれた村では村一番の美人と言われ、時々訪れる貴族訪問時は、以前に村の娘を拉致ともとれる行いで連れ去られた上に、その後ゴミのように捨てられたその娘を保護した経験のあるその村は、彼女を表に出さないようにしていたために難を逃れた。
耳にタコが出来るくらいに聞かせられ、貴族の恐怖は知っているも、彼女は都会への憧れを抑えることはできなかった。心配する両親を余所に、彼女は村で貯めた僅かな蓄えとともに、村に来た行商人に頼みリ・エスティーゼ王国に来た。
夢見た王都に来れたことにヒルマは感激していた。幸いヒルマの持ち前の美貌のおかげで、繋ぎである仕事はすぐに見つかった。酒場の
それを教えてくれた先輩
自分の方が美人だと言えば、生意気だと頭を撫で回され豪快に笑い飛ばされた何てこともあったが。
「ふふ、随分男の扱いが上手くなったねぇ。ヒルマも、流石私が見込んだ女だよ」
「ふん、これくらい普通よっ。いつまでもーーの世話のはならないわ!」
「やっぱり生意気だね!その気概が続けば、いつか話してくれた夢も叶えられるよ。頑張りな!」
「うっ、何故あの時の私はこの人に洩らしちゃうかな・・・」
「ハッハッハ!、誠に怖いのは泣いて弱ってるときのお酒だねぇっ!」
「ちょっ!?大きな声で言うんじゃないっ!」
入ったその日から厳しくてでもしっかり知識や技術を授けてくれた。失敗すれば叱り、成功すれば子供扱いで、折角整えた髪をグシャグシャに撫でられたり、そう言えば今のしゃべり方もあの人を真似てだっけ。
彼女には感謝してもしたりない。でも・・・それなのにーーもう名前も思い出せない。それに私の夢ってなんだっただろうか?
そうして順調だったその日常も、気紛れに訪れた貴族によって破られることになる。
その日はいつも以上に賑わいを見せていた酒場で、突然乱入してきた貴族に誰も気づかずに騒がしい中で、壇上にいる踊り子ではなく、男たちの間を忙しく走り回るヒルマに目をつけた、つけられてしまった。
貴族は注文を取りに来たヒルマの腕を掴むと、そのまま連れていこうとした。
まさかここで注目を浴びているはずの踊り子よりも、自分が選ばれるという、過去に言った踊る彼女よりも美人という事を最悪な形で証明することになろうとは、当時の私は思わなかっただろう。
当然、酒場の看板娘だったヒルマを連れて行こうとする貴族に、男たちと店長、あの先輩
その後、恩人を傷つけられ呆然とするヒルマは抵抗も出来ずに、連れ去られた。
その後は村で聞いた通りの扱いの後、娼館に売られることになる。最悪生きて出られないとも聞いていたので、まだ
ヒルマは
それからの娼館での生活は意外と良いものだった。傷は上手いこと隠すことが出来たし、全盛期は高級娼婦として、人気者であった。その娼館も環境もよく、従業員たちも同じように貴族に痛い目を遭わされた同士として、仲も良かった。訪れた客はあの貴族に比べて優しいし、親身に相談にものってもらう内に、結構なコネまで手に入った。
そうして、新たに自由を得たヒルマだが、あの働いていた酒場には顔を見せることが出来ないでいた。行こうとしても脳裏に血塗れの先輩
あの後どうなったのかは知らない。もしかしたら、あの時切られたことで死んでいるかもしれない。そうでなくても恨み言の1つも言われるかもしれない。その方がいいと思うも踏み出せない・・・。
「今更どんなツラ下げて会いにいけば良いのさ・・・」
「あなたがヒルマさんですね?」
「?誰だい・・・お前は・・・」
「申し遅れました。私は・・・」
失意にくれるヒルマの元に来たのは、ローブを被り、顔を隠す怪しい男。噂だけは知っていた八本指からの誘いだった。断ろうと思った。だが最後に男が言った言葉にヒルマは迷いなく頷いた。
「貴女を不幸にした
八本指が新たに手掛ける"ライラの粉末"その部門を、彼女が今まで蓄えたコネ使って、浸透していき、遂にはあの貴族を重度の依存症にして絞るだけ絞るとヒルマは知らないが、ライラの粉末には遺伝子に異常をきたす性質があり、子宝に恵まれず。その貴族の血脈を途絶えさせ、破滅させることができた。
その時の喜びは格別で、それ以上に虚しさもあった。
最初はヒルマに懐疑的だった八本指の幹部たちもその功績によって信頼を得られた。続けている内に信頼できる部下も出来て、夢も忘れ、そこがヒルマの居場所になっていたが、今日も古傷が痛み目が覚める。
悪魔の襲撃を受けたのもそんな夜だった。
これは黒の粉が良い値になるからと他の幹部からの要請に従い広め貴族だけでなく生活に苦しむ一般人など関係ない者まで巻き込んだ罪なのだろうか。
最後に浮かんだのは故郷の村に来た吟遊詩人が話す物語。
自分を助けようと貴族に歯向かった生死不明に恩師。
様々な眼差しを受けて酒場の壇上で輝く・・・。
そう言えば六腕に踊り子がいたわねとスローで、向かってくる狂気に嗤う悪魔の顔を見ながら考えていた。
六腕とは実力が認められなければ、入れないものだ。そこへ女の身でありながら、入れたという事はあの踊り子は強いのだろう。
