最低最悪の魔王   作:瞬瞬必生

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俺、ようやく投稿!!

ごめんなさい許してください

コロナのせいでめっちゃ仕事忙しかったんです
ようやく落ち着いてきたんで……また、書いていきます


道標

世界の破壊者にして、通りすがりの仮面ライダー。

門矢士。

何故、どうやって、そんな疑問は恐らく考えるだけ無駄だ。

旅と称して様々な世界を渡り歩いてはそこで何かしらの役割を与えられ、世界の破壊者と住人に疎まれながらも気がつけば縁を紡いでいき、今度はこの世界にやってきた、そんなとこだろう。

彼はいつの間にか仮面ライダージオウへカメンライドしてしまった人物なので、彼がこの世界に通りすがれたとしても正直そんな驚きはしない。

 

驚きはしないが、何故今になって現れたのかだけは気になる。

この世界で与えられた役割が何なのかは知らないが、もし通りすがるとしたならばそれは今ではなく、二年前に起きたライブ事件の時の方が適切ではないのか?

適切かどうかはともかく、元凶であるはずの少女を倒すタイミングで現れるのは如何なものか。

 

まともに考えて、まずノイズという特異災害(たぶん災害じゃない)が存在している時点で、この世界はおかしい。

あのライブ事件だって、オーマジオウという規格外な力のおかげで最悪な結末だけは防ぐことができたけれど、少なくない被害が出ている。

オーマの日に起きたとされる全人口が半分になった事件と比べれば地味な事件と感じるかもしれないが、人口が半分になるのが酷すぎるのであって、こちらのライブ事件だって教科書に載ってもおかしくないレベルの規模だ。

 

なのに、そのおかしな存在を操る元凶をようやく見つけて、あと一歩というところまで追い詰めたというのに、こうして彼に邪魔されるのは納得がいかない。

 

「納得いかない、そんな顔をしているな」

 

「当たり前じゃん」

 

「アイツとお前が戦ってるのが見てられなくてな」

 

「え、どゆこと?」

 

ホントにどゆこと?

オーマジオウである俺とノイズを操る黒幕の少女は敵同士なんだから戦うのは当然だし、普通に考えれば、門矢士視点で考えたとしても、別段、俺と彼女が戦っていてもおかしくはないはずだ。

なのに、戦ってるのが見ていられなかった、というのは何かこちらの知り得ない情報でも持っているのか。

かつ、かつ、かつ、と、門矢士が横を通り過ぎていく。

彼は何故か歩みを止める気配は無く、このままではどんどん距離が開いてしまうので、仕方がないのでこちらもついて行く。

 

「気にするな。こっちの話だ」

 

「いや、そっちの話って言ったって……」

 

ちゃんと説明してくれないと困る。

言葉にしてもらわないとこっちはてんで理解できないし、そっちで勝手に自己完結して納得していてはこっちに何の情報も入ってこないし。

というか、いい加減歩みを止めて欲しい。

この何もない世界でどこまで歩いて行くつもりなのか。

 

「一言で表すなら、アイツは黒幕じゃない」

 

「ッ!? もしかして、今までの一連の事件について、何か分かったの?」

 

「ああ、だいたい分かった」

 

「じゃあ説明してよ」

 

「だいたいは、だいたいだ」

 

きっ、と音を鳴らして歩みを止めた。

そのままこちらへ振り返り、わざとらしく指を指してくる。

 

「まぁ、別に敵だと割り切って倒すのはお前の自由だが」

 

「……」

 

そうだ。

俺は敵を倒す。

倒さなければならない。

止まれないんだ、こんなところで。

俺が倒さなきゃ。誰よりも強くなって。

 

「何故だ?」

 

俺が敵を倒さなければならない。

黒幕でなかろうが関係ない。

 

「何故だ? 何故倒さなきゃいけない?」

 

それは、倒さなきゃ、誰も守れないからだ。

今度こそ、誰も傷つけたくない。

倒さなければ、周りのみんなを守れないし。

倒さなければ、ノイズに襲われるのを防げない。

倒さなければ、また最悪の中の最善をしなければならない。

 

