最低最悪の魔王   作:瞬瞬必生

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仮面の噂

ソレは人類の敵か味方か、謎の異形の秘密に迫る!

……などという見出しの記事がそれなりに見られ初めたのは、異形の存在が世に広まり出した証拠と言えるだろう。

政府からの公式発表は相変わらず無く、ノイズの様な災害とも囁かれていたものの、明らかにノイズだけを襲う姿が複数確認されたのがことの始まりだ。

認定特異災害であるノイズとの交戦時、ノイズを倒し──いや、蹂躙した際に披露した力は、偶々近くにいたマスコミや市民により世間に知れ渡る事となり、撮影は出来なかったものの録音には奇跡的に成功した事により、異形が発した言葉は水面下で広がっていた。

それに確かなソースは無く、噂としてだけ広がる、ノイズとは違う異形を示す言葉。

 

『仮面ライダー』

 

人型の姿をとっており、しかし、その力は人間の常識を超えており物理法則すらも軽く凌駕している異形が話題にならない筈がない。

記録に残らないという特異体質の所為で動画や写真を残せないといった状況であるが故に、マスコミは人々の噂、証言、更には憶測で報道するという事態。

騒ぐのはマスコミだけでなく、インターネット上の掲示板なども同様。『仮面ライダー』

という存在は、ゆっくりと世間に広まっていった。

その噂は不確かなまま、誰が訂正できるでもない場所で、静かにその存在感を増していく『仮面ライダー』の話題。

良くも悪くも、『仮面ライダー』は人々にその存在を認知させていき、果てには実際に会ってみようなんて馬鹿げた企画を考案する人もチラホラ。

 

しかし、一部に期待された馬鹿げた企画も虚しく、異形との接触に成功した者はいない。ノイズが現れた際、遠目からその姿を確認する、という事は何度かあったらしいが直接会って取材すること成功させた記者はいない。そもそも意思疎通が出来るのか? と疑問を投げ掛ける声も上がっているが、言語を話せるのだから意思疎通は可能という見解が多い。

 

人々の期待とは裏腹に、幾たびのノイズとの交戦を経て尚『仮面ライダー』は表舞台に立つことはなかった。

これまで、ノイズに関連する目的で活動しているのではないかと思われる程にノイズを蹂躙してきた異形の存在。

一部の自称情報通の間では政府による生体兵器だと囁かれ始め、それと同時に『仮面ライダー』に関する情報は政府に規制され出し、新たな波紋を呼んだ。

そんな中、『仮面ライダー』の目的を知る者が、僅かながらに存在していた。

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

特異災害対策機動部二課本部。

主に世間に知られている一課と違い二課は――ノイズ被害の対策を担っているのだが、唯一対抗策である物を所持している。それがシンフォギアシステムである。

元々は第二次世界大戦時に旧陸軍が組織した特務室『風鳴機関』を前身とし、 世界に先駆けてノイズを駆逐する有効手段を研究してきた特異災害対策機動部二課は、 ノイズ対策における先端組織であり、 世界規模で人類守護の砦として機能している。

のだが。

突如現れた、ノイズと交戦する、仮面ライダーを自称する異形。

ノイズに対して人類は打ち勝つことはできず、人の身でノイズに触れることは即ち、炭となって消える事を意味している。どれだけ身体を鍛えようが、どんな最新鋭装備を身に纏おうが、結果は皆同じ。また、ダメージを与えることもできない。

たった一つの例外が、シンフォギアだった。

 

しかし、例外がシンフォギアだけではなかった。

 

「仮面ライダー、か」

 

「あら、やっぱりあなたでも会話は不可能だった?」

 

「会話らしい会話はしていない。だが、奴の言葉に嘘がなければ……協力を要請出来そうなものなんだがな」

 

とある部屋にて、風鳴弦十郎と櫻井了子は眉間に皺を寄せてノイズの入った映像を参照していた。

 

『正義。仮面ライダーオーマジオウ』

 

