幻想結界録   作:アナタは

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第3話

 

 

 

 

 

私にとって「博麗」である事は当たり前の事だ。

きっとそう言えば普通でないと言われるかも知れない。

誰にでも平等で人とも妖怪とも本当の意味で寄り添う事もなく贔屓しない。

幻想郷の秩序を守り妖怪を退治していくのは私「博麗」の役目。

誰にでも平等だなんて普通は無理だとしても私は「浮いている」からそんなものは関係がないし、ずっと1人でいるのもある意味それは必然でもあった。

 

自分でも生まれが幻想郷なのか外なのかも分からないしそもそも親の顔は見たことが無い。

親代わりのような先代巫女に胡散臭い妖怪は居たけれどそれでも何処か私は心で壁を作っていたと思う。

自分で言うのもあれだけど私は物心付いた頃からそれを考えるだけの頭があったし心もあった。

自分がどういう立場でどうならなければならないのかも理解していたしそうなって当然だと思っていた。

だって私には「博麗」しかないから。

お母さんの先代巫女やスキマ妖怪からも「浮く」私はこの当時から異質だったと思う。

 

でも当時幼かった私はまだ未熟だった。

当然と言えば当然だけど「博麗」としては失格だ。

人里で親に挟まれて両手を繋いでその日の夕食の献立を楽しげに話す家族の姿を見ると妙に心がざわつく。

 

やめて、やめてよ。

今更そんな事で私の心をざわつかせないで。

 

それから人里に降りることもなくなった。

心を押し殺して「博麗」になる。

それが私の役目で存在価値。

押し殺して押し殺して。

大丈夫、大丈夫.......私は「博麗」これが普通で私の使命だから。

そう思い込むようになって、ようやく何も感じなくなってきた頃だ。

 

「初めまして、博影 幸人です」

 

胡散臭いスキマ妖怪が連れてきた男の子。

アイツは事ある毎に私に質問してくる。

鍛錬をしている私にその「博麗」の秘術はどう使ってるのとか、どうやって「浮いてる」のとか。

とにかく様々だ。

気味が悪かった。

私を真っ直ぐ見詰める真っ黒な瞳はまるで私の全てを見通しているかのようで。

 

神社に居座るアイツが不気味で気持ち悪かった。

こっちを見る目が生意気で何もかも分かってそうなのが気に食わなかった。

簡単にこちら側に踏み込んでくるのも許せなかった。

その癖気が回って優しい所も.......全部嫌いだ。

初めて妖怪を退治した日震えていた私の手を黙って握ってくれた。

人里に降りて少し気持ちが落ち込んでいた時は彼なりに励ましてくれた。

ただ私を「博麗」ではなくて「霊夢」として見てくれてただずっと傍に居てくれた。

 

アイツだけだ、私を見てくれるのは。

居て欲しい時に傍に居てくれて少し弱気になった時や気持ちが沈んでいる時には私の手を握ってくれる。

ただ彼といる時はこう、不思議と心が軽くなって胸の奥が暖かくなった。

どくんどくん、と激しく脈打つ心臓の音が心地よかった。

あぁ、私も人間なんだなってそう思えた。

先代巫女だってスキマ妖怪だって私を「博麗」の巫女として見ている。

でも彼は違う。

気が付けば心の中にまで何よりも大切で大事で掛け替えのないモノで。

私は彼に言ったことがある。

 

「その.......ありがとう」

「ん?なんかしたっけ俺」

「違うの。いや違わないけどそうじゃない、えっと.......私を見てくれて、霊夢のままでいさせてくれて.......」

「あぁ、そういう」

 

納得した、という感じの顔で私を見るアイツに私はムッとした顔をする。

これでも勇気を振り絞ったのだ。

そんな事を言うのは私っぽくないのにこれだけは伝えておこうと思ったから。

彼、幸人は私が言いたいことを察したようで照れくさそうにしながらも口を開いた。

 

「俺に感謝なんていらないよ」

「でも」

「違う違う。霊夢が思ってる以上に霊夢は弱くねぇよ。俺が居なくても霊夢はそのままだっただろうし何やかんやで楽しく生きてたと思う」

「そんなこと.......」

「そんな事あるさ。寧ろある意味今の弱さは俺がいるからだ。俺は霊夢にとって弱さにしかなり得ない」

「..............」

 

そんな事ない。

私は、私には幸人が必要で。

幸人さえいれば私はそれで.......

 

「霊夢」

「っ!?なに?」

 

突然幸人に肩を捕まれ少し声が上擦ってしまった。

真剣な眼差しで私をみてくる幸人。

ねぇ幸人。

貴方には分からないでしょう、この胸の高まりが。

触れられた場所が熱くて、視界が狭くなってもう目の前の貴方しか入らなくなって。

 

「お前は「博麗」の巫女だ。幻想郷の素敵な巫女さんだ」

「うん.......」

「繋がりは弱みにも強みにもなる。ようは気持ちだ、俺を信じてそして思い出せ。俺はずっとお前の傍にいるよ」

 

いや本当は知っている癖に知らないフリをしているんだ。

なんて酷い男なんだ。

今もこんなにも胸が高鳴っているのに。

この高鳴りが聞こえちゃわないかな、変な顔してないかな、ちゃんと笑えてるかな、変な匂いとかしないかな。

幸人が近くにいるとそんな事ばかり考えてしまう。

 

私は「博麗」の巫女で幸人は「博影」だ。

でもだからこそ2人の関係がそうなろうと問題は無いってスキマ妖怪は言ってたのにそうやって幸人が自然に壁を作るから私は踏み出せないし何も言えない。

踏み出せばもう元には戻れないかも知れない。

そう思うと踏み出せないし明らかに線引きをしている幸人にそんな事を言えない。

幸人が望んでないのならそれは望むべきじゃないから。

 

身体が熱い。

お腹の下辺りがきゅうきゅうと疼いて仕方が無い。

 

こんなにも好きでこんなにも想っているのに。

私の気持ちも欲しいものも何もかも分かってるくせに。

 

ぽんぽん、と雑に頭を撫でてくる。

あぁもう本当に好きだなぁ、ぷいっと顔を逸らして憎まれ口を言ってしまう素直じゃない自分はなんて可愛くない女なんだろう。

 

私は「博麗」だ。

私は幸人の為に「博麗」の巫女になる。

きっと幸人もそう望んでるから。

私は幸人がいればそれでいいしずっと傍に居てくれるだけでいい。

1番じゃなくても愛されなくても傍に居れればそれだけで幸せ。

 

「ねぇ幸人」

「どした?」

 

だからたまに寄り添うぐらいはいいでしょう?

 

 

 

 

 




戦犯は胡散臭いスキマ妖怪。
心の距離感弄ったせいでこうなったんだいいぞもっとやれ。

依存摘心系ヤンデレ
デフォでツンデレも完備していてツンする度に自己嫌悪して病みが深くなる。
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