ノイズ、ノイズ、ノイズ。

なんでこんなクソみたいな事が平然と起きて、人々が怯えながら暮らしていかなきゃいけないんだ。

人だけを殺す災害なんて、あるはずがないだろう。

魔王と畏怖されるのは辛くなかった。

テレビで報道されようと、守った人から石を投げつけられようが、そんなものは幾らでも耐えられる。

だから、俺が……。

 

「お前の知る王様は、そうやって立ち塞がった奴を全て薙ぎ倒す最低最悪の魔王なのか?」

 

「それは……」

 

それは、違う。

確かにジオウには冷酷な面もあり、時には容赦のなさもあったけど。

でも彼の根底には、「みんなが幸せでいて欲しい、そんな良い世界を作りたい」という純粋な思いがあった。

そうして最高最善の魔王を目指したいったからこそ、いつの間にか惹かれていき、彼の周りには仲間がいた。

ひたすらに覇道を突き進んでいたのなら仲間はできなかっただろうし、その孤独な結末を、俺は知っている。

 

「人々を守るために戦う、その意気はいい」

 

「力を持った責任を果たす、その意気もまたいい」

 

「だがな」

 

「一つ、忠告だ」

 

「復讐の炎だけには囚われるな」

 

「そんなものに囚われた奴には、仮面ライダーの名を名乗る資格はない」

 

見ればわかる。

彼は怒っている。

顔が、声が、雰囲気が。

真っ直ぐこちらを見つめている。

それはそうだろう。この怒りはもっともだ。

何らおかしくはない。

怒って当然、怒られて当然なのだ。

簡単にタガが外れ、思考が殺すことに囚われて。

 

人を殺せば結果が伴う。

 

俺は殺すために戦うのではない。

守るためにたたかうのだ。

人々を助けるための力を手に入れたのだ、決して快楽のためではない。

力の使い方を誤れば再び悲劇が起こり、力を制御できないのならソレは化け物と呼ぶに相応しい。

復讐という悪意が生み出すものは、悲しみだ。

 

俺は何も知らない。

彼女は何者なのか、何故あの様な行為に及んでいるのか。

ノイズを操ってはいたが、そのノイズを未来予知で見たものは立花の拘束のみであり、立花を襲おうとはしていなかった。

オーマジオウを恐れてあの力を使い出しただけなのかもしれない。

最低最悪の魔王?

アホらしい。

偉大なる先人達の、力を、能力を持ちながら、助けるなんて建前の自己満足に浸っているだけのクソ野郎だ。

何処由来とも知れぬ、語らぬ、よくわからない、ただ見境なく戦う危ないやつだ。

結局、誰も救っていない。

 

俺は平成ライダーの力を受け継いでいるというのに、肝心なところで助けられなかった。

肝心な時に間に合わないで、命を救う名目で守りたかった人々を傷つけた。

人を殺すなんてことはやったこともないくせに、復讐という無意味なものに囚われて。

なんともまあ、惨めで、滑稽で、つまらない話だ。

 

「せいぜい、考えることだ」

 

そう言い放ち、彼の能力か、俺の背後にオーロラカーテンが出現する。

 

「まったく俺と違って、平成ライダーは面倒な奴ばかりだな。手間をかけさせる」

 

むっ、と思ったが、今は反論できない。

現に手間をかけさせてしまったし、門矢士が手を出していなければ今頃あの少女を殺してしまっていたに違いない。

ちょい、ちょい、と、門矢士が手招き。

何事かと思い、また嫌味の一つでも言われるのかと覚悟しながら、それでも何か一つぐらいは言い返してやろうと思いながら恐る恐る近づく。

 

「出直してこいっ!」

 

どんっ、と、腹部を蹴られてオーロラカーテンまで吹き飛ばされる。

 

「お前はまだ旅の途中だ。勝手に終点みたいな顔をしてるんじゃない」

 

視界が反転する間際、門矢士の顔が視界に入る。

飄々としながらも、真剣な表情。

 