昔の私にも同じくらい強ければ、貴族に拐われることも、娼館で働くこともなかったのだろうか?気になってはいたものの、自分は幹部で、六腕で話すのは代表して出てくる闘鬼ゼロくらいだった。彼女はどんな理由で六腕を勤めれる程の腕前を持つに至ったのか。
聞ける機会なら、雇うなりしなくても、時々すれ違うこともあったはずなのに。
(こんなことなら、少しくらい話せばよかったかねぇ。女同士だし、もしかしたら・・・)
あり得たかもしれない光景に想いを
(そうか、私は羨ましくて、それで、妬んだんだねぇ)
結論を死が迫るこの
横から来た何かによって死は、あの日のヒルマのように連れ去られていった。そして、その原因の元が来た方を見れば、そこには鋭い目をした緑髪の青年が弓を放った格好で立っていた。
悪魔の凶爪が怯えて身動きも出来ないヒルマに迫り・・・。
それより速く放たれた矢が悪魔の胴体を貫き、本来なら肉を抉り貫通するだけのはずが、悪魔の頑丈な体も災いして、矢に
ギリギリだったが、命を救えた事に何度も失敗しながらも覚えておいて良かったと思う。
"クイック"からの"
シオンが師匠から教えてもらった技の内2つを合わせた。基本と言われたクイックと呼ばれる行動を素早く移せる隙を大幅に短縮。弓を引き絞るまでの構えを瞬時に行い、そこからの矢とは思えない力が集約された
あの師匠が放ったのは硬い岩のを貫き更にその奥の岩まで貫いて風穴を開けた時は顎が外れんばかりに驚いたものだ。
「えっあっ」
「おいっ!何してる!早くこっちにこい!」
自分が助かったことに呆然とする奴に声をかけるが反応が遅い。苛つきそうになるが、その前に皆が動いてくれた。自分も遅れまいと動けばヒルマを中心に全員が合流する。
ヒルマと今だ目を覚まさない男たちはその中心に匿われる形になった。
どうして助けたと言いたげな女に怒鳴るように言うと、相手もそれに感化されたのか消え入りそうな声はなくなっていた。
「そんな事気にしてる場合かよ!それより手はたくさんほしい!あんたは八本指の幹部なんだろう?戦えねぇのか!?」
「む、無茶言うんじゃないよ!私は
「そんなんで八本指の幹部になれるもんなんだなぁ・・・しゃーないな。守ってやる!すまない、皆もそれでいいか?」
振り向くことなく次の矢を構えるシオンは、少しでしゃばりすぎたかと助ける事を仲間に
「へへ、元より気に入っていたが、なかなかいい顔するじゃないか。これが終わったら俺とどうだい?」
真っ先に反応して賛同してくれたのは意外にもリーダーであるガガーランだった。彼女はが不適に笑うとそのデカイハンマーを持ち上げる。でもハッキリと言ってないが彼女の通り名からして、最後のお誘いは勘弁してほしい・・・。
「うん。私もシオンに賛成だよ」
エンリも村にいた時から(ある薬師見習いを虜にした)素朴な笑みを浮かべ、最近は板についてきて、迫力が増してきたクレイモアを正眼に構えた瞬間笑みは消えて、真剣な表情をする姿はとても頼もしかった。
「姉御を守るためなら俺も戦う!」
ヒルマの護衛である男が、彼女の代わりと護衛の男が武器である打撃武器であるメイスを腰から取り出した。どうやら随分と慕われているようだ。男の目には、彼女を気遣う強い意思を感じる。
「ぼ、僕も協力します」
「ん~、なら私も手伝ってあげるよぉ~」
怪しい少女が変わった紙を両手に展開し、ダークエルフの少女が胸元に杖を抱き締めている姿は弱々しいが、手伝ってくれるようだ。
「ああ、助かるよ。お嬢さんたち」
少しキザな言い方になってしまったかと思ったが、言われた2人は(ダークエルフの方は何か言いたそうにしている)不快そうにはしてないので問題なさそうだ。
「あ、あんた・・・」
「言っとくが今だけだ。それより早くその気絶した男たちも起こせ。このままじゃ逃げることもできないぞ。あともしも生き残れたら、もうこんな事やめるんだな」
「ああ、約束する・・・(こんな若造に・・・でもなんだろう。この久しく忘れていたような気持ちは・・・)」
なんか熱っぽい視線を彼女から受けるが、今は次々と数を増やし、いつ襲ってくるかわからない悪魔の相手が先だ。弓を構わて敵意の強い悪魔に狙いを定める。
そうして一致団結して悪魔の軍勢に意志が1つになったところで、オズオズとしたままだったダークエルフの少女が、その顔を精一杯引き締めても可愛いままだったが前に出たことで、何をするのかと皆の注目を集めた。
「あ、あと僕・・・僕は男ですっ!」
「「「「「ーーーええっ!!?」」」」」
両手を握り締めてやや引き締めた表情で告げられたダークエルフの少女いや少年の衝撃的な告白に、一拍の静寂の後驚きで叫ぶ、本人とその部下であるエントマ以外の意識が1つになった瞬間だった。
「きしゃぁぁ!」
「・・・よくも邪魔したな」
あまりに小さく呟かれた声に誰も気付ことはなく。
ノコノコと前に出てきたマーレを格好の獲物と捉えて突撃した悪魔は眼が合った彼の瞳に宿る冷たい気配に、後悔する意思はなく、今回の指示を邪魔され不機嫌になっていたマーレが抱えていた杖の一振りによって、召喚されてからの短い生涯を終えた。
無惨に頭を粉砕された悪魔の死が開戦の合図となった。