幻想結界録   作:アナタは

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第7話

幻想郷6

 

 

 

 

 

 

結局あれはあれで丸く納まったのだがレミリアが俺から離れてくれず駄々を捏ねるもんだから俺は「定期的に血を吸わせてやるから」って言うと渋々離れてくれた。

そんなにいいもんなのか?と聞くと「不味いけど気になる人の血なら幾らでも飲めるらしい」

不味いって.......まぁ至高は処女で少女の血だと言われていて男の血なんてそんなもんらしい。

まぁ吸血鬼じゃない俺からすればどうでもいいことなのだが。

 

そして本題の異変の話に戻ってくるのだがそれはちゃんとやってくれるとの事。

そして今現在異変はちゃんと起こっている。

でも霊夢はまだ動いていない。

何でも「まだその時ではない」とかなんとか。

俺は表の事に関してはノータッチなので何も言わないがコイツもしかしてめんどくさいから引っ張れるところまで引っ張ろうとしてないだろうな?

 

 

「ほんとに行かなくて良いのか?」

「んー、大丈夫じゃない?何となくそんな気がする」

「まぁ霊夢がそういうなら」

 

 

実際霊夢の勘は馬鹿にならないからな。

ふわぁ、と気の抜けた欠伸をする霊夢を俺は頬ずえを付いて見ていると目が合った。

欠伸のせいか目尻に若干の涙を溜めてジト目を向ける霊夢。

 

「女の子の無防備なところをガン見しないの」

「今更だろ?なんならもっと無防備なところ見てる訳だし」

 

巫女服は意外と露出度が高いし神社にいる霊夢は隙だらけで何かと心臓に悪いのは確か。

霊夢はあれで結構でかい、何がとは言わないが。

何を考えていたのか察したかのように視線がするどくなり自然と背筋が伸びる。

やべぇ、鋭過ぎるだろ。

 

 

「そういう問題じゃないのよ馬鹿」

 

じゃあどういう問題なんだよ。

はぁ、と溜め息をはかれる。

どうやら答えを教えてくれる気はないらしい。

それ以降お互いに無言になり昼寝でもするかなぁと仰向けになろうとすると、霊夢にちょいちょいと手招きされる。

なんだなんだと側まで行くと隣をトントンと叩く。

素直にそこに座ると立ち上がった霊夢はそのまま収まるように俺の前に腰を下ろした。

特に言葉はない。

ただ時たまある事でこうして寄り添うのは気恥しさもあるが、霊夢をこうして全身で感じられて嬉しくもある。

傍にいるよりもこうして肌を通して触れ合うのとでは全然違う。

感じる温もりも霊夢の匂いも。

全てが愛おしい。

霊夢の腹の前に回した手にギュッと力を込める。

そこに重ねるように合わせられる霊夢の手。

あぁ、この時間がずっと続けばいいのに。

 

俺は霊夢が好きだ。

幼い頃からずっと一緒に居て、こうして幻想郷においてお互いに重要な役目を担う俺達は何だかんだで2人支えあってきた。

そして多分霊夢も俺の事が好きなんだと思う。

そういう気持ちはこうして長く一緒に暮らしていると言葉にしなくとも伝わってくるものだ。

でも俺達は別に付き合ってる訳でも何でもない。

きっと、その方がいいから。

 

これは間違いなく俺側の気持ちの問題で霊夢は何も悪くない。

それが分かっているからこそ俺は此処に居てもいいのかと時々思う。

俺が求めないから霊夢もそういう風に接してくれる。

我慢させているのは分かってるし男として色々と終わっているのも自覚している。

霊夢は何も言わない。

ただこうやって時々寄り添うだけでそれ以上の事は求めず、ここに居て良いんだと言うようにそっと身体を預けて来る。

今のままで駄目なのは分かってる。

まるで懐いた猫のように俺の胸に擦り付けるように顔を埋める霊夢の手入れの行き届いた綺麗な髪を撫でてやると、本当に嬉しそうに笑う。

 

 

 

 

 

「おーい、霊夢ぅ。いるかーってげっ」

「げってなんだよげって」

「五月蝿いっ!今日こそお前に勝って.......と言いたい所だが霊夢」

「なによ」

「あ、あれ?何だか機嫌悪くないか?」

「別に」

 

嘘だ。

絶対めっちゃ怒ってる。

いつの間にか俺から離れた霊夢は真顔で魔理沙に詰め寄った。

そんなピリピリしていた霊夢も神社までやってきた赤い霧を見て魔理沙と一緒に異変解決に出て行った。

やっと出て行ったかと思う反面、先程感じていた温もりが感じられなくなった分寂しさもある。

 

正直今回の異変に関して俺の出番はないと言っていい。

事前に組まれた出来レースであるし、万が一博麗の巫女である霊夢が負ければ出番はあるかもだが霊夢に限ってそれはないだろうし。

仮にスペルカードルールを無視するような輩が現れたのならばそれも排除せねばならないが今回に限ってそれはないだろう。

 

