「はぁ……はぁ……」
上着を脱ぎ、カッターシャツの襟の部分でパタパタと顔を扇ぎながら、八神はやては六課のロングアーチスタッフ+αでブラックスポットの荒野を歩いていた。
アースラ撃沈から数時間後、なのは達が拠点として使っていた筈の常盤台中学の跡地を目指し進行していた彼女たちであった。
が、もともと裏方の彼女らが何の準備もなく荒野を行軍し、疲弊しないはずがなかった。
(あかん……このままやったら、皆の体力が尽きて、最悪命に関わる……)
「み、みんな……ちょっと休憩しよか……」
はやての言葉に安堵したのか、次々に地面に座り込むロングアーチスタッフ
「流石に…この状況はよろしくないね……」
ユーノが近くの岩にもたれ、辺りを見回しながらそう呟いた
事実、はやて達の周りは荒野と大きな渓谷が一つあるだけで、人工物は何一つ見当たらなかった
長い歩行で足首を痛めた通信士の看病をしていたシャマルも
「どこかに、ゆっくり休める場所があればいいんだけど……」
と、ロングアーチスタッフの身を案じていた
「シャマル、ザフィーラ。ロングアーチの皆を看といてくれる? 私は空から一番近い水場を探してみるよ。リィン、ユーノ君。手、貸してくれる?」
「パパっと見つけてくるです!」
「ああ」
「…………ん?」
ロングアーチスタッフを見守っていた守護獣、ザフィーラだけが真剣な眼差しで遠くを見つめていた事にはやては気が付く。
「どないしたん? ザフィーラ?」
「主はやて……あそこから何かが近づいてきます……」
「……?」
人間より優れた聴覚で離れた距離の動く“何か”を察知したザフィーラ
「接触は避けたい所やけど、今は動けないし……ザフィーラ、アレ、どれ位距離が離れてるかわかる?」
ザフィーラが口を開けようとした時、リインフォースⅡが叫んだ
「はやてちゃん! 肉眼で確認出来ました!! ……自動車みたいですね。」
両手を双眼鏡代わりにして見据えるリインフォースⅡの横で、看病を終えたシャマルが騎士甲冑を纏い、指輪型デバイス、クラールミントを展開していた
「はやてちゃん、ここはAMFに酷似した反応があるけど、単距離なら皆を転送可能よ」
「ううむ、ここで無駄に魔力を使わせるのもな……仕方ない」
………………………
…………………
「………お姉様、先程のあの男のお話ですが……」
「もう聞き飽きたわよ黒子。それより、さっきからこっちに話振る度に運転荒くなってるじゃない。ちゃんと操縦しなさい」
御坂美琴、白井黒子、初春飾利、佐天涙子の四人は、時代を感じる旧世代のトラック(大型荷台付き)でブラックスポットの荒野を移動していた。
彼女達は現在ブラックスポット内のギルドで傭兵稼業を営んでおり、現在は輸送任務の帰りだったのだ。
「……にしても何もないね……」
ポツリと、佐天はそんな事を呟いた
「昔のミサイルによる無差別攻撃で、花も草も生えにくくなってるんですよね………佐天さん?」
「初春……その頭のお花畑では説得力がないね」と初春をからかう佐天
そんなのんびりとした雰囲気で運転を続けていた時だ。
「お姉様。あそこに倒れ込んでいる集団がおりますわ」
「本当ね。黒子、止めてくれる?」
「はいな」
運転していた黒子がブレーキを踏んで車を急停止させた
「な、何ですか!?」
後部座席から前の座席の美琴と黒子の様子を確認する佐天
「どこかの集落の人たちでしょうか?」
「にしては服装がキッチリしてるのよね……外の人たちかしら?」
美琴が言った“外”とはブラックスポットの外の事だ。
未開拓地に戻ったブラックスポットと違い、外部は相当科学技術が発展していた。
流石は“オブジェクト”原産国といった所か。
「でも、見逃せないわよね」
「お姉様ならそう言うと思っておりましたの!」
その後、はやて達は美琴達により救出され、トラックでブラックスポットの荒野を移動していた
「美琴ちゃん、ほんまにありがとな。助かったわ」
「気にしないで下さい八神さん。人を助けて悪い気はしませんから」
「……それにしても、一気に荷台が重くなりましたわね。運転しにくくなりましたの……」
黒子が必死にハンドルと格闘している所を見て、ふとはやては横にいた佐天に話し掛けた