戦闘時、ノイズを蹂躙していたらしい部分はいつものように記録出来ておらず未だ力は不明のままだが、ノイズが消えた後の風鳴弦十郎とのやり取りは例外だったのだ。

まだ幼さが残る、少年らしい声。

簡潔かつ、非常に定義が曖昧な目的と彼を表すであろう名前で〆られた言葉。

目的にしては純粋すぎる言葉に、彼らと目的が一緒であるであろうが故に、頭を悩ませる。

 

「再び、なんとか接触出来ないものか」

 

あれ以来、特異災害対策機動部二課はなんとかして接触を試みているものの、オーマジオウに接触は出来ていない。

オーマジオウは、ノイズが現れる場所に現れるということは確定している。しかし、移動手段が見当もつかないのだ。

ノイズが現れたと思えばその場に出現し、いざ戦闘が終わればその姿は消えている。まるで、最初からいなかったかのように。

単純に移動速度が速いのか、それともワープのような手段を取っているのか、或いはその姿を透明にしているのか。

 

「奴の力、あれはシンフォギアなのか……?」

 

「私からはなんとも。証言だけで、映像も残らないんじゃ推測の域を出ないわ。新しい聖遺物なのか、それとも別の由来の力なのか……候補は挙げられても絞り込むのは無理よ」

 

オーマジオウの力は現状、不明としか言いようがない。

ノイズに立ち向かえることから人智を超えた力ではあると分かるが、それが聖遺物関連の力なのかどうかは調べてみなければ分かるはずもない。

そして、その力を調べようにも映像などといった証拠は一切残らないため、技術部は更に頭を悩ませる。目撃情報の中には、まるでノイズの時間を停止させたかの様な動きさえ報告されている。

そして、解せないのが

 

「倒壊した建物の修復、ねぇ。謎の波動によって修復って報告書にはあるけど、いったいどんなテクノロジーなのかしらね?」

 

その言葉とは裏腹に、果たしてテクノロジーと呼んでいいのかという疑問が櫻井了子の頭をよぎる。

時間を操るなど神に等しい力であり、それをむやみやたらに使うなど一体どんな存在だというのか。

噂によれば、米国といった諸外国ではオーマジオウを捕獲、或いは死体の確保を試みているらしい。あわよくばその力を解明し、兵器に転用するのが大方の目的だろうと櫻井了子は予想している。

目的はなんであれ、アレは人を超越した何かだ。そんなものを制御出来るとは思えないし、制御出来ない兵器は最早兵器とは呼べない。

 

「シンフォギアと同じ、人智を超えた力とはな」

 

「どうするの?」

 

「ノイズと戦っていくのであればいずれ再び接触する機会もあるだろう。二人には細心の注意を払って行動してもらうしかない」

 

特異災害対策機動部二課のその目的上、オーマジオウと再び接触する機会は決してゼロではない。

こちらもまたノイズから人々の命を守る事を目的としている以上、現場での遭遇かつ接触は近いうちに訪れることだろう。

問題は接触した後のことなのだが、

 

「こればっかりは現場のアドリブになりそうね」

 

「やむを得まい」

 

そうするしか方法は無いしな。

そう言葉を続ける弦十郎を他所に、櫻井了子は、頰に手を当てたまま考えを巡らす。

この力は利用価値があるのか?

いったい何処の誰の力なのか?

 

目的、思想、それらがより分かればやりようはある。

 

(ちょっと、計画は見直さないといけないかしら)

 

シンフォギアと同じく、人智を超えた力。

それがどうした。

やるべきことは決まっている。

ならば、それに向かって走り続けるのみ。

 

櫻井了子は決意を新たにした。

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

平和な世界がなにより、とはよく言ったものだ。

誰だって死ぬのは当然嫌だし、命を常に脅かすことになる戦争なども無いのが一番であるし、災害は起こらないに越したことはない。

だけど、残念ながらそれら全てがなくなるなんてことは理想を通り越して妄想に過ぎない。

 

現に、この世界ではノイズなんてよくわからない災害まである始末。災害として教科書に載っているもんだから台風や地震の様なものを俺はイメージしていたのだが、あれは予想外すぎた。

