「へ……へ……へくしゅん!!」
白髪で白衣を着た老人が自分の入れ歯が飛んでいきそうな位のくしゃみをした。
「誰かがワシの噂でもしているのかの?」
よっこらせ、と立ち上がる老人。
まだまた若い者には負けんわいと語っているかの如く彼はまっすぐの背筋をしていた。
彼がいるここは、ブラックスポット内の廃棄となった建物の中である。
「さて、そろそろ奴の所に行こうか。」
老人は歩き出す。
向かった先は隣の部屋、手作りのドアを開ける。
「やっぱりここだったか。」
そこには、白い修道服を着た女性がいた。
背は高く、綺麗な目をしている彼女は服の所々に安全ピンがついている。昔のままだと言いたいだけだが、なぜか歳の割には二十歳前後にしか見えない。
「? どうしたのとうま?」
とうまと呼ばれたのはさっきのジジイである。
「そろそろ奴の所に行かんといけんからな。呼びにきたんじゃよ。」
「ギド博士の所だね。」
「うむ。支度は出来ているから、行こうかインデックス」
そうして、二人の年寄りは、ブラックスポットの地を歩み出した。
とうまとインデックスがギドという男の下に向かったその日の夕方、
(なんで………)
ブラックスポットの廃ビルと廃ビルの間、そこにクルス・シルトとその姉、アルカ・シルトが走っていた。
(なんで……四百人も仲間がいたのにっ!!)
クルスは走りながら怯えていた。
夕焼けが二人を照らす。
つい先日、クルスやアルカが所属しているレジスタンスにある情報が入った。
シメオンの総帥、アダム・アークライトが護衛を着けずにブラックスポットを視察するという情報だ。
彼らは四百人の仲間を引き連れて、アークライト抹殺作戦を始めた。
………が、その情報は嘘だった。隠れて待機していたシメオン四天王がレジスタンスを襲撃、数が四百人から一気に二人になったのだ。
ガサッ!
「うわっ!」
クルスが地面にあったゴミ箱につまずき、転ぶ。
「クルス!」
アルカが駆け寄る。
とその時、
グィィィン!!
「!?」
「テ……テスタメント!?」
テスタメントとは、第三次世界大戦中に日本が作り出した殺人兵器、それの改良型だ。
アルカはクルスを近くのマンホールまで連れて行く。
「クルス!お前はここから逃げろ!!」
「で…でも姉さんが……」
「大丈夫。私には力がある。フラグメントがある。」
そう言ってアルカはテスタメントに向かって走りだす。
「ヒート・エクスプローション!」
アルカの腕が高温で赤くなる。
その瞬間、アルカとテスタメントがぶつかり、赤い炎が立ち上った。
「ね………姉さぁぁぁぁぁん!!」
……………………………
………………………
…………………
「はぁ………はぁ………ここまで来れば……」
姉であるアルカに助けられたクルスは下水道の中を通っていた。
さっきの場所から相当離れた。追っ手は巻けたのだろうか?
「…………ふぅ」
クルスは近くの壁にもたれかける。
と、その瞬間、
グィィィン!!
「…!? まさか!?」
気付いた時にはもう遅かった。
「テスタメント!?」
テスタメントは迷うことなくクルスに近づいてくる。
(ね……姉さん……!)
クルスは少し涙ぐむ。
「グラビトン!」
グワァ!!
「………?」
突如、テスタメントが地面に倒れる。
まるで、何かに上から押さえつけられているかのように。
「離れてろ!!小僧!!」
クルスの後ろから何かが飛び出してきた。
銀色の髪に黒い服を纏い、サングラス装備。
手には聖書、首には変なチョーカー? と十字架のネックレスをつけている。
「し……神父……様?」
クルスはその男の見た瞬間そう思ってしまった。
「小僧!!お前ニードレスか?」
男が聞いてくる。
「い……いえ、違います。」
「はぁ?じゃあなんでテスタメントに………」
その瞬間、テスタメントから発射口のようなものが飛び出し、ミサイルが一発飛んできた。
「小僧!!飛べ!」
男とクルスは同時にジャンプする。
その下をミサイルが通り抜けていった。
「こいつを待っていたんだ!」
男は聖書を開ける。
本は真ん中だけくりぬかれ、中に手榴弾が一つ入っていた。
「うおぉぉぉぉぉ!!」
男は手榴弾のピンを抜き、テスタメントのミサイル発射口にそれを突っ込む。
どんな頑丈な装甲があっても、内部に爆弾なんて、入れられたらひとたまりもない。
勿論、テスタメントは内部から爆発した。
「神父様ぁぁぁぁぁぁ!!」
男はその爆発に巻き込まれた。
クルスが炎の中から男を助けだす。
横腹から血が出ている。
早く治療しなければ、男は最低帰らぬ人になってしまう。
クルスは男の肩を掴み、歩きだす。
とりあえずはここから出ないといけない。
そう思ってクルスは出口を探しだした。
直後だ、
グィィィン!!
「またぁ!?」
懲りずにテスタメント再登場。
(も………もう駄目だ!!)
「ね……姉さん……」
その言葉に、男が反応する。
「小僧、貴様の姉は美人か?」
何をいきなり問いだすのだろうか?
