旧約:とある戦士達の黙示録   作:一条和馬

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始まりは静かに。なの!

『世界』は幾つもあると言われている。

 

各『世界』は『次元の海』と呼ばれる大海原で繋がっており、その可能性は無限と言っても差し支えない。

 

 

 昔、戦争があった。後世の歴史家が『ベルカ古代戦争』と名付けたその戦争は、次元の海を跨いだ大戦争だ。比喩表現ではなく、文字通り全世界の覇権を狙った古代ベルカの人間は、悪魔の様な兵器の数々を作り上げた。後にそれらは危険な遺物『ロストロギア』として、各世界の遺跡や次元の海を漂流する事になる。

 

 

 

 今から約70年前の事。

 

 高度に発展した文明技術による世界の崩壊を防ぐべく、ある世界たちが次元の海とロストロギアの回収保存を目的とした組織『時空管理局』を設立。暦も元来の物から『新暦』と改めるようになる。

 

 しかし、次元の海は果てしなく広く、未だ全ての世界を管理所か、把握すら出来ていないのが現状であった。管理局傘下にあり、交易なども行われている世界を『管理世界』。

 

 技術レベルで未だ次元の海の存在すら関知出来ていない世界を『管理外世界』と称していた。

 

 

その中に、第一世界ミッドチルダと呼ばれる世界があった。

 

 

第一。つまり、時空管理局発祥の地でもある。

 

ミッドチルダは『魔法』と『科学』の双文化が高度に発達した世界である。

 

 当然、管理局の施設は存在する。『地上本部』と呼ばれるそれは、上層部の意見の食い違いなどから次元の海に浮かぶ『時空管理局本局』と折り合いこそ悪いが、平和に対する姿勢に関しては概ね差異はなかった。

 

 

 そんな管理局に勤める局員の中には、危険分子鎮圧のために戦う者たちがいる。

 

 『魔導師』や『騎士』と呼ばれる彼ら彼女らは、まるで御伽噺の様に自由に空を舞い、またある者は地を駆け、法の守護者その尖兵として日夜跳梁跋扈する犯罪者を追い、平和の為に尽力していた。

 

 ミッドチルダ港湾部に隊舎を構える時空管理局遺失物管理部隊機動六課は今より数ヶ月前に起こった『J・S事件』において、多大な戦果を残した部隊である。

 

 しかし、六課の設立理由は他にある。それは『ロストロギアの管理及び回収』。

 

 第一世界という事で、物流においても各世界一と言われるミッドチルダでは、当然、違法な闇取引や、それに伴う次元犯罪も多く存在した。殉職された元時空管理局地上本部所属のレジアス・ゲイツ当時中将の言によると「魔法文化の発展により、この数年で犯罪の数は激減したが、それに伴い、個々の犯罪の危険度は年々増すばかり」とある。

 

 皮肉な事に、中将の危惧から『J・S事件』は新暦発足以来最大規模の次元犯罪事件となってしまったのだ。

 そんな危険度の高い次元犯罪が他の世界に比べ多く発生するミッドチルダであったが、当の地上本部所属の各部署はいずれも次元犯罪に対しての初動が遅く、未然に防げたはずの大事件が過去少なからず存在するのだ。

 

 事態を重く見た本局が、ミッドチルダで駐在する即応可能な試験部隊として設立したのが機動六課なのだ。

 

 事実として、機動六課の設立と、六課に所属していた戦技教導隊メンバーによる各地上部隊への徹底した即応訓練により『J・S事件』はその規模でありながら民間人の犠牲者は一人として発生しなかったという。

 

 

 現在、その機動六課の隊長連及び前線メンバーは事件中に隊舎を破壊された為に、仮隊舎として使用していた次元航行艦『アースラ』艦内にて作戦会議を行っていた。

 

「さて」

栗色のショートヘアーの彼女は機動六課部隊長、八神はやて二等陸佐である。ニコニコしている事の多い筈のはやてはいつになく深刻な顔をしていた。

 

「どうしたのはやてちゃん? いつになく真剣な顔しちゃってるよ?」

茶色の長い髪を横で留めている女性がはやてに声をかける。

 

彼女の名は、高町なのは。

 

 機動六課スターズ分隊の隊長にして、まだ19歳でありながら航空戦技教導隊に所属し、『管理局の白い悪魔』という二つ名まで持つ、文句なしのエース・オブ・エースだった。

 