化け物じゃん、あれ。

アレに襲われて触れられると炭になります、なんて教科書に書いてあった時はまるで意味がわからなかったが、その現場を見たことで言葉通りだという事がよくわかった。

 

災害というよりももっと別の何かな気がしないでもないが、人が無力という点に関しては災害と同じなのだろう。

人の体が炭になる、というのがよくわからない理屈なのだろうが、果たして本当に自然の産物なのだろうか? 正直、どっかの国の生物兵器、或いは化学兵器と言われた方が納得出来る。

 

兵器と言えば、どっかのアングラサイト()によれば、オーマジオウは政府によって造られた生物兵器なのかもしれない、なんて突拍子もないことを囁かれているのを見て思わず頭を抱えてしまった。ライダーの力を兵器呼ばわりされるなんて、きっと天才物理学者が黙ってはいないだろう。

所詮、ネット内の戯言と思って放置していたが最近ではマスコミすらそんな戯言を報道する始末。

何故にこう、マスコミはおかしな報道しかしないのか。

 

こうなってくると今後の動きを見直さなければいけなくなってくる。ノイズが現れた場所に飛んでいって倒したら即退散を信条にやってきたが、その無計画な動きも今後は控えるべきか。

テレビの様に事件の現場に行き、解決してそのまま帰る、というのは現実では些か厳しい。

映像などには残らないよう工夫しておいたが、まさかただの目撃談だけでここまでなるとは正直俺の想像力不足だった。

俺の知ってる災害を例にあげれば、俺のしていることは台風に向かってパンチして消し去っているようなものなのだ。話題にならないわけがない。

 

物理による"今から晴れるよ"……確かにヤバイ。

 

閑話休題。

 

オーマジオウの力を人々の為に使おうと決意してはや数ヶ月。正直に言うと、ゴールが見えなかった。

ノイズは倒しても倒してもキリがなく、数が圧倒的に多い。災害、という意味では確かにキリがないのは当たり前なのだが、最近は現れる数が異常だ。

調べた限り、人がノイズに遭遇する確率は東京都民が一生涯に通り魔事件に巻き込まれる確率を下回る、となっていたはずなのだが……最近は一週間に一度のペースで現れている気がする。

この世界では通り魔が二日に一度のペースで現れるのであれば情報通りの出現率だが、幾ら何でもそれはありえない。現に、ニュースで異常事態と報じられている。

 

さて、どうしたものか。

 

「総悟くーん、ご飯できたよ」

 

と、対抗策を考えていたところでおじさんが部屋に入ってきた。

壁掛け時計を見ると、もう七時を回っている。

どうりで腹が減ってきていたわけだ。腹が減ってはなんとやら、一先ずはご飯を食べることにしよう。

もっとも、深夜にノイズが現れるのは勘弁願いたい。

 

「今行くー」

 

「あと、ご飯食べたらお風呂入っちゃってね。もう沸いてるから」

 

「はーい」

 

人助けもするが、出されたご飯はちゃんと食う。

何しろ俺は人間なのだから。

自分の部屋を出て、おじさんが待つ台所へと向かう。

今日はまだノイズも出ていないことだし、実にいい日だ。

まだノイズに関する事柄について原因解明の糸口は無い。

だが、慌てる必要も無いだろう。

ノイズが現れても近くに人がいなければノイズはその場から動かないし、ある程度の数ならば一瞬で殲滅できる。

気長にやろう。

でも、なるべく急ごう。

もしかしたら、の話だけど、これが大災害の前兆なのかもしれないのだから。

 

 

 




まさかプロローグの時点で様々な感想、評価をいただけて嬉しいでござるの巻
やっぱみんなシンフォギアと仮面ライダーが好きなんやなって
投稿ペースはゆっくりなので気長にお待ちいただければ、と

どんな感想も待っています。ついでに高評価も待っています。
ドシドシ送るのじゃ

祝ってくれてもいいのよ? いや、祝うべきなのでは……?
祝えと言っている……

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