「なぁ、涙子ちゃん。涙子ちゃん達は一体どこへ向かってたん?」
「“アイアンマウンテン”という場所です。御坂さんの妹さんがそこに住んでおられるんですけど、そこのディスクさんっていう人に依頼完了の報告をですね」
「依頼?」
「ただの瓦礫運びです。最も、ブラックスポットでは鉄屑一つとっても貴重品なんですけど」
「
「シティ?」
黒子の言葉に困惑するはやて
「あれ、八神さんたちは街から来たんじゃないですか?」
「えーっと……」
初春の言葉にはやては言葉を濁してしまう。
「無理に答えなくても良いよ」
そう言ったのは美琴だった。
「ここは“ブラックスポット”だから、皆訳アリで当然よ」
「美琴ちゃん達も?」
「ま、そういう事でお互い詮索はなしとしましょう」
「……そうしてくれると助かるわ。おおきにな」
「見たところ皆さんお疲れの様子。とりあえず、アイアンマウンテンで休ませてもらう方向でよろしいですの、お姉様?」
「そうね」
美琴の言葉に頷いた黒子はアクセルを深く踏み、トラックの速度を上げた。
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アースラ轟沈の数時間前、時空管理局本局に所属するクロノ・ハラオウン提督は、とある重要参考人にあう為、ミッドチルダ上空にある拘置所に向かっていた
真っ白な廊下を抜けると、そこには“面会室”の標識がある一つの自動ドアがあった
「面会時間は30分程しか許されていません。それまでにお願いします」
「あぁ。」
ドアの隣にいた警備員の横を通り、面会室に入っていくクロノ
中央に強化ガラスと魔力の防御壁がある以外は、椅子が置いてある程度のかなり殺風景な室内……クロノの反対側に、その重要参考人はいた
「………直接会うのは初めてだな。ジェイル・スカリエッティ」
そこ言葉を聞き、フフッ……とほくそ笑むスカリエッティ
「その制服……君が噂の管理局の若提督殿か……私に何用かな?」
「わかっている筈だ。今、第97管理外世界…現地名“地球”で起きている事態についてだ」
その言葉に、溜め息をつくスカリエッティ
「何故、私にその話を持ち掛ける? 聞いた話では、異変があったのはつい最近なのだろう? “娘たち”とここにいた私が何か出来るとでも?」
スカリエッティの言葉に、クロノは動じなかった
「知らないにしては随分と素早い切り替えしじゃないか。まるで最初から用意していたかのようだ」
「……」
その後、数分ほど沈黙でにらみ合いをしていた二人だったが、ついにスカリエッティが折れた
「……仕方ない。白状しよう」
案外早く折れたな…と関心したクロノ
同時に、何か疑問も覚える
「……その事態に関して──私は一切関与していない。これは事実だ。他の誰かじゃないか?」
「……シラをきるつもりか?」
「何を言う。私は事実を述べたまでだ。何でも言おう。私は。何も。していない」
「…………」
言葉に詰まるクロノ
「この前から私と面会する局員は皆そうだ。私が犯人である前提で誘導尋問してくる。毎日の様に猿芝居を見せられる私の身にもなってほしいものだ」
「なら………」
一度、クロノは仕切り直すように足を組む
「これからは“次元犯罪者ジェイル・スカリエッティ”ではなく、“一人の天才科学者”に話を伺おう」
「……フッ、そうきたか……良いでしょう」
スカリエッティも手を組み先程とは違う接し方を始める
「AMF反応が発見された。それも“あの世界全域で”だ……お前はどう見る?」
「全域か。それは随分とスケールの大きい話だ。仮定として挙げられるのは…」
スカリエッティが、口を開こうとした時、ドアが開いた。
監視員が中に入ってくる
「すいません提督。お時間です」
「くっ……間に合わんかったか……次の面会日は?」
「明日の朝なら大丈夫です」
「そうか……」
「安心しろ提督。私はそれまでに出来るかぎりの情報を精査してみよう」
「……出来るのか?」
「私を誰だと思っている? ……まぁ、私も暇なんでね。一度は悪党を捕まえる英雄気分を味わってみたいという我欲で動いているだけだ」
「それでも構わんさ……それじゃあ、明日の朝にな」
「あぁ。」
「資料は後で看守に持っていかせる」
