転生公爵令嬢の憂鬱   作:フルーチェ

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賢者の孫はアニメから入ったにわかです、衝動が湧き二次書き始めました。
シリアス薄めです、先人の方ほど上手く書ける自信はありませんが頑張ります。


同僚とトラックと転生

「そんじゃ今日も一日、おつかれ!」

 

「お疲れさま――っと」

 

 キンキンに冷えた生ビールで満たされたジョッキをぶつけ乾杯を交わす。

 少しばかりの残業を済ませた会社帰り、週末なこともあって同じく残業だった同僚と会社近くの焼肉屋へと呑みに来ていた。

 野郎二人でサシ飲みとは色気の無い話だが、気楽なことは良いことだ。

 

「今週もなんとか終わったな、ああ沁みる」

 

 目の前の同僚が一口でジョッキをほとんど空にして感慨深そうに呟いていた。

 何でもない一日の終わりだが、こうした時間が仕事が楽しいわけでもなければ帰りを待つ嫁も居ない、独り身である俺達のような現代人の癒しである。

 美味いものを食べ、呑み、楽しむ。

 

 ニュースを覗けばろくでもない事件に暇がない世間にいくら思いを馳せたところで解決するわけでもなし、自分達の生活で手一杯な小市民の日常だ。

 こうして同僚と飲み交わし、休みが終わればまた来週も変わりない日常が始まるに違いない。

 

「そういやあいつまだ残ってたけど大丈夫かな」

 

「んー……手間取ってるみたいだったけど、いつものことだし大丈夫なんじゃないか」

 

 あいつ、というのが誰かについては言われなくても分かる。

 俺達が帰る頃合いになってもまだ仕事が終わらない様子だった同僚の一人だ。

 

「まあ時間さえかけりゃなんとかなるだろうけどさ、こう毎度の調子だと、なんかなぁ」

 

 どことなく不満そうな気配が見て取れ、その気持ちは分からないでもない。

 うちの会社はそれなりにホワイト企業で残業すればその分しっかり給金がもらえ、まだ勤続年数も浅い俺達のような若手同士では長く残業した奴の方が手取りも多くなってしまう。

 だからというか定時までに捌ききれなかった仕事を残業してこなしている件の同僚に対して不満も出てくる。

 

 しかもそいつは他の社員が帰宅した後も自分が残っているのを自身の能力不足ではなく、振られている仕事量が過剰なせいと考えている節があり改善も見られない。

 とはいえそんなことは会社の方で把握していることだろう、査定の評価が低ければ昇給は厳しいし、場合によっては肩を叩かれるかもしれない。

 愚痴を垂れる同僚を宥めすかし、タクシーへ送り届ける頃には辺りもすっかりと暗くなってしまっていた。

 そんな時間でも人気に満ちた繁華街の街並みを眺め、ふと気づく。

 

 ――おいおい、まさか今帰りなのかよ。

 

 こちらに気づく様子もなく、疲れ切った目をして目と鼻の先を歩いているスーツ姿の青年がさっきも話していた同僚だった。

 どれだけ遅くまで会社に残っていたのか、心配よりも先に呆れてしまうが次の瞬間、そんな思考が吹き飛ばされる。

 

「ちょ……待てお前!」

 

 同僚の向かう先、横断歩道の信号は完全な赤表示。

 それが見えていないかのように奴は歩調を弛めもせず車道へと踏み出していく。

 そんな最悪のタイミングで、信号近くにも関わらず大型のバンが前方車両に追い抜きをかけ、かなりのスピードで横断歩道に飛び込んだ。

 

 駆けながら伸ばした手が届く間もなく、目の前で同僚はバンに撥ね飛ばされてしまう。

 どう見ても、助かるような撥ねられ方ではない光景に身が凍りつく――それが仇となった。

 手遅れながらブレーキをかける大型バン、それによって車道を走る車の流れも乱れる。

 

 後方から来た大型トラックも例外ではなく、パニックでハンドルをきってしまいでもしたのか、縁石を乗り上げたトラックがあろうことかこちらへと迫ってきていた。

 体を駆け抜ける今まで感じたことの無いほど大きな衝撃、痛み。

 傍で上がった悲鳴が遠く聞こえる、体が地面を跳ね転がった感触を最期に体中の感覚が薄れていく。

 

 悔しさのあまりか、意識だけは妙にはっきりとして死の淵であるのによく言われる走馬灯のようなものすら見えてこない。

 しかし嫌だ、嫌だといくら心の中で叫んでもそれは止められないようだった。

 

 ――畜生。

 

 そうして無念の中、この日、俺は死を迎えた。

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