オーバーロードとヴァルキリー   作:aoi人

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7.戦乙女と旅立ち

 

 

 例によって見逃した者を除き陽光聖典を捕縛してカルネ村へと帰還したアインズたちは、レイナの回復魔法で癒され、しばらくして目が覚めたガゼフの元でこれからのことを話し合っていた。

 

 「という訳で、彼らの多くが尋問すると3回答えた時点で死亡してしまいました。一応何人かは尋問せずに捕らえていますので、すみませんが王国の皆さんには残った彼らを引き取ってもらえますか?」

 

 「いや、何から何まですみませんゴウン殿。村人を守るばかりか我々まで助けていただき、感謝のしようもありません」

 

 「なに、最後の止めを刺したのはレイナさんです。お礼なら彼女に」

 

 「そうなのですか、その彼女はどこに?」

 

 ベッドから上体だけ起こしたガゼフが部屋を見渡すがレイナの姿はない。

 

 「彼女なら、今は負傷した兵士たちに治療の魔法をかけていますよ。何を隠そう戦士長の怪我を治したのも彼女です」

 

 「なんと、あれだけ強い戦士でありながら回復魔法も扱えるのですか」

 

 「ええ、彼女はかなり優秀なヒーラーであり、戦士ですからね。ケガなどの治療も慣れたものらしいです」

 

 「私たちは運が良かったのですね。戦い中はここまでかと思っていましたが、あなただけではなく彼女にも出会えたのですから」

 

 ガゼフは驚きを隠せないでいた。レイナは見た目ガゼフよりも若く見えるため、戦士としてだけでなく回復魔法まで使いこなす彼女は一体どれほどの鍛練を重ねたのか想像できなかったのだ。

 

 「ええ、彼女程の力を持つものは早々いないでしょう。出来るなら私の護衛としてスカウトしたいですよ」

 

 「確かに、彼女ならどこからも引っ張りだこでしょうな・・・」

 

 アインズの言葉にガゼフは彼女を彼を含めて王国に招待して王に仕えてくれないか考えるが、苦い表情になると首を横にふる。確かに彼らを王国に所属させることが出来れば年に一回起きる帝国に対して切り札となり、もしかすれば勝利できるかもしれない。だが、それには信頼ある王ならば快諾してくれるだろうが他の貴族たちがいい顔をしないだろう。

 

 アインズは名の知れぬ魔法詠唱者というだけで糾弾は避けれぬだろうし、レイナの場合女性であることで男尊女卑の彼らにとって異端扱いであり、ガゼフ自身王国戦士長になった今でさえやっかみを受けている現状で今回の暗殺未遂である。貴族に対していい感情がない。最悪彼女の美貌だけを目当てに手を出す貴族が出てきそうである。

 

 そんな不快な思いを恩人たちにさせたくないとガゼフは思う。

 

 「なにか、嫌なことでも思い出しましたか?」

 

 「・・・っ!?」

 

 そんな悲壮なガゼフの表情を見て、アインズが訪ねるもガゼフは今の王国貴族に対しての不満を吐露しそうになるのを飲み込み、傷が痛むだけですと誤魔化した。

 

 

 

 

 村の皆が寝静まった頃。レイナはモモンガとたっち・みー、そしてアルベドと与えられた家に集まって話し合っていた。

 

 陽光祭典を捉えたとき観測した情報系魔法について、モモンガは対情報系魔法で覗き見していたものにダメージを与え、レイナは相手側の情報を盗み出す魔法を唱えたままにしていた。その中にはスレイン法国と呼ばれる国の情報があり、それを共有しようと話し合いの場をレイナが用意し、まず行ったのは謝罪だった。

 

 「本当にすまなかったわ。あなたたちの家を壊してしまって」

 

 アインズたちに向け深く頭を下げるレイナはこの村にきて色々ふれ合う内に、あの時崩壊した玉座の間をなにも言わず、逃げたことを気にやんでいた。

 

 例え不可抗力だったとはいえ、自分の住む家を一部とはいえ崩壊させてしまったのは相当怒るだろう。

 

 「ええ、そうね。では自害しなさい!今すぐ!」

 

 「おい、アルベド!」

 

 実際、悪魔のアルベドから共闘してからも殺気を隠すことなくこちらを睨み付け、それをアインズが落ち着かせようとするが彼女はですがっ!といって譲らない。

 

 「まぁ、待とうレイナも故意ではないようだし、それに聞いてみれば異変直後という話じゃないか、前の世界なら建物が直接壊されるなどなかった。これは事故のようなものだろう」