「私もさっき知ったばかりやねんけど、あまり正確な情報はないんやけどな」

 はやてが六課のメンバーを見渡す。

 皆、固唾を飲んで彼女の言葉の続きを待っていた。

「はやて、何があったの?」

金髪でロングヘアーの女性……フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官は機動六課ライトニング分隊隊長である。はやて、なのはとは10年以上付き合いのある幼馴染だ。

 

「そやな、まずはこれを見て欲しい」

 手元のパネルを操作し、会議室中央に立体映像を出すはやて。

「こ、これって……!」

 

 声を出したのはなのはだ。

「あの……八神部隊長、よろしいですか?」

「どうしたんスバル?」

 スバルと呼ばれた蒼い髪でショートヘアーの少女はモニターに写っている『それ』を見ながら言った。

「これって、八神部隊長やなのはさんの故郷の……」

「ああ、前に話したこと覚えてたんやな。そう、皆知ってると思うけど、これは第97管理外世界、『地球』」

 

 その場の空気の色が一瞬変わる。地球という言葉を聞き、と周囲で小さな話し声が飛び交い始めたのだ。

「ここで、一体何があったんですか?」

 スバル・ナカジマ二等陸士の隣にいたオレンジ色の髪のツインテールの少女、ティアナ・ランスター二等陸士がはやてに問いかける。スバルとティアナは同じスターズ分隊所属。訓練校からバディを組む優秀な陸戦魔導師だ。

 

「それがな、五年前の話になんねんけど……」

 

 

 

 時はさかのぼること五年前、第97管理外世界で異常事態が発生した。

 

 

 

 この世界だけ『時の流れが変わった』のである。

 

 

 

 

 本局の調査団はこの前例のない事態に困惑していた。

 

 何が原因でそうなったかは知らないが、ここ、ミッドチルダでは五年の歳月しかたっていないが、地球では百年経ってしまっていたというのである。

 

「百年!?」

 

 

『管理局の白い悪魔』と称えられた高町なのはでさえ、この異常現象には驚愕するしかなかった。

 

 

「ということは、今から地球に行って、それを阻止すればいいんですね?」

 

 機動六課前線メンバー黒一点、赤いギザギザの髪が特徴のライトニング分隊エリオ・モンディアル三等陸士がはやてに予想したこれから自分たちがする任務の内容を言ってみる。

 

「実際、あんまりそこは問題やあらへんねん」

 

 え?とエリオは不意を突かれたような声を出す。

 

 

「不思議なことに、今は『時の流れ』が緩くなって、他の世界と同じスピードになったんよ」

「じゃあ、私たちはどうすれば……」

 

 エリオと同じくライトニング分隊所属のピンクの髪の毛の少女、キャロ・ル・ルシエ三等陸士が首を傾げつつ言う。

 

「そこが今回の本題やな。『時の流れ』が元通りになった今、調査に行きたいねんけどJ・S事件で本局はかなりのダメージを負って復興したのもつい最近、多くの部隊が本局の修理作業に携わってたから、今すぐ動ける部隊として、この機動六課に白羽の矢がたったわけや」

 

 喋り疲れたのか、一度深呼吸するはやて。

 

「二日後、私たち機動六課のメンバーは本局で『アースラ』を受け取り、第97管理外世界、『地球』に行く事になります。詳しい説明はまた今度、本局から新しい資料が届いた時にするな」

 

 

 そう言ってはやては座っていた椅子から立ち上がる。

 

「ほんなら今日のミーティングはここまで。みんな、お疲れさんや」

 

 

 

 

 

……あのミーティングから五時間後、はやてとなのはとフェイトは時空管理局本局に来ていた。

 

 

今回の事件の指揮を任されているクロノ・ハラオウン提督に呼ばれ、三人は本局まで足を運んでいたのだ。

 

「失礼します」

 

はやてが提督の部屋に入り、続いてなのは、フェイトと部屋に入っていく。

 

 

「八神はやて二等陸佐及び、」

「高町なのは一等空尉と」

「テスタロッサ・ハラオウン執務官、」

「「「只今到着しました。」」」

 三人息ピッタリである。

 

「ああ、いらっしゃい。そこに腰掛けてくれ。」

 

 三人のソファーに座らせるクロノ。

 彼は三人が座ったソファーの前の机を挟んだ反対側のソファーに座った。

 

「クロノ提督、私たちをここに呼んだのは例の件ですか?」

「確かにそうだが、そんなに固くならないでくれ。昔からの仲だし、呼び捨てでいいよ。」

「解ったよクロノ君。この前はお疲れ様。」

「なのは達に比べたら、まだまだマシだったさ。」

「それでも、あの後に『ゆりかご』を破壊できたのもお兄ちゃんのおかげだし。」

 