「母さん」

「はいはい。やっと行ったわね霊夢」

「良い意味でも悪い意味でもマイペースなんだよなぁ」

「そうね。もう使えるようにしたからこっちにいらっしゃい」

「あいよ」

 

足元に開いたスキマに俺は落っこちるように入っていく。

俺は一応管理者側の人間で母さんの能力を一部使わせて貰っている。

この中は誰にも干渉されない特別な空間。

無数に開いているスキマ、その1つに霊夢と魔理沙が写っている。

簡単な話、最初はこうして母さんと一緒に霊夢の仕事ぶりを見ようという話になって盗み見ようという訳だ。

 

「ほんとプライバシーも何もあったもんじゃねぇよな」

「失礼ね。私だってその辺は弁えてるに決まってるでしょ?」

「分かってるって」

 

実際時々、あっ見られてるなと不意に感じる事があるのは間違いなく母さんだ。

魔法使い組にも何かしらの魔法で覗かれていた事がある。

別に気にしちゃいなかったが、流石に博影として動く時は別で見せるもんでもないので術を遮断した訳だがその後「気付いてたの?」と聞く嘆息持ち魔法使いと人形遣いに苦笑いで答えておいた。

それからは常に、とは言わないが頻度は減った。

どうせバレたのが悔しいけど何より恥ずかしかったんだと思う。

 

霊夢は言わずもがな、俺もそこそこ勘が鋭い方でそういう術や視線には敏感だ。

母さんが時々見ているのなんて何となく分かるのだ。

今更霊夢も俺も気にしちゃいないが.......

 

「程々にしとけよ、霊夢が怒っても知らないからな」

「大丈夫よ。私は幸人を信じてるわ」

「あのなぁ.......」

 

俺これでもかってぐらい霊夢に頭上がんないんだけど。

そんなやり取りをしている間にも霊夢は赤い霧が発生している原因の方へと迷いなく進んでいく。

妖精を、門番もメイドも例外なく霊夢はスペルカードルールに則って倒す。

見た目はいい勝負をしていたように見えて、いや実際良い勝負はしていたのだと思う。

でも本当の意味で霊夢は本気ではない、本気なのに本気じゃないと言ってしまえば矛盾しているがそうとしか言えない。

なんというか違うんだ。

掴み所がない、存在自体が何処か浮いている。

言うだけならば簡単だが霊夢と戦うと嫌でも感じる事で、近付けば近づくほどこう感じる人がいるんじゃないだろうか。

そしていい勝負をしているのに掠りもしなければ危なげなくブレイクされるスペルカードに何処と無く無意識にこう思わされるわけだ。

 

「これは本当に勝てるのか?」と。

 

だからこそ霊夢は1人なわけで。

 

 

「流石は霊夢ねぇ」

「あぁ。ってさっき目線こっち向いたよな?」

「.......霊夢なら有り得るわね。けど」

「俺の結界術とスキマである意味完全に気配も何もかもを遮断してる、というか存在を見付けること自体が無理なんだけどなぁ」

 

そういう風に術を組んだのだから。

でもさっき確実に目が合った。

やべぇ、背中に変な汗が。

 

これは異変が終わったらお話かなぁと遠い目をしていると、スキマの向こうで遂に異変の元凶であるレミリアとの弾幕ごっこが始まった。

レミリアは間違いなく強い、因果関係に僅かながら干渉する能力というのは思っているよりも厄介なものでそれ抜きにしても素で能力がずば抜けている吸血鬼でもあるのだから。

 

霊夢でも例外でなくいつも通りにいかない事に首を傾げているように見える。

でも俺には次の展開も見える。

 

どうせ『あぁ、なるほどね。じゃあこうして.......』とか言って意味がわからない、理屈も理論もさっぱりな方法で攻略してくるだろう。

 

 

「.......あぁ、お仕事の時間ってか?」

「みたいねぇ。まぁ万が一の心配は要らないんでしょうけど気を付けなさい。それよりもあの子死ぬわよ?」

「わぁーってるよ」

 

 

俺はまた真下にスキマを開いてそこに落ちていく。

何度落ちてもほんとに慣れないなコレ。

 

唐突に感じたこの感覚。

無邪気で、そして純粋で。

だからこそ余りにも歪んでいるこの狂気。

どうしたらここまで拗らせられるのか、ただ分かるのはこれは善意も悪意も関係なく破壊を撒き散らす存在だということ。

 

 

「やぁやぁ、俺も混ぜてくれよ」

「ゆ、幸人?」

「アナタはだぁれ?」

 

真っ青な顔して俺を見上げる魔理沙と不思議そうに首を傾げるナイトキャップを被った変わった翼を持つ金髪の少女。

 

「俺は幸人、宜しくな」

「幸人って言うんだ。幸人も私と遊んでくれるの?でも人間って直ぐに壊れちゃうの」

 

徐に手を上げる少女。

 

「きゅっとして」

「幸人っ!?」

 

「ドカーン!」

 

次の瞬間俺の視界は真っ赤に染まった。

 

 

 

 

 

 




次回、主人公死す!
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