だが、考えている暇はない。
「はい!美人です!すごく!」
「スリーサイズは?」
クルスは姉に心の中で土下座しながら男の耳元でアルカのスリーサイズを言う。
「ウォォォォォォォォ!!」
まるでどこぞの半生体兵器の初号機のような声を出したかと思うと、男はテスタメントに突っ込んでゆき、胴体と腕を切り離し、間髪入れず足ももぎ取った。
………素手で。
クルスには、男に怒りの表情が見えた気がした。
それを見てだいたい察した男は笑顔で聖書を開けながらこう言った。
「私は神に使える身です。決して扱い的には主人公なのに、出てきたのが一番最後だという理由でテスタメントに八つ当たりしたわけではありません。」
そこでクルスは察した。心が狭いとか、こいつ馬鹿だとか、そういう理由ではなく、
この人が主人公か……………と。
「グ………グハァァァァ!!」
突如、男は血を吐いた。
「神父様!?」
クルスが男に駆け寄る。
さっきのが火事場のバカ力だったのだろう。
口からだけでなく、鼻からも血が出ている。
「は……早く出口に!」
クルスは男を背負い、おぼつきのない足取りで出口を目指した。
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―――――――――
―――――――
「アークライト様」
巨大モニターに眼鏡をかけたメイドが映る。
「何かね?」
アークライトと呼ばれた男がモニターの方を見る。
「テスタメントが二機、撃墜されました。」
「ほう……誰にだ?」
「テスタメントが送ってきた画像があります。」
そう言ってモニターの中央に別のウィンドウが開く。
「……………」
そこには、神父の姿があった。
「いかがなさいますか?」
「殺せ。我々シメオンに楯突く全ての者をな。」
「かしこまりました。」
通信が切れ、モニターが真っ黒になる。
…………………………
……………………
………………
上条当麻とインデックスはブラックスポットのとある教会の前にいた。
教会と言ってもボロボロなので誰もざんげなどにはきていないように見える。
「ねえとうま?ギド博士がいるのはここで間違いないよね?」
「ああ、呼んでみようか。」
スゥゥ…と息を吸い始める上条
「ギドのジジイ! 来てやったしょう
途中で入れ歯が飛んで行った。
「五月蝿いわ上条!お前の方が年上じゃろうが!」
教会の中から白髪でハゲている老人がでてきた。
「はっ、年の差なんて幻想ワシがぶっ殺してやるわ。」
カポッっと入れ歯をはめながら決めポーズをとる上条。
「ギド博士、私達を呼んだのは何か訳があるの?」
「おお、インデックス君、久しぶりじゃのう。実はな……っとこの事は中で話そう。着いてきなさい。」
そう言った後教会の中に戻っていったギド。
それに続いて上条とインデックスも教会に入っていった。
「実は見て欲しいものがあってな。これなんじゃが……」
そう言ってギドは上条に一冊の資料を渡す。
表紙を見るや否やで上条の表情が変わった。
「これを……どこで……?」
上条は驚愕していた。
その資料の表紙には、『学園都市』の文字があったのだ。
「この前学園都市の跡地に行った時に偶然見つけてな。君たちにも見て貰おうと思って呼んだんじゃ」
ギドの説明を聞いた後、上条とインデックスは資料に目をやる。
そこには、上条が昔深く関わっていた事件から、彼の知らない事件まで載っていた。
「他に資料は無かったのか?」
「あるにはあるかも知れんが、あの時はあまり調査できなくてな。今度もう一度行こうと思っておったんじゃが、同行してくれんか?」
この言葉の後、上条とインデックスは同時に頷いた。
「うむ。じゃあ少しここでくつろいでいてくれ。もう少しでブレイドが帰ってくるからな」
バタン!!
「「「!?」」」
入り口の方で何かの音がした。
「なんじゃ一体………! ブレイド! どうしたんじゃその怪我は!?」
ブレイドと呼ばれた男は、横腹から血を流し、気絶していた。
その下に 下敷きになっている黄緑色の髪の毛の少年がいた。
「どうしたギド?………!そこに倒れているのはブレイドか!?」
「そうじゃ。どうやらこの子がここまで運んできたようだ。上条君、ブレイドを奥の部屋に運ぶのを手伝ってくれ。インデックス君はこの少年の様子を見ていてくれ。」
「わかった」
「うん。任せて。」
二人は各々違う返事をし、自分に割り当てられた作業についた。
………………数十分後、
「…とりあえず傷は何とかなったな。」
ふぅ…と体の力を抜きイスに座るギド。
「一体誰にやられたのやら……」
上条が顎に手を当てながら考える。
「……話しは変わるが、ギドよ、イヴを見ないが……どこに居るんだ?」
「ああ、イヴなら少し出かけていてな。あと少しで帰ってくるよ」
「そうか……」
(うーん………ここは?)
クルスは目を開けず考える。
(確か……神父様を背負って教会まで来て………)
そう考え後にクルスはゆっくり目を開ける。
「あ、起きたね。おはよう。」
二十歳前後の女性がクルスの顔を覗きこんでいた。
白い修道服を身に纏っている。
頭に被っているフードの下からは彼女の白銀の髪の毛が見えていた。
「ここ……は?」
「教会だよ。君がブレイドを運んで入り口まで来たんだけと、そこで力尽きて眠っちゃったみたいだね」
にっこりと微笑んでくる女性。
「そうか……あ、助けて下さってありがとうございます。僕はクルス。クルス・シルトと言います」
「私はインデックス。よろしくね。クルス君」
そこで、クルスは自分が横になっているのに気が付いた。
「あの……そろそろ降りてくれないかな?脚が痺れてきたかも……」
「!!」
クルスは今までインデックスに膝枕されている事に気付いていなかった。
「すっ……すいませぇぇん!!」