 

 騒然とする場を納めたのは、アインズ・ウール・ゴウンを初期でまとめていた元クランリーダーのたっち・みーだった。

 

 「ユグドラシル最後の日、本当はそのまま消えるはずだったアインズ・ウール・ゴウンが別の世界に転移、今までのあり方さえ、変質した。今後もどういった変化があるかわからないうちに、内輪揉めをしている時間はないだろう。そう、我々は同じユグドラシルの仲間としてこの困難を乗り越えなくてはならない。まぁ、ユグドラシルを離れていた自分がいうのもなんだが・・・」

 

 「っ!・・・」

 

 「いや、そんなことないさ。ありがとうございます。アルベド聞いた通りだ。今は少しでも手が欲しい事態なのだ。わかってくれないか?」

 

 「ア、アインズ様の命ならば・・・」

 

 「本当にごめんなさい・・・」

 

 「なに、たっちさんも言ってるように、今は手を取り合って頑張りましょう。レイナさん貴女の謝罪を受けとります」

 

 「ありがとう・・・」

 

 その言葉にレイナは涙目で笑うと、彼女の美貌もあって、アインズのないはずの胸が高鳴った。

 

 「ん、んんっ、では早速情報が交換しませんか?」

 

 「そうね。ではまずスレイン法国の規模とその目的から・・・」

 

 (ん?これはもしかして・・・)

 

 (くっ、女の勘が警鈴を鳴らしている!この女油断ならないわ)

 

 こうしてユグドラシルプレイヤー+αの会談は夜遅くまで続いた。

 

 

 

 

 

 

 「今、いいかい?」

 

 「ん、どうしたの?。たっち?」

 

 有意義な情報交換後、アインズは一度ナザリック戻ると言ってアルベドと村を守るように指示したセバス・チャンを残して去っていった。

 

 その後、月夜を眺めていると後ろからセバスを連れたたっち・みーが声を掛けてきた。

 

 「君には礼をしたいと思ってね。ありがとう」

 

 「いきなりね。何のお礼?」

 

 「ユグドラシル最後の日にアインズ・ウール・ゴウンに来てくれたことさ」

 

 「あら、私はただ最後にって選んでただけよ。お礼を言われるほどのことではないわ」

 

 なんのことかと思えば、ほんとに礼を言われることではなかった。

 

 「ふふ、君ならそういうと思ったさ」

 

 「なぜ笑うのかしら?。まぁいいわ、ブルーがいってたプラネタリウムもすごかったし、ひこ・・・世界を裏で支配してたモモンガやヘロヘロって人の戦いは楽しかったしね」

 

 非公式ラスボスといいそうになり、近くにセバスがいるのに気付き、それらしい言い方に変える。

 

 「ブルー?プラネタ・・・もしかしてブループラネットさんかい?知り合いなの?」

 

 「ええ、ユグドラシルで野良で出会った友人よ。ユグドラシル大景観スポットを探してる時に会ったのよ」

 

 「なるほど、結構、世の中狭いものだね」

 

 どうやら、ブループラネットの知り合いだというのに驚いているようだ。彼の後ろにいるセバスも驚愕の表情を浮かべている。

 

 「自分が手掛けた一番の自信作だって言ってたから楽しみでね。案内してくれるって言ってたけど、かなわなかったわ」

 

 「・・・う~ん。それって、いや、あまり首を突っ込むのも野暮か・・・」

 

 なんかたっち・みーが腕を組み唸っているがどうしたのだろうか?

 

 「まぁ、とにかくありがとう。君のお陰でモモンガも楽しそうだ。それとこの世界へも喚んでくれて、まさか、セバスとこうして話せるなんて思わなかったしさ、またいつでも喚んでくれて構わない」

 

 「そう、こっちも助かったわ。ありがとう我が友よ」

 

 「こちらこそ、友よ」

 

 かたい握手を交わす。そうしてたっち・みーは光の粒子となり、元の世界へと戻って行った。

そして今度はセバスが頭を下げる。

 

 「私からも礼を言わせてください。レイナ様。再び私の創造主と会わせていただき感謝の念がたえません」

 

 「貴方もですか、なんか照れ臭いわね」

 

 「だからこそ、言わせていただきます。レイナ様、今すぐこの村から出た方がいい」

 

 「・・・ええ、そうでしょうね。貴方がよくても他のナザリックの者が私のことをよく思わないでしょうし」

 

 「私もできる限りの貴方を擁護します。たっち・みー様だけでなくブループラネット様の知己であられる貴方ならばいずれはナザリックへと迎えられるでしょう。ですが、今は・・・」