 フェイトがクロノに微笑みかけながら言う。対するクロノは、

「頼むから、『お兄ちゃん』は恥ずかしいから止めてくれ。」

 

 なんて言う始末。十年前のとある事件が理由でクロノはフェイトの義兄になったのだ。

 

 

今の一連で少し場が和んだ所で、はやてがクロノに話し掛けた。

 

「所でクロノ君、私たちを呼んだのは、新しい情報が入ってきたからやろ?」

「ご名答だ。」

 

クロノが机の上に立体映像を出す。

 

 映像には、地球が映されていた。

 

「今回君たち機動六課に託す任務はこうだ。まず第一に『時の流れ』がおかしくなった原因を突き止めて貰うのと、『ブラックスポット』に行って欲しい。」

「ブラックスポット?」

 

 なのはは少し首を傾げる。

 それはだな、とクロノが説明を始める。

 

「今から約2年半前……といっても向こうでは五十年前の話になるんだが、その時に世界を巻き込む程の大戦が起きたらしい。」

「大戦やて?」

 

 はやてがいつもより若干大きな声で言う。

 

 

「『第三次世界大戦』と呼ばれているそうだ。」

 

 だが、とクロノは付け足す様に言う。

 

「それは『表』の話だったんだ。」

 

「『表』?ということは、『裏』もあるの?」

 

 フェイトが間髪いれず質問する。

 

「実際は『日本』にあった『学園都市』というのと『ローマ正教』と『ロシア成教』という二つの宗教団体による全面戦争だったんだ。」

 

 三人は揃って顔色を変えた。

 

「その『学園都市』とか『ローマ正教』っていうのは一体なんなん?」

 

 と、クロノに問いかけるはやてだが、後者には聞き覚えがあった。

 確か一番信者が多い宗教団体だったはずだ。

 

「『学園都市』というのは東京という街の三分の一を研究機関にした科学都市、『ローマ正教』は地球上で一番信者が多いとされている宗教団体の事だ。」

「それが、『表』の顔っていうこと?」

 

 フェイトがクロノに聞く。

「まあ、そんな感じだ。そして、『裏』の顔だが……」

 

 三人の目線と意識がクロノに集中する。

 

「『学園都市』では『超能力者』を開発していたらしい。」

「超能力者?」

 

 なのはがなにそれ?という顔をしながら言う。

 

「言うならば、脳や神経を薬や改造などで、発火能力やいろいろな能力を持つ学生たちの事だ。」

「学生?」

今度はフェイトが困惑した表情を見せる。

 

「学園都市とは名の通り街の7、8割が学生だったらしい」

「ほんなら、その学園都市がローマ正教を?」

「いや、最初にケンカ売ったのはローマ正教の方らしいんだが、結果は両者の頭が潰れて終わったそうだ。」

「ローマ正教ってそんなに強かったのかなぁ?」

「確かに、普通の人間だったら、学園都市と引き分けになる所か、ケンカ売うることすらしないだろう」

「ということは、ローマ正教には何か秘密が?」

「鋭いな。フェイト。実はローマ正教は『魔術団体』だったそうだ。」

「魔術………団体?」

 

 驚愕するはやてを気にせず説明するクロノ。

 

 

「『魔術』といっても、こちらの魔法とは少し違っている点が幾つかあってな。デバイスを用いらない所や、一つの術式に時間がかかるとか。」

「それなら、『超能力』と『魔術』が戦った……っていう事になったわけだね。」

「そうだ。その結果学園都市とローマ正教は壊滅。日本にできた幾つかの『爆心地』が『ブラックスポット』という訳だ。」

「ほんなら、今回の六課の作戦は『時の流れ』と『ブラックスポット調査』でええか?」

 

「もう一つお願いしていいか?」

 

 クロノの問いになのはが頷く。

 

「『ブラックスポット』には、『第三次世界大戦』の中心人物で戦争を止めた男がいるらしい。見つけて当時の事を聞いておいてくれないか?あれは謎が謎を呼ぶような事件だからな。」

 

解ったよとフェイトは頷く。

 

「クロノ君、その人の特徴とかは?」

「体型までは解らんが、名前だけならなんとか調べあげたよ」

「ほんなら、名前だけでも教えてくれへんかなぁ?」

 

 

 

 

「………『上条当麻』だ。」

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