まったく、これだから通りすがりの仮面ライダーってやつは。

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

"お前は王となり、世界を破滅から救う使命がある"

 

"これが五十年後のあなた。最低最悪の魔王"

 

"お前がオーマジオウになって、お前が最低最悪の未来を作ったんだろ"

 

"お前は何にも分かっちゃいない。選ばれなかった者の悲劇を"

 

無数の、種々雑多な言葉が頭に浮かび上がってくる。

何故、どうして俺は仮面ライダーになろうと思ったのだろう。

数々の平成ライダーの力を受け継いだ故か、あるいは常磐ソウゴの姿に憧れたからか。

 

別の可能性である()()()()()()()()()()()()()が目の前に現れる。

しかし、何故か、このウォッチを掴むことが罪悪な様な気がして掴めずにいた。

 

「ほう、手に取らないのか」

 

迷っている。

手に入れるべきなのか、本当に俺が手に入れていいのか、それを手にする権利が俺に果たして在るのか。

そうこうしているうちに、一人の少年が俺の前に立った。

俺は未だ答えを出せずに、彼の背中をぼんやりと眺めていた。

 

「若き日の私よ。お前は、生まれながらの王ではない」

 

俺と青年の前にいる魔王は、今まで口にしてきた"生まれながらの王"を否定する。

 

「しかし、王になろうと望んだのはお前自身だ」

 

そう、その通り。

この魔王の言う通りだ。

彼は生まれながらの王と植え付けられただけであり、ただの替え玉として用意された少年でしかなかった。

用意された筋書き通りに導かれ、欺かれ、そして玉座から叩き落とされたのだ。

お前達の平成は醜い、と。

 

「お前は何のために王になりたかったのだ? 他の者に認められるためか? それとも、自分が特別であるためか?」

 

「──違う」

 

それでも、俺の前に立つ少年はその言葉をキッパリと拒絶した。

そんなに王になりたいのか。

王様なんて、魔王と恐れられて傷つくだけの、ロクでもない夢であるというのに。

が、そうではなかった。

少年は強い言葉で告げる。

 

「──俺が王になりたかったのは、世界を良くしたいからだ」

 

──────ああ。

そうか。

最初から、俺と常磐ソウゴでは何もかもが違っていたのだ。

彼は王様になって世界を良くしようとしたのではない。

世界を良くしたいから、王様になったのだ。

だからこそ、最低最悪の未来を見せられても、立ち止まることなく──。

憧れていた背中は、俺が想像していたものよりも堂々とした立派なものではなく、なんてことはない普通の背中だった。

彼にはどれほどの恐怖があったのだろう。

最低最悪の未来だと、魔王になるのだと。

周りに散々言われて、それでも王を目指した。

あまりにも悲しい伝説の一ページ。

この光景を誰も見ることはない。

彼の、彼らだけの、始まり。

 

少年は消え、魔王はこちらを向いて仮面をつけたまま問いかける。

 

「……さあ。お前はどうする?」

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

再びオーロラを模した銀色のカーテンが現れ、ネフシュタンの鎧を纏った少女の後ろにオーマジオウが現れる。

予期しない超常現象にオーマジオウを除く三者は頭の理解が追いつかない。

 

「新手の介入か?」

 

第一号聖遺物──アメノハバキリのシンフォギアを身に纏う風鳴翼は、第三者の介入を疑って辺りを警戒する。

オーマジオウ相手に介入できる相手などそうそういてたまるかと思いつつも、超常現象を見たからにはあらゆる可能性を疑う必要がある。

しかし、付近に第三者の気配はなく静寂に包まれている。

一方、再び現れたオーマジオウは何もないはずの空間に手を伸ばしかけ……何も掴むこともなくだらりと腕を下げる。

先程までの猛烈な怒りは感じられず、まるで親にでも叱られた子供のように俯き、その場から動く気配はない。

今までの姿が嘘のようだ。

 

「ッチックショウ!!」

 