 

 「ふふ、優しいのね。さすがたっち・みーさんの子ね。私たちが戦ってる間村を守ってくれてありがとうセバス」

 

 「最高の誉め言葉です。貴女もどうか災息でありますように」

 

 セバスの礼を背中に受けながら、レイナは今夜もエモット家へと帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「本当にお二方には世話になった。もし王国に来られることがあれば是非我が家にお越しください。できる限りのおもてなしをさせてもらいます」

 

 陽光聖典の襲撃があって一晩明けるとガゼフは部下と捕虜を連れてカルネ村を去って行った。去っていく前にお礼に王国の情報を提供してもらった。レイナによって傷は治ってもまだ疲れは取れていないだろうに忙しく、律儀な男だ。

 

 あの戦闘により危ない怪我を負った兵士たちはレイナの回復魔法によって完治しており、その際口々にお礼を言われた。なかには身体の一部を失った者もいた中、あまりに感に極まってレイナに告白まで行うものがおり、ガゼフや副長に拳骨を受け引き離されていた。

 

 このカルネ村もモモンガが直々にアインズ・ウール・ゴウンと外の世界の中継地点にするということで保護対象に納めると今は村長にその事についての話し合いが行われている。

 

 レイナは昨日セバスに言われた通りカルネ村からに出ようと思っている。何故なら今自分がいることでもしかしたらモモンガは良くてもナザリックにいる他のNPCには恨まれている可能性があり、それが原因でナザリックによる保護を異を唱えられるかもしれない。最悪はレイナに対して人質として使われるかもしれない。

 

 そういう考えもあってレイナは世話になったエモット家に挨拶してカルネ村を後にしようとした時に問題が起きた。なんとエンリがレイナに弟子入りしたいと頼んできたのだ。理由を聞けばあの襲撃によって両親とはぐれ近くの森に妹と一緒に隠れようとし、伏兵により捕まりそうになったと

 

 そして、エンリは兵士に追い付かれそうになったとき、レイナの教えを実行、腰を落とし利き手を体の奥に引き、剣を振りかぶった奴めがけ、その顎先に掌底を食らわした。

 

 結果は成功。兵士は思いのほか吹っ飛び、後ろの仲間を巻き込んで倒れ、意識はあるが立ち上がれず、怯えた目でエンリを見ていた。

 

 エンリはその時己の手のひらを見て震えた。恐怖ではない確かな武者ぶるいによって、レイナの言っていた英雄になれるという言葉を思い出していた。

 

 その後すぐにアインズが現れ残った兵士を倒し救われた後、両親と合流し村へ戻りレイナの戦いを見て憧れたらしい。

 

 妹はどうすると聞いて思い止まらせようとするがその妹であるネム自身からも姉が旅立つ寂しさに震えながらもお願いされては断り切れず、承諾することにした。

 

 「かなり厳しいわよ。私自身弟子をとるのははじめてに近い。それでも来るの?」

 

 「覚悟はできてます」

 

 そういった彼女の瞳は強い光を持っていた。さらに、問題は続き今度はシオンさえ、レイナの弟子になりたいと言ってきた。彼もレイナの戦いに魅せられた一人であり、親父を説得してきたらしい。困ったことに彼もただ流れにのってとゆう軽い気持ちでないことだろう。

 

 「君もか、本当にいいのね?」

 

 「俺もあなたのように強くなりたい。そのためにはあなたの近くにいれば早いと思うからそれに・・・あなたを守りたい」

 

 最後は小声で分かりにくかったが、シオンもいい眼をしていた。

 

 「エンリいつでも帰ってこいよ」

 

 「すいません。レイナさん。娘を・・・よろしくお願いします」

 

 「お姉ちゃんたまには帰ってきてね・・・」

 

 「うちのバカ息子は遠慮せずこきつかってくれ。おい、バカ息子!途中で投げ出したら容赦しねぇからな!」

 

 「ひでぇな。わかってるよ親父・・・」

 

 こうして、ある程度事後処理を終えた後、村長やエモット家やレイヴァン家に挨拶してレイナはエンリとシオンを連れてカルネ村を離れ旅に出た。きしくもそれはレイナがユグドラシルではじめてパーティーを組みかの世界を初めて旅したときと同じ状態に近かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なんてうらやま・・・けしからん!」

 

 それを後から知ったモモンガが、これぞ冒険ライフをするレイナに嫉妬して元々あった旅への憧れをさらに強くするきっかけになり、後に漆黒の英雄へとなっていくのだった。

 

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