「楽しみにしているよ」
そう言った後、二人の男は互いに背を向け部屋を出た。
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「あぁ……ミサカのハーレムが遠のいていく……とミサカはこの未知なる生物に食事を与えながらぶつくさ言ってみます」
「クー」
ブレイド達がアイアンマウンテンを去った日の夕方、御坂妹(変態)と傷が完治したフリード・リヒは共に中枢から奥にある少し大きめのリビングで食事を取っていた
「はぁ……何故ミサカは女の子に恵まれないのだろう……とミサカはテンションを下げながらスパゲッティを頬張ります」
ほむほむスパゲッティを頬張りながらも、フリードにも食事を与えることを忘れない御坂妹(変態)
「………おや、ここにいましたか。と、ミサカは食事後の優越感に浸りながら言ってみます」
そこに現れた御坂妹(普通)
「そうそう、後少ししたら、お姉様とそのご友人が来られるかも知れませんと、ミサカはとっとと支度しろやと遠回しに言ってみます」
「お姉様が来られるのですか!? と、ミサカは興奮気味に、しかし冷静を装い反応します」
ひゃっほほーぅ! と飛び上がり喜びを表現する御坂妹(変態)
しかしこれでも無表情。逆に器用である。
「そうと決まれば止まっていられませんと、ミサカは早速お姉様お出迎えの為、客間の掃除にかかりますとミサカはここに宣言します」
箒片手に走り去った御坂妹(変態)に対して溜め息を着きながらも見送った御坂妹(普通)は、置いていかれたフリードを肩に乗せ、玄関に向かった。
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ピンポーン!
夕焼けに染まるブラックスポットの一角にそびえ立つ白い建造物、アイアンマウンテンの前に、美琴達は居た
その巨大な建物からは想像もつかないほど普通なインターホンが鳴り響く
「おっかしいわねー。居留守かしら?」
ドアの前でぶつくさ言う美琴の横で、はやて達はとアイアンマウンテンを見上げていた
「……凄いなぁ」
「……ですねぇ」
はやての言葉にリインフォースⅡが反応している最中、ドアが開いた
「お待ちしてましたお姉さ……って多っ!? と、ミサカは柄にもなく驚いてみます」
「………あっ!」
御坂妹(普通)の肩に乗っていた小さな竜に一番最初に反応したのは、シャマルだった
「……フリードか」
ザフィーラも何故ここにいるのか理解出来ず少々困った様子を見せていた
「あの……ちょっとええかな? フリード……その竜を一体どこで?」
はやての言葉に、御坂妹(普通)は淡々と答えた
「この子は渓谷で瀕死状態だったシグナムさんという女性と共に、助けました。シグナムさんは現在、お仲間と一緒にシメオンビルに向かいましたよ? と、ミサカは説明します」
「そうか……」
「八神さん……」
美琴の言葉に、はやては反応する
「大丈夫や。私らが思っている以上に、なのはちゃん達は強い。……でも、心配やなぁ……」
「……なら、行きますか?」
「え?」
美琴の言葉に、驚きを隠せないはやて
「事情は聞かない。でも、何か大変なんでしょ? 皆も良いわよね?」
「御坂さんは私達のリーダーですから」
「旅は道連れ……ってね」
「お姉様が行くなら不肖わたくし白井黒子。例え火の中水の中ベッドの中までもお供致しますの!!」
「ベッドには入ってくんなよ」
初春、佐天、黒子の四人は頷いた
「ほんまおおきに! ……じゃあ、シャマル!ザフィーラ!リイン!! 私ら夜天の主と騎士の力で、なのはちゃん達を助太刀しに行くで!」
その言葉に、三人も頷き、フリードも言葉こそ発しないがはやての肩に乗る事で決意を示した
「裏手のガレージにある車をお使い下さいとミサカもノリノリで便乗します。あれなら、半日かからずシメオンビルに到着出来るでしょうとミサカは説明します。」
ありがとうと美琴は、御坂妹(普通)に言った後、アイアンマウンテンの裏にあるガレージに向かった
(はぁ……私もアイツにバカバカ言ってられないわね……)
(なのはちゃん……今行くからな!)
こうして、再び美琴達はブラックスポットの荒野を走り出したのだった。