あまりに舐められた態度にネフシュタンの少女はイラつくも、勝ち目は無いと判断してその場から飛び去っていく。

ぐんぐんと高度を上げる少女。

しかし、さほど大きい訳でもない少女の声は、不思議な程にはっきりと風鳴翼の耳に届いた。

 

「どうすりゃあいいんだよ、フィーネ……!」

 

「何?」

 

聞こえたのは、終わりの名を示すもの。

もう、追撃をしようにも少女の高度ではもはや攻撃は届かない。

それがわかって……、しかし、目の前のオーマジオウからも目が離せなかった。

イメージとかけ離れた、その姿に。

判断ミスといえば、判断ミスだ。

予想外の出来事、少女の圧倒的な逃げ足にどうしようもなかった。なんて言うのは建前だ。

奪われたはずの完全聖遺物を前に動かないなど、防人の名が廃る。

それでも、彼女は防人の前に人間なのだ。

 

「……申し訳ございません、司令。対象の捕縛に失敗しました」

 

『仕方あるまい、追跡はこちらでやる。だが、今は……』

 

「分かっています」

 

風鳴弦十郎の発言の意図を汲み取り、翼はオーマジオウへと足を進める。

何が起こったのかは分からない。それでも、オーマジオウの心境が変化する程の出来事が起こったのは確かなのだ。

自分に向けられたわけではないにも関わらず、まるで自分にも向けられているかの如く感じていた殺意を失くし、今では逆に悲しくなるほどに静寂に包まれている。

 

やはり前回の時、逃げるのではなく、無理にでも話し合っておくべきだったと翼は後悔する。

オーマジオウは何の為に戦っているのか、何をゴールにしているのか。

 

「聞こえているか、オーマジオウ」

 

「……そりゃ、もちろん。これだけ近ければ聞こえるよ」

 

いつものような威圧感のある、上からの物言いではない、まるで少年の様な声に口調。

そのことに翼は驚きつつも、ああ、やはり……という感想の方が大きかった。

理屈ではなく直感で、そう感じたのだ。

 

「殺そうとしていたのか、あの少女を」

 

「うん、あの時までは」

 

「あの時?」

 

「ほら、一瞬俺が姿消したでしょ? あの時に先輩に怒られちゃってさ」

 

「そう、か」

 

何処から何処までを話すべきか。

オーマジオウは一瞬頭を悩ませるも、素直に話すべきだと判断した。

もう、道を間違えない為にも。

 

「あの少女を倒せば、殺せば全て解決すると思ったんだ。ノイズを操る元凶なら、彼女を倒せばもうノイズは現れることはない、誰も悲しまないって思ったんだけど……」

 

「違ったのか?」

 

「分からない。俺はまだ、何も知らないみたいだから」

 

「なら、これから知っていけばいいんじゃないか? まだ引き返せない所まで来てるわけではあるまい」

 

「そう、だね」

 

ぽつり、と、オーマジオウが呟く。

同時に、風鳴翼の体が光に包まれ、服装がシンフォギアのそれから、リディアンの制服へと変化する。

風鳴翼の素顔だ。

秘匿するべき正体だというのに、それでも彼女は姿を晒した。

本部からも驚きの声が聴こえてくる。

そんな状況で、オーマジオウには、一つわかる事がある。

 

「私も、新たな道を探していけそうだ」

 

正体を晒した風鳴翼の顔には、うっすらとではあるが、確かに笑顔が浮かんでいた。

そして、翼は立花響へと目を向ける。

その目には、どこか、優しさが溢れていた。

 




ディケイド出しながらも戦わないの巻
ついでにちょびっとだけ出た本物のジオウたち

ビッキーはまじ空気。クリスは不遇。防人はSAKIMORI。いったいどうなってるんだ()
なぁに、あと少しすればみんなパーフェクトシンフォギアになるさ!
空気になんてさせない
しない
しないったらしない

シンフォギアライブも延期になるし、仕事クソ忙しいしで、コロナ絶対許さねぇ! グッズだけでも買えてほんとに良かった……

次回も早いのか遅いのか分からないですけど、そんなんでもよければ気長にお待ち下さいな

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